tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

キャピタルゲインとインカムゲイン

2014年07月16日 09時29分33秒 | 経済
キャピタルゲインとインカムゲイン<2008年4月25日付のリメイク版>
 キャピタルゲインは資本利得などと訳されています。株や土地、商品など、投機対象になるものを買って、値上がりして売った時の儲けのことです。損すればキャピタルロスといいます。
 インカムゲインは和製英語で、英語ではearned income(働いて得たカネ)とunearned income(働かずに得て収入=利子、配当、地代、家賃)の合計(社会保障などの「移転所得」は含まれません)という事になります。

 gain(利得)におけるこの2つの概念は、欧米でも一部では理解されているようですが、経済学的に言えば、下のようになるのでしょう。

 インカムゲインは、GDPや国民所得を構成する所得、つまり生産の3要素である「土地、労働、資本」に支払われるコスト「地代、賃金、利益(利子・配当を含む)」で生産の3要素に支払われる費用=要素費用ですから、付加価値の分配による所得、つまり社会を実質的に豊かにする経済価値。

 キャピタルゲインは、値上がりによる利得で、実質GDPや実質国民所得計算の際はデフレータで消えてしまうもので、インフレやバブルで金額的には増えるが、名目的な豊かさで実質の豊かさには関係ない価格変動による計算上の経済価値。

 ですから、この2つのゲイン(gain=利得)の基本的な違いは、次のようになります。
  ・キャピタルゲインでいくら儲けても「実質の生産」(実質GDPなどの「実質付加価値生産」=人間が活用出来る「富」、「豊かさ」)の量には関係ありません。儲けた人のところに、損した人あるいは儲けなかった人から富/豊かさが「移転」するだけです。
 ・インカムゲインの方は、付加価値(当ブログ「付加価値の正確な理解を 」2008年3月参照)の分配ですから、その投資によって得られた「実質の生産の増加」(GDP,付加価値の増加)の分け前、つまり人間が活用できる「豊かさ」が、資本活用と人間の労働によって増えた分(付加価値)の中からの分配です。

 たとえば、今、原油が値上がりしています。儲けているのは産油国だとすれば、「実質世界総生産」は変わらないのですから、石油を消費する国の富(実質購買力)が「値上がり」という形で、石油産出国に移転しているだけということです。

 日本でもかつて「土地バブル」がありました。地価上昇で儲かったお金はキャピタルゲインです。地価が上がっても日本の実質GDPが増えるわけではありません。つまりあの時は、サラリーマンが汗水たらして働いた月給の実質価値が、土地や住宅の取得の際に都市近郊農家など土地所有者に移転して行ったということです。「道理で給料は上がっても住宅ローン返済で苦しくて、地主はお金持ちで羨ましかったよな」と実感される方は多いでしょう。

 お金の働きによって、キャピタルゲインもインカムゲインも生まれます。懐に入れば、どちらのお金も同じに使えます。

 ところで、最近、アメリカなどの主唱によって、「儲かりさえすれば、どっちだっていいじゃないか」といった風潮が一般的になっています。しかし、どちらの「ゲイン」(利得)が本来、人間全体の幸せに適ったものなのか、よくよく考えなければいけないのではないでしょうか。

為替レートとゴルフのハンディ

2014年07月15日 09時48分27秒 | 国際経済
為替レートとゴルフのハンディ<2009年2月6日付のリメイク版>
 このところ集中的に物価問題を扱ってきました。先ずインフレについて、それからスタグフレーション、そしてデフレです。そうした中から見えてきたのが、物価問題と為替レートとの関係でした。

 固定相場制の時代は物価問題は単純でした。「自家製インフレ」さえ阻止するような労使関係、賃金決定を守っていけば、経済は健全に維持できました。
 しかし、アメリカ主導による、「変動相場制+マネー資本主義」という経済環境の中ではそうはいきません。

 日本のように、一国経済としてのパフォーマンスがいくら優れていても、大幅円高にされれば、デフレ転落は避けられません。
 固定相場制時代、円レートは$1=¥360でした。プラザ合意とリーマンショックでそれが、$1=¥80近辺(史上最高は75.54円)まで円高になりました。こんな国は世界のどこにもありません。

 かつては「円が高いことは日本の経済力の高さの反映だから喜ばしいことだ」などという専門家もいましたが、円高による「失われた20年」で塗炭の苦しみを味わった今はそんな人はいません。

 円高という現象は、ゴルフのハンディに例えるのが一番良いと思っています。ハンディ36(360円)から出発した日本は、ニクソンショックによる変動相場制移行でハンディ24($1=¥240)になりました。
 その頃の日本の実力は真面目な練習(生産性向上努力)の結果、ハンディ20~22相当でしたから、コンペでは常勝、まさに「ジャパンアズナンアバーワン」でした。

