守田です。(20110706 23:30)
昨日7月5日早朝、宿泊中の仙台のホテルのロビーで、何気なく新聞の
ラックに目をやった際に、読売新聞の1面トップ記事の見出しが目に
飛び込んできました。
いわく、「放射線教育空白の30年」・・・ようするにこの国で放射線教育
が30年間にわたって行われてきておらず、空白が生じているというのです。
興味をひかれてさっそく記事を読みました。
記事にはこう書かれています。
「放射線ヨウ素、同セシウム、人体への被曝の影響を表す単位「シーベル
ト」。事故後頻繁に登場した用語や単位は多くの人にとってなじみが薄く、
放射性物質とは何か、毎日発表される数値は何を意味するのか、簡単に理解
できる人は少なかったのではないか。
『それも当然だ。日本ではこの数十年、放射能の怖さも利点も教えて来な
かった。被爆国でもあり大事なことなのに、大臣だった私も気付かなかった』
1998年から翌年にかけて文相を務めた原子核物理学者・有馬朗人・武蔵学
園長(80)は自戒も込めて話す。
放射線の性質などに関する記述は80年代初頭まで中学教科書にもあったが、
以降30年間消え、高校でも重要な扱いではない。特に、人体への影響につい
ては学校でも社会でもあまり語られなかった」
というのです。なんと30年間、この国の教育から、放射線は閉めだされてき
たのでした。とくに中学校の教科書からは完全に消えてしまった。
これは重要な記事だなと思って、紹介しようと思い、夜になってネットを検
索するとなぜかこれが出てこない。1面トップの記事なのに。後で分かったこ
とですが、「学び再出発」という企画ものの記事なので、後日、出すつもり
なのかもしれません。
それにしても1面トップに出た記事がネットに載っていないのは不自然です。
ともあれ手に入れておこうと、すぐにコンビニを走り回って、残っていた朝
刊をどうに買ってくる事が出来ました・・・。
自分で入力しているため、長い記事全体を紹介できませんが、ともあれさらに
要点を紹介すると、読売新聞は、中学校教科書から記述が消えたことを、「ゆ
とり教育」のせいにしています。そしてこのために、放射線への恐怖が強まっ
てしまっている、正しい教育が必要だとも。
要するに読売新聞がいいたいのはこれかと思いつつ、他に記事を探していると、
「放射線教育、積極的に取り組むべき・・・文科相」という記事が、やはり5
日に出されたことを知りました。(これについては最後に貼り付けておきます)
ようするに読売新聞は、放射線教育は30年間空白だった⇒ゆとり教育のせいだ
⇒今こそ放射線教育に積極的に取り組むべき・・・というストーリーで紙面を
作っていたことが分かります。まさに政府広報です。
しかしそれではなぜ「放射線教育空白の30年」を消してしまったのでしょう。
やはり、「このタイトルはまずい、この内容はまずい」という判断が事後的に
働いたのではないか。そこを読みこんでいくと、放射線教育空白の30年の意味
が大きく浮かび上がってきます。けしてゆとり教育のせいで消えたのではない。
まず第1に1979年にスリーマイル島で深刻な原発事故が起こったこと。これを
期に世界で脱原発の流れが動き出したわけですが、日本は反対にまさにこの頃
に原発をどんどん増やそうとしていた。1980年の時点で稼働していた数は正確
には調べきれていないのですが、およそ20基ぐらいだったと思います。それか
ら現在まで2.5倍に増やしてきたわけで、まさにそのときに、放射線教育が消
されたわけです。
さらに1980年代は、アメリカでレーガン政権が登場し、戦術的核兵器の使用が
公言された時代でもありました。それまで米ソは互いに核兵器を相手の攻撃を
抑止するもので、自分から使う気はないと語ってきたわけですが、レーガン
大統領はそれを180度転換し、ヨーロッパなどの限定的戦場では、核兵器を使う
用意があると言いだした。大陸弾道弾などの戦略核兵器に対して、地域限定の
「戦術核」を使うと言ったのです。それで世界中で反核デモが沸き起こった。
僕も大阪城での30万人デモに、学生グループの一員として参加しました・・・。
そんなときに、日本の中学校の教科書から、放射線の記述が消えた・・・。
