tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

緊急事態宣言4回:腰だめ政策決定、戸惑う国民

2021年07月15日 21時13分54秒 | 政治
緊急事態宣言4回:腰だめ政策決定、戸惑う国民
安倍政権、菅政権が自負するのは「決める政治」ということなのでしょうか。
見ていて感じるのは、勢い余って、決められない事まで「決めて見せる」というという離れ業をやってしまう事です。

このブログでは、とても出來っこない財政再建(プライマリーバランスの達成)の期限を自信をもって(持った顔をして)決めている事を何度かとり上げました。その時はカッコよくても、期限が来て出来ないとカッコ悪いですね。

今回取り上げるのは、コロナ関連で、「緊急事態宣言」についてです。
第1回の緊急事態宣言は、2020年の4月13日に出されました。この時は期限を1か月と「決めて」いたのです。

最初の疑問は、1か月?、それで目鼻がつく?、でした。
欧米諸国では、感染者、死者が急増、感染力の強さもサーズなどに比べれば格段に強いと解って来ていて、PCR検査で感染の広がりを早期に把握する必要があることは皆気が付いていました。

しかし日本ではPCR検査能力は全く不足。そのデータ不足の中での政府の「期限1か月」でしたが、「期限」間近のゴールデンウィーク辺りには、緊急事態宣言の期限1か月は、もう「何だ腰だめか」といったものになっていました。

安倍さんは、5月6日に宣言解除が出來なかったのは「断腸の思い」だとのレトリックで躱し、結局、解除は5月下旬にずれこみ、解除されたところでも、死者の数は減ってきたとはいえ、感染の懸念は何も変わりがないので、自分で気を付けるしか無いですね、といった雰囲気でした。

その後菅政権になって、「決める政治」を引き継いだのでしょう、日本学術会議の推薦した議員の内6人を任命しないと「私が決めました」でデビューしました。

その後はご存知の通り、景気が落ち込んだら大変と、政策を景気浮揚に「決め」、GoToキャンペーンに精出しました。総理と再生相などは熱心に旗を振り、自民党も応援、GoToトラベルでのコロナ感染者は60人とか100人程度などと言っているうちにコロナウィルスはここぞと猛威を振るうことになったようです。

そして結局第二回の緊急事態宣言になりましたが、宣言は1月8日、期限は1か月という事でした。
この辺りで、「何で期限を決めるの?」という疑問が出て来ます。「何か根拠があるの?」という疑問です。

「決める政治」なんだから、期限も決めるのでしょうという解説はありましたが、説得力はありません。
結局、解除は3月21日になったと記憶しますが、なぜ解除したのかです。
「解除jすれば、(何も客観情勢は変わっていないのだから)リバウンドするでしょうと多くの人は感じていたようです。

そして予想通りの結果がやく1カ月後、4月25日に出された3回目の緊急事態宣言です。
この辺りからワクチンという新しい要素が入ってきます。負け戦を勝ち戦に転換する Game Changerの登場です。

そのせいもあったのかどうかわかりませんが、この緊急事態宣言は5月11日までと短期間ですが、矢張り期限を「決め」ています。
5月11日は何かの区切りの日だったのでしょうか、コロナウィルスと相談したのでないでしょうから、政権には、何か別の決める理由があったのでしょうか。

結局これはずっと伸びて5月31日になり、地域によっては6月20日になったりで、東京は7月11日まではいわゆるマンボウでしたが、12日には4回目の緊急事態宣言、沖縄はずっと続いて8月22日までになっているようです。

ここまで来ても、まだ解らないのは8月22日になれば何か変わる事が解っているのでしょうかという事です。
そんなことは多分あり得ませんから、「緊急事態宣言の期限」というのはやっぱり、最初から最後まで政権か誰かかの腰だめで「決めた」という事でしょう。

本来、緊急事態というのは、コロナウィルス次第なのです。政権が勝手に決めても何の意味もないのです。

決めるとすれば「コロナ制圧の目鼻がついたら解除が可能です(それまで頑張りましょう)というのが最も正確、最も正直な言い方でしょう。
政権が、勝手に決めて、勝手に変えるというのは、政権の都合で国民を騙すことでしょう。
 
さらに言えば、4回目の緊急事態宣言をしたということは過去3回は「失敗だった」ということの証明ということではないでしょうか。

緊急事態宣言の解除は、ワクチン接種が、十分に行き渡った時、それも、新たなイプシロン株が出現しないという条件の下で、ということになるのではないでしょうか。  

政権独善の結果?ワクチン迷走曲

2021年07月14日 15時19分27秒 | 政治
政権独善の結果?ワクチン迷走曲
コロな征圧の本命は「ワクチン」という事は初めから解っていたことではないかと思いますが、日本のワクチン迷走曲は、最初は「ワ」の字も聞こえないような出だしでした。

われわれは、日本の製薬会社がワクチンの製造開発に頑張り、政府が積極的に応援するのかと思っていましたが、政府は、ワクチンの国産化にはまったく無関心だったようです。

当時から、日本では出来っこないと決めていたのでしょう。結局アメリカのファイザーとイギリスのアストラゼネカと供給契約、後にモデルナ(アメリカ)を追加ということになったのですが、アストラゼネカは契約した1億2000万本のうち9000万本は兵庫県のJCRファーマという企業に同社が委託生産ということで、政府はあわててJCRファーマに補助金を出したりしたようです。