 たまりかねた欧米諸国は「プラザ合意」で日本を説得、ハンディを12($1=¥120)にしました。実力20でもハンディを12にされたらもう勝てません。一生懸命練習(失われた10年)して、たまには3位入賞も出来そうという時期に、リーマンショックでハンディ8のシングルにされ、ピークで7.5だとも言われました。失われた10年は20年に延びました。

 シングルは名誉ですが、名誉では飯は食えません。黒田日銀はアメリカに倣って超金融緩和政策を取り、$1=¥100(ハンディ10)に戻してもらいました。
 日本経済は何とか息を吹き返しました。

 プラザ合意の時は、一応挨拶がりました。しかしリーマンショックの時は、国際投機資本が勝手に日本のハンディを決めています。

 G8でもG20でも、為替相場の安定は言われ、行き過ぎたマネーゲームの阻止の論議もされます。しかし、実効は上がりません。
 理由は、基軸通貨国アメリカが、万年赤字で、マネーゲームによるファイナンスを必要としているからだなどと言われます。
  この問題もこのブログの重要テーマの一つです。

デフレ3悪

2014年07月14日 07時33分37秒 | 経済
デフレ3悪<2009年11月23日付のリメイク版>
 スタグフレーションが先進国経済の病気だと指摘しましたが、デフレは「資本主義経済の活動の原点を破壊」し、正常な経済活動を不可能にします。
 日本は失われた20年の中でその克服に努力しましたが、これは「日本の奇跡」と言ってもいいと思っています。

 私は以前から自分勝手に考えて、「デフレ3悪」という指摘をしてきました。デフレの時は、自動的にこんなことが起こり、自動的に景気が悪くなるという指摘です。

1. 消費不振(先延ばし)
 消費者は、先行き物価が下がると思えば、消費を先延ばしすることになります。例えば、来年あたりに、もっと良い車が安い価格で出ると思えば、新車への買い替えは急がずに、差し当たってもう一度車検を取って、新しい車が出るまで待つでしょう。これでは消費は伸びません。

2. 利益圧縮
  企業は原材料や商品を仕入れて、それを加工したり陳列したりして売りますが、必ず一定のたな卸し回転期間がかかります。デフレの時は、たな卸し回転期間中にも物価が下がることになりますから、高めの価格で仕入れて、安めの価格で販売ということになり、その分だけマージン(粗利益=売上総利益)は自動的に減ります。

3. 金融不安
 物価が下がって行く分だけ実質金利は上昇します。物価が下がるということは現金の価値が上昇することですから、現金を持っているだけで得をします(しかし余り実感しません)。
 一方、借金している人は、借金の価値が膨らみます。金利が1パーセントでも、物価が1.5パーセント下がれば、実質金利としては2.5パーセント金利がかかったのと同じです。企業は積極経営を避けます。
 預金金利はゼロ以下には出来ません。貸出金利は下がっても実質金利は高いので銀行利用者は減り、金融機関の収益性は落ち、銀行倒産が起きます。金融政策は効かなくなります(流動性の罠)。

 こんなデフレ経済は、本当に御免蒙りたいと思うのですが、日本は、プラザ合意とリーマンショックでひどいデフレを経験させられました。米欧など諸先進国は日本の苦労などほとんど関心を持ってくれませんでした。

 幸い、黒田総裁による日銀の政策転換で、昨年4月、約2割の円安を実現、日本経済はやっと蘇生しました。

 マネー資本主義、マネーゲーム依存の変動相場制の今日では、為替変動次第で簡単にデフレに陥る可能性がありあります。
 経済政策、外交政策一体の真剣な対応策が常に必要な世の中のようです。

デフレの原因(その2)

2014年07月13日 09時45分04秒 | 経済
デフレの原因(その2)<2008年6月12日付のリメイク版>
 失われた10年とか20年といわれる長期デフレは、世界一高いといわれた日本の物価が、グローバリゼーションで激化する国際競争の中で、国際水準に向かって下がっていく過程だということを見てきました。コメやムギのように規制の厳しいものはなかなか下がりませんが、規制をはずせば、航空運賃でも、国際電話の料金でも、国際価格に向けてどんどん下がります。

 現実には、日本の物価が毎年平均1パーセント程度下がり、外国の物価が年率2~3パーセント上がって、10年から20年かかって、30~40パーセントあった内外価格差が、やっとゼロ近傍にまで縮小したという感じでしょう。

 インフレの原因の所で述べましたが、民主主義の社会では、通常、賃上げ圧力が強く、生産性の上昇より人件費の上昇の方が大きくなりがちなので、どの国でもインフレが常態で、デフレという事はほとんどありません。

 それなら何故、第2次オイルショックをほぼインフレ無しで乗り切り、世界でもトップクラスの国際競争力を持ち、ジャパンアズナンバーワンといわれた日本が、世界で最も物価も人件費も高い国になってしまったかです。

