明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(204)南相馬からSOS プルトニウム・・・!?

2011年07月25日 22時30分00秒 | 明日に向けて7月1~31日
守田です。(20110725 22:30)

福島原発事故における高濃度の放射能汚染が心配される南相馬市から、
原発から出たとされている、31種類の放射線核種をきちんと調べ、公
表してほしいという要求が出されました。訴えているのは無所属の市
会議員、大山こういちさんです。

ユーチューブで訴えを公開しています。URLは以下の通りです。
http://www.youtube.com/watch?v=a4AoaGuLoMk

大島さんはここで6月6日に原子力安全保安院が、IAEAに提出した報告
書の中で、31種類もの放射性核種が大気中に放出されたとされている
こと、そのデータが、経産省のHPに掲載されていることを指摘してい
ます。しかるこれがマスコミでまったく報道されていないことに対し
「一体どうなっているのか」と疑義を提出するとともに、即刻これら
を調べること、またこれを多くの人々の声で実現させるころを提案し
ています。そのためこの情報の拡散も求めています。

ちなみにこの保安院が発表した31種の放射線核種大量放出情報は、以
下から閲覧できます。分量の大きな報告書ですが、13枚目の表5だけ
でもご覧ください。驚くべき放出量です。
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/20110606-1nisa.pdf

僕のこの点を気に書けながら、このところ何を切り口にこの点を論ず
ればいいのか戸惑っていました。セシウム牛が関心を集めていますが、
しかし出ているのはセシウムだけではありません。しかし現状では、
あたかも放射性物質と言えば、セシウムだけをさすかのようにすらなっ
ている。そうではなく保安院の発表でも他に30種もが、大気中に飛び
だしながら、計測されてこなかったのです。

その意味でこの南相馬からのSOSは、私達全体の危機をも包含するもの
です。南相馬を助けるためだけでなく、私達自身を相互に助け合って
いくために、これらの核種の調査を進める要望を強める必要がありま
す。そのためにもぜひ、この大山さんの訴えに耳を傾け、共感された
方は拡散にもご協力ください。

なおお時間のない方のために、全発言をノートテークしましたので、
それも貼り付けておきます。
また大山さんの発言は、英訳バージョンもあり、海外でも反響を呼ん
でいます。発言が紹介されているTIMESの記事も紹介しておきます。
ここからは英字字幕付きバージョンを見ることができるので、英語
ネイティブのご友人などにもご紹介ください。
http://ecocentric.blogs.time.com/2011/07/21/is-this-mike-on-another-youtube-sos-from-fukushima/

以下、大山さんの発言の書き起しを貼り付けます。

*******************************

南相馬からSOS プルトニウム・・・!?

みなさん。こんにちは。南相馬市市会議員無所属の大山こういちです。
現在、継続中の原子力災害最先端地の南相馬市で、今、何が起こって
いるのか。南相馬市市民の皆さん。福島県のみなさん。日本の国民の
みなさん。そして世界市民に情報を発信したいと思います。

南相馬市桜井市長は7月8日、避難市民に対して、戻ってきてという帰
還要請をしました。それを受け、私のところに避難市民の方々から、
多くの不安が寄せられています。その中には放射線量の高いところに
仮設住宅や民間借り上げアパートがあるとか、校庭の表土もはぎとら
ずに仮設校舎を作ったとか、井戸水や自家消費の野菜も調べてもらえ
ないとか、避難して留守にしている住宅の放射線量の測定も、今後の
除染も、全部自己責任とか、不安でいっぱいだということが分かりま
した。

残念ながら避難市民のみなさんのご指摘通りで、なぜこんな段階で市
長が帰って来いと言えるのか。また政府が突然、緊急時避難準備区域
の解除を言うのか、寝耳に水で、みなさんが不安に思うのも当然のこ
とと思います。そこで議員の政務調査・広報の一環として、私も市長
に習い、このユーチューブで南相馬の現状を伝えるべく、情報を発信
することにしました。

避難市民が一番不安に思っていることを、これからお話します。6月
6日公表の、原子力安全保安院がIAEAに提出した報告書によりますと
31種類の放射性核種を大気に放出したことになっております。その中
には猛毒のプルトニウムやストロンチウムを大量に放出したことが一
覧表を見れば明らかです。

空中に出したものの量と種類が分かっていて、どこに落ちたか、調べ
られていません。市長や国会議員に直談判しましたが、未だ検査した
ともしなかったとも、回答が出てきていません。南相馬市は冬のフェ
ーン現象で、全村民避難の飯舘村を越して、空っ風が土ぼこりを巻き
上げ、噴きおろす、いわゆる国見おろしという強い風が、市内に土ぼ
こりをまき散らし、全域を覆います。おそらく今、除染をしても膨大
な量の放射性物質が水源地でもある阿武隈山脈に温存され、国見おろ
しや雨が、これらの移動、流下をさせ、そういう地形や位置に、南相
馬はなっています。

