●路木ダム裁判とは
路木ダム裁判原告団代表 植村振作
路木ダム裁判とは
当初砂防ダム計画でした
路木ダムは、熊本県天草市河浦町にある、魚類の生息場や産卵場となるアマモ場が広がる
羊角湾奥に流れ込む、長さ約 6km の路木川の中流に、熊本県が建設中の総工費当初予算 90
億円の多目的ダムです。
当初 1979(昭和 54)年に砂防ダムとして計画されていました。しかし、その後 1992(平
成 4)年に、下流宅地の家屋浸水被害の防止と、天草市牛深地区及び河浦地区の水資源開発
を目的として事業が開始され、2010 年(平成 22 年)6 月に本体工事に着工、現在、ダム本
体は殆ど完成しています。2014 年 3 月竣工予定です。
洪水氾濫防止目的ですが 洪水氾濫防止目的ですが
路木ダムの治水上の建設目的は、「昭和 57 年集中豪雨」による路木地区の約 100 棟床上浸
水被害を踏まえて、将来発生するかもしれない下流宅地の家屋浸水被害を防止すること(路
木川河川整備計画)ですが、そもそも「昭和 57 年集中豪雨」による路木川の氾濫による家
屋浸水被害はありませんでした。
将来堤防が壊れて集落に氾濫流が流れ込む恐れがあるとされる堤防は、堅固な山付道路兼
用堤防です。将来、堤防が壊れて、洪水氾濫が生ずる恐れもありません。
虚偽事実が書かれた「路木川河川整備計画 路木川河川整備計画 路木川河川整備計画」
100棟の床上浸水被害があったと書いたウソの「路木川河川整備計画」に基づいて進め
られれている路木ダム事業に公金を支出したことは、「地方財政法」違反であるとして、2009(平
成 21)年 5 月に私たちは住民監査請求しましたが、棄却されました。
そこで、2009(平成 21)年 8 月、違法な公金の支出により熊本県に損害を生じさせた熊本県知事に既支出金の返還と
路木ダム事業への支出差し止めを求めて住民訴訟「県営路木ダム事業に係る公金支出差止等
請求事件」(熊本地方裁判所民事第 3 部)を提起しました。
当初、代理人なし即ち本人訴訟で
したが、途中から3人の弁護士(市川守弘(札幌弁護士会)、加藤修(熊本弁護士会)、小林
法子(同))に加わっていただいて、裁判を進めています。
主な争点
主な争点は①治水上の必要性、②治水に関する費用対便益の算定及び③利水の必要性です。
・治水上の必要性について:被告は、将来堤防が壊れて路木川の洪水氾濫源となると主張し
ていますが、熊本県が壊れるという堤防は、堅固な山付道路兼用堤防です。“このようなと
ころが破堤して氾濫することなどあり得ない”と元京都大学防災研究所長・京大名誉教授今
本博健さんも言っているように、将来破堤して洪水氾濫が起こる恐れなど全く無い堤防です。
治水上の建設根拠は全くありません。
・費用対便益について:熊本県が費用対効果の算定の基礎とした、浸水被害が発生するとさ
れた地域の家屋地盤高は実際の地盤高より低く見積もられています。その結果、床上浸水家
屋数が多くなっており、費用対効果の客観性がありません。しかもその値はかろうじて 1.0
を越えた 1.08 です。そもそも氾濫しないのですが、仮に、熊本県の主張どおりに氾濫する
として、原告が実測した地盤高を基に費用対効果を求めると 1.0 を遙かに下回ります。路木
ダム事業は費用対効果の面からも公共事業として不適切です。
・利水上の必要性:天草市が行った牛深地区の将来の給水人口推計には全く科学的根拠があ
りません。天草市は、人口予測法の一つである“コーホート要因法”で推計したと熊本県や
厚労省へ報告していますが、コーホート要因法では推計してはいません。データを捏造した
虚偽の報告です。さらに天草市は、渇水期でもダムから放流しなければならないとされてい
る「維持流量」を勝手に 4 倍も水増しして計算し、既存ダムだけでは水が足りないといって
います。正しく計算すると、既存水源で将来の必要量を賄えます。
・・・ |