 とうにご承知の方も多いと思いますが、これは「プラザ合意」のせいです。
 プラザ合意というのは、1985年に、ニューヨークのプラザホテルで行われたG5(主要5カ国蔵相・中央銀行総裁会議:当時は5カ国)でのことで、この席で日本は、「競争力が強すぎるから、円高にすべきだ」といわれて「OK」といったのでしょう(詳しいやり取りはわかりませんが)。その後2年で、$1=¥240が、$1=¥120円と 急激な円高になりました。

 円高とは、円の価値が上がることです。したがって、円で取引するものの価格が、国際基軸通貨のドルで計れば、一律2倍になったわけです。日本製品の値段も、人件費をはじめとする日本のコストもすべて1985-87年の2年間で2倍になったのです。

つまり日本は、2年間に賃金を2倍にし、物価も2倍という「自家製インフレ(ホームメイドインフレーション)」をやったのと同じことになりました。日本は「賃金も物価も世界一高い国」になり、第2次オイルショックをインフレ無しで乗り切った日本人の知恵と努力はすべてパーになったのです。第2の(経済)敗戦という人もいます。

 日本は外交が下手だとよく言われますが、外交が下手だと、失われた20年のようなとんでもないことも起こるのです。

デフレの原因(その1)

2014年07月12日 09時46分04秒 | 経済
デフレの原因(その1)<2008年6月11日付のリメイク版>
 インフレについての日本の経験については割合詳しく触れましたので、今回はデフレの経験についてみて見ましょう。

 デフレは、デフレーション(deflation=収縮)の略で、インフレの反対、物価が全体的、継続的に下がることです。

 皆様ご記憶のように、日本はつい1昨年まで「デフレ」でした。失われた10年とか20年とかいわれる1990年代から2010年代の初期にかけて、世界中で日本だけが長期デフレでした。2002年2008年の、いわゆる「いざなぎ超え」というだらだら景気回復の時でさえ物価は下がり気味でした。

 世界の主要国で、この10年20年、デフレだった国はありません。みな多少のインフレです。何故日本だけデフレになったのでしょうか。
 多くの学者はバブルが崩壊して、3つの過剰が生じたからという説明をしました。3つの過剰とは、「設備の過剰」、「雇用の過剰」、「債務の過剰」だそうです。債務の過剰はバブルのせいですが、設備や人手の過剰は、需要が減った、つまり製品が売れなくなったからです。次回以降も触れますが、ここでは「為替レート」という新たな問題が出てきます。

 つまり、学者などの言う「3つの原因」というのは、単なる現象面で、背後にある本当の原因は、国内でも海外でも、日本製品の値段が高くなって競争力を失い、売れなくなったからです。ご記憶の方も多いと思いますが、1990年代、「日本の物価は世界一高い」といわれました。

 私の持っている当時の日経新聞の切り抜きに「日本、デフレなのに、なお物価高世界一」という見出しがあります。英エコノミスト紙の記事の紹介ですが、これは「デフレなのに世界一」ではなくて、「物価が世界一高いから(グローバリゼーションの国際競争の中で)日本の物価は下がらざるを得ない(デフレにならざるを得ない)」というように読み替えるべきでしょう。

 日本製品は質がいいのですが、あまり高いと売れません。国内でも、衣料品をはじめ、「メードイン・アジア諸国」が普通になって、国産品は苦戦、国内旅行2,3日の代金で、海外旅行なら1週間などというご記憶をお持ちの方も多いと思います。グローバリゼーションの中で、売れるのは輸入品、国内企業は大幅コストトダウン、さもなければ廃業に迫られます。これがデフレの正体です。

 かつて、1980年代前半まで、「ジャパンアズナンバーワン」といわれたほどパーフォーマンスの良かった日本経済が、何故、世界一物価高の国になってしまったのでしょうか。もう「理由は先刻承知」という方も居られるでしょう。長くなるので、以下次回にします。


スタグフレーションとは

2014年07月11日 10時01分12秒 | 経済
スタグフレーションとは<2008年5月20日付のリメイク版>
 インフレの原因と症状と影響についての論議をしてきましたが、経済と物価問題について論じるとすれば、インフレとともに、スタグフレーション、そしてデフレについてもしっかりと見て行かなければならないでしょう。そこでまずスタグフレーションについて見てみましょう。

 スタグフレーションとは、スタグネーション(=stagnation:経済停滞)とインフレーション (=inflation:物価上昇)の合成語で、不況期の物価上昇のことを言います。そんなことが、どういう時に起こるかというと、「コストが上がっても売値がなかなか上げられない」時に起こります。

 最近でも、輸入原材料価格も人件費も上がっているのに、消費増税もあり、売値はなかなか上げられないので利益が減ってしまう、といった意見が聞かれますが、この「利益が減ってしまう」というのは「経済停滞」の原因ですから、これではスタグフレーションになってしまうのではないかといった意見もあります。

 輸入原材料が上がって、コストアップで利益が出ない時には、理論的にはその分製品値上げでカバーしてスタグフレーションを回避するのが良いでしょう。輸入原材料価格の上昇は世界共通ですから、日本の国際競争力には影響ありません。

