tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

10万年前、10万年後

2016年09月10日 21時01分54秒 | 科学技術
10万年前、10万年後
 皆様ご存知のように、このところ10万年後という話が良く出ます。
 10万円なら、お財布に入っている人もいるでしょうが、10万年後という事になると、誰にも想像がつかないでしょう。

 10万年後というのは、今日の原発から出た放射性廃棄物が核分裂の連鎖を終えて、放射線を出さなくなる、つまり無害になるまでの期間という事になっています。

 その間の人類の安全を考えて、フィンランドでは地下の花崗岩層を穿ち地上に影響の出ない貯蔵施設(オンカロ)を作り、10万年たつまで我々の子孫が間違って掘り起こしたりしないようしようというプロジェクトが始まっており、それをテーマにした映画『100,000年後の安全』が「10万年」という言葉を有名にしました。

 10万年後、我々の子孫であるホモサピエンスがどんな生活をしているか、誰にもわかりません。解っているのは、その時なれば、今、我々が作り出している放射性廃棄物が無害になるだろうという事だけです。

 丈夫な穴に埋めることで、出来る範囲で一生懸命責任を取ろうとしているという事でしょうが、考えてみれば、そんな中途半端な形で核分裂を使ってエネルギーを得ようとしている現代人とそのエネルギー文明がいかに無謀で無責任だったかという事を証明しているともいえるでしょう。

 100年先までぐらいなら、それなりの責任範囲と言えるかもしれませんが、想像もつかない10万年先までというのです。いずれにしても長すぎます。

 逆に過去を見てみれば、10万年前、我々の先祖のホモサピエンスは何をしていたのでしょうか。十数万年前にアフリカで発生し、10万年前ぐらい前なら、その一部がアフリカを出て世界に広がり始めた頃でしょう。

 採集生活で、一部は火を使っていたようです。彼らも10万年後の我々の生活など考えたこともなかったでしょうし、同様に、今の我々が10万年後を想像せよと言われても、文明の加速化の中で、そんな先のことは解る筈もありません。

 オンカロには「掘り起こさないでください」と書いてあるからと言って、10万年後の子孫が「はいはい」と遺言を守っているか、「我々の先祖はそんなことをやって、困っていたのか」と笑うか、はたまた核戦争で滅亡しているか、スーパー人類が生まれて、ホモピエンスは、かつてのネアンデルタール人のように消滅の危機にあるのか、・・・・。
 考えてみれば、今、我々は随分変なことをやっているのではないか思ったりするのですが、放射性廃棄物が無害化する時間が10万年と長すぎるだけに、人間の知恵と寿命の儚さが浮き彫りになるようです。

 矢張り先の見えるぐらいの時間的スパンの中で、エネルギー問題も納めておいた方が、身の程を弁えた行動というという事なのではないでしょうか。

蓄電技術とスマート送電網

2016年07月10日 14時08分40秒 | 科学技術
蓄電技術とスマート送電網
 4月から電力の小売り自由化になって、我が家にも「いかがですか」といった売込みがあちこちから来ました。

 我が家は3年ほど前に エネファームを入れたので、電力料金はそれまでのほぼ3分の1になり、新制度で節約になっても知れたものだろうと思って生返事をしていましたが、エネファームを入れた東京ガスから「計算してみましょうか」という話があったので、お「願いします」といったところ、すぐに返事が来て、「今の電力使用量では、初期コストもあり、結果的にお得にはなりません」とのことでした。 
 エネファームを入れたとき一緒にソーラーパネルもと考えてのですが、屋根の形がうまく合わず、規定の発電量に達しないようなので、ということでやめていました。

 あの時つけていれば、当然発電量が余ることが多く、電力会社に買取を依頼ということになったのでしょうから、送配電網が対応しきれないなどと言われる現状では、設置しなくてよかったのかななどと思っています。

 再生可能エネルギー普及のネックの1つは送配電網の高度化(スマートグリッド化)、もう1つは蓄電池の高性能化でしょう。蓄電池については高価格というネックもあります。
 しかし、こうしたネックというのは克服するためにあるようなもので、本当に必要であれば、近い将来、順次克服されていくでしょう。

 最近は、蓄電というより、蓄エネルギーでしょう。揚水発電でも位置のエネルギーに変えて貯蔵しているわけですし、多くの電池の原理は化学変化の中に貯蔵することでしょう。最近注目される水素にして貯蔵するというのは、自己放電や劣化のようなロスも小さく、大変有望のようです。

 こうした技術開発の結果、電力でも地産地消型の方式も可能になるのでしょうが、最終的に重要なのは、誰かが、高品質の電力を切れ目なく安定供給するという責任を負わなければならないということです。

