tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

岸田総理「新しい資本主義」の具体化へ

2022年01月18日 14時58分11秒 | 政治
岸田総理の初めての施政方針演説の中で「新しい資本主義」の中身が次第にはっきりしてきたように思います。

総理が強調された点を見ますと、格差が拡大し、かつて幅広かった中間層が次第に薄くなっているような社会は発展性がない。これを何とかしなければならないと読み取れるようです。

「新しい資本主義」では格差の縮小、中間層の大幅な増加を目指し、中間層が経済社会を支え、経済を発展させるような状態を作っていかなければならないというのが基本的視点ではないかといった気がします。

確かに、この所、世界的に、新自由主義あるいは自由主義の原理主義化といった傾向が強く、日本の政権もかなりの影響を受け、その結果、かつては北欧諸国と並んでいた格差の無い社会から、急速に格差社会へ、同時に、経済的にも社会的にも停滞する社会に退化してきてしまっています。

こうした状況は、経済社会の中で、本来持つべき人間的なものが失われる結果を生むようで、伝統的な日本社会の温かみも失われつつあるように感じられるところです。

岸田総理の「新しい資本主義」は、恐らく総理の頭の中では「人間のための資本主義」といったイメージを持ったものはないかと思われます。

資本主義であっても、それは「資本のための資本主義」ではなく「人間のための資本主義」、「人間のより豊かで快適な生活実現のために『人間が資本を巧く活用する』資本主義」という事ではないかと思っています。

こう考えれば、総理の言う
「 新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの「経済社会変革」の動きが始まっています。」
というフレーズはそのまま素直に理解できるように思います。

岸田総理は、こうした社会をデジタル化といった技術革新、さらに分配と成長の適切なバランスによって構築していこうという具体的な力点を指摘していますが、デジタル化や先端技術の開発には膨大な資本が必要です。

この膨大な資本は経済成長によって生み出していかなければなりません。それを支えるのが分配と成長の適切なバランスでしょう。

そのためには春闘における賃金決定も重要で、政策としての賃上げ減税など、また中小企業での賃上げを可能にする為にも、中小企業の大企業に対する価格転嫁を容易にする環境整備、そして最低賃金の見直し、さらに人的資本への投資の促進、職業訓練制度の再検討といった一連の具体策の指摘も、上記の道筋の中で考えれば整合的に理解され、政策や政労使の話し合いの中で動かしうるものではないかと考えるところです。

すでに触れましたように、経団連の新会長の十倉氏も、これに共通した部分を持つ意見をお持ちのようです。

30年余にわたる長期不況と、世界的な過度な自由と権利主張の風潮(一部に新自由主義と言われる)の中で、本来の日本人の人間重視の在り方から些か逸脱したこの 所の日本社会の立て直しに、日本人本来の真面目さで取り組む時期が来たのかなといった気がするところです。

此の施政方針演説を軸に、「初心不可忘」で、進んでいただきたいと思うところです。