総選挙分析ライターの分析を分析している論文を見つけました。(ナッキー)
金曜日は総選挙分析ライターさんと、2人の共通の友人合計4人で会食するので、総選挙分析ライターの代表作を選ぼうと、ネット検索をかけました。
そこで見つけたのが、
こちらの論文です。冒頭から総選挙分析ライターについて語っているところまでを引用します。読みやすくするために段落を勝手に変えました。
私は、今まで、総選挙分析ライター氏の文章を評論だと思っていましたが、著者(学者)は、
評論ではなく先行研究だと定義しています。
ナッキー
AKB48選抜総選挙における
ロングテール構造とメディア選択
植田康孝
2012 年 11 月 30 日受付
江戸川大学 マス・コミュニケーション学科教授 国際情報通信学博士
要 約
本研究の目的は, 2012 年 6 月 6 日に開票された 「(第 4 回) AKB48 27th シングル 選抜総選挙」 について,ユニット化のメリットとロングテール構造を確認して, 且つインターネットの影響を実証するものである。
本研究の実証結果より, 「総選挙得票数」 に与える, 「ユーチューブ (政見放送) 再生回数」 の弾性値は0.47, 「Google+登録ユーザー数」 の弾性値は 0.97 であることが明らかとなった。 劇場からスタートしたため, 元来, AKB48のファンは自ら 「参加したい」 「発信したい」 という欲求が高い。
最大公約数を狙うマスメディアが提示する世界ではなく 「自分の興味関心が高いメンバーに近い世界を構築したい」 と考えるファンで構成されている。
ところがテレビは時間的制約があるため, ファンのニーズを満たし得ない。 一方, 制約がないインターネット上では,興味関心メンバー毎のコミュニティが形成され, ファンはマスメディアより満足度を高めることができる。
こうしたコミュニティが増殖するに従い, ファンが活用する情報メディアとしてマスメディアからインターネットへのシフトが進んだ。
AKB48 の場合, 従来のアイドルと異なり, テレビ番組や歌番組などマスメディアでの露出よりも, 「ユーチューブ (政見放送)」 や 「Google+」 などのインターネットや, 秋葉原 「ドン・キホーテ」8 階にある 「AKB48 劇場」 や CD 購入者を対象とした 「全国握手会」 など 「ライブ・イベント活動」 の影響の方が大きいとかねてより指摘されていたが, 本稿での実証結果もこれを裏付けており, 今後のアイドル・プロモーションにおけるメディア選択の方向性の一つを示したと言える。
※AKB 48 は2005 年に作詞家の秋元康氏をプロデューサーに誕生したアイドルグループである。 従来のアイドルをプロモーションする際に用いられた 「ヘッド」 を中心としたマス (大衆) に向けた戦略ではなく, ライブ・イベント活動やインターネットを用いてファンの 「テール (裾野)」 を拡大する戦略を駆使していることで知られる。
2009 年頃から人気が拡大2011 年レコード大賞を受賞した。 音楽情報会社 「オリコン」 発表によれば, AKB48 の CD 総売り上げ枚数は 2,030 万枚に達し, 女性グループでは最多売上枚数を誇っている(1)。
コンセプトとして 「会いに行けるアイドル」 を掲げ, 秋葉原 「ドン・キホーテ」 8階に専用のライブハウス 「AKB48 劇場」 では毎日のように公演が行われ, ここに行けば彼女たちに 「会える」ことになっている。 メンバーの人気をファンからの投票で順位付けする 「AKB48 総選挙」 や新曲の歌うメンバーをじゃんけんで決める 「じゃんけん大会」 などの ユニークな手法も人気であり, CD 購入者を対象とした 「全国握手会」 において彼女たちと会うことが可能である。 更に, 「ユーチューブ (政見放送)」 や SNS 「Google+」 でのファンとの交流を初めとした, 新しい試みにも取り組んでいる(2)。
キーワード:ユニット化, ロングテール, ユーチューブ, Google+, 関係性, コミュニティ
1. はじめに
2011 年 12 月 28 日付ウォール・ストリート・ジャーナル (The Wall Street Journal) 紙 1 面に AKB48 のビジネスモデルが紹介された。 その記事の中で, AKB48 人気となっている鍵として 「全国握手会」 や 「選抜総選挙」 が挙げられている(3)。
One key ingredient: fan access and participation. CD releases come complete with lottery tickets for a chance to attend a“handshake event” to meet members, or with ballots for popularity contests for members, with the top vote-getters performing on coming singles or appearing in music videos. Many of AKB48’s hard-core otaku,or geek, fans buy dozens, or even hundreds of copies of the same CD to give their favorite girl a boost in rankings, or to win a chance to meet her in person.
