久しぶりに本を一気読みさせられた。古内一絵の「百年の子」だ。
待望の出版社に就職した主人公の女性は、女性誌の編集部に配属され、編集者として充実した日々を送っていたが、ある日、出版社の礎である学年誌の創刊百年記念事業チームに出向させられる。最初は望まない部署への出向に悩むが、やがて大戦を経た学年誌の数奇な運命に心を奪われ、戦時下の臨時職員名簿の中に育ての親ともいえる祖母の名前を見つけたところから、学年誌の歴史にのめりこんでいく。
物語の最後は百年記念展を成功させ、学年誌への異動を決意するいうストーリーだが、出版社と出会った祖母の少女時代の物語、戦後の漫画や児童文学など学年誌出版をめぐるカルチャーの狭間で格闘する文芸志望だった若き編集者の物語、そして主人公の現在との三部構成が、最後に一本のドラマにつながる展開は見事としか言いようがない。
古内一絵を知ったのは、地方競馬の女性騎手と一頭の競走馬の出会いと活躍を描いた「風の向こうに駆け抜けろ 蒼のファンファーレ」だが、図書館で何気なく手に取った「百年の子」も表紙だけ見てロクに中身も見ずに競馬ものかもと勝手に思い込んで、いざ読んだら、競馬どころか馬など一頭も出てこない、編集ガールの物語だった。それでも、読み始めるともうとまらないとまらい。結局1日で読んでしまった。
違う作品も読んでみたくなった、インパクトある一冊だった。
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