守田です。(20110714 08:30)
原子力政策の行き詰まりの続きを論じたいと思います。
前項までに書いたのは、現在運転している原発で使用しているウラン235とい
う燃料は、天然鉱石の0.7%しかないけれども、核分裂性のないウラン238に
中性子があたるとプルトニウムが出来てくるので、これを取り出して原子力
の燃料にすれば、使用できるエネルギーは大幅に拡大できる・・・という可
能性にかけてきたのが原子力政策の根幹であった点です。
そのために、プルトニウムを増殖する「魔法の竈」を作る必要がでてきた。
それで開発されたのが、高速増殖炉でした。ところがこれが技術的に全くう
まくいかない。それどころか危険すぎて手に負えない。そのために抜本的に
行き詰っているのが、原子力政策であるわけです。今回は、この高速増殖炉
の危険性を論じていきたいと思います。
核暴走の危険を強くはらむ高速増殖炉
すでに見てきたように、高速増殖炉は、核分裂を促進するためには、遅くす
る必要性のある中性子を、あえてスピードが高いままにし、エネルギーを保
って、核分裂で2個以上の新たな中性子をたたき出すことを目的にしています。
そのため核分裂性(燃えやすさ)が一部、犠牲にされてしまう面があります。
しかしそうなると、その分、発電にさしさわりが出てくるわけですから、高
速増殖炉では、中性子のスピードを普通の原発ほど落さない代わりに、燃料
の濃度をさらに上げることによって核分裂性を高める処理が行われています。
通常の軽水炉は、3―5%の濃縮ウランを使っているわけですが、高速増殖炉
では15-21%まで高めた濃縮燃料を使います。
ここで使われるのが、ウランとプルトニウムの混合燃料(MOX)ですが、
そうすると燃えないウラン238が減り、中性子が核分裂性物質にあたる確率が
高くなるわけです。しかしそれだけではまだ中性子を減速しないことから生
じる、核分裂性の低下のリスクが充分に補えないので、高速増殖炉ではさら
に、ウランやプルトニウムから出来た燃料棒の組み方も、軽水炉よりも一本
一本を密に近づける工夫を加えています。そのほうが燃料にあたらぬままに
外に出てしまう中性子を減らせるからです。
しかしこの濃縮と密集という構造が、危険を増大させてしまうのです。とい
うのは、そもそも核分裂性物質は、ある一定の量がある一定の形状で集まる
と、自然に臨界に達してしまう性質を持っています。これは東海村のJCO事故
で実際に起こったことでした。そのため燃料濃度を増し、燃料棒を密集させ
ると、核分裂性が増すばかりでなく、なんらかの形状変化が加わることで、
核分裂連鎖反応が急激に進む、暴走の危険性も増えるのです。
しかもプルトニウムがウランより核分裂性が高いということは、それだけ臨
界にも達しやすいことを意味しています。つまりプルトニウムのほうが、も
ともと燃料が集合することにより、暴走してしまう可能性が高いのです。に
もかかわらず、高速増殖炉では、もっぱらより中性子をたくさん叩き出すた
めに、安全性に逆らい、燃料を集中する方策が採られているのです。
それでは燃料体の何らかの形状変化が起こる可能性はあるのかというと、こ
れがおおありで、事実、海外では繰り返し起こってきたのです。というのは
高速増殖炉の燃料は、より核分裂性が高いため、燃料棒付近で発生する熱も、
軽水炉のものよりかなり高い。そのうえ、燃料棒の間隔が狭いため、冷却剤
の通りもそれだけ悪く、それらから燃料棒が曲がったり、熔けてしまうリス
クが極めて高いからです。
実際にこれまで、世界各国で作られた高速増殖炉の経験では、そうした変形
が日常茶飯事におこってきたとすら言われています。それにより、炉心融解
が始まり、核暴走に向かい始めるなど、破局的事態寸前の事故も生み出され、
そのことで、各国は、高速増殖炉からの撤退を開始したのです。
このような形状変化が暴走に直結するとどうなるか。そもそも暴走とは、制
御を離れた核分裂連鎖反応が、ねずみ算的拡大することをさします。その際、
