tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業団体献金は何故反対されるのか

2024年11月13日 15時35分12秒 | 政治

政治資金改革の中で、最も議論が伯仲するのは企業団体献金を認めるのか、認めないかではないでしょうか。

国民の多くは認めない方がいいと考えているようですが、沢山払っている大企業と、沢山貰っている自民党に賛成意見が多いようです。

沢山もらっている自民党に賛成が多いというのは誰でもわかりますが、沢山払って

いる大企業や、大企業の団体が賛成というのはなぜか良く解りません。

経団連の会長さんは、「これは社会貢献だから必要だ」と言われているようですが、「社会貢献という意味が解らない」という人は多いようです。

政治を行うのには、お金が必要だから、その役に立つように犠牲的精神で献金をするという事なのかもしれませんが、全く同じ趣旨だと思われる法人税については、いつも「引き下げるべきだ」と強く主張していますから、多分、税金と献金は全く趣旨が違うのでしょう。

貰う方の立場からはどうかと考えてみますと、公務員には、政府自身が決めた歳費や給与が支払われています。

立法を担当する政治家には秘書の給料なども含めて確りした歳費が支払われ、その上、政党にも政治活動のための「政党給付金」が支払われ、それは政治家が種々勉強をしたり有権者に教宣活動をしたりするために支出されているようです。

たしかに、使える金は多い方がいいに決まっていますが、必要な勉強をしたり受験生のように選挙の準備をしたりするのは、学者でも活動家でも、自分の通常の所得の範囲でやっているので、そのための特別のお金など滅多に出ません。

個人の勉強や活動の範囲では使いきれないような膨大な金を集めて、それが何に使われたか解らなくても許されていたのがこれまでですから、反省して、「もうやめます」というのがまともでしょう。

改めて出す方から考えてみますと、本当に必要なものは法人税で払いますから、もう「どんぶり勘定」はやめましょう、企業と言っても大企業になれば、これはもう「公器」だというのが日本の伝統的経営道義、企業倫理です、国民の納得が必要です、と言うべき所でしょう。 

 

こうしたごく当たり前の感覚による判断が、受け取る方、払う方の双方になくて、結果的に、巨大などんぶりか、ブラックボックスの中でやられていたのですから、すべての国民が納得するように、「日本国を運営するコストは、すべて税金で」という事にして、国民の目の(テレビの)前で、正々堂々の議論で決まるようにしてほしいと思うところです。

「誤って、改むるに、憚ること勿れ」、今後はもう誤ることは「ない」と言えるようなシステムを作ってほしいと思うところです。


政治家も「自由からの逃走」をしているのでは?

2024年11月12日 22時13分19秒 | 政治

今日はちょっと書きにくいことを書いています。

政治の世界は普通の世界とは違い、いろいろと過去の経緯や党利党略があり、そうしたことの背後にそれぞれの政党としての思想信条があるという事になっています。

共通の思想信条の組織・集団であってみれば、所属する政治家の思想や思考形態、そして行動も、所属する政党、さらには派閥という組織の枠組みに従い、基本的に同質であるはず(あるべき)だというのが重要な規範かもしれません。

そうした考え方は、組織の統制上は好都合かもしれません。しかし、組織の構成員一人一人の選択や行動を尊重する視点からすれば、必ずしも合理的とは言えないでしょう。そんな前提で、今回の衆議院の首班指名の決選投票の数字を見てみましょう。

