空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

『そんなに素敵な施設なら、うちの地区だけで独占するのはよくないよ!』

2018-02-13 13:35:39 | ノート
朝日新聞 児童養護施設の移転、地元反対で断念 「学校が荒れる」 山岸玲2018年2月12日13時26分

岐阜県関市の児童養護施設「美谷学園」が、山県市内に施設の一部を移転新築する計画を断念した。移転先の地元自治会の「反対」が理由

学園は来年4月開設を目指し、現施設(定員74人)の隣接地に新施設(同45人)と山県市内にグループホーム(同16人)の二つを建てる計画だった

 典型的NIMBY問題―とだけいって済ませることのできない珍しい例。

〈児童養護施設〉 虐待や死別、貧困などで親が育てられない原則18歳未満の子どもを保護・養育する施設。厚生労働省の調査によると、2016年10月時点で全国603施設に2万7288人が入所する。近年は虐待を理由とするケースが増え、同省の別の調査では入所の半数近くに上った」ということで、保護の必要は誰でも認めるだろうが、といってそうした施設が近くに来て欲しいかといわれれば「う、うーん」とためらうことが多かろう。というか、そうなったわけだ。

 …引き受けたところで、地元住民になんらプラスがなさそーだなーと思われたあたり(そしてそれは事実だろう)が、解決すべきボトルネックとでもいえようか。
 さてここまでなら単純なNIMBY問題なのだが、ここは既に類似施設をひとつ抱えているのだそうだ:

だが移転先の自治会は16年9月、同じ中学校区に別の児童養護施設があることなどを理由に、住民計約1300人分の署名を添えて建設反対の陳情書を市に提出した。学園による複数回の住民説明会を経ても態度は変わらなかった

 …『賛成論者さんがいうように、そんなに素敵な施設なら、うちの地区だけで独占するのはよくないよ!』とでも言いたかったのではないですかな、という感。

山県市の担当者は「市としては意見書を作っただけで、あとは県の判断。地元住民を説得することも、その逆もできない」
県の担当者は「施設は地域社会全体に受け入れられることが望ましい。住民の賛同がなければ計画の頓挫はやむをえない」

 自治体としても、無力感やなにやらが漂うコメントである。



 これは「同じ中学校区に別の児童養護施設があること」というところにひっかかる。つまり、これで懲罰的に諸種の補助金をはがしちゃうと、既に引き受けている施設分の利得まで失われる。

 となると、他の地域の人々は学習するだろう―『一度でも受け入れると、二度目がくる。二度目を拒否すると、一度目のときに約束された利得までまるごと削除される。道はふたつだ、言われたものを全て受け入れ続けるか、それとも最初から受け入れないか』。まあ、最初から受け入れないのがふつーの正解になりそうである。



 既にひとつ受け入れ済みなので、協力は既にしているのである。



 既に持っており、社会保障の厚みを彼らは知っている。そこで”この社会保障の厚みを日々実感できる幸せを、ほかの地域にもわけてあげたい!”というわけなのだ。



 その「温かさ」「見守り」という資源は、タダで出てきつづけるものでもないだろう、ということ。
 田舎出身者としては、都会の人間の田舎差別発言を散見するなか、『いやあ、わしらど田舎モンは差別心満載らしくて、そういうご立派な理念?とかわかんねえんですわ。そこで、いろいろご教養ふかくご理解お進みあそばしてる都会に、こういう施設をお任せしてぇんですがな? 温かく見守ってあげてくださいよ?』とか言いたくもなる。

 きれいごとを言って、他人の「温かさ」「優しさ」資源を収奪する「人格者」たちに対する、ちょっとした反乱とでもいえようか。



 …偏見等々の存在自体は好ましからざることなので、解消されるのが望ましいのは確かなんですが。

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