 しかしアメリカでもイギリスでも、大統領や首相が新型コロナに感染するほどの状況ですから、ワクチンは先ず自国優先になるのは当然でしょう。一方WHOでは低所得国ではワクチンが手に入らないのは望ましくないと述べるなど、ワクチンの配分問題は日本にとっても容易でないようそうでした。

 4月には訪米中の菅総理がファイザーのCEOにワクチン供給を国内通話で要請するといった珍事もあり、「電話なら日本からでもいつでも出来ますよ」などと揶揄される一コマもあったりしました。

そんなこんなでなかなか来ないワクチンも6月頃からは接種も進み、菅総理が、バイデンさんを真似て1日100万回の接種をといったことから、真面目な日本人は急速に接種体制を整え、地方自治体は大規模接種会場、企業では職域接種の家族も含めるといった配慮、各地の医療機関も、かかりつけ医も協力体制を整えるといった真剣な努力が始まりました。

その成果もあって、1日100万回接種が達成されたと政府が発表し、菅総理の顔を立てました。WRSという各地からの報告を集計したもので、一週間程度のまとめ報告が多いようなので、正確性は別として、100万回を達成したにもあったかもしれません。

これでようやくコロナ征圧の見通しも立ってくるのだろうか、日本人はやる時はやるから、などと思ったとたん6月末には、担当大臣から「新規の職域接種の申込み停止」、「地方自治体の大規模接種会場の申込み停止」の発言が飛び出しました。

オマケは、「ワクチンの在庫がたまっている自治体への配分を1割程度減らす」という事です。

そんなに在庫を抱え込んでいる自治体があるのがそもそもおかしいのですが、前述のWRSの数字を、既に配布したワクチンの数字から差し引いて、差が大きければ在庫がたまっていると判断するのだそうです。

在庫管理は難しい仕事で、計算した在庫と棚卸が合わないのが通常ですが、心理的に在庫を増やしたと思う原因は「あとから入荷がストップしたら大変」とか「接種の更なる促進」という状況でしょうからどちらも健全なものです。

トヨタ方式で在庫が減るのは、ジャストインタイムで部品が届くという生産計画とシステムが確立しているからです。
後から来るワクチンの量が減ったり、来なかったりしたら折角たち上げた接種システムや人員配置をどうするか、1日100万回とハッパをかけておいて、一体何を考えているんだ、というのが接種に本気になった人達の感覚でしょう。

WRSの正確性がどの程度か(菅内閣は数字に弱いのは定評)自治体は政府の計算通りに在庫を過剰に持っているのかという疑問、始めたからには何があろうと100万回打つ努力をするという自治体の入れ込みなどはすべて無視して(まったくの無頓着で)、全ては政府の思う通しにやれという、ほとんど独りよがりの判断、こんな事が、根底にあるように感じられます。

もとはと言えば、頭から外国のワクチンを買うことに決めて、国内で頑張りには見向きもせず、アメリカに行ったから国内通話で交渉できると考えたり、ワクチン獲得能力と無関係に接種回数の目標を高言したりという、計画性、綜合的配慮に欠けた政府のやり方のせいなのではと思っていますが・・・・・。

コロナ後を見据えた経済政策 10(まとめ)

2021年07月12日 21時55分00秒 | 経済
コロナ後にとるべき経済政策について9回にわたって見て来ましたが、お付き合い頂いた皆様には厚く御礼申し上げます。

4度目の緊急事態宣言、五輪無観客会場の増加の効果、ワクチン確保の行方など、未だ予測不可能な点はいろいろありますが、それらが何とか巧くいって、コロナ後が出来るだけ早く来ることを願いながら、今回でまとめにしようと思っています。

今回のシリーズのテーマには大前提が2つありました。
1つは人類社会の持続可能な発展目標、SDGsに則ったものであること、2つには、社会が格差化するとその社会は決して持続的なものにはならない、という2つの基本的な視点です。

2013年以降、円高の解消があったにも関わらず、消費不振の最大の原因は非正規雇用などに代表される所得格差の拡大によるものでしょう。
かつて日本経済が順調に成長していた頃の所得格差は、政府の所得税制、企業の雇用賃金制度などが、格差化を否定するものでしたら、まさに北欧諸国並みに小さいものでした。

結果的にいわゆる中間層が大きな部分を占める社会なり、消費の伸びは順調で、それが新製品の需要、ひいては技術革新に刺激を与え、政府の技術立国政策と相まって順調な経済成長を実現してきたという良き時代でした。

ところで現状はといいますと、円高解消で企業は収益が回復しても、国内需要はほとんど伸びず、内需不振から、企業の投資は海外へといった傾向が強く、外国のGDP拡大には貢献しても、国内の投資は大きくは伸びず、政府の技術開発や研究開発の軽視もあって、先端技術開発は停滞したままでした。

 多くの国民は、少子高齢化で日本経済の将来は大変だという政府の思い込みの結果のゼロ成長の中で「親の代より貧しくなる」と将来不安に駆られて来ました

こうした国民の将来不安による消費不振、企業のリスクテイクの停滞の結果のゼロ成長経済、それによる将来不安の一層の深刻化という悪循環を、国民の健全な消費活動、企業のチャレンジ精神の活発化という経済成長促進型の好循環に変えることが、コロナ後を見据えた政府の経済政策になるべきでしょう。