この反応は、核分裂によって発生する中性子が多ければ多いだけ、より早く、
激しく進んでいくわけです。それを一挙に行うように仕組んだのが、原子爆
弾ですが、高速増殖炉も、中性子を多く叩き出すように工夫した炉であるた
め、一気にそこまで進んで、最悪の場合、核爆発をおこしてしまう可能性が、
通常原発に較べても、ずっと高いのです。
しかも原子炉の爆発は、原爆の破裂を大きく上回る破局をもたらします。原
爆の場合、発生する熱量と放射能が恐ろしいわけですが、原子炉の場合、中
に原爆で発生するものとは、桁違いの、もの凄い量の放射能が蓄積されてい
ます。それが大気中に出てしまい、地球上にばら撒かれてしまいます。
チェルノブイリ事故もこうした暴走によっておこった惨劇でしたが、部分的
にはともあれ、大規模核爆発には至らなかったと言われています。高熱によ
り、もの凄い勢いで発生した水蒸気が、原子炉の蓋を吹き飛ばしたのです。
それで大気中に放射能が散ってしまった。その量は、原爆数百発分だったと
言われています。
チェルノブイリ級の事故が、もんじゅのある敦賀で起こった場合の被害を仮
定した推計があります。大雑把なものだそうですが、それによると敦賀市で
は99%の人々が急性死してしまいます。またここから半径300キロ以内に住み
続ける人は、100%、遅発性のガンによって死亡することになります。この範
囲は、東では三浦半島の手前辺り、あるいは新潟市の手前であり、西では広
島県の手前、四国の半分ぐらいを含みます。もちろん、近畿は全部入ります。
チェルノブイリ事故に際して、旧ソ連政府は、この地域に近い550の村の廃村
を決め、土をかけて埋める作業を始めました。あまりに広大なので、全部で
100年はかかるそうです。すでにソ連はなくなりましたが、新しい政府のもと
でも、作業は続けられています。同じことが敦賀で起こった場合も、汚染地
域にあるものはすべて取り壊し、土をかけて埋めるしかありません。そうな
ると例えば近接している京都の神社仏閣をはじめ、あらゆる歴史遺産も、す
べて取り壊し、埋めなければならなくなります。これが実際にチェルノブイリ
周辺で進行していることです。また琵琶湖が汚染されるので、ここを水がめに
している地域も生活できなくなります。ちなみに琵琶湖は、およそ2000万に
以上の人々が取水している世界最大の水がめです・・・。
続いて半径600キロの円を描いてみます。この地域でのガンの発生率は60%で
す。この円は東北に進んで盛岡の手前辺りまでいきます。西は九州をほぼ包ん
で、わずかに長崎、鹿児島ぐらいがその外になります。さらに半径900キロの
円を描きます。これでもガンの発生率は30%です。本州、四国、九州の全域が
入ります。北海道の札幌あたりまでが網羅されます。(この点については
『だから原発はあぶない!』田丸博文著 成星出版参照)
これが通常原発で、原子炉格納の蓋があき、火災の黒鉛にのって放射能が大
気に出てしまった場合に起こることです。繰り返し述べるように、さらに暴
走が進んで、核爆発になってしまった場合の被害はこれを大きく上回ります。
まさに核暴走は、人類にとって破滅的な恐怖であることが分かります。
液体ナトリウムを使うことの危険性
高速増殖炉の危険性はそればかりではありません。先にも述べたように、原
子炉には、炉心の過熱をふせぎ、同時に炉内で発生した熱を発電へと媒介す
る減速材と冷却剤が必要なわけですが、これに水を使えないということが、
高速増殖炉の構造をより危ういものにしているのです。
というのは、高速増殖炉では、先にも少し触れましたが、水に代わって液体
化した金属ナトリウムを冷却剤に使っています。ところが、これがまた非常
に扱いにくいのです。その最大のポイントは、ナトリウムが、空気とも水と
も反応しやすく、触れるとたちまち燃焼をおこしてしまうことです。そのた
め配管からナトリウムが漏れると、ただちに火災につながります。