 かつて、イザヤベンダさんは「日本人は水と安全はタダと思っていた」と言いました。これからの社会では電力がまさに「湯水のように」使えなければ(タダとは言いませんが)成り立たないでしょう。

 今、電力の世界は大小、新旧の電力会社、配送電網(企業)、さらには益々多様化する蓄エネルギー技術が三つ巴、四つ巴の新たな競争の時代を迎えるようです。
 世界に先駆けて、どんな良いシステムができるか、日本の実力の発揮を楽しみにしていいのではないでしょうか。

電気の貯蔵技術を国家戦略に

2016年05月01日 09時52分22秒 | 科学技術
電気の貯蔵技術を国家戦略に
 今日から5月、浅緑から深緑、様々な緑に囲まれる時期です。 太陽エネルギーと葉緑素、生命を作り出す源の躍動、日本経済のエネルギーもあやかりたいところです。

 一国の産業活動の状況を一致指標で見たいと思ったら、電力の使用量が最も適切な指標と言われます。この場合、使用量といっても、通常は発電量を使っているのが現状ではないでしょうか。

 発電量と使用量が同じというのは、電気が貯蔵できないからです。電力会社は、常に電力使用量と同じだけ発電しなければなりません。まさに電気は、ジャスト・イン・タイムの典型でしょう。

 ですから電力会社は、最大使用量を予測して、最大使用量を供給できる生産設備を整えなければなりません。しかし最大使用量を記録することは滅多になくて、設備の稼働率はだいたい70~90パーセントです。

 ところで、もし電気が貯蔵できるのであれば、発電設備は平均使用量の相当する分だけでよいことになって、余った分は貯蔵しておいて、足りないときに使えばいいわけです。
 貯蔵できるものの典型はおカネで、おカネが出来て人間の生活は大変便利になり、さらに銀行のようなおカネの貯蔵機関が出来て、一層便利になりました。

 ならば、もし、電気の貯蔵が可能になれば、人間生活は随分便利になるでしょう。ということで、人間は電気の貯蔵を考えてきました。
 最初は揚水発電あたりで、電気エネルギーを位置のエネルギに変えて貯めておくといった単純なものでしたが、化学反応を利用して電気を貯蔵する性能の良い蓄電池が出来て、多様性が増しました。

 プラグインハイブリッドカーや電気自動車のバッテリーと家庭の電源をつなぐことも現実になっています。さらには、家庭用蓄電池も製品化され、ソーラー発電の電気を家単位で貯蔵して、電力会社から電気を買うのは非常時だけといった「スマートハウス」もあります。

 産業界用には、さらに大規模の蓄電設備が開発されていますし、燃料電池の登場で、電気を水素にして貯蔵するといったことも現実になっています。
 さらに進めれば、超電導利用で、究極の蓄電も研究されています。

 問題は蓄電のコストです。これが壁になって、現在の電力会社方式の電力供給が最も安いということになっているわけです。これも原発の後始末を考えれば、本当に安いかわからない、とも言われますが、差しあたっては安いのです。

 電気の需要はこれからもますます増えるでしょう。そして資源問題、環境問題も深刻化するでしょう。 そう考えると矢張りこれからの出番は電気の貯蔵を可能にする「蓄電」技術の進歩がますます大事ということになりそうです。

 この問題と今の日本経済の停滞状態を考え合わせますと、目標が決まれば必ず頑張る日本人です。「ペイする蓄電技術の開発」を国家目標に掲げて、突っ走るというのはどうでしょうか。

 考えてみれば、人類の活用できるエネルギーは、大部分が太陽が無償で提供してくれる太陽光、太陽熱が源泉です。石炭も石油も、川の流れも風も波も、太陽エネルギーが作り出したものです。
 この太陽の恩恵を、もっと巧く使いこなせるように人間の知恵を絞ることで、人類の生活も環境も、もっと便利で快適なものになるのではないでしょうか。

 人間がその知恵で自然に働きかけ、自然をより有効に活用できるように考え、より快適な生活環境を作るという思想は「 里山」と同じです。これは日本人が最も得意とするところではないでしょうか。

CO2の資源化が可能になれば・・・

2015年12月04日 09時42分44秒 | 科学技術
CO2の資源化が可能になれば・・・
 化学については全くの素人ですが、人間の知恵は果てしがないので、こんなことも可能にならないかと考えています。

 前回のこのブログのテーマのCOP21もそうですが、今、人類の大きな問題の1つはCO2です。CO2は炭素を燃やした(酸化した)結果できるわけで、人類はエネルギーを得るために炭素を燃やしますから、人類がエネルギーを使えば使うほどCO2は増えます。

