tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

重要な1人当たり人件費の上昇(個別企業の対応)

2015年02月17日 10時42分33秒 | 経営
重要な1人当たり人件費の上昇(個別企業の対応)
 これまで「賃上げ」と言ってきましたが、「企業にとっての正確な表現」をすれば、それは「1人当たり人件費」の上昇です。
 人件費は、月例賃金や残業代、ボーナスといった現金給与の外に、企業負担の社会保険料、福利厚生費、通勤費などの現物支給、教育訓練費など人を雇用することに掛かるすべてのコストの合計です。

 これらのうち、残業代やボーナス、教育訓練費などは(一部または全部)景気によって増減する変動費の性格も持ちます。社会保険料などは賃金にほぼ比例します制度改正があれば±α)。定期昇給も従業員の年齢構成によりますが、通常、総額人件費を押し上げる要因になります。

 こうした要因を、過去の経験値を参考にしつつシミュレーションし推計して、賃上げを何パーセントしたら、1人当たり総額人件費、そして総額人件費ががどのくらい増えるかを推計するのは、人事担当者のノーハウに属します。

 このところいわゆる「失われた20」年の中で、正常な経済状態の中でまともな労使交渉を行うような経営環境が失われ、そのためにこうしたデータや経験の積み上げによるノーハウの集積が失われ、いわば労使共に「春闘における現場力」が損なわれてきていしまっているのは問題です。

 幸い為替レートが$1=¥115~120辺りで安定したことで、日本経済もデフレ不況を脱し、ようやく正常な経済状態を回復し、いよいよ、安定した成長路線に乗ろうという時期になりました。かつて、日本の優れた労使関係が、日本経済を優れたパフォーマンスに導き、エズラ・ボーゲルをして「ジャパンアズナンバーワン」と書かしめた実績を、あらためて再現する時期に来たようです。

 春闘ベースの賃上げ率を中心に労使交渉をした場合、それがわが社において、一人当たり人件費をどの程度押し上げるか(パーセントの把握)はいずれにしても重要です。
 特に最近の客観情勢を考えれば、たとえ賃上げをしなくても、非正規従業員の正規化を進めれば、平均賃金は上がります。
 しかしこの場合、従業員のモラール向上による生産性の向上の効果も大きいという報告の多くあります。

 従業員の年齢構成によりますが、定年延長や再雇用の際の賃金水準の決定(通常は減額)も、定期昇給分の影響率に関わります。
 
 このところ日本企業は従業員の教育訓練にも急速に熱心になって来ています。これは人件費に入りますが、実は従業員への投資です。将来回収が可能です。

 そして最終的に最も慎重に計画しなければならないのが、「労働分配率の動向」です。何故なら、労働分配率の動向は、企業の将来を決める決定的な要因になるからです。
 
 経済が正常に成長する時代には、年々ベースアップと賃金制度・体系によって決まる定期昇給の2つの要因による「総額人件費」の増加が一般的になります。
 ならば、わが社の経営の現状、あるいは経営計画の中で、人件費支払い能力、適正総額人件費、とは何かという問題が、経営の重要課題になります。これは「適正労働分配率」の概念と同じものです。
 技術開発、営業戦略と並んで、賃金・人件費管理が企業な最重要課題になってきます。賃金とモラールの関係を考えれば、これは従業員のやる気につながり、技術開発、経営戦略のベースにもなる重要な課題です。