それでは配管を頑丈にすればいいという考えが浮かびますが、それはこのナ
トリウムが非常に高温になるために、むしろしてはならないことになるので
す。というのは、炉心の熱は非常に高いために、通常の原発では、水を加圧
して循環させています。加圧すると沸点が高く、それだけたくさんの熱が吸
収できるからです。だいたい摂氏300度ぐらいです。
これに対して、高速増殖炉では摂氏500度のナトリウムが循環しています。そ
の熱は、配管に様々な影響を及ぼします。とくに問題なのは外側の温度と内
側の温度が大きく違うため、急激な変化があると、温度差によってバランス
が崩れ、破断してしまうことです。また配管が膨張したりして、つなぎ目が
破砕される可能性も生まれます。
それを防ぐには、できるだけ配管の肉厚を薄くする以外に方法がないのです。
これは科学の実験で使うフラスコを思い起こすとわかります。ガラスが厚く
なると、それだけ割れやすいのです。さらにこの配管は、どうしても膨張を
免れないので、いわゆる逃げを作り出さなければならず、わざと複雑にくね
らす必要も出てきます。しかしそれでは外圧に対する強度という点では著し
く脆弱になるというジレンマのもとにあります。
実際に、ドイツでもフランスでも、この難点がかわせずに、繰り返しナトリ
ウム漏れと、そのための大火災が起きてしまいました。もんじゅの1995年の
事故も、構造的に、この点をかわしきれずに起きたものです。それぞれの事
故は、破局的事態の寸前で収束しましたが、ナトリウムは水と反応すると激
しく水素を発生させるため、大規模な水素爆発が起き、原子炉格納容器を、
破壊してしまう可能性すらありました。
このナトリウムを扱うことの難点を突破できた高速増殖炉は、いまだ世界に
存在せず、この点も、諸外国が計画から撤退する要因を形成しました。しか
もこうした脆弱なナトリウム配管の構造は、高速増殖炉が通常の原発にも増
して、地震に弱いことを物語っています。その点で、日本ではさらに危険性
が増します。
続く
原子力政策の行き詰まりの続きを論じたいと思います。
前項までに書いたのは、現在運転している原発で使用しているウラン235とい
う燃料は、天然鉱石の0.7%しかないけれども、核分裂性のないウラン238に
中性子があたるとプルトニウムが出来てくるので、これを取り出して原子力
の燃料にすれば、使用できるエネルギーは大幅に拡大できる・・・という可
能性にかけてきたのが原子力政策の根幹であった点です。
そのために、プルトニウムを増殖する「魔法の竈」を作る必要がでてきた。
それで開発されたのが、高速増殖炉でした。ところがこれが技術的に全くう
まくいかない。それどころか危険すぎて手に負えない。そのために抜本的に
行き詰っているのが、原子力政策であるわけです。今回は、この高速増殖炉
の危険性を論じていきたいと思います。
核暴走の危険を強くはらむ高速増殖炉
すでに見てきたように、高速増殖炉は、核分裂を促進するためには、遅くす
る必要性のある中性子を、あえてスピードが高いままにし、エネルギーを保
って、核分裂で2個以上の新たな中性子をたたき出すことを目的にしています。
そのため核分裂性(燃えやすさ)が一部、犠牲にされてしまう面があります。
しかしそうなると、その分、発電にさしさわりが出てくるわけですから、高
速増殖炉では、中性子のスピードを普通の原発ほど落さない代わりに、燃料
の濃度をさらに上げることによって核分裂性を高める処理が行われています。
通常の軽水炉は、3―5%の濃縮ウランを使っているわけですが、高速増殖炉
では15-21%まで高めた濃縮燃料を使います。
ここで使われるのが、ウランとプルトニウムの混合燃料(MOX)ですが、
そうすると燃えないウラン238が減り、中性子が核分裂性物質にあたる確率が
高くなるわけです。しかしそれだけではまだ中性子を減速しないことから生
じる、核分裂性の低下のリスクが充分に補えないので、高速増殖炉ではさら