最初の投票では、石破221票、野田151票で1位、2位共に過半数233票に届かず、なりました。

決選投票は、当然、石破、野田のご両人で、それ以外の名前を書けば無効票です。

国民民主党では、玉木党首が、決選投票になったら玉木雄一郎と書くと宣言しました。

これには違和感を感じた人も多いと思われます。玉木の名は、決選投票にはありません。書いても無効票です。

決選投票というのは、候補者2人の中から良いと思う方の名前を書いてくださいというのがルールです。

ですから勝手な名前を書くのは、与えられた権利(責任)が嫌だから、面倒だから果たさない、つまり「逃げる」ことになります。

そのうえで、自分の名を書くという事は全く意味がありません。意味があるとすれば、それをマスコミに言う事で、自分のPRになるかどうかということでしょう。

日本維新の会もそれに倣ったのか全会一致で馬場代表の名前を書くことに決めています。

決選投票の結果は、石破票221で変わらず、野田票160,無効票84で、無効票は決選投票の趣旨から逃げた国会議員の数でしょう。

野党から石破への票はなかったようで。野党からの野田票が9票増えています。84の無効票は、国民民主党、日本維新の会その他、決選投票のルールを逸脱した票という事になります。

巷の意見では、折角自公の過半数割れで、政権交代のチャンスが来たのに、野党内の足並み不揃いで、政権交代はなくなって残念だとの声もあったようです。

無効票の中身は解らないので、あとは憶測ですが、国政に責任を持つ国会議員が投票すると言っても、多くの国会議員は、国民の声を聞き、そこから自分の考えを固め自らの判断に従って投票するというより、組織の方針を鵜呑みにするという事が多いのではないかと感じてしまうところです。

無効票というのは、結局は「勝者に賛成」という意思表示になるのです。自分の意思を行使できるという自由が面倒だからと(難しいからと)逃げた結果が国民に押し付けられることになるような気がしています。


<月曜随想>繰り返される?「自由からの逃走」

2024年11月11日 15時37分06秒 | 文化社会

エリッヒ・フロムが『自由からの逃走』を書いたのは、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間です。エリッヒ・フロムは、ナチスのドイツからアメリカ逃れたユダヤ人ですが、この本のメインテーマは、第一次世界大戦の敗戦国ドイツに如何にしてナチスという独裁政権が生まれたかを研究、そこに「人間は自由から逃れようとする性癖、がある」ことを指摘し、そして、ナチスを徹底批判した本です。

ところで、今「新しい戦前」などという言葉が生れています。これは現状が、第二次世界大戦と第三次世界大戦の間のあるのではないかという疑問(意識)を、半分ジョークで、半分は警告として語られているようです。

折しも、第二次世界大戦の戦勝国であるソ連が独裁化し国家の運営に失敗して崩壊。その中枢国であったロシアが国際的に孤立感からか、改めて独裁政権を確立、旧版図であるウクライナに軍事侵攻し、すでに3年近く、ヨーロッパ諸国との対立が深刻化を強めています。

それに触発されたようにイスラエルとパレスチナの武力戦闘が起き、イスラエルの異常なパレスチナ制圧作戦が進行し、それがレバノン、イランに飛び火するといった動きに広がっています。

更に見渡せば、独裁国、北朝鮮の核武装の段階が進み、巨大国家中国が独裁色を強め、アジアではさらにミャンマー、南米では世界一の石油資源を誇るベネズエラの独裁政権がさらに独裁色を強めるなど、形は民主主義の中からも独裁政権が生まれるという現実を含め、独裁的な国が増加しているように思われます。

日本においても、安倍政権の時は与党の絶対多数を背景に、国会であるべきことを閣議決定で済ませ、法律や制度の恣意的なとり扱いも種々ありました。

民主主義のリーダー、アメリカでさえ、かつてのトランプ政権の下では世論や国際関係を無視した意思決定も多く、第二次トランプ政権の在り方が心配されているようです。

つまり、権力者は往々にして自己の権力を過剰に意識し、それに対して国民の多くは、敢えて反対しないばかりか、追従したりするのです。

エリッヒ・フロムは、そこに自由主義、民主主義の危機を感じたのでしょう。

つまり人は時に、与えられた自由、特に、自分自身が選択し決定し行動するという「積極的自由」の負担を嫌い、人権の一環として与えられた自由から逃げようとするのです。

自分では何もしない、知的活動も身体的活動も億劫だ、権力者の言う事に賛成していればそれでことは済む、「これも自由だ」と自由を誤解しているのでしょうか。

選挙でいえば、「賛成」と「棄権」は、殆んど同じ効果を持つというのが、自由な民主主義だという事になってしまうのが『自由からの逃走』の示唆する所ではないでしょうか。

かくして、権力者の人柄如何によって、独裁的な政治が行われたり、時には明らかな独裁者が生れてしまうという事に帰結する事になるのです。  

あなたは自由から逃走しませんよね!