31種類の放射性核種の大量放出についての報告書は、経済産業省のホ
ームページで、誰でも見られるようになっています。しかしマスコミ
では一度も取り上げられておりません。一体、どうなっているのでし
ょうか。土壌調査をやらずに、区域解除や復興を語る事は、経済優先、
人命軽視です。国の宝、子どもの将来に対して、まずは事実を明らか
にして、首相、県知事、市長の三人の首長が、文字通り首をかけて、
責任を持って、安全宣言を出して、全ての責任を国が負うと約束して
からでなければ親としては安心できません。

現地、南相馬市では、時間の経過で、危険が無くなったかのごとく錯
覚し、無防備な日常生活に戻り、マスクもせず、土ぼこりを吸引して
しまっているような光景も目立ってきております。早急な31種の調査
と公表をみなさんで要求しなければ、埒が明かないのではないでしょ
うか。まずは事実を知り、それを踏まえて対策を立てていかねばなり
ません。後で取り返しがつかなくなってからではもう遅いのです。
今、拙速な対応を場当たりに的にしたのでは、子どもたちに申し訳が
立たないと思います。

ぜひみなさん。安心・安全のために、この情報を広げてください。
よろしくお願いいたします。
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明日に向けて(203)沈黙の夏・・・(『死にいたる虚構』ノート(2))

2011年07月25日 08時00分00秒 | 明日に向けて7月1~31日
守田です。(20110725 8:00)

肥田舜太郎さんが翻訳されたジェイ・グールドの『死にいたる虚構』
ノートの2回目をお届けします。今回、取り上げるのは第三章「沈黙
の夏」です。このタイトルは言うまでもなく、レイチェル・カーソ
ンの名著、『沈黙の春』をもじったものです。

レイチェル・カーソンは、放射能と化学物質の複合汚染の恐ろしさ
をもっとも早く告発した人物として有名です。例えば『沈黙の春』
二章と四章の冒頭には次のような記述が見られます。

「禍のもとは、すでに生物の細胞組織そのものにひそんでゆく。も
はやもとへもどせない。汚染といえば放射能を考えるが、化学薬品
は、放射能にまさるとも劣らぬ禍いをもたらし、万象そものの―生
命の核そのものを変えようとしている。核実験で空中にまいあがっ
たストロンチウム90は、やがて雨やほこりにまじって降下し、土壌
に入りこみ、草や穀物に付着し、そのうち人体の骨に入りこんで、
その人間が死ぬまでついてまわる。だが、化学薬品もそれにまさる
とも劣らぬ禍いをもたらすのだ。」(『沈黙の春』新潮文庫p14,15)

「殺虫剤による水の汚染という問題は、総合的に考察しなければな
らない。つまり人間の環境全体の汚染と切りはなすことができない。
水がよごれるのは、いろんなところから汚物が流れ込むからである。
原子炉、研究所、病院からは放射能のある廃棄物が、核実験がある
と放射性降下物が、大小無数の都市からは下水が、工場からは化学
薬品の廃棄物が流れこむ。それだけではない。新しい降下物―畑や
庭、森や野原にまきちらされる化学薬品、おそろしい薬品がごちゃ
まぜに降りそそぐ―それは放射能の害にまさるとも劣らず、また放
射能の効果を強める。」(『同』p53)

彼女はこうした結果が、人間だけでなく動物たちにもおよび、春に
なっても鳥たちが鳴かない悲惨な事態が訪れてしまう、そうなる前
地球環境の汚染を止めなければならないと訴えたわけですが、実は
この書物を執筆したときに、彼女自身もまた乳がんに侵されていま
した。彼女は同書出版の2年後の1964年に56歳の若さで亡くなって
います。

ちなみにグールドは、『死にいたる虚構』に続く『内部の敵』で、
合衆国の乳がん死亡率が、核実験が頻繁に行われるようになった
1950年から1989年までの間に2倍になったこと、最も増加率の高い
郡では4.8倍にまでなったことに着目し、全データをコンピュータ
に入力して大掛かりな解析を行いました。

そこでは殺虫剤や農薬を含め、さまざまな癌発生の因子が扱われ
ましたが、死亡率が有意に上昇したアメリカの全ての郡に共通する
因子を調べて、唯一、あがってくるのは、その地域が、核施設から
100マイル(160キロ)以内にあることでした。事故だけではなく通
常運転時の許容量と称された放射能の放出も、深刻な被曝をもたら
してきているのです。

レイチェル・カーソンの乳がんが、こうした被曝の影響であったか
どうかを特定することは現代医学ではできませんが、全世界に先駆
けて化学薬品と放射能の複合汚染の危機を告発してくれた彼女が、
56歳で癌で亡くなっていることは、非常に印象的な事実です。因み
に私たちの国はそのほとんどが原発から100マイル以内です・・・。


さてグールドは、こうした事実に踏まえながら、1986年のチェルノ
ブイリ原発事故後のフォールアウトの影響下で、アメリカの一地域
で、実際に「沈黙の夏」が訪れたこと。つまり野鳥たちの多くが、
子育てに失敗し、毎年夏に爆発的に登場してくる若鳥がまったく
みられなかった事実をここで紹介しています。