 酸素は人間が生きるためにも必要で、人間も酸素を吸い込んで炭酸ガス(CO2)を吐き出して生きています。酸化の際発生するエネルギーで生きているのでしょう。
 あらゆるものは急激に酸化(燃焼)あるいはゆっくり酸化するのでしょう。鉄がさびるのも酸化、食べ物が腐るのも酸化、人間の老化も酸化によるのでしょうか。ポリフェノールは抗酸化作用があるから、老化防止に良いといわれます。

 酸化したものは役に立たなくなって、その再生には新たにエネルギーが要ります(製鉄など)。ただ有難いことに、地球上では葉緑素がCO2を還元して酸素を作ってくれているので人類は生きているということでしょう。

 人間は”みどり”を見ると心が休まるようですが、これは動物が植物(葉緑素)によって呼吸ができる(酸素が得られる)という海馬の記憶があるからではないかと以前書きました。

 人の手で炭酸ガス(CO2)を還元して、元の炭素と酸素にできれば温暖化問題もなくなるのかもしれませんが、同じような意味で、化石燃料の代わりに炭酸ガスをプラスチックの原材料にできればこれは温暖化防止に大変役立つことだと思っていましたら、すでに、炭酸ガスを使ってポリカーボネートを作る技術が日本にはあるのです。

 これは旭化成の技術で、すでに工場も稼働しているといいます。素人目に考えても、その工程ではもちろん新たなエネルギーも必要でしょうし、適切な触媒などが必要なのでしょう。
 しかしこの技術が多様な形や方向に進歩していけば、発電所や工場で発生するCO2は積極的に回収され、資源として活用が可能になるのです。

 こうした技術開発の可能性というのはどんなもの、どの程度のものなのか、専門家の考えや長期展望を、チャンスがあればいろいろ聞いてみたいと思う方も多いのではないでしょうか。

MRJ離陸

2015年11月12日 09時51分36秒 | 科学技術
MRJ離陸
 2015年11月11日、三菱のMRJが文字通り離陸しました。
 航空機事業については戦後の強いられた空白、そして戦後の航空業界にとって記念碑的な1962年のYS11の誕生、性能はよかったが営業でつまずき1971年に生産打ち切り、それから44年、日本のメーカーは海外航空機会社の下請けが中心でした。

 そしてようやく国産ジェット旅客機が文字通り離陸したのです。おそらくこの離陸は、日本の航空機業界が世界のマーケットに向けての本格的離陸ということになるのではないでしょうか。
 YS11の時は、ベースは戦争中に培った軍用機の生産技術だったといわれます。性能はいいが乗り心地や保守作業対応などには問題があるなどと言われたようです。しかしそれからの期間、日本のものづくり技術は格段に洗練されました。

 世界に通用する、国際水準を凌駕する製品が目白押しです。中でも燃費、居住性、操縦性などでは日本の自動車技術は世界に先行していますし、飛行機並みのスピードを誇る高速鉄道も日本のお家芸です。

 離陸したMRJにはそうした発展の中で洗練された高度な技術が徹底的に組み込まれているようです。国際水準を2割がた上回る燃費性能、軽量・スマートで座り心地のよい座席、広めの居住空間、操縦性能は今後ますます磨きがかかるでしょう。

 この4月に ホンダジェットが本拠地のアメリカから飛来しとことはこのブログでも取り上げましたが、その際も触れましたように、日本の航空機製造技術は着実に進化していたようです。新明和の飛行艇は3メートルの荒波でも着水できるという高性能を誇ります。

 そして今回は、いよいよ世界に注目される中型旅客機MRJの登場です。
 この分野は、航空機業界ではある意味ではニッチで、ボーイングやエアバスはやっていません。性能さえ良ければ、マーケットは巨大だという意見は以前から聞かれました。

 とはいえ、もちろん競争は激しいでしょう。しかし、戦後、カメラからオートバイ、家電製品から自動車まで世界市場を席巻してきた日本のものづくりの伝統があります。
 日本人の得意技であるこの、きめの細かいものづくりの技術、ノーハウに磨きをかけることが、これからの日本産業のもう一段の発展の支柱でしょう。

 その象徴として、の今回のMRJの離陸を祝福したいと思います。

要注目! 新エネルギー開発の多様な進展

2015年09月03日 10時17分38秒 | 科学技術
要注目! 新エネルギー開発の多様な進展
 最近の新エネルギー開発では、いろいろと面白い研究があるようです。
 ソーラーパネル、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーは試行の段階から、次第に普遍化の段階に移行しつつあるようですが、ソーラー発電でも画期的な新技術が生まれて来ているようです。

 現状では太陽光発電の利用効率はせいぜい20パーセントといわれますが、それを理論的には80パーセント台、実効でも60パーセントぐらいまで上げることが出来そうな研究が進んでいるという報道がありました。

