tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

消費支出と日本経済の関係を数字で:前回の補足

2017年01月13日 17時38分38秒 | 経済
消費支出と日本経済の関係を数字で:前回の補足
 国民が将来不安に駆られず、所得が増えれば消費も増やすといった状況になれば日本経済は健全性を取り戻すようになるだろうと前回も指摘しました。

 「所得が増えても消費は減る」という現状では、経済が活性化すとは思えません。しかも貯蓄しても利息が付かないのが当たり前ですから、将来不安は深刻です。
 日本もかつては「郵便局に100万円預けておけば10年たてば200万円になるんだから、老後の備えは確りできそうだ」などと言っていたのですが、今は・・・。

 ところでGDPに占める民間消費支出を1月2日に載せました「政府経済見通し」で見ますと、「GDPに占める消費支出の割合」は下記です(単位:兆円、%)。
・平成28年度(実績見込み GDP 540.2、民間消費支出301.0で55.7%
・平成29年度(見通し)  GDP 553.5、民間消費支出305.8で55.2%
「GDPの7割は消費支出」などと言われるアメリカとは大違いです。(アメリカは、生産するより余計食べて(消費して)しまいますから経常赤字国です。)

  「政府経済見通し」そのものが消費不振を認めているわけで、今の日本は異常な低さです。
 ちなみに、総務省の家計調査の平均消費性向の推移を、代表的な指標である勤労者所帯(勤労者所帯の統計しかありません)で見てみますと、1991年のバブル崩壊から実質可処分所得(物価の影響を除いた手取り収入)の伸び悩みから、家計は緊縮、消費性向は年々低下、1990年の75%台から1998年のボトムでは71.3%となっています。

 その後リーマンショックなどがあり、上昇下降のジグザグを繰り返しながら、2014年には円レートの正常化による経済活況で75.3%まで回復しました。
 ところが、その後は、2015年には1.5ポイント下がって73.8%、2016年の数字はまだ出ていませんが、月別調査結果の2016年1~11月の平均数字は対前年比1.6%の低下です。アベノミクスの景気回復で上がるかと思いきや急低下です。(原因は前回分析)

 12月も同様とすれば、2016年の平均消費性向は72.2%ということになるわけで、アベノミクスの成果の喧伝にも関わらず、平均消費性向はこの2年間で3.1ポイントの低下となります。

 もしこの3.1ポイントの平均消費性向の低下がなければ、そして勤労者所帯の消費性向の低下が概ね(消費性向の)代表性を持つとすれば、その分民間消費支出は増え、29年度の民間消費支出は(305.8×75.3/72.2)319兆円になり、それだけでGDPを13兆円ほど押し上げます。政経済成長率にして2.4パーセントの押し上げです。(成長率は2倍に)

 その他の変更がなければ経常収支黒字は、政府見通しの23.6兆円から10兆円余になり、円高の可能性は大分小さくなるでしょう。
 ちなみに、勤労者の実質可処分所得のレベルが今と同じ41~42万円(2010年基準)だった1985年(「ジャパンアズナンバーワン」と言われた時期)の勤労者所帯の平均消費性向は77~78%台でした。

 消費者が日本の将来に期待と自信を持てば、日本経済は十分伸びる余地をもっているのです。国民のエネルギーが前向きに発揮されれば、それは持続します。
 政府はそのための具体策をアベノミクス「第4の矢」にすべきでしょう。これは経済学から社会学、財政学、政治学に広がりを持つ問題です。

 賃上げ奨励などと言う姑息な手段に矮小化せず、本当に日本の力が発揮されるような環境づくりが求められます。

自力での経済成長を考える時

2017年01月12日 16時20分54秒 | 経済
自力での経済成長を考える時
 アメリカの次期大統領トランプ氏が、中国、メキシコと並んで日本もアメリカと「良い取引をしていない国」として名指しされと事に正に「びっくり」という方も多いでしょう。
 トランプさんが何と言うかに関わりなく、日本は確りと礼儀正しい対応をしてほしいと思います。

 それはそれとして、トランプさんが本当に大統領になった時、此の侭なのか、何か変わるのか解りませんが、変わらないことを前提に、日本としても経済体制を整える必要がありそうです。
  現状、アベノミクス下の日本経済は、何か円レート次第という傾向を強め、その結果、トランプさんの発言に一喜一憂といった、情けない状況になってしまっているように感じられます。