さらにおかしいのはこうしたことを文部大臣が「知らなかった」という事実です。
この方が文系出身の方なら、そういうこともあるかもしれないとは思えますが、
原子核物理学者から文部大臣になった方が知らないなどということが本当にあり
えたのだろうか。むしろ反対に、ここに非常に強い政治的意図が介在していたこ
とを感じざるをえません。
しかもこの方が文部大臣になられたのが、1998年、チェルノブイリ事故から12年
経ち、健康被害などが全面化しつつあったときのことであることを考えると、よ
り一層、何かの意図があったと思えてしまいます。
ともあれスリーマイル島事故のあった後、アメリカが戦術核兵器を使うと言いだ
したころから、この国の中学校の教科書から放射線の記述は消えたのでした。そ
うして政府が「放射能は怖くないキャンペーン」を強めている今、やにわに「積
極的に取り組むべき」と言われているのが事実です。
放射線記述を教科書から一たび消し去ったことにも、今になっても「取り組むべ
き」と言いだしたことにも明確な意図を感じます。
この問題についても重大な関心をもってのウォッチが必要なようです・・・。
***************************
放射線教育、積極的に取り組むべき…文科相
読売新聞 2011年7月5日13時21分)
高木文部科学相は5日の閣議後の記者会見で、過去30年間、中学校で放射線教
育を行ってこなかったことを問われ、「今回の(福島第一原発の)事故で、放射能
に関する正しい知識を子供にも分かりやすく教えていくことが何より必要だと分かっ
た」と述べ、今後は放射線教育に積極的に取り組むべきだとの認識を示した。
その上で、書店などで放射線に関する書籍が売れている現状に触れ、「放射線へ
の国民の関心は大変強い。(子供に)どのような内容をどう教えていくのか、専門
家の意見を聞いて早急に結論を出す」と述べ、学校向けの副読本の作成を急ぐ考え
を示した。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110705-OYT1T00621.htm
昨日7月5日早朝、宿泊中の仙台のホテルのロビーで、何気なく新聞の
ラックに目をやった際に、読売新聞の1面トップ記事の見出しが目に
飛び込んできました。
いわく、「放射線教育空白の30年」・・・ようするにこの国で放射線教育
が30年間にわたって行われてきておらず、空白が生じているというのです。
興味をひかれてさっそく記事を読みました。
記事にはこう書かれています。
「放射線ヨウ素、同セシウム、人体への被曝の影響を表す単位「シーベル
ト」。事故後頻繁に登場した用語や単位は多くの人にとってなじみが薄く、
放射性物質とは何か、毎日発表される数値は何を意味するのか、簡単に理解
できる人は少なかったのではないか。
『それも当然だ。日本ではこの数十年、放射能の怖さも利点も教えて来な
かった。被爆国でもあり大事なことなのに、大臣だった私も気付かなかった』
1998年から翌年にかけて文相を務めた原子核物理学者・有馬朗人・武蔵学
園長(80)は自戒も込めて話す。
放射線の性質などに関する記述は80年代初頭まで中学教科書にもあったが、
以降30年間消え、高校でも重要な扱いではない。特に、人体への影響につい
ては学校でも社会でもあまり語られなかった」
というのです。なんと30年間、この国の教育から、放射線は閉めだされてき
たのでした。とくに中学校の教科書からは完全に消えてしまった。
これは重要な記事だなと思って、紹介しようと思い、夜になってネットを検
索するとなぜかこれが出てこない。1面トップの記事なのに。後で分かったこ
とですが、「学び再出発」という企画ものの記事なので、後日、出すつもり
なのかもしれません。
それにしても1面トップに出た記事がネットに載っていないのは不自然です。
ともあれ手に入れておこうと、すぐにコンビニを走り回って、残っていた朝
刊をどうに買ってくる事が出来ました・・・。
自分で入力しているため、長い記事全体を紹介できませんが、ともあれさらに
要点を紹介すると、読売新聞は、中学校教科書から記述が消えたことを、「ゆ