 受け入れた光をガラス板の中で横に流し、波長の短い光から順に電気エネルギーに変換していくことで、紫外線から可視光線、赤外線、遠赤外線と順次電気に変換して、太陽光線を余すところなく活用するということのようです。

 人間は元々、太陽が無償で贈与してくれる 太陽エネルギーの恩恵で生きていられるわけですから、自分でエネルギーを作ろう(原子力)などと思い上がらず、謙虚に太陽の恩恵を出来るだけ巧く活用することを考えた方が自然でしょう。

 藻にバイオ燃料を作ってもらおうという研究も佳境に入っているようです。ミドリムシは食料から燃料まで既に企業化されていますが、OOコッカスといった藻に出来るだけ効率よく炭化水素を作ってもらうという研究では、藻の性能が勝負のようです。
 これも、藻が太陽光線を使って炭化水素を作ってくれるわけです。

 さらにタングステン系の触媒を使って、鉄イオンの水溶液に太陽光線を当てると、水の電気分解で水素が出来るという方法で、安価に水素を作る研究も進んでいるようです。近い将来、化石燃料から作る水素と価格競争できるように研究を進めているこのことです。

 エネルギーではありませんが、ある大手化学会社はCO2を原料にしてプラスチックを作っていますし、最近、藍藻を使いCO2と太陽光を原料にしてアミノ酸も作れるようです。

 人間そのものも自然の産物ですが、その人間が、自然の働きに人間の知恵をつぎ込んで、自然の活動をより豊かに活用することが出来るまでに人間の知恵が進んできたことは素晴らしいことではないでしょうか。

 そういえば、日本には、人間が自然に働き掛けて、より豊かな自然を作る「里山」のような経験があります。何か共通点がありそうですね。

猛暑と電力ピークカット

2015年08月08日 13時51分20秒 | 科学技術
猛暑と電力ピークカット
 東京でも猛暑日が8日も続くとは、想像も出来ませんでした。
 年齢もこれあり、適切な水分補給と冷房使用は大切と、TVからのアドバイスをしっかり守って、何とか無事過ごせていますが、これでは電力が大変と思っていたところ、思わざる有難いニュースがありました。

 この暑さでも、今年は電力需要のピークでも結構余裕があった、という報道です。すでに甲子園の高校野球が始まりました。夏の電力需要のピークは、冷房をつけて、テレビで甲子園の高校野球観戦の時間帯というのが定説になっていましたが、ちょっとビックリです

 理由は、太陽光発電の普及ということだそうです。ついでに言えば、テレビの画面は大型化しても、消費電力はどんどん少なくなる技術開発も応援しているのでしょう。

 かつては、再生可能エネルギーなど、いくら増えても全体の2パーセントどまりなどという作られた説もありましたが、技術の進歩と、社会の意識・知識の進歩で、状況は次第に変わって来ているようです。

 好天で日差しが強く、熱い、熱いという時ほど、太陽光発電は順調に発電量を増やしてくれているようです。まさに前述のピークカットのために最適の設備ということのようです。

 高架の中央線電車の北側の窓から沿線の屋根を見ても、増えたとはいえ、まだまだソーラーパネルはそんなに多くありません。しかしこれからも着実に増えるでしょう、いわゆるスマートハウスでは、蓄電池併用も珍しくなくなるようです。これからも、電力供給の世界は、益々変化していくのではないでしょうか。

 今回のニュースは、何か新しい展開の第一便を届けてくれたような気がします。

平和な地球のためのエネルギー問題

2015年07月08日 14時56分13秒 | 科学技術
平和な地球のためのエネルギー問題
 九州電力の川内原発の燃料棒の装填が始まりました。化石燃料や原発は人類のエネルギー確保の過渡的な手段と考え、最終的には自然エネルギー(再生可能エネルギ―)で人類社会が回るように技術開発を急ぐというのが基本的なエネルギー政策の方向でしょう。

 必要なのは、客観的、合理的な判断に立って、出来るだけ早く自然エネルギーを効率的に活用する技術を開発することではないでしょうか。
 幸いなことに、日本は世界でもその先端に立っている国の一つです。そして現状は長期の不況を脱し、技術開発にも多くの原資を振り向けられる状況になって来ています。

 紛争の絶えない地球上の人類社会ですが、大多数の人間は、紛争の無い平和な社会を望んでいます。しかし、これまでのエネルギー政策が続く限り、エネルギー確保が紛争の種になる事は目に見えています。

 地球上、我々の活用できるエネルギーはすべて、太陽から無償で与えられているもので、今の人類は、そのごく一部を利用しているにすぎません。人類がその能力を適切に発揮して、太陽が与えてくれるエネルギーを、現実に活用可能なエネルギーに効率よく変換することが出来れば、エネルギー争奪に関わる紛争は雲散霧消でしょう。

