
何軒もの新築の家、ここ3年くらいは我が家から歩いて10分ほどの範囲で20軒くらい、いやもっとあるかもしれないが、とにかくたくさんの新しい家を見てきた。今も3軒の新築が進んでいる。工夫されたそれぞれの家に灯がともると一帯が明るくなたっと感じる。20年近く経つ我が家は古びて中年を超えた感じだ。
最近の家つくりは細部まで計算され加工された部材で進み、子どものころに見た手作りの光景を見ることは少ない。そういう我が家もいくらかはそんな工法だった。それは資金がそうさせるので、潤沢なそれがあれば避けられることだが、サラリーマンの現実だった。
今、関心をもって仕事を見に行っている新築中の一軒、子どものころに見た光景が見れる。作業場でノコやのみを使って木材を加工する。薄い赤みを帯びたノコ屑がその仕事の跡を残すかのように地面に積もっている。壁土に混ぜたワラも残っている。ねった壁土を運んだ一輪車に半乾きになったそれが初冬の日を受けている。新築で壁用の木舞が組まれると外からの光が半減しうす暗さを感じる。そこに壁土が塗られると新築中でも一気に暗くなる。暗くなるが家らしくなる。暗くなった奥から槌の音が聞こえる。
外からは玄関と居間と思える広い部屋が見るだけで、壁の向こうは分らない。壁は上塗りされるのを待っている。木舞竹とそれに囲まれた四辺形の箇所の乾きの差が模様になっている。時間をかけて作られていく様子がよくわかる。建築中でも土壁がつくとどっしりとした落ち着きを感じるのは単なる郷愁だろうか。