 ところが、賃金上昇でコストアップが起こっているときには、製品、サービスに価格転嫁すると、その分国際競争力が弱まるという問題が起こります。
 かつて、二度のオイルショック後に欧米主要国がが経験した「人件費コストアップによるスタグフレーション」は、原油値上がりで起きたインフレを賃上げでカバーしようとする労組、賃上げ分を価格に転嫁しようとする企業、というサイクルで、自家製インフレの悪循環(賃金と物価のスパイラルともいわれました)を起こしたことが原因です。

 しかし、その過程で国際競争力が弱くなるので価格は十分には上げられません。それで利益が落ち込み、不況になって雇用が減ると、今度は政府が労働時間短縮で雇用を増やそうとし、一層の人件費のコストアップになるということを繰り返した結果です。
 これは先進国経済の特有な病気だということで、1980年代には、イギリス病、アメリカ病、ドイツ病などといわれたわけです。

 当時は、その説明ということで「スタグフレーション」とい言葉が大流行でした。このときの教訓は、

①輸入インフレに対しては、賃上げでは対応してはいけない。値上がりには我慢して耐えるしかない。その理由は、輸入インフレというのは、値上がり分の付加価値は、輸出国に移転してしまって、自国にGDPが減ることですから賃金も利益も減ることになるが、皆で耐えて、またGDPを増やして行くよりしょうがないという事です。

②値上がりを賃上げでカバーしようとすると、賃金を増やした分だけ利益が減って、スタグフレーションを招いてしまう。そうすると、経済停滞で雇用も賃金も増えなくなってしまう、それから抜け出すには大変な時間がかかる。だから輸入インフレを賃上げでカバーすることは止めたようがいい。

という二点のようです。

GDPデフレータと自家製インフレ

2014年07月09日 11時54分22秒 | 経済
GDPデフレータと自家製インフレ
 ここ3回、インフレについて、現実に日本が経験したことや、現在政府がとっている政策との関連で説明してきましたが、もう一つ、物価の動きを表す指標として「GDPデフレータ」があります。
 GDPデフレータは日本経済の国際的な立場や、競争力を見るうえで最も適切な指標ですから関連して触れておかなければならないと思います。

 一言で言ってしまえば、GDPデフレータというのは「自家製インフレ」と考えていただいて結構と思います。
 為替レートの変動や、海外の物価の上昇で輸入価格が上がる輸入インフレなどは入りません。

 もともとGDPというのは日本という国境の中で生産された付加価値の総額ですから、その金額が、(国内要因の)価格上昇で増えた場合、価格上昇分を差し引いて、実質付加価値が増えた分を知るために 「名目GDP-GDPデフレータ=実質GDP」 という公式があるわけです(正確には割り算になります)。
 
 これまで述べて来ましたように、為替レートが円高になると日本の国際競争力は落ち、円安になれば上がります。
 海外の資源価格などが値上がりして輸入インフレが起きた場合は、資源の産出国は別として、世界中が同じように資源価格の上昇の影響を受けるので、日本の国際競争力に変化はありません。

 一方、GDPデフレータが上昇した場合は、国際的に見て日本の製品だけが高くなるのですから、その分だけ、日本の国際競争力は弱まります。
 政府・日銀が言っている「インフレターゲット2%」というのは多分GDPデフレータの2パーセント上昇を意図していると思われます。

 それでは国際競争力が弱まるではないか、ということになりますが、そこは、世界中どこの国もその程度、あるいはそれ以上のインフレだから大丈夫でしょう。そして少しインフレの方が、企業は仕事をしやすいし、労働者もその分賃金が上がって、気分がいいでしょうといった考え方のようです。

 前回も書きましたが、自家製インフレは、放っておけば次第に高くなるという性質がありますから、「それはやらない」という事で、さしあたって認められているのだと思います。

 最後に余計なことを書きますが、経済学ではGDPデフレータという言葉がありますが「GDPインフレ―タ」という言葉はありません。デフレの時は必要のはずですが、現実世界では殆どインフレしか起きないので、そんな言葉は必要ないようです。
 もし起きたら、GDPデフレータがマイナスといえば済むというのが答えでしょう。

インフレの原因(その3:自家製インフレ)

2014年07月08日 10時12分28秒 | 経済

インフレの原因(その3:自家製インフレ)<2008年5月10日付のリメイク版>
 現実のインフレは複合的要素で起きることが多く、殆どの国では「自家製インフレ」が主流です。しかも、一般的に、最も困ったインフレは実は「自家製インフレ」で、これは始まると永続的なインフレになるか、スタグフレーションになるかで、なかなか治りません。

 「自家製インフレ」というのは日本語で、英語では home-made inflation 「ホームメード・インフレ」です。全く同じではありませんが、「コストプッシュ・インフレ」などとも言われます。つまり、国内で何らかのコストが上昇することによって、製品やサービスの値上げをせざるを得なくなり、インフレが起こるという状態です。