 今の日本経済にとって本当に困ったことは、前回、今春闘の問題に関連して書きましたように、 消費不振でしょう。
 国内消費が不振の時、企業は外需に頼らなければならなくなり、外需に頼ると、ますます経常収支の黒字が膨らみ、トランプさんに「貿易不均衡」と言われるかもしれません。そしてそれは 円高に直結するかもしれません。

 日本経済にとっては困ったことです。前回も触れていますように、この消費不振は、賃金は多少なりとも上がっていますが、 消費性向が下がっているからというのが現実です。今、日本の家計は、消費より貯蓄優先の行動をとっています。

 貯蓄優先の行動の原因は、言わずと知れた「将来不安」です。将来不安の主要な原因は老後不安、雇用不安(不安定)といった日本経済・社会の将来への不信感です。
 これへの対策は、日本経済が成長させることしかありません。成長だけが雇用の安定や質の確保、社会保障の将来の原資を生み出します。

 そして成長させるためにまず必要なのは前述のように「消費性向」の回復です。
 ここからが本当の問題ですが、どうすれば消費性向は上がるのでしょうか。「言葉だけなら」将来不安の払拭と言えばいいのでしょうが、現実の政策が必要なのです。

 ここで改めて着目しなければならないのが、「格差社会化と消費不振」の関係です。 ピケティも指摘していますように、格差の拡大、富の偏在は歴史的に「需要不足経済」「経済停滞」「恐慌」を引き起こしてきました。
 一億総中流と言われた時期、日本は「ジャパンアズナンバーワン」と評価され、世界で最も所得格差の少ない国の1つでした。

 残念ながら今の日本では、政府の賃上げ奨励から、 働き方改革 所得税制、社会保障、教育システムなど、実際には格差縮小に不適切なものが多いのです。
 この点については、このブログでも再三触れてきていますが、政府が本気で格差縮小の意思を国民に理解させる以外、消費性向を引き上げる方法はないようです。

 これからの日本経済の課題は、社会全体の格差縮小、国民の安心感の回復そして経済成長の促進と 経常黒字の減少、「何かあれば円高」の是正で、日本経済の正常化、アメリカとの(その他の国とも)安定した関係を築くことでしょう。

 これらの点から言えば、春闘においては、連合の指摘により合理的な面が多いようです。

2017春闘の判断基準を考える

2017年01月11日 12時24分33秒 | 労働
2017春闘の判断基準を考える
 経団連の2017年版経労委報告の最終案も決まったようで、政府の賃上げ奨励、政府主導路線、連合のキャッチフレーズ「底上げ・底支え」、経団連の「賃金引き上げについての昨年より踏み込んだ表現」(経労委報告発表待ち)がいわば三つ巴になって、年度末に向けて戦わされて行くことになるでしょう。

 賃上げの景気刺激、経済成長への効果については政府が最も気にしているのかもしれません。政府は出来るだけ賃上げが大きい方がいい、総額人件費が増えれば、それが消費増加につながるだろうし、場合によってはコストアップでインフレにつながっても、目標の2パーセントインフレに近づくので、それでもいい、といった願望でしょう。
 
 経団連は、政府の端的な賃上げ指向に一応賛成しながら、経済の先行きがますます不安定化する中で、賃金の固定的な部分(月例給)は出来れば余り挙げたくない、しかし現状利益は高水準、労働分配率も下がっているので「上げられるところは…」いろんな形で上げてほしい、その上で、政府があれだけ言うのだから、ベースアップも視野にというところをどのくらい強く言うか辺りに工夫を凝らすといったところでしょうか。

 連合は、基本的には賃上げは多い方がいいが、日本経済との整合性も考え、定昇プラスベア(2%+2%)を基本線に、スローガンとして掲げる「底上げ・底支え」、格差の是正、サプライチェーン全体の付加価値の適正分配(中小へのしわ寄せを認めない公正取引)を昨年に続けてより明確に掲げ、中小企業への力点、非正規労働者の賃金上昇を重視しています。

 それぞれの立場に属する方は、矢張りそれぞれの立場を肯定するのかもしれませんが、「支払い能力シリーズ」でも述べていますように、政労使、三者とも最も重要で、共通な目的は日本経済の安定した、少しでも高い経済成長の実現でしょう。
 GDP,あるいはGNI(国民総所得)が、賃金、利益、税収すべての原資なのですから。

