このところ、いろいろなメディアの中で「ジョブ型人事」についての解説などを見ます。
中にはジョブ型が本来の人事の在り方で、今後は日本もジョブ型になっていくといったジョブ型一辺倒のものから、どちらかというとより多いのは、「ジョブ型」と「メンバーシップ型」とを対比して、メリット、デメリットを一覧表にしたりしているものです。
そして、ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッドがいいという意見も、かなりあるように思われます。
ここで、ジョブ型というのは基本的に『まず職務があって、それに合う人間をつける』という考え方、つまり欧米型の人事制度で、メンバーシップ型というのは『いい人を採用していい仕事をしてもらう』つまり従来の日本型の人事制度ということになります。
この議論は、戦後も随分やられました。欧米の企業を見てきた経営者の一部が、矢張り職務給方式(ジョブ型)が合理的と考えたからです。
そして、数十年たって、結局は今の制度に落ち着いたのですが、今またこの論争が起きているわけです。
そこで、今なぜこの論争が起きたかです。
欧米と日本の人事制度の違いは、もともとは、それぞれの社会の在り方の違いによるものですから、その点から考えますと、1つは、日本の社会の在り方が変わってきたということがあるのでしょう。
社会が変わってきたというのは、日本人のものの考え方や社会的行動が伝統的な日本的なものから少しづつ変わってきたこと、そしてそれが、技術革新による仕事(ジョブ)の形、やり方の変化と複合して、(それにこの所のコロナの影響もあり)いままでどうりの日本型(メンバーシップ型)の見直しを求める状況が出てきたという事でしょう。
カタカナ語を使うと何か新しい事のような感じをうけますが、人間の考えることは2千年、3千年前と大して変わらないので、言葉に騙されずにことの本質を考えてみれば、「いかにすれば、人間はやる気を出して良い仕事をするように努力するか」というのが人事管理の基本命題なのです。
このブログでは働き方改革の問題も含めて人事、賃金管理の問題は繰り返し取り上げていますが、アクセスの多いテーマの一つが、≪「一専多能従業員」の育成:日本的経営の得意技≫です。
専門分野の仕事(ジョブ)で確りした知識技能を持つことに加えて、関連する種々の分野でも相応の知識技能を持っている従業員という事ですが、海外でそんな話をすると「それなら直ちに雇うよ」といった返事が返ってきます。
ジョブ型の従業員は、一人で仕事をする場合には最適でしょう、しかし現場作業でも、前工程、後工程のことがある程度分かっていれば、効率が大分違うでしょう。
事務部門でも、関連部門の仕事と自分の仕事との関係が解っていれば、トラブルはあまり起きないようです。
リモートワークでは、仕事を確り限定しないと上手くいきませんから仕事はジョブ型になります。アセンブリーメーカーにあたるのは管理職です。
リモートで出来た仕事(部品)を組み立てて齟齬が無いようにするのは管理職です。管理職の能力が問われるわけです。
コロナが終わった時、今のリモートワークがどこまで残るか、これもジョブ型を考える場合の多分参考になるでしょう。
ジョブ型の問題については、折に触れてまた論じることが多いかと思いますが、長くなりますので、今回は、ここまでにします。