そのためには政府の所得税体系の見直し、法人課税の構造改革など、税制や補助金制度などの、後追いではなく、将来の持続的発展を政策の基軸に置いた政治姿勢が極めて大切だということは、歴史と経験の教える所でしょう

同時に、過去の経験から言えば、経済というのは、国民や企業の意識や気持ちの持ち方で全く変わるのです。
このブログでは、戦後最大の不況と言われた昭和40年不況脱出のきっかけ、石油危機による、当時99.8%を輸入エネルギーに頼ると言われた日本経済のどん底からジャパンアズナンバーワンへの発展のきっかけについても触れています。

経済政策には、国民の将来への意識にどう働きかけるかが極めて重要です。そしてその背景には、政府の信用、政府への信頼感がなくてはなりません。

国民に平気で嘘を言う、説明はいつもすれ違いや国民が忘れるまでの先延ばし、記録も記憶も平気で廃棄・忘却、国会論議は不十分で決まるのは強行採決などという事が重なれば、国民は、何が本当なのか、何が正しいのか、何を選択したらいいのか、正確な判断が不可能という事になるのではないでしょうか。

ところで早晩選挙になるのでしょう、こんな状況の中で、どんな結果になるのでしょうか。

コロナ後を見据えた経済政策 9

2021年07月11日 17時11分37秒 | 文化社会
財政再建は急ぐべからず、先ず経済成長、財政再建はその結果
このシリーズでは、SDGsの理念に従って、持続可能な安定成長路線に日本経済をのせるには、という検討をしているわけですが、これまでに消費拡大のために必要な所得税の改革、高度技術の開発を促進するための法人課税の改革をとりあげてきました。

税制を改革するということは、政府がこの国の在り方を改めるという事ですから、その政府の意思が国民に伝われば、国民の意識や行動も変わり、国民生活も、技術革新活動も活発になり、経済はは安定成長路線に乗るはずです。

多分その辺りで出て来る問題が、税制改革も結構だが、今まで政府が積み上げてきた膨大な財政赤字、GDPの2倍以上の国債残高はどうするのか、という疑問、意見が出て来るように思います。

安倍政権は財政再建を言いつつ何もできず、菅政権はコロナでさらに巨大な赤字国債を積み上げたばかりです。
財政再建の目標は、先ず、基本的にはプライマリーバランスの回復ですが、安倍政権も菅政権も、目標は決めるものの、実現性は全くないという結果の繰り返しです。

では、財政再建問題は、どう考えるべきなのでしょうか。
昨今、アメリカ発のMMT理論(新時代の貨幣理論)などというのが出て来て、日本のような借金財政でもインフレにならないのだから、財政赤字は特に心配することはない。インフレにならなければそれでいいのだ、などと主張するようです。

この問題については、このブログでは昨年、MMT問題のシリーズ、また、日本の国債が紙屑になる条件のシリーズとして検討してきて、ほぼ結論は出ています。
単純に言えば、MMT理論はアメリカ発で、日本の状態を前提にしているから成立する、とまあそんなところです。

理由は、アメリカは基軸通貨国で、ドルを刷ればよい、日本は万年黒字国で、外国の持っている日本国債は数%で、海外取引上の信用が当面無くなることはないといった条件の上に成立することのようです。

もう一つ付け加えれば、政府主導の新自由主義で、労働組合の力が弱まり、先進国では賃金インフレが起きにくくなっているという事もあるでしょう。

昨年来の検討で見て来ましたように、現状では日本の国債が信用を無くする(円が暴落する)という事は、起きないようですので、巨大な政府債務を早く何とかしなければならないと政府が言って、国民を心配させることは大変まずい政策選択です。

安倍政権も菅政権も、財政再建を旗印に掲げて、出来るはずがない様なプラマリー・バランス回復計画を立てて、当初予算だけは辻褄を合わせ、計画の期限が近づくと「駄目でした」と先延ばしの再計算を繰り返しています。
コロナ対策で、緊急事態宣言を4回も繰り返すのと似ています。失敗の繰り返しです。

財政健全化は経済が成長しなければできません。ゼロ成長でやろうとすれば、多分それは、日本がかつての韓国やギリシャのようにIMF管理になった時でしょう。

ですから、日本が万年黒字国で、世界的に信用があるうちに、早く経済が成長する政策を取り、地道に時間をかけて、国際的な信用を維持しながら、小幅でも確実に進めていくというのが最善の政策選択でしょう。 
 
財政再建は大事なことですが、出来ないことを焦って、じり貧になるよりも、万年黒字国という信用を確り維持しながら、先ずは、このシリーズで見てきたように、GDPの配分を税制も活用して「成長できる形」に組み替え、牛歩でも進めれば、何時かは片ついているということになるのです。

 世界がSDGsを最重要な課題としていることを確りと理解し、税金を決める政府も賃金を決める労使も協力して格差社会化を逆転し安定所得層を増やし、もう一方では先端技術開発により多くの資源を割くような国づくりが必要なのでしょう。

