明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(190)行き詰った原子力政策(1)

2011年07月12日 23時30分00秒 | 明日に向けて7月1~31日
守田です。(20110712 23:00)

311からこれまで、日々、刻々と変化する情勢に合わせながら情報発信を行っ
てきましたが、この間、脱原発に向けてぜひとも踏まえておきたいことがらに
充分、言及できずにきました。そこで今後、何回かに分けてこの点を論じたい
と思いますが、そのために、僕が一昨年の秋に書き、友人たちのMLに投稿した
原稿を再構成して連載させていただきます。

タイトルは「行き詰った原子力行政」です。福島原発事故があったから行き詰
ったというのではありません。日本の原子力行政はそもそもその前から行き詰
っていたのです。なぜなら原子力政策は、核燃料サイクル計画=プルトニウム
の大量利用によってこそ、「無限のエネルギー」を手にする体系だったにもか
かわらず、その道が完全に閉ざされてしまったからです。

このことをおさえるために、ここで核燃料サイクル計画=プルトニウム利用計
画の概要と、その道が閉ざされてしまった経緯についてみていきましょう。


プルトニウムの成り立ち

まず原子力エネルギーの基本から出発したいと思います。原子力は、ある物質
の原子が核分裂する際に発する、大きな熱エネルギーをさしています。人類が
これに着目したのは、もともとは原子力による爆発=核爆発を起こすこと、要
するに原子爆弾を作るためでした。原子力発電は、この工程でたくさん発生す
る熱を、何かに利用できないかと考えているうちに生み出された副産物でしか
ありません。

さてその原発ですが、現在運転している原子炉では、天然に存在するウラン鉱
石に含まれるウラン235という物質を核分裂の燃料にしています。ただし天然
鉱石に含まれている割合はわずか0.7%。凄く少ないことが1つのポイントです。
このウラン235に中性子をあててやると、原子が分裂します。これが核分裂の
基本です。

この核分裂反応では、大量のエネルギーや放射性物質の発生と同時に、幾つか
の中性子という物質が飛び出してきます。これが次のウラン235にあたると、再
度、分裂が起こり、連鎖反応が始まります。これが継続化し、核分裂が増えも
減りもせずに持続されている状態を、「臨界」と呼びます。

この時、中性子は、ウラン鉱石の残りの99.3%をしめるウラン238という核分裂
をしない物質にも当たりますが、そのときウラン238の一部は、中性子を吸収し
て3日ほどで、自然界には存在しない新たな物質に変わります。それがプルトニ
ウムです。正確にはプルトニウム239,240,241等々、幾つかのプルトニウムが生
まれます。このわずかに組成の違うものを同位体と呼びます。

この中で一番大事なのはプルトニウム239です。この物質は、ウラン235よりも
さらに核分裂性が高い。そのためより爆発性も強く、より強力な原子爆弾を作
ることができるのです。日本には広島・長崎の2箇所に原爆が投下されたわけで
すが、広島に落されたものはウランを使ったもの、長崎に落されたものは、プ
ルトニウムを使ったものでした。2タイプあったので、最低でも2箇所に落とす
「必要」があったのです。まさに壮大な人体実験でした。

その後の原子力エネルギーの利用は、このように核分裂性のないウラン238から
プルトニウム239が新たに生み出される点に期待をかけたものでした。ウランを
核分裂させてエネルギーを得ながら、同時に、プルトニウム239という新たな燃
料を生み出していくことになるからです。この体系が確立すれば、今は燃料には
使えない99.3%のウラン238を次々に燃料に変えることができるため、非常に長
期にわたってエネルギーを手にすることが可能になります。核燃料サイクルは、
そんな夢の体系として構想されたのです。

このサイクルは次のような形で実現が目指されてきました。まず通常に運転して
いる原子炉ではウラン235を分裂させているわけですが、ウラン235はもともと自
然界では0.7%しかないわけです。しかもこの部分だけを削り取って集めるには
大量のエネルギーを必要とするため、通常は少し濃度を上げて、3~5%にして
発電を行います。このため原子炉の中には、95%以上の燃えないウラン238が持
ち込まれることになります。

