BBC Somali MPs choose new president 31 January 2009
BBC解説記事 Somali president faces tough task By Roger Middleton 31 Jan 2009
秘密投票にて選挙,第2ラウンドで多数を獲得。本日中に就任式を行い,週末のAU会議(於エチオピア)に臨む。議会を拡大した140数名の彼の与党は,政権運営のために大いに資するであろう。首相Nur Addeは落選。2月2日に投票って情報はなんだったんですか先生方。
Nur AddeもSheikh Sharifも,南部ソマリア・首都モガディシュ中心に勢力を持つハウィエ氏族出身。前大統領Yusufはプントランドやオガデン方面に勢力のあるダロッド出身。今まではダロッドの大統領+ハウィエの首相,という格好で権力分散がなされていたのだが,このたび,ハウィエの首相が在任中にハウィエの大統領が生まれてしまいました。
Nur Addeの辞職は不可避といえます。
後任首相はダロッドから選出すべきでしょう。そういう約束です。Sheikh Sharif与党とこれまでの議会勢力との間の溝もさることながら,その枠組みには,さらに氏族間権力闘争の下地があるのを忘れるべきではありません。
Yusuf周辺からは,議会拡大について反対の意見が出ていましたが(「そんな非正統な議会の行われるジブチなんか行かないぞ!」とバイドアに居残ったら,アルシャバブに虜にされたという),彼らの一部は『なんでハウィエにそんなに手厚いんだ? それならプントランドとソマリランド出身者にも同じだけ,議席がプラスされるべきだ!』とコメントしてました。
新大統領は,そこそこ強力な与党のバックアップのもと,党派間の橋渡しをする必要があります。
暫定政府の運営については,特にその軍事的能力の貧弱さが言われていましたが,この点については一定の改善が見込めましょう。少なくともジョウハル(中Shabelle県都)はARS穏健派が割りに安定して支配しているはずです(「中部ソマリア;ジョウハルに国連使節訪問;ベレトウェインで緊張」)。
ベレトウェイン(ヒラン県)も,国連食糧計画の代表団を迎えるくらいに現実的です(「ヒラン指導部は国連食糧計画代表者と会談する:ソマリア,ベレトウェイン」)。
Galgadud県都のDhusamareebでは,スーフィ教団勢力―少なくとも,その看板で戦闘している―がアルシャバブと激闘しており,ここは不穏です。ただし,このスーフィ勢力はエチオピアに装備されたものといわれており―アルシャバブの主張。ですが,状況からしてそうだと信じてよいのでは―,少なくとも積極的に反政府の態度をとることはないでしょう。
…といいますか,BBC(下の記事)にも明言されちゃってますが"They [al-Shabab] have been destroying shrines of traditional saints across southern Somalia"なので…。信教の自由を保証する勢力になびくだろーなーと。それに問題のスーフィ教団自体はジブチ合意賛成派だそうだし。親政府と言い切っていいと思うけど。
他方,アルシャバブは南部の要地Kismayoを去年来安定的に保持し,このたび,エチオピア軍撤退と共にバイドアを奪取しました。彼らはそれだけの軍事的能力を保持しているわけです。
つまり,エチオピア軍と正面切って戦うことはありえないが,在ソマリア勢力としては局地的優勢を維持できるほどの。Kismayoでは,有力地元軍事指導者の暗殺に成功してますし,地元政治指導者を背教者として処分できてますので,彼らに対する抵抗の芽も一定程度摘んであります。
そーいうことをするための「実弾」は―エリトリアから補給する部分が大きいのでしょう。モガディシュの国際空港を使いたいところでしょうが―実際は,陸路で。それゆえ,途中経由地ソマリランドで対空機関銃が没収されたりしています(「ソマリランドはエリトリアを武器密輸の件で非難する 他数件」)。アルシャバブの補給は万全とはいえません。
兵員補給にも限度があります。Dhusamarebでは投降者まで出たといいます。士気を保ち,武器の供給を維持するのは,大変な困難を伴うでしょう。―それは暫定政府にもいえますが(兵隊の年齢に気を遣わねばならない分,兵員確保により難点を抱えます),見かけ上の華々しい戦果の背後で,アルシャバブの危機は胎動を始めているというべきと思うのです。
それは,彼らが幸いに?勝利してさえ,彼らを苛むことです―その「勝利」の過程で若年兵を動員し,貧弱な装備で被害を拡大させる破目に陥らざるを得ない彼らは,若年者から教育を奪うこと(個々人の人材としての魅力を失わせること).意気高い少年を損耗すること(労働力の減少),戦乱自体で社会を混乱させること(治安悪化)―なんと害悪を撒き散らすことか。
排除すべき敵(エチオピア)は既に(自主的に)去ったというのに,エチオピア排除を第一目標とした運動は,なぜか停止を拒みます。
いやまあ,「AU軍だって追い出さないとダメなのです!」ってずいぶん前から本音では言ってたけど。
