林外相の「中国はロシアを批判しない」という発言に、日本の政治家も結局は戦争に巻き込まれるだけの政治センスしかもたないのか、と今さらながらがっかりした。
たとえロシアのウクライナ侵攻が収束したとしても、新たな冷戦時代が始まることは目に見えている。そんな中で日本は欧米と肩を並べてロシアと袂を分かつことが果たして賢明なのか。今の流れでは、かつての冷戦時代より、日ロ関係は悪化し、一歩間違えば冷戦時代以上に北海道を危険な状態にさらす緊張状態になるのではなかろうか。
ロシアのウクライナ侵攻は、覇権主義を正義とはき違えているロシアの蛮行と言わざるを得ない。問題はそんなロシアにかつての西側諸国が、理を持ってロシアの説得にあたるのではなく、制裁を持ってロシアに圧をかけるという、一歩間違えばロシアの覇権主義をさらに煽り、さらに緊張した状況を生むということだ。
中国や北朝鮮がロシアを批判しないのは、それぞれの国家間の関係を考えれば、当然のことで、今さら批判することでもないし、むしろそんな相手にヒステリックに批判する方が、よほど危険だ。
冷戦時代、日本がソ連の侵略に備え北海道の防衛強化をことさら進めた時代を知る世代にとって、林外相の子供じみた発言は相当にやばい。旧ソ連の崩壊によって、北方の守備は緩和し、北方領土復帰も一歩前進したが、日本がこのまま欧米追従のスタンスを続ければ、再び冷戦時代に逆戻りするのは目に見えている。
そんな緊張の時代をくりかえさないためには、制裁より説得だろう。批判より対話だろう。どうして、それができないのか。アメリカがそれをできないのはアメリカもロシアと同じで覇権思想を持ち続けているからだ。ならば、日本が積極的に平和にむけた説得にあたるべきではないのか。
国際社会でロシアをより孤立化させることが、どれだけ危険なことか、日本の政治家はもっと真剣に考えなければならない。欧米の制裁行動に追従するだけなら、誰でもできる。
絶対に戦火を広げてはだめだ。日本にとってロシアは海を挟みはすれど最も近い隣国なのだ。制裁主義を捨て、全力で対話と説得に当たるのが平和主義を掲げる隣国の役目めではないのか。