ここに中性子があたると、その中にプルトニウム239などが発生します。発生し
たプルトニウム239に再び中性子があたると核分裂するため、原子炉は、初めは
ウランの核分裂だけで運転されていますが、次第にプルトニウムの分裂の割合も
増えてきます。それでも原発の運転が終了したときに、使用済み核燃料の中には、
燃え残り(分裂しなかったという意味)のウラン235と、プルトニウム239が残っ
ているので、これを取りだす必要が生じます。これが「再処理」と言われる行程
ですが、放射能をたくさん含んだ放射線物質、外に出してしまえば「死の灰」と
呼ばれる物資と分離するので、その際に、どうしてもいくらかの放射性物質が大
気中に漏れ出てしまう難点を抱えています。

それでもなんとかプルトニウム239を取りだすと、今度はこれをウラン235と混合し
て、発電を行うことが目指されます。複合された燃料をMOX燃料といいますが、そ
の際にも核分裂性のないウラン238が再び炉心に入るので、運転のための核分裂を
引き起されると同時に、ここに再び中性子が当てられ、プルトニウムをよりたくさ
ん作ることが目指されます。こうして使った燃料以上のプルトニウムを回収しよう
というのが、核燃料サイクルの核心なのです。燃料を焚きながらにして増殖すると
いうのす。

もしもこれが可能になると、核分裂性のウラン235が少なくなっても、原発は残り
の99.3%のウラン238を次々にプルトニウムに変えて、運転を続けることが可能に
ります。そもそもウラン235は、ウラン鉱石の中に微量しか含まれていないため、
石油と比較しても埋蔵量(エネルギー換算)はけして多くはなくて、今のままの通
常運転だけでは、いつしか終焉を迎えることになります。(そして事実、その道を
確実に歩んでいます)。これを突破する魔法の竈(かまど)を作り出すのが、原子
力政策の核心でした。この魔法の竈が、「高速増殖炉」と呼ばれるもので、日本で
は「もんじゅ」(実験炉)がそれに当たります。


通常原発の仕組みと高速増殖炉

この「夢」のプルトニウムの増殖は、通常の原発ではできません。何故なのでしょ
うか。また高速増殖炉はいかにしてそれを可能にしていくというのでしょうか。
それを知るためには、通常の原発の仕組みを、もう少し、おさえる必要があります。

先にも述べたように、核分裂は中性子があたることによって連続的におこっていく
わけですが、この際、特徴的なこととして、中性子は、そのスピードが遅ければ遅
いほど、次の原子にあたりやすく、核分裂を誘発しやすいということがあります。
ゆっくりゆらゆら左右にゆれる幾つもの小さな玉を想像してみてください。それが
原子だと仮定すると、その間を中性子が抜けていくことを想像できます。かりに中
性子が光速だとすると、すきまが目視されたときには、中性子はその間を抜けてい
ることになります。

ところがごくごくゆっくりだと、ゆれ動いている原子がすきまだったところに移動
してきて、それにあたる確率が高くなることが分かると思います。実際には、中性
子のスピードは、もともと秒速2万メートルもあります。このスピードを、通常の
原発では秒速2、3キロまで激減させて使用しています。こうして生まれるものを熱
中性子(サーマル・ニュートロン)といいます。それで核分裂をおこす効率は400倍
になるといわれています。

中性子のスピードを落とすには、中性子と質量が近い物質を炉心に満たして、中性
子をぶつけてやるのがよく、この役目を果たす物質を減速剤といいます。これに
もっともよく使われているのは、中性子と質量が同じ水素原子です。それは自然界
に豊富にある水(正確には軽水)を構成しているので、炉心に水を満たしてやれば
いいのです。

こうするとさっきゆらゆら揺れていたウラン原子の他に、たくさんの水素原子が入っ
てきます。中性子はこれに次々とぶつかり、方向を変えながら、再び衝突を繰り返す
ことでエネルギーを奪われ、スピードが落ちていき、最終的にウラン原子と衝突しや
すくなります。

同時にこの水は、炉心の過熱に対する冷却剤の役目も果たし、さらに、発生する
熱を蒸気にかえ、発電のためのタービンをまわす役割も果たしてくれます。ただし、
このように水によって減速をしただけでは、水自身が一定量の中性子を吸収してし
まう性質をも合わせ持つため、中性子がそのぶん減り、核分裂連鎖反応がうまく進
まない面も持ちます。