この観測が行われたのは、サンフランシスコから北へ25マイル離れ
たポイントレイズ鳥類観測所でのことでした。ここで何年もの間、
網をはって野鳥を一時的に捕獲する方法で観察を行ってきたデービ
ット・デサンテ博士は、7月22日の時点で異変に気がつきました。
彼はこれを次のように述べています。

「いつもなら、あふれるほどの親鳥がこどもたちに餌をはこび、は
げましの歌、気持ちをふるい起たせる鳴声を耳にするところなのだ
が、ひな鳥たちのキーキー、チーチーも聞こえず、奇妙な静寂に出
くわしたのである。」(『死にいたる虚構』p23)

デサンテ博士はさらに観察を続けて、次のようなデータを得ます。

「7月後半の第8期間(10日ごとに区切った観察期間)には繁殖率は
通常の24%までに落ち込んだ。この頃はいつもなら鳥の数が最高に
なる時期である。1976年から1985年まで、7月の1日平均捕獲数は30
羽を越えており、デサンテによれば60羽や90羽になるのが普通だっ
た。しかし1986年の7月はどの日も24羽を越えることはなく、たった
3羽の時もあった。」(『同』p24)

デサンテ博士たちは、原因の追及をはじめますが、すぐに農薬、除
草剤、その他の化学薬品の影響をはずしました。少なくとも過去7年
間、問題の地点で、それらが使用された形跡が認められなかったか
らです。デサンテ博士は次のように述べています。

「誰の説明ができなかった。そこで私が冗談のつもりでチェルノブ
イリのせいに違いない、と言ったらみんなが一斉に笑った。何故な
ら、フォールアウトの雨が降った時、ラジオが『心配する必要はな
い。野菜や果物も洗う必要はない。警告は出すな。すべてうまくい
っている』と伝えていたからである。我々はフォールアウトについ
てそれ以上、考えなかった。」(『同』p25)

やがてデサント博士は、似た状況が他の地域でも起こっているので
はないかと、鳥類研究者への問い合わせを始めました。その結果、
得られたのは、こうした事態が、カリフォルニア州北部にのみ集中
して起こっていたことでした。そして今度は本当にチェルノブイリ
事故との関連を疑い始め、気象データを入手して、同年5月6日に、
「チェルノブイリ雲」が、西海岸沿いのワシントン州、オレゴン州、
北カリフォルニア州を通過したこと。これと繁殖減少地域が地理的
に一致していることをつかみました。

さらにこれらのことは鳥たちの種別の観測からも裏付けられました。
というのは、鳥たちの移動様式、生息地、巣の位置は繁殖の減少に
影響を与えていたなかったものの、餌の食べ方が大きく影響してい
たのです。要するに新緑をかじった虫の幼虫を餌とする鳥たちに被
害が集中し、キツツキやツバメなどには影響はなかったのです。

なぜかといえば、キツツキは、カブトムシの幼虫、しかも死にかけ
たものを木の中から掘りだして餌にしており、ツバメは主に水生昆
虫を餌にしているので、放射能の濃縮した餌をあまりとらずに済む。
これに対して、葉の上のいも虫たちを捕まえる鳥たちは、それだけ
生体濃縮された放射能をひな鳥に与えてしまうことになったのです。

これらの鳥たちは、小さなものも多く、大きな鳥に比べて、代謝が
早いために、体重当たりに食べる餌の量も多い。つまりそれだけ放
射能の害も受けてしまう。それが5月以降、ひな鳥たちに集中して
しまった。このためこの年の夏、カリフォルニア北部で「沈黙の夏」
が訪れてしまったのでした。チェルノブイリが引きよせた沈黙でした。


・・・僕はこれまで、日本の森林の崩壊を憂い、とくにここ10年ぐ
らい爆発的に進行しているナラ枯れ現象を問題にしてきました。ナ
ラ枯れは、地球温暖化の中で起こっていると思われますが、異常気
象は他にもさまざまに植生の変化をもたらし、それが昆虫の発生時
期を狂わし、鳥たちの繁殖に影響をもたらしています。

とくに冬が著しく暖かい年は、春の錯乱の影響が大きくて鳥たちの
子育ての失敗につながりやすく、そんな年は、夏に再度の子育てを
試みようとする鳥たちの求愛の声が聞こえたりもしていて、憂いを
感じてきました。そのため順調に木々が芽吹き、草花が開花する春
にはどこかほっとする思いも感じてきました。

それだけにこの「沈黙の夏」の記述は衝撃的であると同時に、それで
は、福島の夏はどうなのか。東北の、関東の夏はどうなのかと思わず
にはおれません。広範な地域のお茶からセシウムが検出されています
が、どれだけの鳥がたちが放射能をいっぱいかじった虫たちをひな鳥
に与えたことでしょうか。

いやそもそもその虫たちはどうなってしまうのだろう。そして鳥に
限らず、食物連鎖の連関の中にいる動物たちに、放射能汚染はどの
ような循環をもたらしているのだろう。それを思わずにはおれませ
ん。もちろん、その連鎖の頂点にいるのは私たち人間です。沈黙の
夏の影響は徐々に、しかし確実に私たちに迫ってきています。


・・・低線量被曝問題の調査・研究を続けます。


コメント (3)
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