平均消費性向低下の謎を探る

2024年11月10日 15時33分11秒 | 経済

衆院選挙が終わって、政界の地図にも変化が起きて、何か新しい動きが起きて来るだろうと期待する人も多いと思います。

そして、その動きの第一波がさっそく見えてきました。103万円の壁を崩そうという動きです。

国民民主党の主張は手取りを増やそうという言い方でしたが、税制を変えれば家計の手取りは増えますという方法、賃上げとは別の方法で家計の収入を増やすという可能性を指摘することになります。

勿論、報道されていますように、基礎控除を103万円から178万円に引き上げれば、7.8兆円が家計の手取りとなり、その分税収が減ると早速財務省が試算をしました。

財政の工面は政府がやれというのが国民民主党の意見のようで、自公国3党協議に入っているようですが、家計には賃上げと同様な恒久的な手取りの増かが保証されることが大事なようです。

というのは、これまでの家計の消費支出の態度を見ますと、かなりガードが固く、一時的や不安定な収入が増えても「消費は増やさないという傾向が強いからです。

実はこのブログでは名目の手取り額の増加と、消費支出の関係を見てきているのですが、物価が上がって実質消費が減ったという現実もありますが、手取り収入が増えても名目の消費支出を増やさないという超堅実、将来不安に備えての貯蓄志向という状況が、かなり強く見えるのです。

                                             資料:総務省「家計調査」

上のグラフを見ると明らかですが、2017年あたりから、勤労者家計(二人以上)の可処分所得は増えているのです。可処分所得というのはまさに「手取り収入」ですが、賃金水準は上がっていませんから、増加の原因は、配偶者など家族が働きに出るとか、内職、資産収益、さらには公的給付金などのようですが、消費支出の方を見ますと、ほとんど変化のないフラットな状態が続いています。

手取り収入の赤い線がこれだけ上がっても、消費支出の青い線はほぼ横ばいという事は・・、と考えますと、家族な頑張ったり政府からの給付金があったりしても、そうした収入は安定収入ではないから、家計としての経常支出(消費支出)で使うことは控え、貯蓄に回しておこう。これからの日本経済も、恐らくあまり変わらないだろうし、年金財政などは悪くなることはあっても良くなる事はないだろうといった将来不安が先に立つという事ではないでしょうか。

日本経済の回復は民間消費支出の増加にかかっているというのが、経済学者、評論家の一致した意見のようですが、このグラフを見ますと、日本の家計にお金を使わせるのはかなり難しい事のように思われます。

ご参考までですが2000年以降の平均消費性向のグラウを載せておきます。100%に足りない部分は平均貯蓄性向です。

             資料:上に同じ

衆院選の結果が、こうしたグラフの動きの方向を変えるまでには、今までの自公連合では出来なかった、更にいろいろな事が必要なようです。


2024年9月平均消費性向の低下続く

2024年11月08日 16時50分15秒 | 経済

今日は、総務省統計局から「家計調査」の家計収支編の9月分が発表になりました。

実質賃金の低下がまた2か月連続という事が昨日の毎月勤労統計の発表で解りましたし、今日の9月分の家計調査の結果でも、勤労者世帯の平均消費性向は前年比低下で勤労者世帯でも、消費の回復は、残念ながら、まだのようです。

そんなことでまず、二人以上世帯の消費の推移をグラフにしてみました。

                     資料:総務省「家計調査」

増減を分ける0%の横線が、太線にしてないので、解りにくいかもしれまんが、

一見して知られるのは、確かに名目の消費支出は増える傾向にある事です。

今年の1月は、昨年1月の反動もあるのか消費支出の異常な落ち込みですが、これは例外的として、2月以降の名目の消費支出額の対前年同月の伸び率は、昨年の水準とは1%ポイントほど違ってきたように見られます。

