tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

実質賃金、プラス転換

2015年06月03日 15時17分55秒 | 経済
実質賃金、プラス転換
 2015年4月に至り、2年ぶりに実質賃金がプラスに転換しました。まだプラス0.1パーセントですが、マイナスからプラスになったことは大きなことですし、しかも今後もプラスの幅は「多分」より大きくなっていくだろうと考えられるところから、「これも日本経済の正常な発展段階」入りの重要な要素の1つと考えたいと思います。

 6月2日の発表の報道によれば、5人以上事業所の現金給与総額が0.9パーセント上がり、それに対応する物価の上昇を差し引いて0.1パーセントの実質賃金の上昇ということです。
 わずか0.1パーセント程度なら、本当に上昇したのか誤差の範囲なのか解らないよなどという声も聞こえそうですが、日本の政府統計ですから信用できるでしょう。

 それよりもなぜプラスになったかですが、すでに皆様ご承知のことと思います。今年の1、2、3月の実質賃金を同じ毎月勤労統計の指数で見ますと、前年同月比で、それぞれ2.3%、2.3%、2.7%のマイナスです。その間、賃金上昇率は大体0.0~0.2パーセントで、消費者物価は2パーセント半ばの上昇率ですから、マイナスは当然です。

 原因は当然消費増税で、消費増税の影響を除けば、消費者物価昇は0.5パーセント前後でしょう。そして、この消費増税の影響は昨年4月からの1年間だけで、今年の4月から消えます。消費者物価の上昇汁は0.5パーセント前後に落ちます。

 現金給与総額の実質化のデフレータとしては、総務省は消費者物価の総合ではなく、特別のデフレータを使っているようですが、いずれにしてもそんなに大きな違いはないでしょう。
 
 そんなわけで、この4月以降は消費増税の影響は消え、賃金そのものは昨年よりも上昇率は高くなるでしょう。新年度の賃上げが4月から実施されるのは大手企業の一部だけで、賃金交渉の妥結自体が新年度にずれ込む中小企業は多いわけですから、統計的には、賃金上昇率はもう少し高まるだろうと考えるわけです。

 さらには、今後円安による輸入物価上昇の影響も昨年、一昨年よりも小さくなるでしょう。消費者物価はあまり上がらず、賃金が着実に上昇していくという、サラリーマンにとっても、日本経済にとっても健全な成長プロセスに入っていく可能性が高いと思います。

 最後にもう一つ付け加えれば、現状の賃金上昇は、企業経営を圧迫するほどのものではないということです。企業収益は安定して改善しています。
 これだけ揃えば、日本経済自体としては、外来のショック以外、当面大きな心配はないということでしょう。

エネルギー問題、日本のアキレス腱?

2015年06月01日 11時38分44秒 | 経済
エネルギー問題、日本のアキレス腱?
 国会では連日又ホルムズ海峡が話題になっていますが、エネルギー供給が日本経済のアキレス腱という考え方は、何か日本人に染みついているような気がします。

 かつては日本をエネルギー政策で締め上げるものだなどとして、「ABCD包囲陣」などという言葉を作り、その突破のためにと太平洋戦争に突入し、エネルギー問題よりずっと深刻な破局を経験しました。

 戦後の記憶で強烈なのは、二度の 石油ショックでしょう。1973年の第一次オイルショックでは原油価格が4倍に上がり、その6年後の第二次オイルショックでは、さらに3倍に上がりました。

 第一次オイルショックの時はトイレットペーパーや合成洗剤が店頭から消えるパニックが起き、消費者物価はピークでは26パーセントも上昇して、高度成長が一転ゼロ成長になり、国民生活は大混乱しました。
 しかし、第二次オイルショックの時は物価上昇も軽微で殆どショックもなく、逆に日本経済は「ジャパンアズナンバーワン」の時代に入りました。

 この結果の違いは単純に言えば、第一次オイルショックの時は国民も労使も政府も大慌てに慌ててしまったのに対し、第二次オイルショックの時は、冷静に合理的な対応が出来たことでしょう。

 湾岸戦争の時も、戦後機雷の掃海に協力しましたが、石油供給危機という感覚はほとんど残っていません。

 確かに統計的には原油の8割ほどは中東からですが、LNGは3分の2が中東以外ですし、ロシアが世界一の産油国になり、シェールオイルでアメリカが世界一の産油国になるという変化の中です。
 国産の再生可能エネルギーも、今後は、その気にさえなれば、急速に伸びるでしょう。

 日本は、世界の平和に貢献することを国是としていますが、そのためにも、エネルギー争奪戦に参加・協力しようとするのではなく、自然エネルギー開発、省エネ技術開発に総力を結集し、化石燃料依存の世界のエネルギー事情の齎す「エネルギーが紛争の源」という状況の改善の方向を、世界に先がけて徹底追求し、その可能性を示すべきでしょう。

 それが日本として、「歴史に学ぶ」という事にもなるのではないでしょうか。