 国内コストといえば、生産の3要素「土地、労働、資本」の要素費用である「地代、人件費、資本費」ということになりますが、地代と資本費を資本費としてまとめてしまえば、人件費(賃金、社会保険料など)と資本費(金利、賃借料、利益など)となります。この中で総コスト(=総要素費用=国民所得)の6-7割を占めるのが人件費(国民経済計算では雇用者報酬)で、通常これが上がることが自家製インフレの原因です。

 もちろん労働生産性(当ブログ2008年4月「付加価値と生産性」参照)が上がれば、人件費の上昇を吸収してインフレにはなりません。しかし何か他の原因があってインフレが起こると、「物価が上がって生活が苦しくなったから賃金を上げるべきだ」ということで、生産性に関わりなく、物価上昇を埋め合わせすべきだということで賃金が上がり、自家製インフレを起こします。典型的な「賃金コストプッシュ・インフレ」ということになります。

 前回のブログでも触れた第1次オイルショックの後のインフレは、まさにこれで、石油値上がりのパニックで、物価が年率22パーセントも上がったことが大幅賃上げ(33パーセント)を呼び、輸入インフレを自家製インフレにつなげてしまったのです。このインフレは、その後、労使の理性的な話し合いで4-5年かけて解決に至りましたが、これには 後日談があります。

 長くなりますので、後日談はまたの機会にしますが、自家製インフレの最大の問題は、当該国ではインフレですが、他国はインフレではないということで、その国の国際競争力が落ちてしまうことです。
 日本でも、近年政府が、デフレ脱出最優先で、無暗に「賃上げをしろ」と掛け声を掛けますが、寒いからと言って暖房をし過ぎるような政策になりかねません。

 賃金(正確には人件費)コスト上昇を生産性上昇で吸収できれば、自家製インフレにはなりませんから、政府の言うインフレ・ターゲット2パーセントというのは、理論的には、日本経済全体の生産性上昇率よりも人件費上昇率の方が2パーセント高くてもいいという事です。
 しかし、通常自家製インフレは次第に加速するというのが世の常です。

 連合も来年は消費増税で消費者物価の上がった分を賃上げで取り返そうと主張する可能性もあります。それに輸入インフレ分が加算される可能性も出て来るかもしれません。


 

経済成長(実質)と整合的な範囲でこれらの問題については、このブログでも何回か触れてきましたが、インフレは、その原因と影響範囲を良く見極めないと、じわしわと経済を悪くしてしまう大変厄介なもののようです。
 


インフレの原因(その2:輸入インフレ)

2014年07月07日 15時20分49秒 | 経済
インフレの原因(その2:輸入インフレ)<2008年5月6に付のリメイク版>
 昨年4月の20円幅(約2割)の円安に加えて、原油をはじめ資源価格が上がって、消費者物価が上がり気味になってきました。エネルギーも食料も輸入に頼る日本です。消費者物価の動きには、消費増税だけでなく、明らかに輸入インフレの様相が見られます。

 輸入インフレというのは、海外の物価上昇が、輸入価格の上昇を通じて、国内の物価を押し上げるというものですから、今回のガソリン価格上昇に典型的に見られますように、ガソリンスタンドのガソリン代が上がっても、国内では手の施しようがありません。(しいて言えば、再び円高にすれば、海外の物価上昇は相殺されますが、円高が大きなマイナスの副作用をもたらすことは、プラザ合意・リーマンショックの円高で経験済みです。)

 ご記憶の方も多いと思いますが、日本は、1973年、第1次オイルショックを経験しています。原油価格が4倍に上がり、上がっただけではなく、原油が確保できなくなるのではといった不安もあり、経済は高度成長からゼロ成長に転落、消費者物価は年に22パーセントも上がるという惨状でした。このときは、多くの人が日用必需品の買いだめに走り、日本中で、トイレットペーパーと洗剤が店頭から消えるといったパニックも起こりました。

 しかし、輸入インフレというのは、海外のインフレが止まれば自然に止まります。大体、資源価格の高騰は、産出国の国策や投機資本の思惑によるところが大きいので、いつまでも上がり続けることは通常ありません。第1次オイルショックの時も、6年後の第2次オイルショックまでは値段は上がらず、第2次オイルショックの後は21世紀直前まで、原油価格は、下げ続けるといった状態でした。

 問題が起こるとすれば、輸入インフレで生活が苦しくなったと言って、賃上げ要求が起こり、輸入インフレが国内のコストプッシュ・インフレを誘発することです。第1次オイルショックの時は、この現象が起こり、1974年の賃上げは33パーセントに及び、この賃金インフレを抑制(賃上げを抑えて)するのに4年ほどかかりました。

 第2次オイルショックの時は、第1次オイルショックの失敗から学んだ日本人は、平静に過ごし(前回参照)、過度の賃上げもそれによる消費者物価上昇もなく、失敗を繰り返した諸外国と比較して「ジャパン アズ ナンバーワン」といわれました。

