愛知県知立市八橋町に境内を構える臨済宗妙心寺派寺院「八橋山(やつはしさん)無量寿寺(むりょうじゅじ)」。『聖観音(しょうかんのん)』を本尊とする、三河新四国八十八ヶ所霊場第四番札所。
寺伝によれば「慶雲元年(704)に 慶雲寺として創建。 弘仁12年(822)に 密円が現在地に移転させ、真言宗の無量寿寺として整備したとされる。 文化9年(1812)に八橋売茶翁(方巌売茶翁(ほうがん ばいさおう))により再建が行われ、同時に杜若庭園も完成。 大正2年(1913)に 本堂を焼失するも 大正6年に再興。」
知立市指定文化財「杜若姫供養塔」は、小野篁の娘『杜若姫』の為に建立された物と伝えられています。恋しい『在原業平』を追ってはるばる都より訪ね来た『杜若姫』。けれど重なる行き違いに願いは叶わず、悲嘆のあまり自らの命を絶ってしまった『杜若姫』。今は愛しい人の側に寄り添っておいででしょうか。
そんな悲しい姫の心を慰める為なのか・・・伸びやかな緑の一塊は「ひともとすすき」。このすすきの葉を片手で結ぶと願い事が叶うとされ「縁結びのすすき」とも言われています。
供養塔と並んで建立されている「祖風翁之墓」と刻まれた円筒形の碑。説明には「祖風翁の句碑」とあり、遺章【 かきつばた 夏もむかしの なつならず 】 祖風没後二年の文化八年(1811)に門人らによって経巻形式で建てられた旨が記されています。
知立市指定文化財「亀甲碑(八橋古碑)」は 『荻生徂徠(おぎゅうそらい)』の弟子が在原業平の逸話を書き付けたもの。ちなみに書き付けられた碑文をその場で一息に読むと・・・亀が動くという伝説があります。
ご亭主殿が気張って挑戦しましたが・・・亀はピクリとも動きませんでした(笑)
知立市指定文化財「芭蕉連句碑」。安永6年(1777)に『松尾芭蕉』が立ち寄った際に詠んだ句を『下郷学海』が建立。【 かきつばた 我に発句の おもひあり 】
「業平の井 業平公御茶の水を御くみの井戸」、業平さんがお茶を飲むのに水を汲んだとされる井戸。
業平が八幡のこの辺りに来たとき、金魚の尾に似た椿の葉を見つけ「万葉椿」とよんだとか。その後、村人たちはこの花を「業平万葉椿」と呼ぶようになったと伝えられる樹齢500年以上の「業平椿」。
文政年間に紀州大納言から贈られた「辻灯篭」。右の台石は、この上に茶道具を乗せ青空の下で煎茶を楽しんだと伝える「玉川卓」
『鶴田卓池』句碑。【 鳩の啼 樹ははるかなり 杜若 】
江戸時代末期に『方巌売茶』が整備したという「杜若庭園」。心地池に影を落とすのは枯れ色のススキだけ。生憎と9月・12月の参拝ではカキツバタの美しい姿を愛でる事は叶いません。
「無量寿寺」の向って左手に、『大山昨命』を御祭神とする「日吉山王社」が鎮座されます。
寺伝によれば「無量寺の創建に際し、山門鎮護の神として慶雲元年(704)に日吉山王宮より勧請したと伝えられる。」
拝殿前より神域を守護されるのは、岡崎型狛犬さん一対。背伸びして親狛の手をつかもうとする仔狛の仕草はとりあえず可愛い (^▽^)
拝殿右手の境内社
阿吽ともに表情がユニークな留め蓋瓦の獅子一対。
約13,000㎡、16の池(5,000㎡)に約3万本のカキツバタが植えられている「八橋かきつばた園」。毎年、かきつばたが咲きそろう五月には「史跡八橋かきつばたまつり」が開催されます。かって八橋のこの一帯は、伊勢物語の昔から知られる、かきつばたの名勝地だったとか・・平安歌人『在原業平』が、句頭に「か・き・つ・ば・た」の五文字をいれて詠んだ句は今も有名ですね。
【 からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ 】
参拝日:2011年9月18日&2015年12月