そこで水を減速剤とした場合、中性子がよりウラン235にあたりやすくする別の工夫
として、先にも触れましたが、ウラン235の濃度を、天然のものより高め、3~5%に
する対処が必要になってきます。このための作業が、ウランの「濃縮」です。これ
ももともと原爆を作るために開発された、核分裂性の高いウラン235だけをより集め
る技術から応用したものですが、こうして作られた濃縮ウランを燃料に、炉内の核分
裂連鎖反応が行われているのが、軽水炉原発の基本的仕組みです。軽水炉は世界の
原発の主力であり、日本はほとんどがこのタイプを採用しています。

ちなみに、濃縮行程は、ウラン235だけを削ぎ取られた「残りカス」を発生させます。
これは濃縮ウランの反対に劣化ウランと呼ばれます。廃棄物と位置づけられますが、
わずかながら放射線を発し続ける放射性物質の1つです。

これが現在、砲弾に使用されています。劣化ウラン弾です。単位あたりの放射線は
わずかでも、例えばイラクでは、何百トンという単位で劣化ウラン弾が使用されて
きたので、これまた大量の放射性物質を撒き散らしている点で大問題です。

さてこうした通常の原発では、なぜプルトニウムが増殖出来ないかですが、それに
は核分裂で生じる中性子の数が関係しています。というのは核分裂の連鎖を行いな
がら、一方でウラン238に中性子を当て、プルトニウムを作り出すとなると、燃やし
た(分裂させた)ウラン原子と同量のプルトニウムを作るには、論理上は、最低で
も平均2個の中性子が分裂によって生じる必要があります。1個は次の分裂に、もう
1個はプルトニウムの発生に必要だからです。

実際には、中性子は、燃料棒の被覆管などにも吸収されるし、また必ずしも全ての
核分裂性原子をうまく分裂させるわけではないので、臨界の維持と増殖を可能にす
るためには、平均2.2個以上の中性子が発生する必要があるとされます。ところが
減速剤によってスピードの落ちた熱中性子は、同時に、エネルギーも落ちてしまう
ので、次の核分裂の時に、平均2個未満の中性子しか、発生させることができません。
それでは燃やしたウランよりも、少ないプルトニウムしか、生成させることができ
ないことになります。

これに対して、より多くの中性子を叩き出すためには、中性子を高速で、つまりエ
ネルギーの高い状態で、核分裂性原子にあてる必要があり、具体的には、プルトニ
ウム239だと秒速1400キロメートル以上、より分裂性の低いウラン235だと、秒速6000
キロメートル以上でやっと平均2個の中性子がたたき出されてくることになります。
つまり増殖のためには、高速の中性子を使わねばならないのです。

そのため、もともと中性子の減速剤としてあった水は使うわけにいかず、炉心の冷
却のためには、違う物質を使う必要が出てきます。実際には液体ナトリウムが使われ
ているのですが、これは空気と接触しただけで燃え出すなど、水よりも格段に扱いに
くい性質を持っています。もんじゅの事故も、このナトリウム漏れによって引き起こ
されました。

このように「高速増殖炉」は、高速中性子を使う点がその名の由来ともなっているの
ですが、このことによって、実は通常の原発と較べても、桁外れな危険性が、作りだ
されてしまっています。前述のナトリウムの扱いにくさもその1つなのですが、このた
め、これまで各国で、高速増殖炉の実験炉が作られたものの、結局、さまざまな技術
的困難を解決する目処はたちませんでした。

むしろ破局的事態寸前の、恐ろしい事故ばかりが続きました。そのため、幾ら何でも
これでは危険すぎるし、予算的にも割に合わないということで、各国が撤退を開始し、
このために核燃料サイクルは、暗礁に乗り上げているのです。

にもかかわらず、日本政府はこれまで、もんじゅの運転再開を目指してきました。ア
メリカ、ドイツ、フランス、イギリスなどがあきらめたにも関わらずです。そしてこ
の日本の姿勢を後追いしようとしているのが、中国やインド、ロシアです。これらの
国は、高速増殖炉をめぐる壁の、強行突破を目指しているともいえます。しかしその
試みが続くならば、それこそ人類は、原子炉の暴発による、滅亡の危機を格段に深め
ることになります・・・・・