 かつて人類は、版図拡大が豊かになるための必須条件と考え、国土の拡張、植民地獲得に走りました。しかし第二次大戦後、敗戦で狭い国土に押し込められたはずの日本やドイツ(西ドイツ)などが、国土や資源に関わらず、驚異的な経済発展を遂げたことが、人類の意識を変えたようです。

 多様な技術開発によって生産性を上げ、多くの付加価値を創り出せば、人類は豊かで快適な社会を実現できることが実証されたのです。

 こうして、国土(領土)面積は大きな関心ではなくなりましたが、残念ながら、資源問題、特にエネルギー問題については旧態依然の意識が残っているようです。エネルギー獲得競争に関わると思われる紛争が後を絶ちません。

 戦後、狭隘な国土で世界の経済大国にまで駆け上がる実績を上げた日本です、ここで、エネルギーについても、優れた技術革新で太陽エネルギー活用における生産性向上に先駆け、エネルギー確保が、国際紛争の種にならないような新しい視点での「平和追求国家」になれないものでしょうか。
時間も金もかかるでしょうが、トライする価値はありそうです。

ホンダジェット羽田に飛来

2015年04月24日 11時28分38秒 | 科学技術
ホンダジェット羽田に飛来
 また一つ日本のモノづくりの夢が形になったようです。
 昨4月23日、小さくてスマートで高性能なホンダジェットが本拠地のアメリカから羽田に飛来しました。

 飛行機の製造はホンダの創業者本田宗一郎氏の夢だったのだそうです。本田さんの初期の著作「俺の考え」には飛行機の事まで書いてあったかどうか忘れましたが、航空機の制作は日本のモノづくり産業の悲願でもあったように感じています。

 YS-11の製造が中止されてから、海外の主要航空機メーカーに主要部品を供給しながらも、完成品の無かった日本企業に(新明和あの飛行艇が一人気を吐いていました)、突如ホンダジェットという完成品が登場したのです。
 のびのびになっているMRJの完成も近いようです。いよいよ日本の飛行機が、世界の空をまさに雄飛する日が近くなったということでしょう。

 二輪車、自動車で築き上げた日本の乗り物の技術、これから飛行機でも世界に実証されていくでしょう。軽い、広い、燃費が良い、機能にマッチした素晴らしいデザイン、これからが楽しみです。

 昭和30年代の終わりだったでしょか、主要自動車メーカーの調査部の方に質問したことがありました。
「カメラでも、オートバイでも日本のメーカーは世界を席巻しつつあります。この次は自動車ではないでしょうか?」

 その方は、アメリカ、ヨーロッパの自動車文化の伝統を説いて、「自動車はそうはいかないでしょう」と謙遜しておられました。しかし、既に結果は出されています。
 次は飛行機とは言わないまでも、日本企業の作る飛行機の性能は客観的に見ても大変優れたものと言える様です。
 
 これからの日本の航空機産業には期して待つべきものがあるように感じています。

FCV(燃料電池車)第1号 MIRAI

2014年12月15日 15時41分57秒 | 科学技術
FCV(燃料電池車)第1号 MIRAI
 今日、トヨタ自動車からMIRAI(ミライ、未来)が発売になりました。
 世界初、日本の技術の誇りです。

 価格は720万円。国の補助金200万円を差し引いて、520万円で買える。カーキチの「キチ」をますますクレイジーにしそうです。
 燃料電池を使った発電機であるエネファームはLNGを改質して水素だけを使いますが、MIRAIは水素そのものをタンクに充填、満タンで600キロ以上も走るのだそうです。水素タンクに関わる高圧でも安全という技術は素材から構造まで大変なものだと言われます。水素の貯蔵や輸送が安全に行なえれば、今のエネルギーシステムは様変わりになるでしょう。

 2014年の12月15日は、将来、エネルギー革命、カー革命の記念日にになるかもしれないなどと思ってしまいます。

 ホンダもFCVの発表を控えているそうです。ホンダはFCVのエンジンを今のガソリンエンジンと同様な形でボンネットの中に収めることを考えていると言われます。そうすると、現在の市販車のエンジンを燃料電池に取り換えることも可能になるのでしょうか。

 マツダは、水素でロータリーエンジンを回すことを考えているという話も聞きました。

 もちろん海外の車メーカーも、燃料電池車の開発にはしのぎを削っているのでしょう。しかし、日本のモノづくりの力が一歩先を制したという所でしょう。

 選挙ではアベノミクスが争点でしたが、日本経済が本当に着実な成長の道を辿るかどうかは、こうした多様な科学技術の要素の融合を、日本企業が世界に先駆けて実現していくことに掛かっているのでしょう。

