今朝の日経平均は800円の下げで始まりました。理由は、皆様ご気づきのように、日銀が昨日の金融政策決定会合で、今月は政策金利には手を付けずに現状維持で行くことを明らかにすると同時に、来月には金利引き上げの可能性を示唆する発言をしているからです。
8月に、僅か0.25%への政策金利の誘導で、日経平均の乱高下を引き起こした経験から、政策金利についての発言には、大変慎重な植田総裁ですが、かといっていつまでも0.25%では、日本経済の正常化は進みません。
資本主義経済の基本的な構成要素である「金利機能」が、市場に対して適切に対応できなければ、資本主義本来の経済機能が働かないはずです。
その意味では12月に政策金利の引き上げもありうるという植田総裁の発言は、日本経済に正常な金利機能を復活させなければならないという意思表示と受け取るべきでしょう。
春闘の賃金決定も次第に正常化し、コロナ禍のタイムラグで一時的に高まった消費者物価指数の上昇も沈静化の傾向を示し、賃金上昇とインフレのバランスも次第に正常化する様子を見せている日本経済の中で、いよいよ金利の正常化のための金利の引き上げが実現可能な環境条件が整ってきているとの読みでしょう。
長く続き過ぎた日本のゼロ・低金利が、キャリートレードなどというマネーゲームを生み、日本の家計の持つ2000兆円の過半を占める貯蓄の利回りはゼロに近く、国際投機資本が巨利を上げるといった構図は、日本の家計のためになりません。
逆に、巨大な借金に押し潰されそうな日本政府は、低金利を利用して経済効果の上がらないバラマキ財政で当面の票を稼ぐといった不健全な財政に走ってきました。
こうした歪んだ日本経済を健全な形にしていくためには、金利機能を正常に働かせなければならないというのが健全な資本主義の基盤でしょう。
日銀の、その実行の過程では、種々問題が起きて来るでしょう。今朝の日経平均の下げが象徴的です。しかし、株価は本来それぞれの企業の成長を反映してきまるものです。今のマネーゲームによる株高は、いわば資本主義の仇花です。日本経済が成長を取り戻す事で日経平均が上がるのが正常の資本主義の姿でしょう。
もともと為替レートは、その国の国際競争力を評価して決まるものです。今は金利の動きが為替レート調整の手段になっていますが、金利正常化、経済の健全化が進めば、中・長期的には為替レートは、経済実態に従うでしょう。
金利正常化のプロセスにおける従来の経済の歪みの是正に伴う為替レートや株式市場の乱高下は、ある程度は避けられないでしょう。
そうした波風は、日本経済正常化、健全化のために克服するべきもので、日銀もそのための十分な配慮をされるでしょうし、何よりも、金融・証券業界、産業界が冷静に対応することが大事でしょう。
そして、金利の正常化が実現した暁には、借金にまみれた日本政府は、財政の健全化のために本格的な努力をしなければならなくなるでしょうし、特筆すべきは、家計の巨大な貯蓄に適切な利息が付いて、これまでの将来に向けた貯蓄の努力が相応の果実を生み、家計を潤すというイソップの「アリとキリギリス」の寓話の世界が現実になる日が来るという事ではないでしょうか。