BBC解説記事 Somali president faces tough task By Roger Middleton 31 Jan 2009
秘密投票にて選挙,第2ラウンドで多数を獲得。本日中に就任式を行い,週末のAU会議(於エチオピア)に臨む。議会を拡大した140数名の彼の与党は,政権運営のために大いに資するであろう。首相Nur Addeは落選。2月2日に投票って情報はなんだったんですか先生方。
Nur AddeもSheikh Sharifも,南部ソマリア・首都モガディシュ中心に勢力を持つハウィエ氏族出身。前大統領Yusufはプントランドやオガデン方面に勢力のあるダロッド出身。今まではダロッドの大統領+ハウィエの首相,という格好で権力分散がなされていたのだが,このたび,ハウィエの首相が在任中にハウィエの大統領が生まれてしまいました。
Nur Addeの辞職は不可避といえます。
後任首相はダロッドから選出すべきでしょう。そういう約束です。Sheikh Sharif与党とこれまでの議会勢力との間の溝もさることながら,その枠組みには,さらに氏族間権力闘争の下地があるのを忘れるべきではありません。
Yusuf周辺からは,議会拡大について反対の意見が出ていましたが(「そんな非正統な議会の行われるジブチなんか行かないぞ!」とバイドアに居残ったら,アルシャバブに虜にされたという),彼らの一部は『なんでハウィエにそんなに手厚いんだ? それならプントランドとソマリランド出身者にも同じだけ,議席がプラスされるべきだ!』とコメントしてました。
新大統領は,そこそこ強力な与党のバックアップのもと,党派間の橋渡しをする必要があります。
暫定政府の運営については,特にその軍事的能力の貧弱さが言われていましたが,この点については一定の改善が見込めましょう。少なくともジョウハル(中Shabelle県都)はARS穏健派が割りに安定して支配しているはずです(「中部ソマリア;ジョウハルに国連使節訪問;ベレトウェインで緊張」)。
ベレトウェイン(ヒラン県)も,国連食糧計画の代表団を迎えるくらいに現実的です(「ヒラン指導部は国連食糧計画代表者と会談する:ソマリア,ベレトウェイン」)。
Galgadud県都のDhusamareebでは,スーフィ教団勢力―少なくとも,その看板で戦闘している―がアルシャバブと激闘しており,ここは不穏です。ただし,このスーフィ勢力はエチオピアに装備されたものといわれており―アルシャバブの主張。ですが,状況からしてそうだと信じてよいのでは―,少なくとも積極的に反政府の態度をとることはないでしょう。
…といいますか,BBC(下の記事)にも明言されちゃってますが"They [al-Shabab] have been destroying shrines of traditional saints across southern Somalia"なので…。信教の自由を保証する勢力になびくだろーなーと。それに問題のスーフィ教団自体はジブチ合意賛成派だそうだし。親政府と言い切っていいと思うけど。
他方,アルシャバブは南部の要地Kismayoを去年来安定的に保持し,このたび,エチオピア軍撤退と共にバイドアを奪取しました。彼らはそれだけの軍事的能力を保持しているわけです。
つまり,エチオピア軍と正面切って戦うことはありえないが,在ソマリア勢力としては局地的優勢を維持できるほどの。Kismayoでは,有力地元軍事指導者の暗殺に成功してますし,地元政治指導者を背教者として処分できてますので,彼らに対する抵抗の芽も一定程度摘んであります。
そーいうことをするための「実弾」は―エリトリアから補給する部分が大きいのでしょう。モガディシュの国際空港を使いたいところでしょうが―実際は,陸路で。それゆえ,途中経由地ソマリランドで対空機関銃が没収されたりしています(「ソマリランドはエリトリアを武器密輸の件で非難する 他数件」)。アルシャバブの補給は万全とはいえません。
兵員補給にも限度があります。Dhusamarebでは投降者まで出たといいます。士気を保ち,武器の供給を維持するのは,大変な困難を伴うでしょう。―それは暫定政府にもいえますが(兵隊の年齢に気を遣わねばならない分,兵員確保により難点を抱えます),見かけ上の華々しい戦果の背後で,アルシャバブの危機は胎動を始めているというべきと思うのです。
それは,彼らが幸いに?勝利してさえ,彼らを苛むことです―その「勝利」の過程で若年兵を動員し,貧弱な装備で被害を拡大させる破目に陥らざるを得ない彼らは,若年者から教育を奪うこと(個々人の人材としての魅力を失わせること).意気高い少年を損耗すること(労働力の減少),戦乱自体で社会を混乱させること(治安悪化)―なんと害悪を撒き散らすことか。
排除すべき敵(エチオピア)は既に(自主的に)去ったというのに,エチオピア排除を第一目標とした運動は,なぜか停止を拒みます。
いやまあ,「AU軍だって追い出さないとダメなのです!」ってずいぶん前から本音では言ってたけど。
これによると選挙は第3ラウンドまで。第二位の候補はMaslah Mohamed Siad Barre氏。