 MIRAIの発売は、いよいよ本格的に進みつつあるこうした日本人、日本企業の真剣な努力、日本経済の将来の発展の原動力の実像を、まさに象徴的に示しているように思われます。

「機能性」製品は日本に似合う

2014年12月05日 11時57分27秒 | 科学技術
「機能性」製品は日本に似合う
 最近いろいろなところで「機能性」という言葉に出会います。どんな機能性があるのかと中身を見ると面白かったり感心したり驚いたりして、大変楽しいものです。
 
 炊飯器や調理台などの食文化の世界では「高機能」という言葉も使われ、より美味しいものがより容易にできるようで有難いことです。

 高機能にはhigh gradeという英訳もあるようですが、「機能」といえばやはりfunctionalでしょう。高機能素材というのがいろいろ出ていますが、我々の日常生活で馴染みの深いのは繊維です。
 夏暑い時はクールに感じる素材、汗をかいてもすぐに乾く速乾性素材、寒くなれば、吸湿発熱繊維、蓄熱保温素材、遠赤外線放射素材などなど。
 そのほか、抗菌とか難燃とか、紫外線遮蔽、帯電防止、消臭などなど化繊、合繊の世界では本当に多様なものがどんどん出て来るようです。

 食料品の世界では、疾うに機能性食品は厚労省や消費者調の許可マークがついて広く出回っていますが、こうしたものの「機能性」も急速にレベルが上がっているのではないしょうか。
 先日新聞で、水耕栽培でカリウムの少ないレタスが出来て、透析をしている方々から喜ばれているという記事もありました。

 高機能の例はまだまだありますが、こうした芸術的までにキメの細かいものを作り上げるのは日本人の特性かもしれません。
 ドイツではビールは4つの原料(麦芽、ビール酵母、ホップ、水)からつくられたものでなければならないそうですし、フランスのワインは葡萄の種類が限られていて、甘みの強い(生食用に多い)ブドウで作ったものはfox flavor といって嫌われるそうですが、日本では、ビールは第1から第3まであり、ワインでは巨峰ワインもありますし、さらには、甘夏ワイン、ブルーベリーワインも人気です。

 こうしたことになるのも、日本人の中には「繊細な感覚」と「心の寛大さ」という一見相反するような要素が共存しているという特性があるのかもしれません。

 繊細な感覚は勤勉さを伴って、時にはバラパゴス化などと揶揄されますが、実はそれこそが機能性製品の開発花盛りの原動力ではないでしょうか。
 これから世界でも広く需要の増えるであろう機能性素材、機能性商品、高機能製品はまさに「日本に似合う」分野のように思われます。

核分裂と核融合

2014年08月24日 09時44分45秒 | 科学技術
核分裂と核融合
 専門外ですが、今回もエネルギーに関わる科学技術の問題を取り上げました。
 原発への対処は、恐らく今日の日本の最も困難な経済と科学技術の問題でしょう。今の原子力発電は核分裂という現象を利用しています。

 一口で言えば、ウランやプルトニウムを利用して(ウラン濃縮など)ウラン235などの核分裂物質(放射性同位元素)を作りその分裂時に出すエネルギーを利用して発電するというこ仕組みです。

 核分裂物質は原子核にある中性子を放出して崩壊していくわけですが、中性子は他の放射性元素に当たって核分裂を促すとともに、放出された中性子はE=mc² の公式にしたがってエネルギーとなり膨大な熱を出すという訳です。

 しかも核分裂物質は崩壊を続けながら超長期にわたり放射線を出し続けるため原子炉で使えないレベルになってもその放射能ゆえに人体には有害なので、放射性廃棄物の処分が大問題になるわけです。

 放射能が低レベルになっても放射線が出る限りエネルギー源として利用するといった技術はなく、最高の放射能力を持つ時だけ利用して、後はお払い箱ですから、核分裂物質としても、「もっと使い切ってくれ」と不満を言うのではないでしょうか。

 核分裂をエネルギー源として利用するなら、とことん使い切る技術開発が必要なようです。使用済み燃料棒を水で冷やしていますが、冷やすより、その熱で発電できるはずですが、ペイしないというのでしょうか。
 いずれにしても核分裂物質は超長期に亘り分裂を続けるのですから、それをエネルギー源にしようというのなら、最後まで面倒を見る心構え(技術開発)が必要なのでしょう。

 ところで、核融合の方は全く違います。基本的には、太陽は内部で4個の水素原子が融合してヘリウムの原子核になる核融合反応で、その時減る質量がエネルギーに変換され、あの膨大なエネルギーを出しているという原理を、地球上でやろうという試みです。