 という事で、この政労使共通の目的に最も適した主張はどれかという事を、僭越ながら考えてみましょう。

 政府は、賃上げが増えれば消費が増えると単純です。インフレになって消費が増えてもいいというのかもしれませんが、それでは生活水準は上がりません。
 しかも統計で見れば、このところ毎年賃金は上がっていますが、消費は減っている状態です。原因は「 消費性向」が低下しているからです。
 その原因として指摘されているのが 格差社会化と将来不安(特に雇用不安)です。これを政府は殆ど解っていないようです。

 経団連は、大企業の利益を代表する団体ですから、企業の安定発展が最も気がかりでしょう。人件費は主要な固定費(実は日本経済最大の固定費)ですから、この増加には慎重でしょう。人件費を払えば消費が増えるといっても、増える人件費の方が大きければ減益です。政府の顔も少しは立てるというのが精いっぱいではないでしょうか。

 連合の賃上げ要求が抑制的(経済とのバランスを意識する)なのは、多多ますます弁ずの欧米労組との考え方の違いでしょう。「底上げ・底支え」で格差是正を狙うのは、日本経済成長への重要な視点でもあり、成功すれば、消費性向の改善につがるものです。
 中小・非正規の賃上げ注力もその一環で、関連する下請との公正取引の主張は立派です。
 一つ、非正規の賃金上昇が前面で、非正規の正規化が、些か弱く見えるのは残念です。
 統計上は「不本意非正規」は少ないのですが、出来れば正規という潜在願望はもっと強いはずです。
 正規と非正規は 賃金の決定基準が違います。連合にはもっと非正規の正規化に力を入れてほしいように思います。

 さて、政労使、三者のどれが、本来の「あるべき春闘」の姿に近い主張なのでしょうか。

核兵器禁止条約の交渉開始に日本は反対

2017年01月09日 11時07分10秒 | 国際政治
核兵器禁止条約の交渉開始に日本は反対
 国連で採択された核兵器禁止条約の交渉を今年開始するという今回の決議案の採決にあたって日本は反対しました。(前段階の報告書の採択では棄権でした。)

 これに対しては国内でも賛否両論、マスコミの論調も二分の状況のようで、確かに今の日本の置かれた状況の中では難しい問題でしょう。

 唯一の核兵器被爆国として、せめて棄権という選択はなかったのかといった意見は多いようです。
 日本人としての気持ちを表すのであれば、棄権という選択もあったのでしょう。しかし棄権、反対のどちらにしても、世界の核兵器保有問題が当面それでどうなるも考えられないから、日本の置かれた立場も考え、極めて現実的に反対したという事でしょうか。

  今の世界情勢の中で、核兵器廃絶の交渉に入ると言っても、実現性は殆どないと言うのかもしれませんが、こうした条約が提案され、採択されるという事はある意味では人類の危機意識の表出かもしれません。

 私は人類は多分今後核兵器を使うことはないと思っていますが、それは、核戦争は人類の破滅に直結するという核兵器に対する人類全体の恐怖が、核兵器保有までは認めても、現実に使用することへの決定的な抑制意識を生み、それは核兵器が持つ、いわゆる「核の抑止力」という形で支えられていると思っています。

 確かに、1945年、日本に2発の原爆が落ちて以来、人類は核兵器を使用(実験はしても)してはいません。そして多分この状況は今後も続くでしょう。
 しかしこのままでいいとは、今の核保有国でさえ思っていないのではないでしょうか。地球を何回も破滅させることが出来るほどの核戦力を保有している現状などといわれますが、そのコストも巨大でしょう。

 日本自体、核抑止力の傘の中にあるから、あるいは決議しても実効性がないから反対といった考え方もあるでしょうが、唯一の被爆国として、先ず人類全体の意見を聞いて、100年先に向かって知恵を出し合おうという積極的意識を持つことが大事なのではないでしょうか。

暴走気味のトランプ発言

2017年01月06日 22時43分17秒 | 国際関係
暴走気味のトランプ発言
 昨日、トランプ氏の言っている経済政策について、問題含みの点をいくつか指摘しましたが、今日は具体的に、日本のトヨタ自動車を名指しの発言が飛び込んできました。