コロナ後を見据えた経済政策 8

2021年07月09日 17時23分54秒 | 文化社会
法人課税の構造改革でSDGsを目指す
「プラザ合意」(1985)前の日本の法人税率は40%、平成不況では30%に下げられましたが、その後、安倍政権で年々下げられ現在は23.2%です。

確かに消費不振に比べれば、企業の設備投資が僅かな成長率を支えてきたという実績はあるかもしれませんが、日本経済を安定成長とか力強い成長に向かわせるような効果は、法人税の減税で実現することはなかったようです。

勿論、消費需要が活発になって、国内経済を需要が引っ張るようになれば、企業の設備投資も活発になるでしょうが、SDGsを目指す経済ということになりますと、これには当然高度な技術開発が必要になり、法人税制もそうした要請に添うものでなければならないでしょう。

既に、日本の研究開発投資の停滞には何度も触れていますが、現在の最大の問題であるワクチンの開発についても、いかに日本が遅れてしまっているかということが、今回のコロナ禍で、はしなくも明らかになってしまいました。

これは、法人税減税の中で、法人課税の構造そのものを、技術立国と言われる日本経済のあるべき姿にふさわしい物にしてかなければならないという喫緊の要請を、国民の前に明らかにしたものではないでしょうか。

勿論問題はワクチンだけではありません。再生エネルギー、蓄電技術、省エネ、省資源、といった基礎的な物から、日本社会の高度情報化といった問題、例えば、マイナンバーカードやスマホが、国民生活をどう変えるかという問題、その条件整備のために必要となる基礎教育から高等教育までのシステム構想などなど、既に日本は先進国ではない分野がどんどん増えているような状態を変えていくのでなければならないでしょう。

サステイナブルな開発発展過程をたどる安定した成長路線を構築するために必要な政策、それに必要な法人課税構想ということになりますと、アベノミクスの中でのような単なる減税ではなく、望ましい研究開発に企業が経営資源を積極的に集中するような税制が必要でしょう。

最も解りやすい伝統的な方法としては、法人税は引き上げ、その増収は、レベニューニュートラルの原則に従って、望ましい研究開発投資に対しての加速償却制度に充てるといった方法があるでしょう。

法人税の基本税率は引き上げられますが、SDGsに適う高度な投資については積極的に減税の対象にするという方法です。
レベニューニュートラルですから、トータルの法人企業の税負担は変わりません。

そして、恐らくこうした政策の結果、消費の安定成長の効果も含めて、中・長期的に成長率が高まるでしょう、その結果は、租税弾性値1.1(高度成長期は1.2)に従って、税収は伸びるでしょう。

これこそが、国家財政のまともな姿で、経済が成長しないような政策を取りながら、国債を発行して何か国民の人気取りをしようなどというのは、まともな政府、まともな財政政策とは言えないと考えるべきでしょう。

2021年5月家計調査:消費性向改善続く

2021年07月08日 18時32分48秒 | 経済
2021年5月家計調査:消費性向改善続く
今回はコロナ後を見据えての法人税制の問題についてのつもりでしたが、昨日5月分の家計調査が発表され、平均消費性向が3か月続けての改善になったので、少し中身を見てみたいと思います。

2か月前に3月の家計調査を取り上げた際、家計消費に少し動きが出るのかと指摘しましたが、いまの所それが続いているようです。

先ず2人以上の全所帯の消費支出の動きを見ますと2020年平均は前年に比べて5.3%のマイナスでした。コロナのせいもありという事でしょうがこの流れは今年の2月まで続き、今年の2月は昨年2月に比べて6.6%のマイナスでした。

ところが今年の3月に至って、これが、6.2%の増加に転じたのです。4月からなら解りますが(昨年の4-5月は第一次の緊急事態宣言) 今年3月も似たような条件だったのに関わらず数字が急に高くなったのは何だろうとか思いました・

しかしその後も、4月は対前年同月13.0%の伸び、そして今回5月も11.3%の伸びと、同じ緊急事態宣言の中でも10%を超える消費支出の伸びが続いています。

先月のブログでも疑問を呈しましたが、同じコロナの中でも、家計も、企業も、急に、環境に対応しつつ消費を伸ばすような生活や商売の仕方を開発したのでしょうか、それとも、巣篭りに我慢できなくなったのでしょうか。

いずれにしても3月、4月、5月と、家計の消費支出は前年を1割前後上回る状態になっているのです。
特に、4月には被服履物といった外出と関係ある消費品目、それと連動するように教養・娯楽が品目として伸びてきているのです。

5月は、巣篭りの中でも伸びていた住居関係は30%近い伸び、交通・通信、教育、教養娯楽も共に20%を超える伸び(前年同期比、実質)の伸びといった具合です。

こんな状況ですから、2人以上勤労者所帯の「平均消費性向」も上昇傾向だろうと見てみますと、今年に入って、対前年同月の%ポイントで、    
  1月  -1.4  (‐3.0)
  2月  -4.4  (‐1.1)
  3月  +6.5  (-1.1)
  4月  +6.1  (+2.7)
  5月  +13.1  (-4.0)
ということで、いずれにしても、3月から状況急変です。 <括弧内は可処分所得対前年同月比%>