 技術的には大変難しいことのようですが、水素もヘリウムも大変安定した元素ですから、核分裂のような後腐れの心配はありません。

 素人目には、核分裂の後処理で、いくらかかるか解らないカネを使うより、核融合の技術開発にカネを使った方が前向きでいいと思うのですが、既に核廃棄物が出てしまっているので、矢張りそちらも何とかしなければならないわけです。
 それなのに、電力会社や政府はもっと核廃棄物を出そうとしているようで、経済的にも科学技術的にも何か勿体ない話になっているような気がします。

蓄電・発電の新しい試み

2014年08月23日 16時37分53秒 | 科学技術
蓄電・発電の新しい試み
 このところ、日本経済の先行きについては明暗が交錯しているようです。私自身は、円高の制約さえなくなれば、日本人の勤勉さとその努力によって、長期的に安定した発展が期待できると思っていますが、国際経済、国際情勢についての不安はなくなりません。

 残念ながら、現状では国際面で日本の出来ることは限られていますから、それはそれとして、日本としては真面目な努力を続ける以外の選択の余地はないと思いますが、そうした意味で、このところ、電力供給に関する大変意欲的なチャレンジが報道され、矢張り日本の取り組みは素晴らしいと感じているところです。

 その一つは、極めて安全な大容量蓄電装置の誕生です。
 これはレドックス・フロー電池というもので、報道によれば、40年ほども前にアメリカのNASAが基本原理を考え出したものだそうですが、住友電工と北海道電力が協力し、この度世界に先駆けて実用化の装置の起工式を行ったのだとのことです。

 特徴は、従来の多くの電池に共通な発火の危険性が全くないこと、装置も大きいが供給エネルギーの量も大きく(今回の装置は6万KwH)、しかも劣化がほとんどなく、セパレータなどのメンテナンスを行えば数十年たっても同じ性能を維持するということです。

 この量産体制を整えたのは、世界で住友電工だけで、今後、サイズの小型化、生産のコストダウンの可能性も高く、国際的な受注を期待できそうに思われます。
 ドイツで発明されたローリーエンジン実用化に成功したのは世界でマツダだけ、といったかつての話を髣髴させます。

 もう1つは、多様な再生エネルギーを組み合わせて使う「組み合わせ発電」の試みです。これは東芝と神戸製鋼所が開発した「風力」、「太陽熱」、「木材資源」の三者を組み合わせで安定した発電を可能にするシステムで、既に淡路島に設置し、来年3月まで実験運転を続けるというものです。

 晴れた日は太陽熱を使い、雨が降れば地元の木材利用のバイオマスボイラー、風力発電は電力会社への売電と蒸気発生の補助電源に活用、代替フロンを使ったバイナリー発電機で発電をするという仕組みだそうです。

 実験装置の規模は数十軒の家庭の電力をまかなう程度ですが、地域の特性をいかした電力の地産地消を目指した動きで、山間部などでの利用が期待されます。

 蓄電の重要性はつとに指摘されるところですが、地域に似合った、地産地消型の電力供給システムも、今後ますます必要になってくるでしょう。
 
 最近の国際紛争には背後にエネルギー問題がある場合の多いことは誰しも感じるところですが、こうしたエネルギーに関する開発は、その意味で、国際紛争の縮小に貢献するかもしれません。また組み合わせ発電技術の高度化、コストダウンの推進などは、途上国援助にも大きな役割を果すのではないでしょうか。技術開発の更なる進展に期待するところです。

電気自動車vs. 燃料電池車

2013年11月29日 08時11分44秒 | 科学技術
電気自動車vs. 燃料電池車
 最近の科学技術の世界は、私のような素人にも興味津々です。特に身近なものの代表ともいうべき自動車の世界では、毎日のように2つの分野の技術開発のニュースが私たちを驚かせてくれます。

 その1つは「運転の自動化」です。自動停止装置の進展が報道されていたかと思うと、今度は「高速道で自動運転の実験」などというニュースが飛び込んできます。
 GPSの精度の向上と、多様なセンサーの発達で、目的地をセットすれば、居眠りしていても、最も適切なルートを選択してそこまで運んでくれるという時代が来るのでしょうか。
 
 これは便利だという人もいますが、同時に、車というのは自分で運転するのが楽しいのだから、確かに便利かもしれないが、運転の楽しさはどうしてくれるんだ、といった意見もあるようです。

 もう1つは、自動車の動力源です。ガソリンエンジンの省エネ化で日本は世界のトップクラスの実績を上げてきましたが、更にブレーキの回生エネルギーを活用するハイブリッド方式が開発され、今や日本だけでなく内外の多くの車が採用するようになりました。私もレンタカーでトヨタのアクアに乗りましたが、返還時、スタンドで満タンにしたとき、その燃費の良さに驚嘆しました。