続く
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明日に向けて(189)『死にいたる虚構』ノート(1)

2011年07月12日 14時00分00秒 | 明日に向けて7月1~31日
守田です。(20110712 14:00)

前回、ペトカウ理論を解説した新刊本を紹介しました。これに続いて、
同じく肥田舜太郎さんと、斉藤紀医師が翻訳した、ジェイ・M・グール
ドと、ベンジャミン・A・ゴルドマンの共著、『死にいたる虚構』をご
紹介します。

肥田さんが、内部被曝とそれまで診てきた臨床経験とを結びつけたのは、
原爆投下後、30年を経た1976年のときだったといいます。この年、肥田
さんは、ニューヨークで、アーネスト・スターングラス博士と出会った。
前回紹介した新刊本の、イントロを書かれている方です。

スターングラス博士は、核実験フォールアウト(地上への降下物・死の
灰)によって体内に取り込まれた放射性物質からの低線量内部被曝の危
険を強調していた研究者で、このとき、肥田さんに著書"LOW LEVEL
TADIATION"を寄贈されました。

その内容に衝撃を受けた肥田さんは、その後、スターングラス博士の影
響のもとに行われてきた、アメリカの研究書を次々と翻訳されてきまし
たが、『死にいたる虚構』は1996年10月22日に初版が発行されています。
非売品です。実に80歳代になってからの翻訳です。


さっそく内容に入りましょう。第一章の概括で、著者は次のように述べ
ています。

「1945年の日本への原子爆弾投下以来、放射線の人体への影響について
実に多くの研究がなされてきた。初期の研究はヒロシマ、ナガサキの被
爆者についてなされた。研究室で行われたその後の実験も、全身照射を
規定したものであった。これらの研究の本質から導かれた伝統とも言え
る考えは、爆発による高線量放射線は人体に重大な障害をあたえるが、
しばしば『低線量放射線』と呼ばれた放射線量の少ない放射線フォール
アウト(放射性降下物)はほとんど害を与えないというものであった。

 今日に時点でいえば、フォールアウトや原子炉から出る低線量放射線
は人間はその他の生き物に、予想した以上の障害をあたえたかもしれな
いし、民間や軍の原子力施設が稼働し続けるならば、将来の世代に取り
返しのつかない害をあたえるかも知れない。

この本の主要な結論は、これまで公に議論されてこなかった低線量放
射線の危険性との関連で、過剰死について統計学的に評価したことであ
る。一般の読者にはショックをあたえるかも知れないが、第6章では政
府が一貫して世間に対し、情報を隠す努力を続けていたことが述べられ
ている。

 1943年という早い時期から核物理学者が理解していたことは、大気中
にまき散らされた核分裂生成物は食物連鎖の中に入り込み、人体に摂取
された場合、世界中で何百万人もの死を促進することになるであろうと
言うことであった。

 第7章で述べられるが、リナス・ポウリングとアンドレイ・サハロフ
は大気圏核実験のフォールアウトによる核分裂生成物が人体内に入り、
何百万の人間が成人になる前に死亡することを1958年に推定していた。
今日、我々は20世紀のほぼ90年間にわたる合衆国の公的死亡統計を再検
討できる立場にある。そして、ポウリングとサハロフの恐ろしい予想が、
大気圏核実験の期間だけでなく、核分裂生成物の大規模流出事故のたび
に、現実に起こっていた可能性を知ることができる。」(同書p1,2)


 著者、とくにグールドの「強み」は、統計学的処理が得意なことです。
グールドは反トラスト訴訟などで、統計学的能力を駆使して活躍してき
ましたが、それを活用して、アメリカにおける乳がん死亡発生率と核実
験や核施設との関係などを解き明かしてきたのです。とくに概括でも述
べられている第7章「大気圏核実験」での指摘は非常に示唆に富んでい
るので、今回は、この内容を取り上げたいと思います。