特に春闘以降は、2人世帯の過半は勤労者世帯ですから当然とも言えるわけですが、消費者物価の上昇がやはり1%ポイント程上がって来てしまって,赤い線は、相変わらずほとんど水面下です。

消費者物価指数の2年ほど続いた生活必需品中心の上昇の波は終息したようですが、電気、ガス、それにガソリンといったエネルギー関係の方は、政府の補助金の減額打ち切りなどで上がってくるというバラマキ政策のマイナス面が出てきているのです。

いずれにしても消費者物価が落ち着かない事には、予測も、見通しも立ちません。来春闘では、も少し賃金の上昇率を高くしようとの意見もあるようですが、経営側のガードはどうでしょうか。

家計の収支両面のわかる勤労者世帯でみますと、ボーナスなどで増えた6,7月が過ぎ8月方は平常の月、勤労者世帯平均の名目所得(実収入)49.4万円(これは世帯主37.5万円、配偶者収入8.9万円などの合計)で、昨年9月に比し1.3%の増加、消費者物価指数の上昇をさし引けば、1.6%のマイナスという事になっています。

平均消費性向計算の分母の可処分所得は40.3万円、分子の消費支出は30.8万円で平均消費性向は76.6%という事になって、昨年9月の78.2%から1.6%の低下です。

名目収入は増ですが実質収入は減、結果は消費を抑えて、貯蓄に励み、将来不安に備えるという方針に戻ってしまったようです。

これからどんな政治が行われるか解りませんが、政府の出来ることは限られています。先のことがますます読みにくくなったようです。


2024年9月分毎月勤労統計:実質賃金マイナスか?

2024年11月07日 16時39分26秒 | 経済

朝、厚労省から毎月勤労統計の9月分(速報)が発表になりました。名目賃金の伸びは安定していて堅実な動きと言えるのかもしれませんが、注目の実質賃金の対前年比では6月、7月とプラスに転じましたが、8月、9月とまたマイナスになってしまっているというのがマスコミの指摘です。

33年ぶりと言われた今春闘の賃上げが、も少し高ければという所ですが、後述のように、統計の使い方もあり、方向としては明るさも見えるという状況でしょうか。具体的な数字をあたってみたいと思います。

下のグラフは過去1年間の名目賃金の対前年上昇率の推移です、所定内給与、決まって支給する給与(残業等込み)、賃金給与総額(ボ-ナス等込み)の3本の柱です。

              資料:厚労省「毎月勤労統計」

ご覧のように6月、7月はボーナスが良かったことで灰色の柱は高くなっていて、この2か月は、実質賃金はプラスでした。

マスコミでは、通常の月に戻った8月、9月はまた実質賃金マイナスと書いていますが、これは現金給与総額指数と消費者物価指数の上昇を比較したもので、9月は毎月勤労統計の実質賃金指数ではマイナス0.1%で僅差のマイナスです。(下表参照)

このブログでは毎回指摘していますが、厚労省がここで使っている消費者物価指数は「持ち家の帰属家賃を除く」指数で通常の総理府発表の消費者物価指数とは違い、このところ少し高い場合が多いものです。(数字は下表にあります)

今後どうなるかは、消費者物価指数の鎮静化を期待(予測)するところですが、今後の改善へのカギは、すでに来春闘に期待という時期に来たようです。

ところで、9月の賃金と物価の上昇の関係を一覧表にしますと、こんなところです。

政府の発表は,消費者物価指数の帰属家賃を除く総合を使っていいあすからマイナス0.1ですが、このブログでは、最初から、消費者物価は通常の総合で、賃金は現金給与総額を使っていますので、それで見ますと、9月も0.3%ですがプラスという事になります。

もう少し歴然としたプラス2~3%という所が目標でしょうか。

 

