2016年05月22日 中国新聞セレクト「ひといき」掲載
岩国のある公園の国重要文化財の庭にミツマタの花が咲いていた。写真を撮っていると、年配の夫婦連れに「撮ってくれませんか」と頼まれた。観光岩国のため、気持ちよく応えた。
「ミツマタの花も一緒に」という希望だった。蜂の巣のような形の黄色い花を背景にして数回シャッターを押す。カメラを戻して普通なら 「お気をつけて」でお別れになる。ところが懐かしそうに花を見ながら「何十年ぶりかの出合いです」と話し始められた。
両親は、錦帯橋の架かる錦川の上流でミツマタを栽培して切り出し、蒸して樹皮を剥ぎ、それを出荷していたという。樹皮は和紙や紙幣用の紙の原料になる。「心を込めて仕事をしていたが、私か中学生の頃には時代の波に押され、関西での再出発を余儀なくされました」
年を重ねたので、もう一度、両親の故郷を見ておこう、と訪ねたところ、「思いがけず、この花に出合えて故郷に歓迎してもらったようです」と話された。そこには訪ねてよかったというほかに、両親への深い慈しみを感じた。
資料によれば、ミツマタは、岩国藩では作付けを奨励して面積が増えた。製紙技術も向上して盛況となった。半紙の生産は藩の主要産業となり財政を潤し、藩は紙専売制度を制定して取引拡大を図った。
歴史あるミツマタの栽培を断念され心残りであった両親。その思いが、花の咲く時季に息子夫婦を故郷にいざなったのだろう。
岩国のある公園の国重要文化財の庭にミツマタの花が咲いていた。写真を撮っていると、年配の夫婦連れに「撮ってくれませんか」と頼まれた。観光岩国のため、気持ちよく応えた。
「ミツマタの花も一緒に」という希望だった。蜂の巣のような形の黄色い花を背景にして数回シャッターを押す。カメラを戻して普通なら 「お気をつけて」でお別れになる。ところが懐かしそうに花を見ながら「何十年ぶりかの出合いです」と話し始められた。
両親は、錦帯橋の架かる錦川の上流でミツマタを栽培して切り出し、蒸して樹皮を剥ぎ、それを出荷していたという。樹皮は和紙や紙幣用の紙の原料になる。「心を込めて仕事をしていたが、私か中学生の頃には時代の波に押され、関西での再出発を余儀なくされました」
年を重ねたので、もう一度、両親の故郷を見ておこう、と訪ねたところ、「思いがけず、この花に出合えて故郷に歓迎してもらったようです」と話された。そこには訪ねてよかったというほかに、両親への深い慈しみを感じた。
資料によれば、ミツマタは、岩国藩では作付けを奨励して面積が増えた。製紙技術も向上して盛況となった。半紙の生産は藩の主要産業となり財政を潤し、藩は紙専売制度を制定して取引拡大を図った。
歴史あるミツマタの栽培を断念され心残りであった両親。その思いが、花の咲く時季に息子夫婦を故郷にいざなったのだろう。
素敵なエピソードに感銘を受けました。
歴史の深い城下町、岩国の魅力をしみじみと感じます。
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これからもtatu_no_koさんの美しい写真とブログ、楽しみに伺います!
何かの縁を感じながら話を伺いました。
再びお会いすることはない出会いでしたが、掲載されいい記念になります。