に、ウランやプルトニウムから出来た燃料棒の組み方も、軽水炉よりも一本
一本を密に近づける工夫を加えています。そのほうが燃料にあたらぬままに
外に出てしまう中性子を減らせるからです。
しかしこの濃縮と密集という構造が、危険を増大させてしまうのです。とい
うのは、そもそも核分裂性物質は、ある一定の量がある一定の形状で集まる
と、自然に臨界に達してしまう性質を持っています。これは東海村のJCO事故
で実際に起こったことでした。そのため燃料濃度を増し、燃料棒を密集させ
ると、核分裂性が増すばかりでなく、なんらかの形状変化が加わることで、
核分裂連鎖反応が急激に進む、暴走の危険性も増えるのです。
しかもプルトニウムがウランより核分裂性が高いということは、それだけ臨
界にも達しやすいことを意味しています。つまりプルトニウムのほうが、も
ともと燃料が集合することにより、暴走してしまう可能性が高いのです。に
もかかわらず、高速増殖炉では、もっぱらより中性子をたくさん叩き出すた
めに、安全性に逆らい、燃料を集中する方策が採られているのです。
それでは燃料体の何らかの形状変化が起こる可能性はあるのかというと、こ
れがおおありで、事実、海外では繰り返し起こってきたのです。というのは
高速増殖炉の燃料は、より核分裂性が高いため、燃料棒付近で発生する熱も、
軽水炉のものよりかなり高い。そのうえ、燃料棒の間隔が狭いため、冷却剤
の通りもそれだけ悪く、それらから燃料棒が曲がったり、熔けてしまうリス
クが極めて高いからです。
実際にこれまで、世界各国で作られた高速増殖炉の経験では、そうした変形
が日常茶飯事におこってきたとすら言われています。それにより、炉心融解
が始まり、核暴走に向かい始めるなど、破局的事態寸前の事故も生み出され、
そのことで、各国は、高速増殖炉からの撤退を開始したのです。
このような形状変化が暴走に直結するとどうなるか。そもそも暴走とは、制
御を離れた核分裂連鎖反応が、ねずみ算的拡大することをさします。その際、
この反応は、核分裂によって発生する中性子が多ければ多いだけ、より早く、
激しく進んでいくわけです。それを一挙に行うように仕組んだのが、原子爆
弾ですが、高速増殖炉も、中性子を多く叩き出すように工夫した炉であるた
め、一気にそこまで進んで、最悪の場合、核爆発をおこしてしまう可能性が、
通常原発に較べても、ずっと高いのです。
しかも原子炉の爆発は、原爆の破裂を大きく上回る破局をもたらします。原
爆の場合、発生する熱量と放射能が恐ろしいわけですが、原子炉の場合、中
に原爆で発生するものとは、桁違いの、もの凄い量の放射能が蓄積されてい
ます。それが大気中に出てしまい、地球上にばら撒かれてしまいます。
チェルノブイリ事故もこうした暴走によっておこった惨劇でしたが、部分的
にはともあれ、大規模核爆発には至らなかったと言われています。高熱によ
り、もの凄い勢いで発生した水蒸気が、原子炉の蓋を吹き飛ばしたのです。
それで大気中に放射能が散ってしまった。その量は、原爆数百発分だったと
言われています。
チェルノブイリ級の事故が、もんじゅのある敦賀で起こった場合の被害を仮
定した推計があります。大雑把なものだそうですが、それによると敦賀市で
は99%の人々が急性死してしまいます。またここから半径300キロ以内に住み
続ける人は、100%、遅発性のガンによって死亡することになります。この範
囲は、東では三浦半島の手前辺り、あるいは新潟市の手前であり、西では広
島県の手前、四国の半分ぐらいを含みます。もちろん、近畿は全部入ります。
チェルノブイリ事故に際して、旧ソ連政府は、この地域に近い550の村の廃村
を決め、土をかけて埋める作業を始めました。あまりに広大なので、全部で
100年はかかるそうです。すでにソ連はなくなりましたが、新しい政府のもと
でも、作業は続けられています。同じことが敦賀で起こった場合も、汚染地
域にあるものはすべて取り壊し、土をかけて埋めるしかありません。そうな