 


「知性」と「感情」に分断のアメリカ

2024年11月06日 17時44分37秒 | 文化社会

もう大分前から、今のアメリかは、世界の最先進国と、ずっと遅れた発展途上国が併存している国だと感じることが多くなっていました。

1960年代までは、まだ第二次大戦後のアメリカの栄光、世界で最も豊かな国、広範な科学、技術から芸術、スポーツ、サブカルチャーや国民生活まで、世界で最も優れた国というイメージを維持していたと思います。

きっかけは1970年代に入っての、ドルのペーパーマネー化、変動相場制への移行だったと思います。

これは戦後25の間に、その繁栄を謳歌する中で、国力以上の活動、戦争を含む経済力の浪費を続けたことによるのでしょう。

それに引き換え西ドイツ、日本などは急速に生産力をつけ生産性の向上を実現して、消費生活を謳歌するアメリカをマーケットにして経済力を増してきていました。アメリカの国際比較上の経済力の低下はその後のドルの切り下げで明らかです。 

さらにその後の二度にわたる石油危機への対応を、欧州諸国と共にアメリカも誤り、1980年代初頭まで続くスタグフレーションに陥ったことは、周知のとおりです。

さらにその後も、アメリカは中国の生産力を利用した結果、中国の追い上げに苦しむことになりました

しかし、アメリカは覇権国としての政治力、その背後にある軍事力を保持し、そのプライドは変わらずに維持されて来ましたから、国民はそのプライドと現実のギャップに強い違和感を感じてきているという状態ではないでしょうか。

以前「ガンホー」という日本の自動車メーカーのアメリか進出を題材にした日米合作(?)映画がありましたが、日本企業の経営を徹底的にカリカチュア化したものでした。

その背後で、アメリカの鉄鋼産業、自動車産業などは競争力を弱め、いわゆる「ラスト・ベルト」も生れていたのでしょう。

気持ちは世界一、現実は競争力喪失のギャップがアメリカ人の中に次第に違和感から不満感、さらには被害者意識を増幅していたのでしょう。

こうして今のアメリカは、上半身は世界も羨む先進国ですが、下半身は途上国の状態に近づくということになったと私は見ています。

ここで大統領選は「トランプ候補が当確」というニュースが入ってきました。「やっぱり」という感じです。このところのインフレもあり、アメリカでは下半身が過半になったようです。

トランプ候補は、決して理論的ではありませんが、「わたしが『アメリカを再び偉大に』する」と主張し、知識や理論ではなく、今やアメリカ人の過半を占める下半身のやり場のない不満感、被害者意識といった感情を鷲掴みにしたのでしょう。

これはアメリカ人の中で、「知」の部分より「感情」の部分で行動する人が増えたという事を志田示すように思われます。(トランプの踏むステップに熱狂する支持者の映像)

前のトランプ政権の4年間を見れば、今後の4年間、アメリカの迷走は続くでしょう。

相対する日本のリーダーが誰になるのかは解りませんが、またトランプの盟友になるのでしょうか。日本国民は、ますます冷静になる必要がありそうです。


民間が確りしなければならないですね

2024年11月05日 13時43分29秒 | 経済

衆院選の結果が自民・公明の過半数割れで、政権運営が不安定になる事は当然と予想されます。

今までは、絶対多数とか過半数確保といった条件の下で、政権党は何はともあれ、国会運営は多数で可能という安心感があったでしょう。

しかし、これからは違います。マスコミや評論家の中には「これでは何にも決まらないのではないか」などという言い方もあるようですが、勿論、野党は何でも反対というのではなく、国民のために良いと思えば賛成するわけでしょうから、国民が希望する方向に国会論議が収斂するという事になるはずです。

理屈としてはそうなのですが、現実を考えれば、差し当たって議論になる裏金問題では、自民党はあまり厳しくない結果を望み、野党は、企業団体献金廃止といった立場であれば、与党案は通りません。与党が国民の意見に賛成しますと言わなければ紛糾です。

