労働者たちである我々が、相互に、常に真面目に仕事をしているのだという相互信頼・信仰を持ち続けるためにも、それなりに必要性があろう。労働者の倫理、技術者倫理に連なる話である。
他方、お偉いコメンテーター様方が、”あ、飲食じゃふつーでしょ”とか言い放つのは、それは一般労働者への侮辱に連なる。
livedoor くら寿司にセブン、バイトテロ「見せしめの法的措置」はむしろ逆効果 2019年2月18日 7時55分 iRONNA 黒葛原歩(弁護士)
「さて、「不適切動画」が昨今話題となっている。
次々に事例が出てきており、逐一紹介することはできないが、その内容はおおむね、「アルバイトが仕事中に撮影した動画をSNSに投稿し、その動画の内容が、本来の職務内容からして著しく不適切であった」というものである」
「ところが、最近では不適切動画投稿の事案において、企業側が懲戒処分というレベルを超え、当該労働者に対して損害賠償まで請求するケースが出てきているという。ここまで来ると「おいおい、ちょっと待ってくれよ」と言いたくなってくる。 そもそも、こういう場合、使用者から労働者に対する損害賠償請求というのは認められるものなのか」
程度による。
最高裁判決は「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができる」というのだそうで、
「いわゆる不適切動画の投稿についても、こういった減額がなされる余地はある。アルバイトであって賃金水準が低いことや、正社員である監督者の不在などは、減額要素として考慮される可能性があるだろう」というのは、まあ可能性を適切に指摘したというべきだろう。
ところで「この種の訴訟は、費用対効果の見込めない、いわば「見せしめ」のための訴訟とならざるを得ない」と、以下、訴え出た企業の行動を非合理的と戒める言葉が続くのだが、企業はまさしく「イレギュラーの事態に際して、感情任せでない、理に即した対応を行うことこそが肝要である」と考えたのではなかろうか。
「もとより若者というのは、人生経験の不足ゆえに、時として「若気の至り」からの失敗もするものである」が、そのコストを誰がどのように負担するのか、が問われたわけではないのか。「日本で働いているアルバイトの数は1000万人規模なのだから、その中におかしな行動に出る者が一定数いることは、別に不思議なことではない」かもしれないが、「おかしな行動に出る者」によってかかるコストを誰が払うのか。
「なるほど、このような事態に直面すれば、経営者の方は悔しいと思われるかもしれない。なればこそ、まさしく「沈黙は金なり」と申し上げたい。冷静な判断の結果は決して「泣き寝入り」ではない」「すぐには目に見えず、形にならないかもしれないが、実際には沈黙こそが、法廷において雄弁を振るうよりも、多くのものを会社にもたらしてくれるはずである」
一連の問題―どこまでを一連とするかは別の問題だが―の初期の例では、個人商店でそれをやって、たしか蕎麦屋かなんかがつぶれてましたが、すぐさま見える結果として閉店、カタチになったものとしては廃業したわけだが、この蕎麦屋に何が齎されたのだろう。蕎麦屋はつぶれているのだ。店主は生業を失った。
…とまあ、「法廷において雄弁を振るう」ことのできる大会社であってこそ、訴えないという選択肢をとることで何ものかを得る可能性を追求できるのであり、そういう余裕のない者たちがものも言えず単に滅んでいったことをも含めて「事を荒立てない態度だと一般化し、「実際に日本の経営者の多くは、そのように実践してきたのではないだろうか」とするのは、いささか中小経営者に無言を強要する言葉になりかねない。
なお。
所詮回収できないような額の賠償金を要求してみる、というのはスラップ訴訟と同じ属性だと思われる。なので、この点だけでおせば、スラップ訴訟批判に連なっていく。まあこれは筋がよさそうだが、すると同様に、権力に対する訴訟闘争も批判の水平線にのぼってくるので、あまり推しすぎるのはなんだと思う。
また。