ると例えば近接している京都の神社仏閣をはじめ、あらゆる歴史遺産も、す
べて取り壊し、埋めなければならなくなります。これが実際にチェルノブイリ
周辺で進行していることです。また琵琶湖が汚染されるので、ここを水がめに
している地域も生活できなくなります。ちなみに琵琶湖は、およそ2000万に
以上の人々が取水している世界最大の水がめです・・・。
続いて半径600キロの円を描いてみます。この地域でのガンの発生率は60%で
す。この円は東北に進んで盛岡の手前辺りまでいきます。西は九州をほぼ包ん
で、わずかに長崎、鹿児島ぐらいがその外になります。さらに半径900キロの
円を描きます。これでもガンの発生率は30%です。本州、四国、九州の全域が
入ります。北海道の札幌あたりまでが網羅されます。(この点については
『だから原発はあぶない!』田丸博文著 成星出版参照)
これが通常原発で、原子炉格納の蓋があき、火災の黒鉛にのって放射能が大
気に出てしまった場合に起こることです。繰り返し述べるように、さらに暴
走が進んで、核爆発になってしまった場合の被害はこれを大きく上回ります。
まさに核暴走は、人類にとって破滅的な恐怖であることが分かります。
液体ナトリウムを使うことの危険性
高速増殖炉の危険性はそればかりではありません。先にも述べたように、原
子炉には、炉心の過熱をふせぎ、同時に炉内で発生した熱を発電へと媒介す
る減速材と冷却剤が必要なわけですが、これに水を使えないということが、
高速増殖炉の構造をより危ういものにしているのです。
というのは、高速増殖炉では、先にも少し触れましたが、水に代わって液体
化した金属ナトリウムを冷却剤に使っています。ところが、これがまた非常
に扱いにくいのです。その最大のポイントは、ナトリウムが、空気とも水と
も反応しやすく、触れるとたちまち燃焼をおこしてしまうことです。そのた
め配管からナトリウムが漏れると、ただちに火災につながります。
それでは配管を頑丈にすればいいという考えが浮かびますが、それはこのナ
トリウムが非常に高温になるために、むしろしてはならないことになるので
す。というのは、炉心の熱は非常に高いために、通常の原発では、水を加圧
して循環させています。加圧すると沸点が高く、それだけたくさんの熱が吸
収できるからです。だいたい摂氏300度ぐらいです。
これに対して、高速増殖炉では摂氏500度のナトリウムが循環しています。そ
の熱は、配管に様々な影響を及ぼします。とくに問題なのは外側の温度と内
側の温度が大きく違うため、急激な変化があると、温度差によってバランス
が崩れ、破断してしまうことです。また配管が膨張したりして、つなぎ目が
破砕される可能性も生まれます。
それを防ぐには、できるだけ配管の肉厚を薄くする以外に方法がないのです。
これは科学の実験で使うフラスコを思い起こすとわかります。ガラスが厚く
なると、それだけ割れやすいのです。さらにこの配管は、どうしても膨張を
免れないので、いわゆる逃げを作り出さなければならず、わざと複雑にくね
らす必要も出てきます。しかしそれでは外圧に対する強度という点では著し
く脆弱になるというジレンマのもとにあります。
実際に、ドイツでもフランスでも、この難点がかわせずに、繰り返しナトリ
ウム漏れと、そのための大火災が起きてしまいました。もんじゅの1995年の
事故も、構造的に、この点をかわしきれずに起きたものです。それぞれの事
故は、破局的事態の寸前で収束しましたが、ナトリウムは水と反応すると激
しく水素を発生させるため、大規模な水素爆発が起き、原子炉格納容器を、
破壊してしまう可能性すらありました。
このナトリウムを扱うことの難点を突破できた高速増殖炉は、いまだ世界に
存在せず、この点も、諸外国が計画から撤退する要因を形成しました。しか
もこうした脆弱なナトリウム配管の構造は、高速増殖炉が通常の原発にも増
して、地震に弱いことを物語っています。その点で、日本ではさらに危険性
が増します。
続く