石破総理の下では自民党自体の中も纏まらないといった事でもあれば、現内閣は短命という見方も多いようです。

各党が、あるいは各議員が「是は是、非は非」という事で物事が決まる衆院への練習期間が必要でしょう。

という事であれば、国民の心配する経済運営はどうなるのかという事ですが、これは結局、民間労使が確りしなければという事になるのでしょう。

経済運営の基盤部分の在り方に最も大きな影響力を持つ日銀は、確りと金融政策を考えてくれているようですから、ここは来春闘の賃金決定に向けて、労使が誤りない対応をしていくことがますます重要になって来るのでしょう。

嘗ては日本の労使は、政府はさておき、日本経済をけん引するのは産業界であり、その構成者である労使であるぐらいの自覚をもって日本経済を引っ張るといった気概を持ち、世界の主要先進国が共通に苦しんだ石油危機を、民間労使の協力で、立派に乗り切って世界から羨望の的になった経験もあるのですら、ここは、労使ともに本気を出して、日本経済を民間の力で立派に支えてほしいものです。

この3年ほど、2023~24年の春闘の経験から、少しずつ労使関係の勘所を思い出して来たような雰囲気も感じられ、政治の混乱を横目に、労使が日本経済を引っ張るという雰囲気も出てきたかなと感じられるところですが、重責を果たすにはもう一皮むけてほしいような気もしています。

というのは政府の経済外交、経済政策が失敗続き(円高、決める政治など)だった結果、民間が頑張ろうにも、そのための国際・国内環境が出来ていないといった状態が30年も続いた結果、政府依存の感覚が強くなったという事があるようです。

具体的に言えば、経団連が、政治献金を極めて重要な政治への貢献と考えるようになったり、連合が、政府の意向や政府の動きが賃金決定にも関係するといった感覚を持つに至っていることです。

産業界、産業労使が、「我々が、政府の経済政策の在り方を引っ張っていく」といった気概を持って、自立して経済活動に当たることが望まれるところです。


文化の日に:保守と革新について考える

2024年11月03日 11時44分12秒 | 経済

今日は文化の日です。11月3日は、明治節の昔から「晴れ」の特異日という事になっているようですが、今日も昨日までの大雨も上がって朝から日本中晴天です。

文化の日には、このブログでは、何か少し変わったことを論じてみようなどと欲張ったことを考えるのですが、そのなかで「競いの文化と争いの文化」「天皇誕生日の祝」など少し面白い事にも気づいて書いてきました。

そんな事で、今日は「保守と革新」という区別について、在り来たりかもしれませんが考えてみました。

「保守と革新」は主として政治に関連して使われる言葉で、通常、対立概念として使われることが多いようです。 

確かに「保守と革新」は対立概念というか、人間の持つ2つの主要な考え方、行動の仕方を表した言葉でしょう。

しかし、ここではこの2つを対立概念としてばかり考えるのは、必ずしも適切ではないのではないという視点で考えてみたいと思っています。

対立概念をあらゆるものに当てはめるというのは欧米流の思想と言いますか、典型的にはキリスト教の教えに根差すのではないかと感じています。

キリスト教は元々「神と悪魔」があって対立抗争が基本になっています。そのせいか欧米では二元論(dichotomy)がよく使われ、「相容れない2つのもの」といった解釈がされています。

これは物事を解り易くするという効果はあるかもしれませんが、いまのアメリカではありませんが、基本的にはどちらが政権をとっても「米国中心という基本」はほとんど変わらないのに民主党と共和党が些少(失礼!)の違いを強調し、国を二分するような状況すら生んでいるようです。

英語にも「wholistic」(全体的、総合的)という言葉もあり、全体を見る視点が重要との主張もありますが、こちらは正しいがマイノリティーといったところでしょう。