 資源価格など国際商品の価格高騰は、世界中一緒です。日本だけが国際競争上不利になるわけでありません。得をするのは、産出国と腕のいい投機資本でしょうか。因みに、日本はに二度のオイルショックの結果、省エネ技術に集中し、この面では最も進んだ国になりました。

インフレの原因(その1)

2014年07月06日 10時56分11秒 | 経済
インフレの原因(その1)<2008年5月3日付のリメイク版>
昨年来長期不況から脱出した日本経済はでは、デフレからインフレへの転換が見られます。最近の消費者物価指数をみると五月の全国で前年比3.7パーセントの上昇です。

 最も大きな原因は、消費税の3パーセントの引き上げでしょう。理論的にはこれだけで3パーセントの上昇になるはずです。加えて、昨年4月、20円幅の円安がありました。理論的には輸入物価が2割ほど上昇するはずです。さらに、このところ原油をはじめ資源価格が上昇しています。これは円安とダブルでインフレ要因です。

 政府はインフレ目標2パーセントを掲げてますが、政府は消費増税分はインフレ目標に入れませんからまだ1.5パーセントほどで、目標にいかないと言っています。一口にインフレといっても結構解りにくいので、ここできちんと考えてみましょう。  

 インフレの原因として、通常、経済学でいわれるのは、デマンドプル・インフレ(供給より需要が多いから値上がりする)、コストプッシュ・インフレ(コストが上がって企業が値上げするからインフレになる)の2つですが、より現実に密着して、現実の状況を見ると、大きく次の3つほどがあるように思います。
1、通貨の量を増やすことによるインフレ(単純な貨幣数量説:物の量が増えずに通貨の量が2倍になれば物価は2倍になる)
2、海外での物価値上がりによる「輸入インフレ」
3、国内でのコスト上昇による「ホームメイドインフレ」(自家製インフレ)

 この3つについて最近の日本の経験を見てみると、インフレというものの性質がかなり解るように思います。
今回は、1の通貨の量を増やせばインフレになるかどうかという事を見てみます。

 上の1番目です。通貨の量を増やすとどうなるか、本当にインフレになるのか、というのは、プラザ合意(1885年)後の日本の金融政策を見ると、何となく解るような気がします。
 確かにプラザ合意(1985)から1990年まで、急激な円高による内需の失速を補うようにとのアメリカの意向を受けたのでしょうか、その辺の事情は良く解りませんが、「前川レポート」「新前川レポート」なども出されて、「内需拡大」「労働時間短縮」が喧伝され、その理由として、日本人の生活は貧しい、世界からは「ウサギ小屋に住む働き中毒」といわれて来ているなどと言う論議が蒸し返されました。

 政府、日銀は、国内需要を増やそうとしたのでしょう、マネーサプライ(M2+CD)は1884から1990年の6年間に約1.8倍に増えました。経済成長は実質でこの間1.3倍にしかなっていません。日本中はお金がジャブジャブでした。銀行はこぞって土地融資に狂奔しました。ところがこの間、消費者物価指数は6年で僅か9パーセントしか上がっていません。貨幣数量説は嘘なのでしょうか。しかし確かに上がったものはありました。実はこの間上がったのは、資産価値、特に地価でした。土地バブルです(当ブログ、2008年4月「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」>参照)。

 土地バブルは地価のインフレで消費者物価のインフレではありません。この経験から解ることは、無闇に通貨の量を増やして見ても、そのときに国民が取る行動によって、その効果(インフレの中身?)は変わってくるということです。

 次回は、2番目の輸入インフレについて、われわれの経験を見てみたいと思います。 




「普通の国になる」ということ

2014年07月05日 11時06分35秒 | 国際政治
「普通の国になる」ということ
 集団的自衛権論議の中で、憲法9条の解釈が次第に捻じ曲げられていくのを日本の国民は見て来ました。
 政治権力と法律解釈というものは「こういうものなのだ」という事も実感してきました。絶対多数の与党の下では、かなりのことが出来てしまうようです。

 日本の国の在り方は、法律解釈のレベルで決まるものなのでしょうか、そうではなくて、矢張り国民の多数意見、日本人の心で決まるべきものなのではないでしょうか、という事も書かせて頂きました。

 こうした此の所のプロセスのかなで「日本が普通の国になるだけだ」といった意見もあり、「普通の国でいいじゃないか」という意見もあるようです。安倍さんは「美しい国」と言っていましたが、戦後レジームからの脱却を目指すという安倍さんの「新しい国」は単なる「普通の国」だったのでしょうか。

