tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカの消費者物価と円レート

2023年02月18日 15時17分09秒 | 経済
円レートがまた円安に振れています。

円安になれば、インバウンドは好調、日本製品の国際競争力は上がりますし、概ね結構なことですが、時に、国際投機資本がマネーゲームで儲けようと円レートの不振れ幅を無闇に大きくするので、迷惑を蒙ることもあります。

今、円安に振れているのには恐らく2つの原因があって、1つは日本の貿易収支が赤字を続けていること、もう1つはアメリカのインフレが少し長引きそうで、FRBのパウエル議長がもう少し金利を上げ続けなければならないと言っていることです。

影響のより大きいのは、アメリカの金利引き上げが続きそうだという事の方でしょう。
アメリカのインフレは昨年の7月辺りがピークでその後は鎮静の傾向ですが、パウエルさんはまだ危険水域で、もっと低くすべきと金利引き上げを続けると牽制しています。

このブログでも昨年夏までアメリカのインフレに注目していましたが、秋になって沈静傾向がはっきりしてきたので、その後は取り上げていません。

そこで今回は少し長期の状況を見てみました。
グラフにしたのは「全品目」と「食品・エネルギーを除く全品目」です。

 アメリカの消費者物価の動き(対前縁上昇率:%)

                     資料:アメリカ労働省

ご覧のように、食品とエネルギーが入ると上昇率は上がります。主因はエネルギー価格の高騰でしょう。食品も最近はエネルギーを相当使う(肥料・加工段階など)でしょうか。

「食品とエネを除く全品目」は自動車や耐久消費財、衣料品、レジャーなどで、エネルギーの影響をあまり受けないものです。

ということで2021年春から青い線は赤い線より大分高くなりましたが、昨夏以降は順調に下がっています。気なるのは、赤い線がなかなか下がらないという点です。

青い線が上がった原因は原油やLNG などの国際価格が値上がりで、世界共通ですぐ解りますが、それにともなって赤い線も6%前後まで上っています。
その原因は何でしょうか。

これは殆どの原因が、国内インフレです。国内インフレは大部分が、エネルギーの値上がりで物価が上がると、その分賃上げ要求が強くなって起きる「賃金インフレ」です。

今のアメリカの状況は、エネルギーの価格は下がって来ていますが、賃金インフレの方がなかなか収まらないという形なのです。

原油やLNGが上がって物価が上がるのは世界共通ですが、賃金インフレは国によって酷さが違います。アメリカやヨーロッパでは物価が上がればすぐに賃金が追いかけます。日本はその点慎重です。

FRBのパウエルさんが恐れているのは、エネルギー価格(青い線)が下がってっても、赤い線の国内インフレが収まらないと、アメリカの国際競争力が弱くなるという心配です。

それで、早くインフレを治めようと金利を上げると、結果はドル高・円安になって日本の競争力がますます強くなるというジレンマに陥ります。
パウエルさんは赤い線を下げるのに苦労をしそうです。

国際投機資本などはそれを読み込んで、金利引き上げはまだ続きそうだからとドルを買うでしょう。結果は円安で、日本の競争力がますます強くなり、放置すれば、1980年代の欧米のスタグフレーションに似てくる可能性が出て来ます。

「どうするパウエル」で、これは日銀の植田さんよりずっと難しい問題かもしれません。