ところで、人間の意識や行動、文化の面から見ますと、現代人の性向としては、基本的に保守的な要素と、革新的な要素が共に本来備わっているようです。

もともと人間は、他の動物に比して体力的にはひ弱で、食物を得る事と共に、外界の危険から身を守る事が重要な関心事だったのでしょう。この安全欲求は、身を守ることが最重要ですから危険を避ける「保守的」な意識であり行動だったと思われます。

そうした生活を繰り返し、知識や技術の蓄積が進んだ結果、人類はより豊かな生活をしたいという意識を持つようになったのでしょう。

しかし多くの食料、より良い生活を実現するためには冒険が必要でした。冒険は保守的なものではありません。

例えば、より多くの食料、より美味な食糧を狙って縄文人の先祖はユーラシア大陸や南の島からナウマンゾウを追い、豊かな魚群や橘の実を求めて日本列島にまで移動してきたのでしょう。

これは新たな可能性を求めて保守的な意識を乗り越え、リスクを取って生活の進歩向上を求める「革新」の意識・行動の実践ということで、人間がより高い満足を得るために持っている「革新」という性向の発揮でしょう。

こうして見て来れば、保守と革新は、現生人類が長い進化の歴史の中で備えることになった本能に由来するもので、人間の個体の中に共存する性向で、人間が安定をベースにそこから進歩するという2つの重要な要素という事になるのでしょう。

現実に戻れば、保守と革新は、個人の生活でも、企業経営でも、国家の運営でも、大切に組み合わせて活用すべき2大要素と考えるべきでしょう。


アメリカは何処へ行く

2024年11月02日 12時26分19秒 | 国際関係

日本は今日から3連休です。3連休が明けて5日の火曜日がアメリカの大統領選挙の日です。

ハリス候補とトランプ候補、民主党と共和党の、まさに勢力伯仲と言われる中で、その決着がつく日です。

事はアメリカだけではありません。世界の覇権国であるアメリカの選挙ですから、その結果は世界に大きな影響を及ぼします。

折しも世界は第二次世界大戦以来の混乱の時期にあります。ロシアのウクライナ侵攻からすでに3年がたとうとしています。

さらにパレスチナ問題は、ハマスの突然の攻撃に対し、イスラエルは、これを機と見たようにハマス殲滅、さらにはパレスチナ排除もと思わせるような徹底した報復攻撃で、戦線はレバノンにも広がり、イランにまで飛び火する情勢にあります。

加えて最近の報道では、トランプ候補の前大統領の時代、トランプ劇場ともいわれた北朝鮮との直接対話があったことも忘れられたように、北朝鮮の兵士がロシアで訓練を受け、対ウクライナ戦線に派遣されるという異常なる風雲急の事態にあります。

世界人類が頼る国連が、安全保障理事会常任理事国のロシアの暴挙以来、これらの人類社会の混乱にほとんど無力である中、頼りにするのはアメリカとも言われる中です。

当のアメリカの選挙戦は、どちらかというとアメリカの国内問題への関心が圧倒的で、いかにアメリカのインフレを抑え雇用を増やし、アメリカ経済を強くするかが関心の中心であるようで、そうした真剣な議論が中心なら内向きでも健全でしょう。

ところが、端から見てもどうにも心配なのは、世界のリーダーのアメリカの選挙戦にしては、議論の内容がいかにも低次元で、トランプ候補の「アメリカを再び偉大な国に」という抽象論に大衆が熱狂したり、具体的な政策論はかみ合わず、相手の中傷や、最後には発言の言葉尻をあげつらう「ゴミ議論」になってしまったりしている所です。

どちらが勝っても、アメリカが自国優先という基本には変わりないとしても、現実に政策の実行を担う人たちには、世界トップレベルの理論家や活動家がいるので、安心という面もあるのかもしれませんが、かつてのトランプ政権の時代のように、周囲に本当に優れた人たちを集めて活用するよりも自分のスタンドプレーがお好みのトランプさんの登場には、この際アメリカが世界のトラブルメーカーになったら大変という危惧が先に立つという見方の人も多いでしょう。