 さらに急速に実用化しつつあるのが電気自動車です。走行段階では全く排ガスを出さないクリーンさが売りですが、1回の充電での走行距離の短いことが課題のようです。この改善策は蓄電池の性能の高度化でしょう。
 蓄電池性能の高度化、コストの引き下げは、自動車のみならず、今世界で最も大きな問題である電力そのものの有効活用の問題です。

 従来の常識であった、電気は貯蔵の利かないも、生産と消費は同時でなければならないという問題を徐々に突き崩していくのが蓄電技術 の進歩でしょう。

 そこにもう1つの対抗技術開発が出てきました。それは燃料電池車です。水素貯蔵技術の進歩でガソリンタンクの代わりに水素タンクを積み、水素を充填して空気中の酸素と化合させ水(H?O)を作り、その時発生する電気でクルマを走らせるというのです。
 
 こちらは水素1回の充填で500キロは走るというのですから、航続距離は今のガソリン車の感覚です。但し現状、燃料電池の値段が大変高価で、どこまで下げられるかが勝負ということのようです。しかしメーカーは早期の市販を目指しているとのこと。

 燃料電池はすでに家庭用発電給湯器、エネファームで実用化されていますが、こちらは天然ガス(炭化水素)の水素を使い、炭素は炭酸ガス(CO?)にして捨てています。

 燃料電池は、水の電気分解を考えれば、電気を水素にして蓄える蓄電方式ともいえますから、電気自動車も、燃料電池車も最終的には電気に依存するわけです。

 ということで、行きつくところは電気エネルギーですが、電気エネルギーを効率よく蓄えられるようになると、発電の態様も大きく変わることになるはずで、矢張り当面する最大の技術開発の課題は蓄電技術ということになるのでしょうか。


日本型技術開発の強み

2013年06月14日 12時32分54秒 | 科学技術
日本型技術開発の強み
 製造業の海外移転が多い中で、トヨタ自動車の経営者の方が、「トヨタは、自動車のすべてを、国内で一貫して生産できる体制を維持する」と言っておられるという話を聞きました。

 それを聞いて思い出したのがソニーの昔話です。ソニーが東京通信工業といったころ、アメリカでW・ショックレーらによって開発されたトランジスタ(当時補聴器ぐらいにしか使えないだろうと言われていた)でラジオを作ろうと努力していたのですが、アメリカのリージェンシーという会社が、先に作って発売したそうです。

 しかし、結果的には、ソニーの開発力が圧倒的で、トランジスタラジオは、ソニーを世界的に有名にすることになりました。その理由は、リージェンシーはトランジスタをTI社から買っていたが、ソニーは自社で作っていたからと説明されています。
  
 最近のパソコンでも、アメリカの企業は世界中から安い部品を買ってきて、それで完成品を作り、安価で世界中に売っています。こうした方法はアメリカの得意技で、その原点はウインチェスター銃にあるのではないでしょうか。
 規格の決まった部品を集めて銃に組立てるという生産方法を開発したのはウインチェスター銃が元祖と言われています。

 日米どちらの方法もそれぞれ特徴を持ちます。一定の形が決まって、安く量産という場合にはアメリカ式がいいかもしれません。しかし、どんどん改良進歩が続き、製品が進化してくような場合には、日本式の方が優れているように思われます。

 自社、あるいは気心の通じたグループ企業で部品や材料まで製造している場合には、改良品、新製品の試作品などの場合は圧倒的に有利なのではないでしょうか。設計の段階から、部品や基礎材料の研究まで、十分な摺り合せが出来るからです。
 日本では、その結果いろいろな応用が出来過ぎて、「ガラパゴス化」などという現象が起きるのかもしれません。
 そう考えれば、ガラパゴス化は一種の強みと言うことも出来そうです。

 モノを作るのは人間です。新製品開発のような分野では、それに関わる人間のチームワークが決定的に重要でしょう。そこで物をいうのが、関わる人達の協力関係その底にある人間関係でしょう。
 世界のどこでも成し得なかったロータリーエンジンン実用化などはその好例でしょう。

 加えて言えば、欧米ではengineerとtechnicianは、通常、職制で明確に区別されます。日本では、境目が曖昧なままに、多くの場合一緒に仕事をします。これは大きな強みでしょう。本田宗一郎さんではありませんが、社長が現場で仕事をします。

 日本式のやり方にも欠点はあります。例えば、グループへの参入が困難などといいうのは一例でしょう。欠点是正は当然として、今後日本の進む道の中で、世界で出来ない技術開発、更にその製品化といった挑戦が益々大事になって来ますから、日本的なアプローチというのは、必ずや大きな強みになるのではないと思われます。
 皆さんと共に、技術立国、日本の明日を期待しましょう。