この手の「若者のやらかし」を個人的に追及しないという基本原則が成立した場合、大変簡単に悪事を思いつけるのでよろしくない。
つまり、1) 手のものを対象となる会社のバイトに送り込む、2) やらかし映像を確保する、3) ネットで拡散させる、4) 株価が一時的に暴落した瞬間を狙って株を買い占める、5a) 回復した時点を狙って売りさばき、利益を確保する。あるいは5b) 乗っ取りをしかける(※超大規模な資本を持つ者である必要があるが)。
金のない若者を守れ、といいつつ、(割とたちの悪い)金持ちに有利なルールをつくり出すことになる。
さあ、当然、このルールのもとでなら、資金力に優れる大権力に有利だ。敵対党派の機関紙・新聞の発行所・販売所に手のものをもぐりこませて以下略。
最後に。
「日本で働いているアルバイトの数は1000万人規模なのだから、その中におかしな行動に出る者が一定数いることは、別に不思議なことではない」とあるが、これは労働者としての連帯に欠ける態度だといっておきたい。
我々は相互に誠実に商売することを暗黙のうちに了解しあっている…と信仰しておいたことにしておくのであって、この信仰、暗黙の了解、社会契約を「筆者自身は、実際のところ、昨今発覚したような事態は、飲食業の現場では他にも多々起きていることなのではないかと思っている」と言い放って蔑ろにするのは―a) 飲食業に対する侮辱、あるいはb) アルバイト(非正規労働者)に対する侮辱、でなければc) 相互に誠実であるべきだ・はずだという市民社会の基盤に対する攻撃、になるかと思う(…学者風芸能人の古市氏が何か言ってたようだが、うんまあ…)。
それとも、自分は専門職だから、そのような低い水準では仕事をしていないというのだろうか。ならばその高度な専門性でもって書いた文章が、まるで性質の悪い金持ちに有利なルールを暗黙のうちに人々に認めさせようという含意をもっていることはどう説明つけるのか?
同種事案の再発抑止のために拡散させていただきます。
— モトケン (@motoken_tw) 2019年2月9日
未成年者のいたずらとして軽く見るには損害が大きすぎる。
他人に迷惑をかければそれに見合う制裁を受けるということを事実として認識させるために最後まで報道または公表をしてほしい。 https://t.co/P4PzgrltKD
他方、お偉いコメンテーター様方が、”あ、飲食じゃふつーでしょ”とか言い放つのは、それは一般労働者への侮辱に連なる。
livedoor くら寿司にセブン、バイトテロ「見せしめの法的措置」はむしろ逆効果 2019年2月18日 7時55分 iRONNA 黒葛原歩(弁護士)
「さて、「不適切動画」が昨今話題となっている。
次々に事例が出てきており、逐一紹介することはできないが、その内容はおおむね、「アルバイトが仕事中に撮影した動画をSNSに投稿し、その動画の内容が、本来の職務内容からして著しく不適切であった」というものである」
「ところが、最近では不適切動画投稿の事案において、企業側が懲戒処分というレベルを超え、当該労働者に対して損害賠償まで請求するケースが出てきているという。ここまで来ると「おいおい、ちょっと待ってくれよ」と言いたくなってくる。 そもそも、こういう場合、使用者から労働者に対する損害賠償請求というのは認められるものなのか」
程度による。
最高裁判決は「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができる」というのだそうで、
「いわゆる不適切動画の投稿についても、こういった減額がなされる余地はある。アルバイトであって賃金水準が低いことや、正社員である監督者の不在などは、減額要素として考慮される可能性があるだろう」というのは、まあ可能性を適切に指摘したというべきだろう。
ところで「この種の訴訟は、費用対効果の見込めない、いわば「見せしめ」のための訴訟とならざるを得ない」と、以下、訴え出た企業の行動を非合理的と戒める言葉が続くのだが、企業はまさしく「イレギュラーの事態に際して、感情任せでない、理に即した対応を行うことこそが肝要である」と考えたのではなかろうか。