端的に言って、北朝鮮の核開発問題にしても、イランの核開発問題にしても、当時のトランプ政権は、国際的にみて何の貢献もできず、状況のさらなる深刻化をもたらしただけという事だったようです。

今、世界が各地で混乱状態を増している中で、必要とされるのは、トラブルシューターなのです、この上にトラブルメーカーが出て来たのでは、本当に、第三次世界大戦が世界に惨禍をもたらすという事態を招きかねないのではないでしょうか。

世界の覇権国をもって任ずる国は、世界人類社会のガバナンス維持のリーダーとして,世界で最も頼りになるトラブルシューターでなければならないのです。

今回の大統領選挙で、アメリカにはその点が試されているという意識を持ってほしいと思う所です。


日銀、いよいよ日本経済の正常化に踏み切るか

2024年11月01日 12時08分01秒 | 経済

今朝の日経平均は800円の下げで始まりました。理由は、皆様ご気づきのように、日銀が昨日の金融政策決定会合で、今月は政策金利には手を付けずに現状維持で行くことを明らかにすると同時に、来月には金利引き上げの可能性を示唆する発言をしているからです。

8月に、僅か0.25%への政策金利の誘導で、日経平均の乱高下を引き起こした経験から、政策金利についての発言には、大変慎重な植田総裁ですが、かといっていつまでも0.25%では、日本経済の正常化は進みません。

資本主義経済の基本的な構成要素である「金利機能」が、市場に対して適切に対応できなければ、資本主義本来の経済機能が働かないはずです。

その意味では12月に政策金利の引き上げもありうるという植田総裁の発言は、日本経済に正常な金利機能を復活させなければならないという意思表示と受け取るべきでしょう。

春闘の賃金決定も次第に正常化し、コロナ禍のタイムラグで一時的に高まった消費者物価指数の上昇も沈静化の傾向を示し、賃金上昇とインフレのバランスも次第に正常化する様子を見せている日本経済の中で、いよいよ金利の正常化のための金利の引き上げが実現可能な環境条件が整ってきているとの読みでしょう。

長く続き過ぎた日本のゼロ・低金利が、キャリートレードなどというマネーゲームを生み、日本の家計の持つ2000兆円の過半を占める貯蓄の利回りはゼロに近く、国際投機資本が巨利を上げるといった構図は、日本の家計のためになりません。

逆に、巨大な借金に押し潰されそうな日本政府は、低金利を利用して経済効果の上がらないバラマキ財政で当面の票を稼ぐといった不健全な財政に走ってきました。

こうした歪んだ日本経済を健全な形にしていくためには、金利機能を正常に働かせなければならないというのが健全な資本主義の基盤でしょう。

日銀の、その実行の過程では、種々問題が起きて来るでしょう。今朝の日経平均の下げが象徴的です。しかし、株価は本来それぞれの企業の成長を反映してきまるものです。今のマネーゲームによる株高は、いわば資本主義の仇花です。日本経済が成長を取り戻す事で日経平均が上がるのが正常の資本主義の姿でしょう。

もともと為替レートは、その国の国際競争力を評価して決まるものです。今は金利の動きが為替レート調整の手段になっていますが、金利正常化、経済の健全化が進めば、中・長期的には為替レートは、経済実態に従うでしょう。

金利正常化のプロセスにおける従来の経済の歪みの是正に伴う為替レートや株式市場の乱高下は、ある程度は避けられないでしょう。

そうした波風は、日本経済正常化、健全化のために克服するべきもので、日銀もそのための十分な配慮をされるでしょうし、何よりも、金融・証券業界、産業界が冷静に対応することが大事でしょう。

そして、金利の正常化が実現した暁には、借金にまみれた日本政府は、財政の健全化のために本格的な努力をしなければならなくなるでしょうし、特筆すべきは、家計の巨大な貯蓄に適切な利息が付いて、これまでの将来に向けた貯蓄の努力が相応の果実を生み、家計を潤すというイソップの「アリとキリギリス」の寓話の世界が現実になる日が来るという事ではないでしょうか。