勤労者所得の場合は、収入面も統計数字がありますから括弧内に可処分所得(手取り収入)の対前年同月比(%)を併記しましたが、4月以外はマイナスでも消費は堅調です。

ところで次回は6月初旬の発表ですが、昨年の6月は、例の1人10万円の給付金支給が集中したつきですから、その分例年より平均消費性向は低くなっているようです。

今年6月の平均消費性向は、多分その影響が出ることになると思われますし、その先の7月以降がどうなりますか。
、ワクチン接種の今後が不透明な中で、消費性向の動向と、経済景気の動きがどなるのか、今後も確り見て行きたいと思います。

コロナ後を見据えた経済政策 7

2021年07月07日 15時41分20秒 | 経済
新技術開発を目指す法人課税の改善
前回まで、コロナ後のSDGsに沿った経済の安定成長を考える中の格差社会化阻止によるサステイナビリティー(持続可能性)についてみてきました。
今回からはSDGsのDの方、開発・発達について考えてみたいと思います。

近年、もう開発や経済成長を求める時代ではないなどという意見もありますが、それは少し違うようです。今までのエネルギー開発や経済成長が、行き詰まっているということは、今と違った社会・経済システムに直さなければ人類社会は持続不可能という事ですから(終末時計ではあと1分40秒)新しい技術開発が必須です。今のままでは駄目なのです。

代表的な技術は化石燃料から自然エネルギーへの転換でしょうか。すでに待ったなしの状態でしょう。

という事で新しい技術開発は必須です。それにはおカネも要ります。同時にホモサピエンスの頭脳の徹底した活用も当然必要です。
そしてそのための政策が、コロナ後の日本経済に確り組み込まれなければならないのです。

現状はコロナ禍の中で、日本のワクチン開発の遅れが問題になり、菅総理が選挙向けかも知れませんが「日本をワクチン開発のセンターに」などと言いましたが、日本の研究開発の遅れは長期不況の中で、中国や韓国に比べると酷いようです。

アベノミクス以来の日本経済では消費不振を企業の設備投資でカバーしての片肺飛行の状態が目立ちましたが、その企業投資も企業レベルですから基礎的な研究開発は政府の消極姿勢もあって、今後はノーベル賞受賞者の出るのは難しいなどと言われています。

しかも政府主導のものは「もんじゅ」が象徴的ですが、ジャパンディスプレーなど所期の成果の出ないものが多く、大学や各種研究機関の予算は、削られたり、殆ど増えないというのが実態だったようです。これは日本の研究開発投資の推移でこのブログでも見て来ています。

先に書きましたように、研究開発には資金が必要です。これはGDPの中から捻出しなければなりません。ゼロ成長の中では資金は出ませんし、その結果、成果も出ないという悪循環になっています。

コロナ後は、この悪循環から抜け出さなければならないのは当然でしょう。当然それには投下する資本の調達が必要です、さいわい、日本企業はコロナの影響は別そして、為替レートの正常化して以来、割合好調な収益率を確保しています。一方、法人税率は下がりに下がっているのが実情です。

プラザ合意以前の基本税率は40%を超えていましたが、長期不況の中で30%まで下げられ、さらに安倍政権になって年々下げられて23.2%になっています。

これは、諸外国が法人税引き下げ競争をしたことの影響もあったのかもしれませんが、過日のG7、G20で国際的に法人席の最低税率15%の方針が合意されています。

日本としては、歴史的な見方からすれば、当然、法人税増税を考えるべき時期に来ていると考えるべきでしょう。

勿論企業サイド(経団連など)からは反対の声が出るでしょうが、これも、単なる増税ではなく、日本企業の投資行動をよりSDGsに向かわせるため、さらに言えば、政府の研究開発投資への消極的姿勢を改め、技術立国日本の政策を本来の状態に戻すたまに必要な法人課税の在り方の改善のためのものでなければなりません。 

ここでも、重要なのは出来るだけレベニュー・ニュートラルの考え方を導入することでしょう。(以下、長くなるので次回にします)

コロナ後を見据えた経済政策 6

2021年07月05日 22時59分31秒 | 経済
日本型システム:巧まずして社会主義的
前回、戦後の日本経済は、資本主義といいながら現実には理想的な社会主義を実現していたなどと言われているということを書きました。

実はこの問題は、資本主義社会のサステイナビリティー、SDGsの基本である概念と直結する問題をはらんでいます。
理由は、格差化する社会はサステイナビリティーがないという、このシリーズのテーマと合致するからです。

資本主義は社会主義を取り入れることによって(福祉社会化)生き残ることになりました。そして、戦後の日本の経済社会は、まさに、日本的経営(国家も企業も)によって、資本主義とSDGsを共に満足す条件を作り上げ、短期間に世界第二位の経済大国にまで成長したのでしょう。

その辺りを具体的に見てみますと、国はGDPの配分で2つのことを実現していました。一つは、貧富の差を出来るだけ小さくしようという政策、具体的には所得税の累進税率を大きくし、相続税を厳しくしました。

 もう一つは、消費と投資の配分を先進国に比べて投資に大きく消費に小さく(低労働分配率)することが出來ていました。

企業はといいますと、経営者が従業員の身分差別を撤廃(全員が正規労働者)するべしと主張し、賃金は年功給が中心でしたが、初任給の平均と経営者の平均報酬の格差は、税引き前で20倍、税引き後は7~8倍(日経連調べ)というのが普通でした。

