tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

縮小均衡経済からの脱出:その4

2010年02月17日 16時47分16秒 | 経済
縮小均衡経済からの脱出:その4
 この表題のもとでいろいろなことを書いてしまったので、ここで改めて、日本経済が縮小均衡に陥る悪循環の現状を簡単に整理しなおしてみたおと思います。

「稼いだGDPを使い残す(使い残し=貯蓄超過)経済」 → 「使い残した分、前年より経済活動の総額(規模)が小さくなる」 → 「雇用や収入が減少し将来不安からさらに貯蓄をする」 → 「経済活動の規模が一層縮小する」・・・・この繰り返しになっているようです。 しかも累積した貯蓄がほとんど所得を生まないゼロ金利ですし、リスク覚悟で運用すれば、大抵は損するばかりで、さらに生活を切り詰めざるを得なくなるようです。
 
 それだけではありません。前回書きましたように、「貯蓄超過=国際収支黒字」ですから、
 「万年黒字なので円高になりやすい」 → 「円高で企業はコスト削減に追われる」 → 「雇用・賃金に削減圧力がかかる」 → 「就職氷河期の再来」 → 「生活は一層防衛的になり貯蓄に励む」 → 「縮小均衡経済に拍車をかける」・・・・・この傾向も明らかに見えています。

 実は変動相場制の下、上記の2つの太字部分の悪循環が絡まりあっているというのが今の日本の悪性の不況の特徴でしょう。

 ところで、前回の「注」に見られますように、この貯蓄超過による経済の縮小を財政赤字で食い止めようとするのが「国債発行による赤字財政政策(いわゆるケインズ政策)」です。貯蓄超過ですから国債の発行は国民(銀行)が引き受け可能ですが、それでも貯蓄超過を使いきれません。

 失われた10年以来、国民も政府も、この財政出動に救いを求めてきたのですが、そうこうしているうちに、「国債残高が巨大になって」 → 「財政再建が言われ」 → 「財政赤字の縮小が必要」 → 「これは貯蓄超過を増やし、縮小均衡の促進・一層の不況深刻化」 となるようです。
 それでも借金だらけの国にとっては、財政再建は至上命令ですから、政府は何とか努力すべく必死で取り組むことになります。

 財政健全化には2つの方法があります。
・財政規模の縮小 : これをやると経済の縮小と不況に拍車をかけます(殆ど不可能)。
・増税路線 : 国債発行で国民から借金するのではなく、税金で国民から徴収する(かなり困難)。
 財政規模の縮小は日本経済をもっと不況にします。増税路線は、貯蓄超過を脱出する方法ですが、殆どの国民が大反対です。

 こうして、貯蓄超過の解消策、言い換えれば不況の脱出策はデッドロックに乗り上げています。
状況は八方塞がりのように見えます。さて日本は経済政策として何ができるのでしょうか。