 ここで著者たちは、政府が大気圏核実験の人体への有害な影響を隠し
た証左の一つとして、ワシントンポストのビル・カリーが次のように報
じたことを紹介しています。

「1965年にアメリカの核実験に関係した職員たちは、白血病と原爆フォ
ールアウトの関連についての秘密の研究が暴露されたら、それ以降、核
実験ができなくなり、高額な賠償要求の起こることを恐れた。」
(同書p85,86)

 こうした事実を証明するために著者たちは、合衆国の死亡データを解
析して次のような事実を明らかにしています。

「1915年~1985年に合衆国の1年以内乳児死亡率は約10%から1%に改善
された。18世紀は新生児の約半分が1年以内に死亡していたが、少なくと
もそれ以降、乳児死亡率は長期間、下降し続けてきた。
 ところが二つの出来事が、実に素晴らしいこの偉業を傷つけてしまっ
た。全死亡率の場合にみられたように、1915年~50年の平均4%という乳
児死亡率の下降は、大量のフォールアウトが生じた時期に横ばいになり、
核実験中止が調印された後にようやく元に戻った。そして1950年以降、
低体重出生児比率の驚異的な上昇が今日まで続いている。」(同書p89)

「問題の一つのてがかりは、新生児死亡率と流産の最大の原因である
(2500グラム、5.5ポンド以下の)低体重出生率の確実な増加という点に
ある。低体重出生率の上昇は特に非白人に著明で、彼等の乳幼児死亡率
はこの期間中、実際に増加していた。1950年から63年まで、(1500グラム
以下の)超低体重出生率は約10%増加しており、非白人の小児ではそれが
約50%の増加であった。」(同書p90)


 これらに基づき、著者たちはこうした影響がエイズの流行にも有意に
結びついていると考えられることを示唆しています。

「青年たちがチェルノブイリのフォールアウトから驚くほど影響をうけ
やすかったことは、1986年5月にエイズ関連死が驚異的に増加したことで
劇的に示された。これは青年たちが生まれた1950年代に大気圏核実験が
最高潮に達し、そのため免疫機構が障害されたことを示唆している。
 1983年以来、15歳から44歳のどの年齢層においても死亡率の改善が最
も乏しかったが、この人たちの乳児期と小児期は丁度、核実験の期間中
であった。」(同書p90,91)

 放射線は人体の免疫機構を傷つけてしまう。そのためエイズの流行も
また大気圏核実験によるフォールアウトとの関連で強まった可能性が高
いというのです。正確には核実験のために、幼少のときに、あるいは胎
内で被曝した世代が青年に達したときにエイズは流行を始めた。そして
チェルノブイリ事故でさらなるフォールアウトが起こった時、エイズ関
連死が大きく増加したのです・・・。


 こうした免疫系の障害について、著者たちはさらに次のように続けて
います。

「1945年以降に生まれた小児の免疫系が障害を受けたとみられる証拠が
他にある。7-5図をみると、5歳から9歳までの小児癌の死亡は1945年合
衆国では100万人対20人以下と比較的、低率であったが、核実験の期間
中に伝染病の比率程度まで上昇し、水爆実験の初期、1955年には100万人
対80人というピークに達している。同様のことが日本でも起こり、1945
年から1965年までに5歳から9際までの男児小児癌の死亡率が10倍に増え
た。
 1958年、著名なオーストラリアの医師でノーベル賞受賞者のマクファ
ーレン・バーネットは、小児の早い足で速度で成長する組織は悪性腫瘍
が育成する最良の条件であることを観察した。彼は又、白血病は他の疾
病と違って、世界中どこでも3,4歳の子供に最も多いと述べ、「3、4歳
に白血病のピークがあるのは、若い組織が出生時前後に突然変異をおこ
す物質に曝されること以外に、原因はあり得ない」と結んでいる。」
(同書p91,92)


 著者たちはここでの考察を次のように結んでいます。

「この状況の全ては1970年代の初期にレスター・レイブとアーネスト・
スターングラスが行った「食物中の放射性降下物が乳児と成人の死亡率
に与えた有害な影響」の研究に一致している。フォールアウトからの低
線量放射線がベビーブーム世代の人たちの免疫系を障害した重要な要因
であるという仮説を急いで調査する必要がある」


・・・『死にいたる虚構については、さらに継続して取り上げて取り上
げていきたいと思います。










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