今でこそ、経営者を外部からスカウトするといった欧米流の方法が多くなりましたが、当時はほとんどが内部昇進制で、新入社員へのアンケートでは、目標は入社した会社の社長、重役になる事といったのが一般的でした。

ということは、従業員の技能、技術や経営管理能力の取得は、その企業の教育訓練制度によることになっているのが一般的でした。

企業は、技能・技術と経営管理監督の階層別教育システムを、社内教育と外部教育研修利用の組み合わせで、設計し、社内で配置転換をしながら、一人前になるころには適材適所に配置するといった形で、従業員を育てるのが重要な仕事でした。

欧米流の、職務をすぐに遂行できる即戦力を採用するよりも、手間はかかりますが、組織の凝集力が強まることで、長期的視点でそれを克服するという手法でした。
つまり、一旦採用すれば、教育訓練をして誰もが一人前に育つという雇用人事制度だったのです。

これは、どう考えても、能力は認めるが、出来るだけ所得は格差を小さくし、能力の評価はしつつも、雇用と生活の安定を重視する呻吟制度で、もし異常に高い所得を得るような人がいれば、累進課税で、出来るだけ平等に近づける、ということで、まさに理想の社会主義に近い社会・企業制度だったといえそうです。

これは当時の日本でのことで、今の日本にこれを持ち込むのは無理な話でしょう。しかしこの中で、格差を出来るだけ少なくし、社会の中で落ちこぼれを作らないといったSDGsの目的に一致した部分を巧く生かしていくことは、今、かなり傷んだ日本社会、企業文化の修復に、大きな役に立つ面があることも事実ではないでしょうか。

所詮、SGDsというのは社会が壊れず、最低限の安定を保っていなければ不可能な目標ですから、個人主義、能力主義といった面と同時に、社会という人間の集団を安定したものに維持する(これが多分「和」でしょう)ことが必要になってくるのではないでしょうか。    

次回からは、技術開発の問題に入っていきたいと思います。

コロナ後を見据えた経済政策 5

2021年07月04日 11時49分36秒 | 経済
消費税、所得税問題を超えた政策も
枝野立憲民主党代表の消費税を時限的に5%の減税という構想をきっかけに種々の議論があるようなので、コロナ後の最大の問題でもあると予想される消費の問題と税制について考えてみました。

税制改革の基本的在り方として「レベニュー・ニュートラル」を考えてきましたが、コロナ後の経済財政策として、特に消費不振問題への対応ということになりますと、税制だけではとても不十分でしょう。

レベニューニュートラルの問題はまた法人課税についても考えてえてみたいと思いますが、ここでは、消費不振対策をもう少し総合的に考えてみたいと思います。

消費不振対策で、安倍政権が失敗ばかりだった最大の問題点は、国民に、将来不安を植え付けたことでしょう。結果は、このブログで追いかけてきましたように、平均消費性向の継続的低下です。

個人消費はGDPの6~7割を占めますから、平均消費性向が3ポイント上がればGDPは2%ぐらい高まるでしょう。物価上昇がなければ実質経済成長が2%上昇になりますし、もし消費者物価が上がっても政権の目標インフレターゲット2%に近づいてこれも政権には結構なことでしょう。

安倍政権は財政健全化を掲げて、消費税増税をやるぞやるぞと国民を萎縮させたり、年金問題などで、財務相が自ら諮問した年金問題の答申を受け取り拒否して、老後の資金は自分で作れとNISAやiDeCoを推奨したり、消費の伸びない政策を色々打って来ていました。

結局、消費は伸びず経済停滞で、日本経済はじり貧、結果は非正規など低所得世帯の増加で、格差社会は進行、子供の6人以1人は貧困世帯などと、以前では考えられないような日本社会になりました。

こういう形というのは経済停滞のスパイラルとでもいうものでしょう。貯蓄するほど経済は停滞、不安になってまた貯蓄に励むという形です。これからはこの逆をやらなければいけないのです。

日本社会は貧しいのではありません。世界でも有数な豊かな国です。クラウドファンディングで大きな金が集まるような、豊かさが遍在する格差社会化が問題なのです。

お金の偏在する社会を、政策を変え、雇用・賃金制度の在り方や福祉社会指向の税制などで、格差の少ない、ジニ係数が0.3を切るような社会を作れば、豊かな中間層は拡大し、消費は健全に伸び、経済成長は高まり、その結果として将来不安が解消するというのが今後日本経済は取るべき方向でしょう。

消費税と個人所得税、そして社会保障の負担と給付の在り方などは、パッチワークではなく、GDPの適切な配分の在り方として、国民の総意を把握しつつ、民主的に決めていく問題でしょう。

働き方改悪なども、同一労働・同一賃金などという耳障りのいい標語を掲げながら、実体は格差社会を助長する方向に日本社会を進めることになることを、今の政権は十分な理解もなくやっているようです。

戦後の日本は、事業の人事・賃金制度も、税制も、巧まずして格差の少ない社会を作るようなシステムに作りあがられていたようぬ思われます。
よく言われますように、戦後の日本がやって来た事は、「資本主義と言いながら現実には理想的な社会主義を実現していたのである」などと解説されるのをお聞きになった方も多いと思います。