 就任前ですし、NAFTAだけでなくWTOとの関係から見ても、非現実的な面も多分にあるようで、今の段階ではまともに論評するには当たらない発言だと思っています。
 トヨタがCSR(企業の社会的責任)をベースにした自社の立場をはっきりさせる発言をしたのは蓋し当然の対応でしょう。

 1月20日以降、こうした問題にトランプ政権がどう対応していくのか、とても見当がつきませんが、この種の問題はまだまだいろいろな場面で、いろいろな形で起きる可能性は少なくないでしょう。

 かつてCSRをベースに NGR(nation’s global responsibility )というこのブログとしての造語を提起しましたが、今迄のアメリカにも、このNGRから見るとかなり逸脱したと考えられるような自国優先の行動が見られました。 

 アメリカ・ファーストを掲げる新政権が発足すれば、何かさらに問題が出そうな懸念もありますが、アメリカは、日本にとっても、世界にとっても大切な国ですから、ますます適切な対応が必要でしょう。

 勿論、トランプ大統領のアメリカは、今までなかったような世界にとっての良い面を発揮してくれるかもしれません。
 問題含みではありますが、現状、より多くの人々から多様な期待をされているトランプ大統領のアメリカです。

 日本としては十分な柔軟性を持って、今後のアメリカが自国のためにも、世界のためにも、より良いパフォーマンスを発揮してくれるよう、親身な対応を知恵を絞りつつやっていかなければならないのでしょう。あまり容易ではないようですが。

見えてきた・・・? トランプ経済政策の問題点

2017年01月05日 11時12分51秒 | 経済
見えてきた・・・? トランプ経済政策の問題点
 トランプ政権が、その力技でアメリカ経済を回復させてくれるのではないかという期待感でしょうか、「アメリカ経済は上振れか」などといった見方もあるようです。

 そうした中で、個別に企業の行動に変化が起きたり、規制緩和への見方なども逐次報道されて来ています。

 フォードモーターはメキシコ工場の建設をやめることにし、ミシガン州の工場を増強することになるようですし、GMもメキシコ工場の車は、ごく一部を除いてアメリカ国内へは持ってこないといいと弁明したりしています。

 勿論メキシコで生産したほうが、車の価格は安いわけですから、米国内で生産した車は高価格になる恐れがあります。
 国内に雇用が生まれ、雇用も所得も増えるのは確かに好ましいことでしょうが、光があれば影もあります。

 まずは衆目を集めやすい車が標的で、不法就労者と壁建設で話題のメキシコとの問題ですが、アメリカ企業は、あらゆるものを安い海外の労働力を活用して生産しているのですから、これからこういった問題をどこまで広げるつもりなのか、それによる国内製品のコスト高をどうするかです。

 アメリカの高コストへの対策はドル安が最も簡単な手法ですが、トランプ新大統領の思惑は那辺にあるのでしょうか。

 アメリカ経済の上振れといった意見の出る最大の要素は、新政権がインフラ投資1兆ドルと、老朽化したインフラ整備の積極化を謳っている事にもあるでしょう。
 しかもそれを政府資金でなく、民間資金でと言っています。アメリカ国内でも、そう巧くはいかないという意見が多いようですが、アメリカは、もともと経常赤字の国です。

 コスト高・経常赤字の国で、国内経済活動を活発にすれば、その資金は海外依存という事になる可能性はさらに大きくなりそうですが、それを読んででしょうか、トランプ氏は、金融の規制緩和を主張しています。
 サブプライムローンからリーマンショックで大失敗した経験から金融機関の自己勘定売買を規制するボルカールールを基調にしたドッド・フランク法が作られましたが、それを見直す意向と言われます。

 金融規制の緩和で、世界中から金を集め、それで米国のインフラ投資にというのは素晴らしい発想ですが、まさに「アメリカ・ファースト」の権化のようにも見えます。
 これこそトランプ流錬金術なのかもしれませんが、何かいろいろな問題が、これから出てきそうな気がして、(今はドル高、株価高騰に沸いている国も多いですが)先行きが余りにも不透明なのが心配になってきます。

平和国家日本の原点の記録を見て(2017/1/4朝日新聞朝刊)

2017年01月04日 11時55分22秒 | 政治
平和国家日本の原点の記録を見て(2017/1/4朝日新聞朝刊)
 今日は1月4日、仕事始めです。御屠蘇気分をキリリと引き締めて「さて仕事」です。
 仕事始めに関係のなくなった今も、何か三が日とは違った気分になります。

