tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

政府、日銀の物価に関する発言

2010年02月21日 23時22分40秒 | 経済
政府、日銀の物価に関する発言
 昨年12月に日銀が、消費者物価指数について「ゼロから2パーセントの間で、マイナスは許容しない 」という趣旨を表明していることに触れました。
 先日は、菅副総理から消費者物価指数は1パーセント程度の上昇が望ましい、と受け取れる発言が衆院予算委員会であったようです。

 マスコミによれば、菅副総理のこの発言はインフレターゲットを視野に入れたものということで、また、日銀の独立性は認める由も報道されていましたが、政府と日銀の関係どうこうは別として、言われていることはまさに「大差ない」もので、「何とかしてデフレを脱却したい、しかしインフレ率は最小限がいい」と言う切実な気持ちの表れといおうことでしょう。確かに誰でもそう思います。問題はそれをどう実現するかです。

 消費者物価指数というのは、為替レートと違って、要人が発言したからといって、全く動いてくれません。仰言られたご本人たちが、当面デフレはやむをえない、とお考えだからこそ、いわばこうした「夢」が発言になるという事なのでしょう。

  デフレ インフレ の要因については、このブログでも、戦後日本の具体的な経験について、それなりの分析をしてきましたが、一言でいってしまえば、デフレは日本の物価が国際価格に比べて高いから、それが国際価格に鞘寄せする過程で起こるのですし、一方、インフレは、輸入品の値上がりを原因とした輸入インフレか、国内コスト(主として賃金)の上昇によるホームメイド・インフレという形で起こる、というのが現実です。

 日本の消費者物価指数は1999年度から2005年度まで毎年マイナスでした。これはプラザ合意による円高(世界一の物価高)の調整過程でした。2006~8年度は0~1パーセント程の上昇に転じました。これは日本の物価水準がほぼ国際水準に鞘寄せ出来たからで、そのときの為替レートは$1=¥110~120でした(2005~7年、)。
 
 為替レートが消費者物価指数に影響するまでには半年から1年のタイムラグがあるという事でしょう。2008年から$1=¥90程度の円高になり、消費者物価指数は2009年から再び下げに転じました。

 これでは政府や日銀の「軽度なインフレ状態が望ましい」という願望は「夢のまた夢」という事になりそうです。

 こんな事になってしまうのも、何かあるとすぐに円高になるという「国際通貨の中で『円』の置かれた立場」、あるいは、国際経済の中で、「日本経済の置かれた立場」によるのではないでしょうか。

 結局こうした問題の根は、このブログで論じて来ている「経済力はますます低評価されているにも関わらず、常に円高の恐怖から抜けられない日本経済」という、「経済力低下と通貨価値上昇のパラドックス」にあるわけで、それを解かなければ解決はないのでしょう。
 引き続き何とかこの問題にアプローチしてみようと思います。