これはかなり当たっていると思います。本来、日本の伝統文化は「和」、つまり、カタカナを使えば、バランス、ハーモ二ーといった概念を基底に、自然と人間も、多様な人間同士も、安定して共存するのを是とするものだったと考えられるからです。https://blog.goo.ne.jp/tnlabo/e/b88e1cb7e67ac9f7ec0f23712bbdaa90(参照

この問題は、次回にでも、もう少し具体的に論じる必要があるように思うところです。










コロナ後を見据えた経済政策 4

2021年07月03日 18時10分09秒 | 経済
レベニュー・ニュートラルなら、所得税累進強化で
このシリーズの前回の「3」で、増減税をする場合、最も納得の得られやすいのは「レベニュー・ニュートラル」の考え方を取ることと書きました。
 
レベニュー・ニュートラルの意味は「歳入中立」です。つまり増税とか減税をしますが、それと同額の減税とか増税をして、政府の歳入、言い換えれば国民の税負担は、総額では変わりませんという事です。
 
枝野さんの提案のように、時限的ということになると、その間だけ少し我慢をすればいいという事ですが、それではすまない場合もあります。
今回も、「いつ10%に戻すのか」という意見はあって、その時は大変でしょう。
 
 消費税を減税した分をどこかで増税すれば、そしてそれが合理的な増税であれば、正式な政策としてえ成立するわけですが、そのためのいい方法はあるのでしょうか。
 
 ここで大事なのはこのシリーズの最初に述べたSDGs(永続性のある開発目標)であり、それを可能にするための最も重要な要素である「格差社会化の阻止」でしょう。
格差社会化の進む社会には永続性のないという現実は歴史が証明しています。
 
 ところで、日本の場合、「ジャパンアズナンバーワン」と言われたプラザ合意前に比べて現状は大幅に所得格差が拡大していることは明らかなようです。
 
ちなみに数字を拾ってみますと1980年代前半には、北欧のスウェーデンやデンマークと最小のジニ係数を争っていた日本でした。
ところが現状は、スウェーデン0.28 ドイツ0.29、カナダ0.31日本0.34、アメリカ0.39(OECD2017)と、格差社会の代表アメリカに近づいています。
 
2013~4年、円レートが正常化しても、労働市場における非正規労働者は減らず、正規との格差は縮まらず、最近はコロナ禍の中でさらに拡大しているのではないかと憂慮されるところです。
 
また実体経済の分野で活動する企業と、マネーマーケットで活動する企業の賃金・報酬格差、年額報酬1億円以上の経営トップの増加傾向など。格差拡大の垣間見えるマスコミの報道も気になるところです。
 
一方、所得税の累進度を見ますと、アメリカがレーガン税制でフラット化を進めたのを真似たのでしょうか、事情の違う日本でもフラット化を推進していることは、すでに触れました。(blog.goo.ne.jp/tnlabo/e/851519c6e8535061a38d8ddb06c956e4)
 
こう見てきますと、コロナ後の日本経済が健全でサステイナブルの安定成長路線に入るためには、消費税減税の財源は所得税の累進税率の見直しで捻出するというのが、最も解りやすい、納得性のある思考の方向だと言えるように思います。(消費税と所得税の減・増税のすり合わせが必要です)
 
勿論税制にはいろいろな要素がありますから、いろいろな意見があるでしょうが、個人、家計の収入・支出の面から見た格差是正の基本方向はそこにあるのではないでしょうか。
 
このブログでは、コロナ後の日本経済の在り方の基本は前述のようにSDGsに適うものであり、それを可能にする基本要件は格差社会化の阻止という歴史の経験の教えるところに則って考えると、こうなるように思うのです。

2021年6月日銀短観:好調、目先停滞、投資計画堅調

2021年07月02日 22時17分57秒 | 文化社会
2021年6月日銀短観:好調、目先停滞、投資計画堅調
昨日、日本銀行から、この6月時点の「全国企業短期経済観測(短観)」が発表になりました。
製造業好調、非製造業も回復という事で、現状はコロナ禍からの回復が見えていますが、この先3か月ほどについては、企業は多少停滞を見通しているようです。

ただ、もう少し長期の見通しに立つ設備投資については、積極的な計画を持っているようで、遅れている中小企業にも、次第に回復の波が及ぶことが期待されます。

数字は、いわゆるDIで回答を100として良いと答えた%から悪いと答えた%を引いたものです。

先ず、代表的な指標である、製造業大企業を見ますとDIは14で、3か月前の3月の5から大きく改善しています。
中堅企業は5(3月は-2)、中小企業は-7(3月は-13)でそかなりの改善です。

改善の遅かった非製造業も、大企業は1(3月は-1)中堅・中小企業も,まだマイナスながら、それぞれに改善をみています。

一方、3カ月後の予想についてみますと、順調に改善ではなく、何となく停滞の雰囲気が全体的に感じられます。
これは多分、デルタ株、東京五輪、ワクチン入荷状況など、どうにも良く解らない点が多いことに起因するものではないかと思われますが、重要なのは、その先秋以降の日本経済がどうなるかでしょう。