 ところで、これは丁度昨日の続きにもなりますが、今朝の朝日新聞に、「平和国家日本の原点」というべき、戦後史の記録についての記事がありました。
 1945年9月4日、終戦直後の「帝国議会開院式」での昭和天皇の勅語の文案推敲の経緯についてです。

 まさに8月15日の玉音放送「終戦の詔勅」に続くものですが、その第一案から、第四案までの修正の経緯の詳細が書かれています。

 国立公文書館資料によるものですが、敗戦直後の混乱の中での、これからの日本の在り方についての記述の部分です。第一案は「光輝ある国体の護持と国威の発揚に邁進」と書かれ、何か戦中色を残したものです。「終戦の詔勅」作成にも関わった川田瑞穂内閣嘱託が書いたとみられ、戦中派には解る感じがします。

 しかしこの文言は第二案では赤線で抹消され、抹消は緒方書記官長(緒方竹虎、後の自由党総裁)とのこと、第三案では「平和的新日本を建設して人類の文化に貢献」と書かれ、これは東久邇宮稔彦首相がご自身で書き込まれたらしい由。そして第四案ではこれが「平和国家確立」に直され、川田嘱託訂正と記されているとのことです。

 朝日新聞は、関連して当時の先哲また現代の学識経験者の意見の記録や発言を記していますが、終戦直後、未だに戦争遂行の動きも残り、極貧で世情騒然たる中で、国の中枢にある人々が、極めて短期間に、一致して「平和国家」という4文字に、これからの日本の存在意義を認めたことはやはり日本人の本質を示しているように思われます。

 世界の歴史を見れば、敗戦といった事態に対し、いかなる意識を持つかには、大きく二つの方向があるでしょう。1つは、雌伏して何時かはリベンジ(報復して打ち勝つ)という方向です。日本でも人口に膾炙している諺に「臥薪嘗胆」があります。

 もう1つは、争うことは止めようという選択です。
 そして日本の中枢にある人々は一致して平和への新たな出発を選んでいます。そしてほとんどの日本人はそれを明確に歓迎しました。
 おそらくその背後には、基本的に、「太平洋戦争は戦うべきではなかった」という意識が(おそらく戦争中から)日本人の心の奥底にあったからではないでしょうか。

 そうした意識のよって来たるところ、リベンジを選ばず、平和を選んだ日本人の心の奥底にあったのは、前回も指摘しましたように、縄文1万余年の、日本人の海馬に埋め込まれた「争わないことが最善」という日本文化形成の時期を通じて蓄積された深層意識だったのではないでしょうか。

 終戦直後、ごく短期間に、日本の中枢でこうした選択がされたことに、私は当時の日本の置かれた状況の中での感情や得失を超えた、日本人の在り方の本質を見る思いがしました。

日本はこんな方向を目指すべきでは

2017年01月03日 12時08分58秒 | 国際関係
日本はこんな方向を目指すべきでは
 国際的にも、国内的にも、今年はいろいろな事(変化)が起こりそうな気がします。
 変化に対応する柔軟性は大事ですが、同時にその柔軟性は「ぶれない芯」を持っていなければならないでしょう。場当たり主義では信用を無くするだけです。

 世界でも、国内問題でも、企業内や地域社会でも、人間には、安心感が必要です。
 安心感は人間関係の中から生まれます、人間社会には組織があり、その組織は人間によって成り立っています。
 組織の中に安心した人間関係(信頼関係)を持てない人がいると、組織という人間集団はうまく動きません。特にリーダーの立場の人にはこれが重要です。

 実は、誰もが、いつもそう思っているのです。そう思っていながら、国際関係は不信が支配しがち、国民の多くが政権の政策に不信感を持ち、ブラック企業が昔より増えたように思われ、いじめの問題も深刻化しているようです。

 そうした中ですが、日本という国、日本人である我々ぐらいはすくなくとも、何か「ぶれない芯」をもって、行動したいものです。

 戦後70余年、日本はそれなりに世界から、またアジアの国々から信頼できる国といった認識を築く努力をしてきたと思いますが、その基底には何があったのでしょうか。
 
 戦争に負けて反省したからという意見もあるでしょう。しかしそれだけではないようです。平和を守り決して戦わないことを是とした日本人は、それが最も「居心地がいい状態」と意識しているのではないかと思われます。それは日本人の海馬の中に、「それを善しとする」何かが確りと存在するからでしょう。

