空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

田崎和江(金沢大名誉教授)他「東日本大震災における空間ベータ線測定」

2012-03-13 17:30:00 | Weblog
 福島民報のダメ記事に発する謎の騒ぎの補遺である。なお経緯はこれら計5本のメモ参照

田崎和江(金沢大名誉教授)他「東日本大震災における空間ベータ線測定」『地球科学』65(4),pp.175-177,2011の短報(参照,Ciniiの当該頁)。

 三頁論文だが,文章自体は1頁のみ,あとの2頁は図版。

 完全freeというわけではないので(うちの機関は定額アクセス可なので読めるが),核心となる一文のみを引用することは許されよう。175頁から「この表層土壌資料を用いて除染実験を行なったところ,各種粘土粉末を散布することにより…(線量が)…減少した」(※微妙に誤植っぽい数字があったのでその点,除外した)。

 つまり多孔質の物質を使用して,そこに放射性物質を吸着させようという,極めて常識的な作戦をとったに過ぎない(ように読める)。

 詳しい報告は後ほど発表される様子である。

 ともあれ,『しんぶんきしゃさんがかいたからほんとうなんだわーいすっごいほうしゃせいぶっしつをばくてりあがぶんかいするんだってーっ』という内容の研究を未だに期待していた向きがいらしたら申し訳ないが,『そんな話は最初からされていません』で終わるわけである。

 新聞記者さんやTVのスタッフさんたちは,たとえ学術的なものを扱っていようとも,必ずしも本人自身が学術に通じているわけではない。我々は専門的訓練を経た専門家をそういう所に(少なくとも,積極的には)配置してこなかったもののようである。

 しかし,新聞記者(学術担当)が必ず博士持ちでなければならないというわけでもない。
 とある新聞社さんの学術担当者さんが某学会に顔を出していたが,それは会場での質疑応答の様子を見て,どれが一般に受け入れられている説なのかどうか,見極めるのである云々仰っていた。つまりここでは,その新聞記者さんは,ただ常識的な・健全な理性を働かせることを我が使命と定めていたのである。

 我々も,まずはそのようであればよいのである。

 私だって理学博士じゃあ,ない。
 しかし,『わあああきのこぐもだだからふくしまだいいちではかくばくはつがおこったんだよおお』なんて話は,少なくとも信じがたい,「いや,核爆発だとしたら,規模ちっちゃすぎない?」。『ちぇるのぶいりよりきけんだよおお』なんて言われても,「あからさまに本体が逝っちゃったアレより,穴が開いた開いてないで延々喧嘩できた福島第一の方が放出量多いって,ありえるかなあ?」。
 …数枚の写真をくらべれば,このくらいのちょっとした疑問を覚えやしないか常識的に。高卒だろうが中卒だろうが。つうか今の疑問の持ち方に,文学博士様特有の超優秀かつ微細な観察力とかあったか。あったと思えたらそっちの方がおかしい。

 だから我々はまず,常識的な,健全な理性を働かせるべきなのである。それは学校教育が養成したいと思っているところのものである(はずである)。何かひっかかりを覚えたならば,その時はじめて真剣に考察する(かどうか決定する)といい。そのときには専門家が役にたってくれるだろう,その分野の専門家が。私も私の専門分野でなら役にたてる。
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