tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

国連と人類社会のガバナンス

2021年02月09日 22時54分05秒 | 文化社会
国連と人類社会のガバナンス
 今、地球のあちこちで、人類社会が、残念ながら荒れています。

 第二次大戦後、1970年代辺りまで、地球人類にとって、良い時期がありました。
 東西対立はありましたが、先進諸国が協力して途上国援助をし、世界人類全体の生活レベル、文化レベルを向上させようといった動きがみられた時期、トマ・ピケティに言わせれば、人類社会の格差化にブレーキガかかった時代です

 しかしその後は、人類が戦争の惨禍と不条理を次第に忘れていったのでしょうか。
 日本では田中角栄が、「戦争を知らない世代がリーダーになると危うい」といっていますが、これは世界共通の現実のように思われます。

 戦争の記憶が薄れると、リーダーたちは往々にして自己中心主義に逆もどり、経済的あるいは地政学的な問題で、自国の有利を求めて争う事がリーダーの使命と勘違いするようです。 

 民主主義の最先進国を自認したアメリカでも、戦後の強大な経済力が衰退するとともに自国中心に傾斜し、ついにはトランプのようなリーダーが出現するのです。

 民主主義国でない独裁的な国では、その傾向は一層強まるようです。
 ソ連崩壊で、世界は変わるかと思われましたが、ロシアは独裁国になり、経済発展の著しい中国も、習近平がリーダーになってから独裁化を強めています。 

 そして今、コロナ禍で世界が混乱する中で、いくつかの国で、一般庶民の真剣なデモが起きています。

 中國の強権に反発する香港、プーチンの独裁に耐えられないロシア、軍部によるクーデタで、民主主義が危うくなると恐れるミャンマーなどなどです。
 一般庶民にはデモ以外に方法はありませんし、こうしたデモに対しては権力は圧倒的な強さを持っています。

 覇権国アメリカは基軸通貨国という立場から、時に経済制裁を口にしたりしますが、相手国は国内問題への介入は許されなと主張します。
 たしかに、それは、対等な国と国との間の問題で、行き着く先は紛争でしょう。

 この問題を論じるには、その前に、覇権国と国連の関係を見ておく必要があるでしょう。
 第二次大戦後、巨大な経済力を持つアメリカは、国連本部をニューヨークに置き、国連のガバナビリティを支える意欲をもって世界の警察官を試みたのかもしれません。

 しかし、それはせいぜい1960年代までで、アメリカは経済力に翳りが出るのと共に自己中心的になり、ついに国連を無視するトランプ政権に至ったのです。

 結果的に明らかになることは、いかなる国が覇権国になっても、地球社会のガバナンスに責任を持つことは出来ないという事でしょう。

 今は、全く現実的ではありませんが、それを可能にするのは、地球社会が国連という最上位の組織を、地球人類のすべてをカバーするガバナンスを、地球人類のために考える組織として協力して作り上げ、その権威を認めることでしょう。

 そして、それを可能にする道は、現在の国連の常任理事国が、国連総会を、民主主義によるガバナンスを認める組織にするべく協力して努力することが、最も自然な道でしょう。

 今、それが可能だと考える人はほとんどいないでしょうが、現実には、それが出来ない限り、残念ながら、地球上には紛争が絶えないということでしょう。

投機資本、次の標的は食糧?

2021年02月09日 00時02分22秒 | 文化社会
投機資本、次の標的は食糧?
 今日の日経平均は29,000円に達し30年ぶりの高値だそうです。この所の上げ幅は、異常と思えるほどです。(1990年の38000円は遠い先ですが・・・。)

 アメリカではいわゆる「ファンド」が、日本では中央銀行が株を買い、株価は実体経済とはかけ離れた動きです。
 
 リーマンショックで蹉跌し反省したはずのマネー資本主義が、超金融緩和の中でマネーの本能をとりもどし、先ず活躍しているのが株式市場でしょう。
 アメリカでは庶民が、社会正義を掲げて、カラ売りで巨利をむさぼるファンドに天誅を下そうという動きまであるようです。

 余剰マネーは「株価のインフレ」を起こし、それによって格差社会化を一層進めるようです。
新しいマネー理論としてMMTなどといったものが生まれ、「超金融緩和でもインフレは起きない時代」などといっています。

 しかしすでにマネーの本能は先に進みつつあります。マネー・国際投機資本が、単なるマネーゲームに飽き足らず、投資対象を「現物市場」に広げつつあるようです。

 FAO(国際食糧農業機構)の調査によれば、昨年、食糧の需給関係に特段の変化はないのに、世界の食糧価格は平均32%の上昇だという事です。
 小麦に至っては、その貯蔵量に問題がないにもかかわらず、価格上昇は70%に達したとのことです。

 現状はコロナ問題に明け暮れていますが、少し長い目で見れば、地球社会の人口爆発、異常気象の深刻化といった問題の進展の予想の中で、食糧確保の問題の深刻化は必至といった見方は根強いでしょう。

 しかも食糧は人間にとっては日々必要で、まさに死命を制するものです。
 そうしたものを投機の対象とすることによって、端的に言えば、食糧価格の上昇、飢餓人口の増大が起き、人類社会の不安定化が促進され可能性は間違いなく増大するでしょう。

 我々の身の回りでも小麦粉の値上がりが食料品価格に跳ね返ったという話は出ましたが、世界的な食糧の値上がりが起きれば、通常それは、輸入価格の上昇を通じて身近な食料品価格の上昇を引き起こし、それが賃金上昇の引き金になって、経済のインフレ化につながるのが通常のパターンでしょう。

 これは、かつて二回にわたるオイルショックが、先進国経済をインフレ化し、更にスタグフレーションに追い込んだ経験がその好例と言えるでしょう。 

 世界経済は、1970年代の福祉型資本主義指向から、アメリカ型マネー資本主義の流行によりリーマンショックという大失敗を犯しながら、その反省をすでに忘れて、マネー資本主義の活動対象を現物市場(まずは食糧でしょうか)まで広げ、世界経済の混乱、国際社会の不安定化を齎すようなことに、またぞろなるのでしょうか。

 MMT などを安易に信じるのではなく、人類は自らの作り出したマネーの魔力に打ち勝つ知恵を確り持たなければならないのでしょうが、何か心許ない気がするところです