空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

上野学園さんの件:有力教員でも馘首になる

2017-03-17 00:17:33 | Weblog
朝日新聞 ピアニスト横山幸雄さんを上野学園大解雇 経営巡り対立 編集委員・吉田純子2017年3月15日05時01分

クラシックの名門「上野学園大学」(東京都台東区、石橋香苗理事長)が、教授の横山幸雄さん(46)を13日付で解雇したことがわかった。横山さんは昨年8月、同大を運営する学校法人「上野学園」の経営陣を、背任の疑いで東京地検に刑事告発している

昨年末には第三者委員会による調査報告書で、前理事長に支払われた報酬が「財務状況をさらに悪化させる結果となった」ことや、ファミリー企業への業務委託金額が不自然であることなどが指摘された。同学園では、創設当初から石橋家による同族経営が続いている

 うんまあ、「「機密情報をSNSで漏洩し、業務を妨害するなどの行為があった」云々とあり、解雇するための形式的な要件はそろえてから、ということなのだろうが、「横山さんは1990年のショパン国際ピアノコンクールで3位入賞し、脚光を浴びた人気ピアニスト」ともある。音楽学校として、有能な音楽指導者は必須のものだろうに、それでもなお解雇という判断を下されたあたり、いち労働者としての立場の弱さが深く深く思われ、身につまされるところである。

産経新聞 上野学園、ピアニストの横山幸雄氏を解雇 役員報酬問題で内紛 2017.3.15 18:09

 関連記事を多数足元にリンクしてくれているので有難い。

ExciteNews 上野学園創業家10億円“着服”を有名ピアニストが実名告発 文春オンライン 2017年3月15日 16時00分 (2017年3月16日 23時18分 更新)

 …本日発売の週刊文春の記事を見てね!ということのよう。

朝日新聞 上野学園の役員報酬「適切性欠く」 第三者委員会報告書 2017年1月18日19時48分

第三者委員会は、石橋慶晴前理事長(49)が07年から16年まで受け取っていた理事報酬について、当時学園は経営状況が厳しく教職員の給与水準が抑えられている中、高額で適切ではなかったとした。学園長の石橋裕氏(87)の報酬も、内規を順守しておらず「合理性に疑義があった」と指摘した

 日本のそこかしこで、こうした事実上の貴族とでもいおうか、特権階級ともいおうか、そうした人々が静かに生きているのだろう。ノブレスオブリージュを適切に果たしてくれればそれでいいんだが(ウチの分野の若手、「祖父が某大学学長経験者」とか「某中核都市中央部の大寺院の子息」とか「中世以来の某地方有力者のご本家」とか…某有力者は某旧藩主家菩提寺出身とか…立派な家系出身の立派な業績を挙げる人たちは、やっぱり中核なのだ)、程度がアレな方向にいっちゃったり、利益を生む鶏君たち(まあ、我々だ)を絞りすぎると難だ、ということか。

 まあその、「利益を生む鶏君」とはいえ、「1990年のショパン国際ピアノコンクールで3位入賞」というようなレベルのひととは我々は格がちがう(おちる)。それほどの格のある人でも、邪魔者とみなされれば馘首というわけで、なんというか下々には辛いお話なのである。

 …うん、「お役立ちレベル」が「邪魔者レベル」を上回る限りにおいては、放逐されずに済むってところだろうか。

産経新聞 私立音大の生徒減、経営環境厳しく 2016.8.26 06:05

上野学園の内紛の背景には、厳しい経営状況がある。学園関係者や信用調査会社によると、少子化などに伴って学生数が減少傾向にあり、平成27年3月期には収入の6割を占める「学生生徒等納付金」が12億7千万円と、前年から4・6%減少

 …そもそもきっついのである。

音楽評論家の国土潤一氏は「日本では音楽市場の規模に対し学生数が多い。演奏家として生計を立てられる学生は一握りだ。需給バランスが崩れたままでは淘汰される音大が出てくる恐れがある」と指摘している

 ならば、夢を売って商売すると言う点では、ある種のアニメ・マンガ学校の類と同じ、と言われかねない。
 とはいえ、音楽教室の需要はあるし、学校の音楽教師の道もある。そもそも少子化の趨勢で、学校教師の線も細くはなっていくだろうが。それゆえ、一定の淘汰は起こることなのだろう―地方国立大の”人文系”が”新任務”の名の下、再編されるであろうように。

 ではここで、音楽学校経営にさらなる圧を加えてみよう―ジャスラックだ。大手さんからとはいえ、著作権料を徴収する場合、マアそりゃその分、圧にはなる。その徴収された金銭は作曲家・作詞家たちに配分される。ああ、これで著作権者が多少豊かになれるぞ…! …という一方、末端の音楽教師にはこの動き、全くプラスにならないだろう。彼らは著作権料の配分に与れない(ことが多い)だろうからだ。

 …だって、音楽大学を出たからって、必ず実入りのいい曲・詩をかけるってわけじゃないでしょう? それは、研究大学を出て博士を貰ったからといって、必ず論文をかけるとは限らないのと同じだろう、いや私は音楽業界を知らないが、常識的に。我々の領域でも、より注目度の高い論文をより多数発表できる人間に研究費が集中していくのと同様、彼らの領域でも同じようなことが起こるだろう。

 …となると、著作権料の話は、もてるものともたざるものとの対立、という話題も含んでしまうことになり…。
 …面倒だな。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« タイのメロドラマがミャンマ... | トップ | 見ていた記事メモ(2017-03-17) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事