
モリアオガエルの卵、水そばの垂れ下がった小枝についていた泡のような白い塊、初めて見てからひと月たつ。カエルになったそれは見えないかと立ち寄ってみた。
泡のような白い塊は見えなかった。みんなオタマジャクシになり下の池に住みかを変えたようだ。オタマジャクシは少しも休むことなく、尻尾だけ左右にくねらせ池の底を動きまわっている。
周囲をゆっくり歩いてみたがカエルはついに見かけなかった。モリアオガエルは産卵の時期だけ水辺に姿を見せるという。オタマジャクシを卒業したら森の中へ移り住むというから、姿が見られないのだろう。散歩中のご夫婦に「何をしよってですか」と問われた。
訳を話すと「毎日、オタマジャクシは見ているが、カエルは見てない」と教えられた。「明日から気をつけてみよう」2人はそう言い残して城山登山道の方へゆっくり向かわれた。あの2人にカエルが見れたらいいな、そう思いながらきびすを返した。
(写真:彼らはいつモリアオガエルになるのだろう)