「もとより若者というのは、人生経験の不足ゆえに、時として「若気の至り」からの失敗もするものである」が、そのコストを誰がどのように負担するのか、が問われたわけではないのか。「日本で働いているアルバイトの数は1000万人規模なのだから、その中におかしな行動に出る者が一定数いることは、別に不思議なことではない」かもしれないが、「おかしな行動に出る者」によってかかるコストを誰が払うのか。
「なるほど、このような事態に直面すれば、経営者の方は悔しいと思われるかもしれない。なればこそ、まさしく「沈黙は金なり」と申し上げたい。冷静な判断の結果は決して「泣き寝入り」ではない」「すぐには目に見えず、形にならないかもしれないが、実際には沈黙こそが、法廷において雄弁を振るうよりも、多くのものを会社にもたらしてくれるはずである」
一連の問題―どこまでを一連とするかは別の問題だが―の初期の例では、個人商店でそれをやって、たしか蕎麦屋かなんかがつぶれてましたが、すぐさま見える結果として閉店、カタチになったものとしては廃業したわけだが、この蕎麦屋に何が齎されたのだろう。蕎麦屋はつぶれているのだ。店主は生業を失った。
…とまあ、「法廷において雄弁を振るう」ことのできる大会社であってこそ、訴えないという選択肢をとることで何ものかを得る可能性を追求できるのであり、そういう余裕のない者たちがものも言えず単に滅んでいったことをも含めて「事を荒立てない態度だと一般化し、「実際に日本の経営者の多くは、そのように実践してきたのではないだろうか」とするのは、いささか中小経営者に無言を強要する言葉になりかねない。
なお。
所詮回収できないような額の賠償金を要求してみる、というのはスラップ訴訟と同じ属性だと思われる。なので、この点だけでおせば、スラップ訴訟批判に連なっていく。まあこれは筋がよさそうだが、すると同様に、権力に対する訴訟闘争も批判の水平線にのぼってくるので、あまり推しすぎるのはなんだと思う。
また。
この手の「若者のやらかし」を個人的に追及しないという基本原則が成立した場合、大変簡単に悪事を思いつけるのでよろしくない。
つまり、1) 手のものを対象となる会社のバイトに送り込む、2) やらかし映像を確保する、3) ネットで拡散させる、4) 株価が一時的に暴落した瞬間を狙って株を買い占める、5a) 回復した時点を狙って売りさばき、利益を確保する。あるいは5b) 乗っ取りをしかける(※超大規模な資本を持つ者である必要があるが)。
金のない若者を守れ、といいつつ、(割とたちの悪い)金持ちに有利なルールをつくり出すことになる。
さあ、当然、このルールのもとでなら、資金力に優れる大権力に有利だ。敵対党派の機関紙・新聞の発行所・販売所に手のものをもぐりこませて以下略。
最後に。
「日本で働いているアルバイトの数は1000万人規模なのだから、その中におかしな行動に出る者が一定数いることは、別に不思議なことではない」とあるが、これは労働者としての連帯に欠ける態度だといっておきたい。
我々は相互に誠実に商売することを暗黙のうちに了解しあっている…と信仰しておいたことにしておくのであって、この信仰、暗黙の了解、社会契約を「筆者自身は、実際のところ、昨今発覚したような事態は、飲食業の現場では他にも多々起きていることなのではないかと思っている」と言い放って蔑ろにするのは―a) 飲食業に対する侮辱、あるいはb) アルバイト(非正規労働者)に対する侮辱、でなければc) 相互に誠実であるべきだ・はずだという市民社会の基盤に対する攻撃、になるかと思う(…学者風芸能人の古市氏が何か言ってたようだが、うんまあ…)。
それとも、自分は専門職だから、そのような低い水準では仕事をしていないというのだろうか。ならばその高度な専門性でもって書いた文章が、まるで性質の悪い金持ちに有利なルールを暗黙のうちに人々に認めさせようという含意をもっていることはどう説明つけるのか?
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