キャピタルゲインは資本利得などと訳されています。株や土地、商品など、投機対象になるものを買って、値上がりして売った時の儲けのことです。損すればキャピタルロスといいます。
インカムゲインは和製英語で、英語ではearned income(働いて得たカネ)とunearned income(働かずに得て収入=利子、配当、地代、家賃)の合計(社会保障などの「移転所得」は含まれません)という事になります。
gain(利得)におけるこの2つの概念は、欧米でも一部では理解されているようですが、経済学的に言えば、下のようになるのでしょう。
インカムゲインは、GDPや国民所得を構成する所得、つまり生産の3要素である「土地、労働、資本」に支払われるコスト「地代、賃金、利益(利子・配当を含む)」で生産の3要素に支払われる費用=要素費用ですから、付加価値の分配による所得、つまり社会を実質的に豊かにする経済価値。
キャピタルゲインは、値上がりによる利得で、実質GDPや実質国民所得計算の際はデフレータで消えてしまうもので、インフレやバブルで金額的には増えるが、名目的な豊かさで実質の豊かさには関係ない価格変動による計算上の経済価値。
ですから、この2つのゲイン(gain=利得)の基本的な違いは、次のようになります。
・キャピタルゲインでいくら儲けても「実質の生産」(実質GDPなどの「実質付加価値生産」=人間が活用出来る「富」、「豊かさ」)の量には関係ありません。儲けた人のところに、損した人あるいは儲けなかった人から富/豊かさが「移転」するだけです。
・インカムゲインの方は、付加価値(当ブログ「付加価値の正確な理解を 」2008年3月参照)の分配ですから、その投資によって得られた「実質の生産の増加」(GDP,付加価値の増加)の分け前、つまり人間が活用できる「豊かさ」が、資本活用と人間の労働によって増えた分(付加価値)の中からの分配です。
たとえば、今、原油が値上がりしています。儲けているのは産油国だとすれば、「実質世界総生産」は変わらないのですから、石油を消費する国の富(実質購買力)が「値上がり」という形で、石油産出国に移転しているだけということです。
日本でもかつて「土地バブル」がありました。地価上昇で儲かったお金はキャピタルゲインです。地価が上がっても日本の実質GDPが増えるわけではありません。つまりあの時は、サラリーマンが汗水たらして働いた月給の実質価値が、土地や住宅の取得の際に都市近郊農家など土地所有者に移転して行ったということです。「道理で給料は上がっても住宅ローン返済で苦しくて、地主はお金持ちで羨ましかったよな」と実感される方は多いでしょう。
お金の働きによって、キャピタルゲインもインカムゲインも生まれます。懐に入れば、どちらのお金も同じに使えます。
ところで、最近、アメリカなどの主唱によって、「儲かりさえすれば、どっちだっていいじゃないか」といった風潮が一般的になっています。しかし、どちらの「ゲイン」(利得)が本来、人間全体の幸せに適ったものなのか、よくよく考えなければいけないのではないでしょうか。