9月中旬の日曜日、知立市「知立神社」の境内社『秋葉社』で行われる「秋葉社祭・奉納手筒花火」。いよいよ本番です。暮れ始めた境内に、玉箱を担いだ若衆たちが順に宮入りしてきました。山町・山屋敷町・中新町・本町・西町・宝町、どの町が最初だったか・・・今となっては記憶もあやふや(^^;)
どれだけの時間を練り歩いたのか・・・声はかすれ、足の筋肉は痛々しいほど張り詰めています。粋でイナセで、見栄と意地で、次々と前を行く者に負けずと宮入する若衆たちは、本当に!!男前!
宮入を済ませた若い衆は、手筒花火の両側に付けられた縄の握り手をつかんで円陣をつくります。火種を持った人たちが一斉に点火すると、見る間に炎が吹き出し火柱が立ち上がりました。
真っ赤な火柱は若衆たちの頭上高く天に駆け上り、輝くばかりの火の粉となって降り注ぎます。
全身に火の粉を浴びながら気勢を上げる若衆たちの姿は、まるで火の神の申し子。火の神は火伏せの神に昇華し、人々を火難から守るものとして長く崇敬されてきました。日本伝統の美しさを誇る手筒花火と若衆たちの心意気、火の神への供物にこれ以上のものがあるでしょうか。
若衆たちの奉納が終わると、鳥居の前に固定された大型の手筒花火3本に点火。その炎は高く吹き上がり、神域の寄り代である鳥居さえ焦がさんばかりの勢いで、紅蓮の絵模様を次々と描き出してゆくのです。
手筒花火に続いて乱玉花火、初秋の夜空を焦がす花火の音、火薬の匂い、人々の熱気・・熱く降り注ぐ火の粉の赤。
一つの町衆の心意気が終わり、次の町衆へ、また次の町衆へ・・火の神への奉納は引き継がれます。
およそ二時間に渡って繰り広げられる秋葉社祭の奉納手筒花火、私たちは言葉も無く見入ります。火の粉をかぶる若衆、それを見守る同じ町の先輩たちは、その勇壮な姿をカメラに捉えます。腰をかがめて炎に顔を染めながらシャッターを押すあの法被姿の方は、もしかしたらあの中の誰かの親御さんなのかもしれない・・・ふっと、そんな事を思いながら。そうして私たちは炎の乱舞の最期の瞬間まで見届けて・・名残を惜しみながら境内を後にしました。
撮影日:2011年9月18日