また, 「テール (裾野)」 に向けたファン開拓や多様なメディア活用の手法について, 「360度マーケティング」 が紹介されている。
Mr. Akimoto’s success with AKB48 has spawned numerous studies for would-be pop moguls, ranging from books on “The Economics of AKB48” and “The Art of Grabbing the Heart,” to articles in business magazines on the group's “360-degree marketing.”
この 「テール (裾野)」 に向けたファンの拡大 は 「ロングテール」 と呼ばれるが, ドミンク・カルドンは著書 「インターネット・デモクラシー」の中で以下の通りに述べている。
「ウェブの豊かさは, 公共空間では主要なコンテンツの陰に隠れてほとんど流通していなかったテーマを共有して議論できる仲介的な空間をつくり出したことにある」
「インターネットのアルゴリズムに対して, 批判的な分析を進めるべきである。 少ない閲覧者しかいないコンテンツであるロングテールを維持しなければならないのだ。 なぜならば, このロングテールこそが, 従来の公共空間からはるか昔に消え去った, インターネットの最も根源的に民主的な現象であるからだ」
「AKB48 選抜総選挙」 の特徴は, 透明性と納得性を確保し, メンバー間の競争をオープンにしていることにある(4)。
プロデューサーの秋元康の意向ではなくファンの支持という手続きを踏む(5)
形式は, ロングテール構造を有した民主的な現象であり, この現象に対応するためには, ヘッドを対象としたマスメディアよりも, テールを対象にできるインターネットが適している(6)。
テレビやCM の露出数, ブログへの書き込み数, 公式サイトへのアクセス数は, 第3 回総選挙から第 4 回総選挙への1 年間で大きな伸びが見られなかった一方, ユーチューブ, Google+, ツイッターなど公式の AKB48 関連情報に接触できるメディアが拡がったことにより支持層は拡がり, 新たに総選挙に投票しようと考える人を増やすことに影響した。
2. 先行研究レビューと本研究の学術的貢献学術的研究と評論の違いは, 明確な前提のもとで科学的・論理的にモデルを構築しているか, 単に感覚で述べているかで判断が付く。
自然科学分野, たとえば物理学においては, どんなにもっともらしくても, 基本となるニュートン力学や量子力学を無視した研究は相手にされない。
人文・社会分野で文学, 音楽, 映画, アニメ, ゲームなどコンテンツを分析する場合, 感覚的アプローチが目立ち, あまりにも精密性と客観性と再現性が乏しくて, 果たしてこれが 「学問」 と言えるだろうか, 「評論」 に過ぎないのではないか, という批判は常に付きまとう。
本稿では, 経済モデルを援用することにより理論アプローチを試みた。コンテンツ分野の研究は, 物理学で言えば, いまだガリレオ以前の状態にあるだろう。
ガリレオは正しいことを言ったのに, 物理学の認知度が低いために, 「神の教えに背く」 と言われ, 投獄された。
コンテンツ分野では,
専門家でない人が「理屈はそうでも現実は違う」 というケースもいまだ多く存在する。
コンテンツ分野が 「神の教え」ならぬ, 「科学」 や 「論理」 で説明が行われる「学問」 へ発展するために, 客観的, 定量的な評価のフレームワークを提示したことに, 本稿の学術的寄与がある。
ANB48 総選挙についてデータ分析した先行研究は, ルグラン [2012] と総選挙分析ライター[2012] がある。 ルグラン [2012] は, ソーシャルメディアやテレビへの露出とネット視聴率で順位と得票数を予測した。 主要メンバーについて, ツイッター, ブログ, 掲示板における出現頻度や評判, テレビ番組や CM への出現頻度と報道時間およびその内容, AKB48 公式サイトやGoogle+の各メンバーページへのアクセス数やユーザー数・属性データなど, 過去3 回の総選挙時におけるデータと, 各年の選挙結果の関連性(「アキバ係数」) から得票数を予測するモデルを構築, モデルに直近データをインプットして選挙結果を予測するという手法を用いた。
また, 総選挙分析ライター [2012] は, 第3 回の順位, グーグル+のユーザー数順位, 政見放送の再生回数順位をデータとして, 第4回選抜総選挙の 1~64 位まで(7)の予想順位を公表した。
しかし, いずれも総選挙前の順位予測という位置づけにあり, 本論文は総選挙後に結果の実証分析を行ったという点で異なる。 また, 定性的に AKB48 選抜総選挙を分析した研究は他に数多く存在するが, 本論文のように収集データに基づき定量評価するモデルを構築し計量分析を行った結果, 経済学の観点から体系的にまとめたものは類を見ない。 本論文で得られた知見は, 社会学やマーケティング論からの従来型アプローチとは異なる, 実証結果を通じて得られたものであり, 論文としての新規性および独創性を有する。
引用はここまで、是非オリジナルをお読みください。ナッキー
補足:この論文の中で、当ブログの記事が引用されています。記事に書く時間があれば、引用します。