tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ECBのマイナス金利、マネー資本主義の欠陥露呈

2014年06月07日 11時04分56秒 | 経済

ECBのマイナス金利、マネー資本主義の欠陥露呈

 米、日、欧の金融政策を単純化してみましょう。

 

◎アメリカ:サブプライム・リーマンショックの回復に異次元金融緩和で対応、経済が少し元気づいたので副作用を心配し今年1月から緩和縮小、首尾いまだ不明。

◎日本:昨年4月、アメリカに倣って異次元金融緩和、20円の円安実現で一息、経常黒字縮小で円安安定か、円高が避けられれば、経済回復の方向へ。

◎ユーロ圏:南欧の経常赤字でユーロ安、しかし南欧が真面目に経常黒字を回復、今度はユーロ高で日本の円高デフレを連想、マイナス金利+超金融緩和でユーロ安狙う。

 

 本来金融緩和というのは、通貨量を増やし、金利を下げて、実体経済の活動を活発にするというのが狙いのはずです。

 今回のユーロのマイナス金利政策でも、市中銀行は中央銀行(ECB)にマイナス金利でカネを預けるより、産業への融資にカネを回し、それで域内の投資が増えユーロ圏の経済が活発化するはずだという意見と、カネは域外の途上国に向かうという説、それより手軽にマネーゲームに走るだろうという説、いろいろです。

 

 しかし今回のマイナス金利という意表を突く政策は、超金融緩和を従えて、本当の狙いはユーロ安という「為替対策」でしょう。20年も円高に呻吟した後、やっとアメリカの政策を真似て20円の円安を実現した日本と発想は同じです。違いは、対応が早かったということぐらいでしょう。

 

 しかし20年も苦労して経済力も落ち、経常黒字もカツカツになった日本と違って、大幅黒字のドイツを擁し、 ギリシャもスペインもイタリアも経常黒字を回復したという現状を、国際投機資本もよく見ていて、ユーロ安も思うようにはいかないようです。

 

 しかしこうした状態は、健全な経済活動が尊重されるべき本来の経済の在り方から言うと、極めて歪んだものではないでしょうか。

 アメリカのように、何時まで経っても経常赤字を直せず、借金しなければやれない国もあるのに、

IMFやECBから、赤字は止めなさいと言われて、最後には「解りました」と耐乏生活に耐えて、経済を健全化したら、「ユーロ高デフレ」で苦しまなければならないというのは、経済健全化努力に対して、「そんな努力は無駄ですよ」と言っているようなものです。

 

 これは、日本も、かつて一生懸命世界一の経済パーフォーマンスを目指して努力した結果、プラザ合意で円高を強いられ、国際投機資本に翻弄されて「失われた20年」を経験したから一番良く解っているはずです。

 

 この基本的な原因は、数十年に亘り経常赤字を垂れ流す基軸通貨国アメリカが、自国経済の維持のために、自ら主唱したブレトンウッズ体制を放棄し、変動相場制に切り替え、あまつさえ、金融工学、マネー経済学という、資本移動で経済をやりくる世界経済システムを作ってきたことの結果です。

 こんなことを続けていて、世界経済はどうなるのでしょうか。