とり教育」のせいにしています。そしてこのために、放射線への恐怖が強まっ
てしまっている、正しい教育が必要だとも。
要するに読売新聞がいいたいのはこれかと思いつつ、他に記事を探していると、
「放射線教育、積極的に取り組むべき・・・文科相」という記事が、やはり5
日に出されたことを知りました。(これについては最後に貼り付けておきます)
ようするに読売新聞は、放射線教育は30年間空白だった⇒ゆとり教育のせいだ
⇒今こそ放射線教育に積極的に取り組むべき・・・というストーリーで紙面を
作っていたことが分かります。まさに政府広報です。
しかしそれではなぜ「放射線教育空白の30年」を消してしまったのでしょう。
やはり、「このタイトルはまずい、この内容はまずい」という判断が事後的に
働いたのではないか。そこを読みこんでいくと、放射線教育空白の30年の意味
が大きく浮かび上がってきます。けしてゆとり教育のせいで消えたのではない。
まず第1に1979年にスリーマイル島で深刻な原発事故が起こったこと。これを
期に世界で脱原発の流れが動き出したわけですが、日本は反対にまさにこの頃
に原発をどんどん増やそうとしていた。1980年の時点で稼働していた数は正確
には調べきれていないのですが、およそ20基ぐらいだったと思います。それか
ら現在まで2.5倍に増やしてきたわけで、まさにそのときに、放射線教育が消
されたわけです。
さらに1980年代は、アメリカでレーガン政権が登場し、戦術的核兵器の使用が
公言された時代でもありました。それまで米ソは互いに核兵器を相手の攻撃を
抑止するもので、自分から使う気はないと語ってきたわけですが、レーガン
大統領はそれを180度転換し、ヨーロッパなどの限定的戦場では、核兵器を使う
用意があると言いだした。大陸弾道弾などの戦略核兵器に対して、地域限定の
「戦術核」を使うと言ったのです。それで世界中で反核デモが沸き起こった。
僕も大阪城での30万人デモに、学生グループの一員として参加しました・・・。
そんなときに、日本の中学校の教科書から、放射線の記述が消えた・・・。
さらにおかしいのはこうしたことを文部大臣が「知らなかった」という事実です。
この方が文系出身の方なら、そういうこともあるかもしれないとは思えますが、
原子核物理学者から文部大臣になった方が知らないなどということが本当にあり
えたのだろうか。むしろ反対に、ここに非常に強い政治的意図が介在していたこ
とを感じざるをえません。
しかもこの方が文部大臣になられたのが、1998年、チェルノブイリ事故から12年
経ち、健康被害などが全面化しつつあったときのことであることを考えると、よ
り一層、何かの意図があったと思えてしまいます。
ともあれスリーマイル島事故のあった後、アメリカが戦術核兵器を使うと言いだ
したころから、この国の中学校の教科書から放射線の記述は消えたのでした。そ
うして政府が「放射能は怖くないキャンペーン」を強めている今、やにわに「積
極的に取り組むべき」と言われているのが事実です。
放射線記述を教科書から一たび消し去ったことにも、今になっても「取り組むべ
き」と言いだしたことにも明確な意図を感じます。
この問題についても重大な関心をもってのウォッチが必要なようです・・・。
***************************
放射線教育、積極的に取り組むべき…文科相
読売新聞 2011年7月5日13時21分)
高木文部科学相は5日の閣議後の記者会見で、過去30年間、中学校で放射線教
育を行ってこなかったことを問われ、「今回の(福島第一原発の)事故で、放射能
に関する正しい知識を子供にも分かりやすく教えていくことが何より必要だと分かっ
た」と述べ、今後は放射線教育に積極的に取り組むべきだとの認識を示した。
その上で、書店などで放射線に関する書籍が売れている現状に触れ、「放射線へ
の国民の関心は大変強い。(子供に)どのような内容をどう教えていくのか、専門
家の意見を聞いて早急に結論を出す」と述べ、学校向けの副読本の作成を急ぐ考え
を示した。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110705-OYT1T00621.htm