 普通の国は自国を守るという目的で軍隊を持ち、戦いにもコミットし、経済のためには武器輸出をし、友達が喧嘩をすれば、助太刀をするという国なのでしょう。

 戦後レジームの日本は、憲法9条を持ち、自衛力はもちましたが、決して戦はせず、武器輸出もせず、友達が喧嘩をすれば、友達にも、その喧嘩相手にも、平和国家日本という立場、戦後、種々の面で経済的に貢献し、「役に立ってくれるが」「人畜無害の国」という評価を得たうえで、「お互いに争いは止めよう」と説得できる立場を、営々として築いてきていたのではないでしょうか。

 この建設的行動はするが、破壊につながるような行動はしないという優れた行動規範の国をありふれた「普通の国」のレベルまで落とすことが今着々と進行しているのです。
 
 何時も述べていますように、日本は1万有余年の縄文時代を通じて、世界でも最も多様なDNAが平和共存し、自然と共生しつつ日本人の原型を作り上げてきた国です。(こうして創り上げられた日本人の本来の心が、世界を驚かす巨大災害への対応やFIFA観戦の態度などに現れるのでしょう)

 戦後漸く、憲法9条を戴いたおかげで、日本人の本来の在り方を取り戻し、舶来崇拝から脱却して、国際社会の中で、本来の日本らしさを発揮する方向に積み上げてきた努力のプロセスを逆転させ、今更「普通の国」に堕するのは、本来の日本人の考え方からすれば、まさに「忍びない」という事なのではないでしょうか。

 今の政権には、もう少し、「本来の日本らしさ」の勉強をしてほしいと思うや切です。

付加価値を正確に理解しよう

2014年07月04日 11時26分22秒 | 経済
付加価値を正確に理解しよう<2008年3月26日付のリメイク版>
 2006年2月、このブログを始めたきっかけは、、 金融資本主義が蔓延し、まじめに付加価値を作ることを軽視するような風潮が、日本の経済・経営にも見られるような状況が大変気になったことでした。

 付加価値というのは、一国経済でいえば、GDP(国内総生産で、これが増えることが経済成長 ) )です。GDPは日本国内の企業などが1年間に生産した付加価値(正確には減価償却も入った粗付加価値)の総額です。GDPから減価償却を差し引いたものが純付加価値で、いわゆる国民所得です。われわれは国民所得の一部を分配してもらって、それで毎日の生活をしているわけです。

 われわれの生活を豊かにすること、つまり経済が成長するということは、国内の企業が、年々どれだけ多くの付加価値を生産するかにかかっているわけですから、企業レベルでも、付加価値を計算し、それを従業員1人当たりにした付加価値生産性やその動向の分析をすることは大変重要です。

 ところが、最近、ネット上の解説などを見ますと、付加価値についての誤解が往々見られたり、セミナーでも同様な質問があったりするので、以下の様なことを書いてみました。

 誤解の中の典型的なものは、「付加価値=粗利益」とか「付加価値=限界利益」といったものです。

 何が誤解かといいますと、付加価値というのは、「人間が資本を使って経済活動をし、新たに生み出した価値」ですから、付加価値はその創出に貢献した「人間(労働)と資本」に分配されることになります。それ以外のコストは、すべて外部から購入した財・サービスの代金ですから、購入先企業の付加価値になるものです。

 粗利益は売り上げから直接原価(製造原価)を差し引いたもの、限界利益は売り上げから変動費を差し引いたものですから、定義が全く違います。粗利益の中には工場の人件費が入っていませんし、逆に販売費などの外部購入コストが入っています。限界利益は、人件費を固定費と見るか(日本)変動費と見るか(アメリカ)で全く違います。ここで誤ると、労働分配率の正確な計算も不可能です。

 企業における付加価値も「人件費+資本費」ですから、=「人件費+課税前利益(*)+金融費用+賃借料+租税公課」 です。これに減価償却費を加えれば粗付加価値になります。  (*)利用目的によって経常利益でも可

 経済でも経営でも最も大切な付加価値であるだけに、付加価値の理解には正確を期したいものです。

雇用ポートフォリオ

2014年07月03日 10時23分58秒 | 労働
雇用ポートフォリオの再検討<2007年9月18日付のリメイク版>
 ポートフォリオというのはもともと「紙挟み」のことですが、転じて、投資家が自分の債券、証券、権利証などを一冊の紙挟みに入れておいて、常に何にいくら投資しているかが解るようにしておくという意味から、「投資内容の組み合わせ」の意味使われるようになったようです。
 さらには言葉の便利さから、いろいろな分野に転用され、「プロダクト・ポートフォリオ」といえば、わが社ではどういう製品を何パーセントずつ生産するかという組み合わせに、また標記のような雇用の組み合わせにも使われるようになりました。
 
 「雇用ポートフォリオ」は、正社員、パート・派遣、契約社員、定年後の嘱託社員などを、それぞれ何パーセントぐらいの組み合わせで雇用すれば企業にとってもっとも有利かといった意味で、1980年代後半から日経連(現日本経団連)が使い始めたようです。
 1995年に日経連が出した「新時代の日本的経営」という提言の中で、バブル崩壊後の長期不況の中では、正社員重視を見直し、パートや契約社員などを適切に活用しないと経営が困難になると、詳細な解説をつけて主張したことで、急速に一般化しました。

