空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

「言者軽,聴者亦軽」(王衡)

2011-09-16 23:58:55 | ノート
 陳永福「万暦年間の言路問題に関する一考察 ―万暦16(1588)年 順天郷試事件を中心に―」『東洋学報』第92巻第4号(2011年3月),29-58頁よりまたびき。

 同論文に言及される諸事例,”顕官の息子が官僚採用試験に合格したら必ず汚職が疑われる”等々はなかなか現代に示唆するところがある。論を立てる者は,よし一時は免官されるなどしても,諫言をしたというその外形から名声を得て栄達してゆく。してみると,虚実ないまぜだろうが,虚偽しかなかろうが,とにかく顕官にある者(の一族)を非難すれば栄達できるというわけで―

 ―といって言論を弾圧しても国は全うできない。それで言論を行なう者には責任を求めた,なぜなら「言者軽,聴者亦軽」である。その反対を”張れ”ばよいではないか。根拠ある言葉を喋ってもらえばそれで済むのだ―

 ―とえらいさんが主張しても,みんな追随できなかったという。



万暦帝「なんか旱魃とか起きてるんだって? 意見ヨロ」
外廷官員「立太子問題について申し上げたいんだが」
万暦帝「(怒)」
側近「待って待って陛下,激怒するのは尤もだけど懲罰は待って! 保留! ちょっと保留!」
万暦帝「…なんだこの財色酒気四箴てな。こんなもん出した者は厳罰だ!」
側近「待って陛下。それ町の噂話集だから。陛下がソレ真に受けて罰を下したりしたら,売名行為に加担することになりますよ?」

 そのうちひとびとは,親内閣派と親吏部派とで真っ二つに党派的論争をし始めたりする。

側近「…二派に分かれて喧嘩してたら,喧嘩すること自体が目的になってエネルギーの無駄ですね。陛下,ともあれ公正に話を聞いてから判断されるようお願いいたします。一応,言論の自由はおkの方向で」
万暦帝「で,その論争の言葉の真偽はどーやって確かめろと」
側近「えーまあ,確実な事実を挙げ,年月の時系列もしっかりした文章を信じるとか」
批判者「顕官の婿が科挙に合格してるのは汚職!」
その当人「俺の娘は死んでて,そいつもう新しい嫁貰ってるんだけど」

 時系列無視して面白可笑しく事情をまとめればこんなかんじか。

 東洋文庫の『東洋学報』をはじめとする学術図書は「平成23年度発行分」(今年か)よりすべて寄贈本のみの発行になるという(汲古書院営業部による連絡)。この92巻4号を最後に,販売は停止―ということだ。よく今まで販売の形式を維持してきたものだ,その点すなおに賞賛する。
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