その辺りを企業がどう見ているかについては、同じ日銀短観の中で調査されている設備投資計画が参考になるように思われます。
企業が設備投資意欲を持っているということは、将来に対して何らかの目標や希望を持っているということと理解できるからです。

という事で企業の設備投資計画について見てみますと、どちらかというと強きの様子が見て取れます。

 短観では設備投資計画については、2020年度と2021年度の設備投資の実績と計画の対前年伸び率の数字が出ています。
 設備投資の中身は、土地投資を含むものと含まないものがありまして、土地投資はこのところほとんど減少傾向です。

企業の将来に向けて大事なのは「ソフトウェア・研究開発を含む設備投資(除く土地)」ということになるわけですが、これについては、一様に企業は強気の姿勢を示しています。
大企業の場合は製造業、非製造業ともに2020年度は減少でしたが、2021年度につては、製造業10.3%、非製造業10.4%の増加を計画しています。
中堅企業、中小企業においても製造業、非製造業ともに前年のマイナスからプラスに転じ、特に中堅企業の製造業では15%増を計画しています。

その内訳のソフトウェア投資と研究開発投資の分けてみますと、圧倒的にソフトウェア投資の伸びが大きく、中堅企業製造業では55.5%の増加が計画されています。

一方、研究開発投資は、プラスに転じてはいますが、大企業中堅企業ともに1桁の増加にと止まっていて、中小企業の非製造業の62%が唯一気を吐いています。

企業としてはコロナ後にかなりの期待を持っているということは感じられますが、特に大企業の研究開発投資が本格的に動き出してほしいと感じられるところです。

菅総理は、日本をワクチン研究の世界のセンターにと言っていますが、リーマンショックからアベノミクス時代を通して日本の 研究開発投資(注)は、官民ともに異常な停滞を記録しています。
中國、韓国に後れを取る分野も多くなっているようですが、政府の積極政策で、本格的な巻き返しに邁進することを期待したいと思う所です。
注:https://blog.goo.ne.jp/tnlabo/e/4d4fd6af93bfe3f6a21a1a047aac35b1

緊急事態宣言でも堅調な消費:4月家計調査

2021年07月01日 19時11分29秒 | 経済
緊急事態宣言でも堅調な消費:4月家計調査
少し遅くなってしまいましたが、4月の家計調査の結果を見ておきたいと思います。
先月、3月の家計調査で、何となく、家計に消費意識が出てきた感じがすると書きましたが、4月も引き続き、消費は、何となく堅調に向かうのではないかといった感じを受けるところです。
 
もちろん昨年の4月は最初の緊急事態宣言で、全国の家計は緊張の真っ只中だったということはあると思いますが、今年の4月も同じ緊急事態宣言の中です。
 
言われていますように、消費堅調の原因は2つほどあって、一つは家計も企業も緊急事態馴れして、巣篭り需要などの新たな消費パターンが生まれ、単純な蟄居と緊縮で対応するのではなくなったという事でしょう。
 
もう一つは、何となくコロナ馴れしたような感覚も(若い人中心でしょうか)生まれ、繁華街の混雑も結構な増加を見ているという状況との関連でしょうか。
それに、ワクチン接種が進んできたことも安心感につながっているのかもしれません。
 
家計調査の2人以上所帯についてみますと、消費支出は前年4月比12.4%の増加で、増加の中身を見ますと消費支出主要10品目のうち、対前年比で減少しているのは水道・光熱だけで後の9品目は総て増加、特筆すべきは3月にも触れました、ずっと不振だった衣服・履物が、対前年4月で85.2%という、最大の増加率になっていることです。
 
これは、外に出るためのオシャレ需要でしょうか、外に出れば、関連するいろいろな消費も増えるという事になるのでしょう。二番目の増加品目は教養娯楽で、これが26.5%の増加ですから被服・履物の増加が目立ちます。
 
これは確かに消費需要については結構なことですが、困ったことに、デルタ株の侵入と共に、コロナの新規感染者の増加につながる可能性が高くなることが考えられます。
特に、おしゃれして外出といった動きが若い方達に多いとすれば、若い人たちへのワクチン接種が遅れているということとの関連が心配されるところです。
 
まさに前門の虎、後門の狼ですが、決定的な解決策は、早期のワクチン接種の徹底だという事を政府には十分認識してほしいと思うところです。
 
ところで、いつも見ています2人以上勤労者所帯の平均消費性向を見てみますと、昨年4月の70.9%からこの4月は77%と6.1ポイントの大幅上昇で、一昨年4月(コロナ前)の78.3%に近づいています。 
 
差し当たっての問題は、この消費需要の回復をもたらしている家計の心理の変化とデルタ株コロナウィルスの感染力の強さ、加えて東京五輪による内外含めての人流の変化の合成のベクトルがどう動くかという事でしょう。
 
最も注目すべきはデルタ株の感染力の強さかもしれませんが、相手がウィルスであるだけに予測不能という面が多いのが気にかかります。
 
日本社会全体のあらゆる努力でデルタ株の感染力をどこまで食い止められるかが勝負なのでしょうが、国民の健康と生命を守るという政権が、水際対策やワクチン政策を中心に、どこまで適切な対策を取れるかが重要なカギを握ることになるような気がしています。