 その後、日本企業は、なかなか賃下げの出来ない正規社員を、退職者不補充や希望退職募集などで減らし、替わりにパートなどの非正規社員を増やして平均賃金水準を下げ、コストの削減、物価の引き下げに努力して来ました。非正規従業員の数は大方の予想を大幅に超え、雇用者全体の37パーセントほどまで上昇しました。

 日本企業の長期にわたるコスト削減努力、加えて昨年4月の日銀の金融政策変更による20円幅の円安で、漸く日本経済も息を吹き返し、最近では、新規学卒の正規社員採用の急増、非正規社員の正規転換の動きの増加など、雇用についての復元作用が見られます。

 「失われた20年」の痛手が大きかっただけに、復元には多少の時間がかかると思われます。
 しかし、日本企業、日本経済が元気であれば、こうした動きは進みます。非正規雇用が現在の35パーセント超から20パーセント強程度になって行けば、非正規雇用は、企業に縛られずに「自由に働きたい人たち」が中心になり、日本社会の安定に大きく貢献するのではないかと思われます。
 企業が従業員の働く意欲を最大限に引き出すような雇用ポートフォリオの再検討を積極的に進められることを期待ししたいと思います。


tnlaboからのお知らせ

2014年07月03日 09時51分20秒 | お知らせ
tnlaboからのお知らせ
 plala Broachの閉鎖から3日が経ちました。全てをgooに引っ越してOKと思っていましたが、違いました。
 ネット利用の方々で、私どもと同じ分野にご興味を持ちの方々が、関連のキーワードで検索すされた場合、ほとんどが Broach のタイトルが表示され、そこをクリックすると、「ブローチは閉鎖されました」という画面が出て来て、「なんだ!」という事になるようです。
 
 gooに引っ越して以来のアクセス件数を見ますと、こうしたキーワード検索でのアクセスが1日100件前後ありました。
 
 そこで、そうした方がたに少しでもお役に立つようにと、tnlabo's blog のバックナンバーの中で、キーワード検索が多かったタイトルについて、出来るだけ、今日の事情に合わせながら、リメイクして、合間あいまに掲載していこうと思っています。

 その時期の状況を、思い出しながら読んでいただかなければならないようなものも出て来るかもしれませんが、tnlabo としては、ご覧いただけば、多分、何らかのお役にたつのではないと考えています。

 相変わらずのご愛読、宜しくお願い申し上げます。
     tnlabo

2014年7月1日は2つの転換点か?

2014年07月01日 10時54分48秒 | 国際政治
2014年7月1日は2つの転換点か?
 第1の点は「集団的自衛権」の問題です。
 公明党も最終的には、「与党」という立場維持に縛られ、集団的自衛権を容認しました。いろいろ説明はつけていますが、自民党にしてみれば、閣議決定が出来てしまえば、後は何とでもなるという気持ちでしょう。

 集団的自衛権でどこの国を助けるかといえば、想定問答の中でも出て来るのはアメリカです。アメリカ自身が「もう戦争は嫌だ」という厭戦気分が広がる中で、日本に手伝えという気持ちはあって当然でしょう。

 かつてはアメリカと戦った日本が再びアメリカに刃向わないように、平和憲法を是としたアメリカですが、今度は、自分に刃向わないのなら「手伝え」という事でしょうか。
 この辺りに、経済で言えば、ブレトンウッズ協定を自分が主導しながら、自分の都合で簡単に破棄し、変動相場制に切り替えたアメリカという国の心底が透けて見えます。

 後世、「2014年7月1日が無かったら」などという事にならないように、これからが、日本国民が本気で行動すべき時でしょう。
 戦争という狂気の実態を知り、日本人の心が本当は何を望んでいるのか、真剣に考える時間が来たようです。

 第2の点は、アルゼンチンが、アメリカ連邦裁判所の判決に従わず、債務の元利支払いを強行したことです。この問題は前々々回取りあげましたが、金の亡者のヘッジファンドの行動を支持したアメリカ連邦裁判所の判決をアルゼンチン政府は無視しました。

 さて、アメリカはどうするでしょうか。おそらくアメリカは、最終的には、アルゼンチンの行動を認めることになるでしょう。そうでなければ、アメリカは世界中から「金のためにのみ行動するヘッジファンドの味方」として非難の標的になるでしょうから。

 日本はアメリカに迎合し、アルゼンチンはアメリカに抵抗しました。背後には、アメリカが、かつての「トラ」から「張子のトラ」になりつつあると言えそうな経済社会的な変化があるのでしょう。

 「2014年7月1日」、悪い意味でのエポックメイキングな日にならない様、日本人にも、世界の世論にも、誤りない意識とその主張としての行動を確実に取ってほしいと思うばかりです。