 おそらくそれは 1万有余年の縄文時代、日本人が形作られた長い経験(記憶)から生まれたものではないでしょうか。1万年という長さは大きな意味を持つように思われます。
 このブログでも触れてきましたが、縄文時代には戦争の形跡がありません。征服、被征服、奴隷制もなかったと見られています。

 地震、台風、洪水、津波などの自然災害が多分頻繁に起きていたであろう、海面上昇で孤立した日本列島で、何十万人かの、大陸や島嶼からの多様なDNAを持つ人間が、北から南まで交流し、共存、共生して、あたかも単一民族のような日本人になるまでの1万余年の海馬の記憶、そこに原点があると考えるべきではないでしょうか。

 時に荒れ狂う自然と共存しながら、森を育てれば海も育つことを学び、今日でも国土の7割の森林を維持してきている日本です。
 十七条の憲法の第一条に「和を以って貴しと為す」が掲げられ、平安時代から江戸時代まで日本の子供が学んだ「実語教」には「山高きをもって貴からず、木あるをもって貴しとなす」とあります。

だからこそ、戦後の状態が日本人にとって、かけがえのない居心地よさを感じさせるのでしょう。
 この知恵を世界で共有することが日本人の夢であってもいいのではないでしょうか。

来年度(平成29年度)の政府経済見通しを見る

2017年01月02日 12時41分45秒 | 経済
来年度(平成29年度)の政府経済見通しを見る
 平成29年になったところで、4月に始まる「平成29年度」の日本経済について、政府がどんな見通しをしているのか(2016/12/20発表)を見ておきましょう。
 <GDP成長率>
28年度実績見込み 名目1.5% 実質1.3%
29年度見通し   名目2.5% 実質1.5%
 <民間消費支出>
28年度実績見込み 名目0.4% 実質0.7%
29年度見通し   名目1.6% 実質0.8%
 <民間企業設備> 
28年度実績見込み 名目1.3% 実質2.1%
29年度見通し   名目4.8% 実質3.4%

 ご承知のように、名目と実質の差は、対応する物価の変化率ですから「経済成長率」は来年度は名目で今年より1ポイント高くなりますが、物価が上がるので実質は0.2%の上昇にとどまるという見通しです。インフレを伴う景気の微弱な上昇でしょうか。

 これを支えるのは民間消費と、企業の設備投資です。ここでは書いていませんが、民間住宅投資は来年度は低調との見方です。(マンション建設一段落?)
 しかし民間消費の方は伸びは低調で、景気をリードするのは企業の設備投資という事になっています。よほど企業業績が良くなるとみているのでしょうか。

 気になるのは、政府は来年度になると、物価がかなり上がると見ている点です。資源価格の上昇による輸入インフレ予想でしょうか、本当のことを言えば、資源のない日本にはこれは痛手です。政府は物価さえ上がれば景気にはプラスと見ているようです。

 貿易・サービス収支は5兆円ほどの黒字で、特に海外からの投資収益も含めた経常収支は24兆円の黒字です。

 <GDP(国内総生産)>は554兆円ですが、海外で稼いだ分も入れた<国民総所得>は574兆円で、こちらの方が日本の実力で、これは名目で2.7%、実質で1.7%伸びる見通しです。
 問題はいつも述べますように、24兆円の経常黒字分が使い残されているという事です。日本はいつも黒字だという事で、何かあると円高に振れ、経済運営をやりにくくします。
 一方政府は1000兆円を超える債務を背負っています。日本自体は大幅黒字、けれども日本政府は大幅赤字という日本独特のねじれ現象(?)が、そろそろ問題になって来る様に感じられます。

明けましておめでとうございます

2017年01月01日 12時27分02秒 | ご挨拶
明けましておめでとうございます
 
 切れ目のない時の流れに巧い具合に区切りをつけて、過去を振り返ったり、将来への思いを新たにしたり。これも素晴らしい人間の知恵だと思います。

 今年も、こうした古来の人間の知恵を生かしながら、皆様と一緒に、より良い未来への道を模索していきたいと思っております。

 何卒よろしくお願い申し上げます。 <tnlabo>