TVの長寿番組「お宝鑑定団」司会者の去就が話題になっている。その番組は学問的ではなくバラエティー風に仕上がっている。そこが気楽に観られる番組かとも思う。由緒ある逸品、高額に驚く鑑定金額、真っ赤な偽物、思い出のひと品など面白く構成されている。伝来の宝が贋物と鑑定されても「大事にします」という方の気持ちこそが何ものにも代えがたいお宝だと思う。
番組に登場する贋物は書画や陶芸品が多い。鑑定士の説明に「いや違う」という知識はないので、そうなのかと聞き置いている。贋作と鑑定された作品でも「丁寧に描かれている。楽しんでください」という評がある。面白いのは購入した骨董品なのに印刷やお土産用の作品ですという酷いものもある。大枚をはたいた当人の気持ちはやりきれないだろう。それを商売にすることに恥ずかしさを感じないことを残念に思う。
有名な画家の作品では、その作品に込められた意味が解説される。曰く「全世界の平和を希求し全人類が豊かに過ごせることが描かれている」。そこには様々な線と図形がいく種類もの色彩で描かれているとしか見えないので解説のような意味深さは理解できない。子どもが写実的に描いた母親の人物画を観て「その瞼からその人の優しさ」を感じることは出来る。美術品には真贋だけでなくその価値は素人には分からない。
あるオークション前に数万円と値踏みされていた絵が世界的に有名な画家の作品と判明した途端に千倍という高額で落札された。価値とはそういうものなのかと不思議に思う。散歩の途中に何とも言えない異様な1本の立ち木がある。名前も知らないその木の上部に誰かが緑の布を巻きつけたような姿、真っ青な背景に向かって何かを指して訴えている。これを自然の芸術と見るなら、さてどのくらいの価値があるだろうか。