明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(194)民主主義が強い時、政治家とマスコミは、世論の後についてくる!

2011年07月15日 10時00分00秒 | 明日に向けて7月1~31日
守田です。(20110715 10:00)

7月13日、管首相が脱原発宣言を発しました。歓迎すべきことだ
と思います。またこれとあたかもタイアップしたかのように、朝
日新聞が、脱原発への方向転換を表明しました。これもまた歓迎
すべきことだと思います。

首相発言をまだご覧になってない方は、下記をご参照さい。どの
ような背景があるにせよ、日本の首相がこのように明確に脱原発
の宣言を発したことは初めてのことであり、非常に大きな意味を
持っていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=sC_dM-j8PWY

この発言をどのように捉えるべきなのか。僕はこの間の脱原発世
論の高まりが、ついに首相や、朝日新聞をも動かし出したのだと
思います。民主主義の力が政治家とマスコミを動かしているので
す。何よりもこの状態を続ける決意を私たちは固める必要がある。

そもそも民主主義の語源は、デモクラティア=民衆(デモス)に
権力(クラティア)がある状態をさすギリシャ語です。民衆に権
力がある状態とは、時の政権党がどのような勢力であっても、民
衆の力に規定されている状態を指します。

今、少なくともエネルギー政策をめぐって、私たちの国はデモス
にクラティアがある。その一つの象徴が、6月11日の全国150か所
のデモンストレーションです。約7万人の人々が行進した。これを
「少なかった」という人もいますが、僕はそうではないと思う。

大政党や大きな組合の「組織動員」なしに、これだけ大きなうね
りが起こったことはなかった。そしてそうした動きに最も敏感な
のが実は政治家であり、マスコミなのです。民衆の力が強い時、
政治家とマスコミは、世論の後をついてくるのです!

反対の時はどうか、政治家は世論操作に奔走し、マスコミはそう
して作られた世論の後押しをします。これを象徴するのが、これ
までの電力資本による洪水のようなPRと、それを無批判的にのせ
続けたマスコミの姿勢です。

もっと滑稽なのは、九州電力によるやらせメール事件です。なぜ
九電はあのようなことをしたのか。一つは原発再稼働のやましさ
を知っているからです。しかしもう一つは、実はあんなこと、い
つもやっていたからです。九電は情勢の転換を見誤った。

今はパワーが民衆の側にある。だからいつもやっているやらせ、
いつもは発覚しない世論操作がすぐに告発されてしまった。民衆
にパワーがあるとき、私たち一人一人もパワーを持ち、勇気を持
った行動ができます。だから今回ばかりは告発も出たのです。

もちろんこれを作りだしたのは、九州電力前で座り込むなど、全
国からの熱い視線が集まる中で奮闘してきた九州の人々、そこに
かけつけた人々の努力です。それが巡り巡って大きな磁力を生み
出し、玄海原発再稼働を寸前で止めてしまった。

だから大事なことは、管首相の発言も、朝日新聞の大転換も、私
たちの側が作りだしていることを自覚することです。だから今は
力を抜くわけにはいかない。原発を停めること、再稼働をやめさ
せること、その声をさらに大きくする必要があります。


・・・管首相自身は、残念ながらというか、事故初期に、もの凄
い濃度の放射性物質が放出されていることをひた隠しにし、逃げ
るべき人を逃がさずに大量被曝を引き起こした罪を免れないと僕
は思っています。朝日新聞も罪が大きいです。

それは忘れてはいけないし、今なお、管首相も、朝日新聞も、内
部被曝の恐ろしさを明らかにせず、被曝を放置し続けていること
も重大です。会見でも、事故収束のためのロードマップが順調に
進んでいるなど、どう考えても事実を偽る発言を続けています。

朝日新聞もこれまで、「にわかに健康に被害はない」という政府
や政府に従う「学者」たちの発言を繰り返し掲載してきました。
アメリカ軍の末裔の、放射線影響研究所の広報のような役割も果
たしてきた。その責任をやはり問われねばなりません。

そうであるがゆえにこそ、私たちは、私たちの民衆の側の力が、
情勢を動かしている非常に大きなポイントであることを自覚し、
さらにいろいろな知恵を巡らせ、いろいろな行動を重ねていく必
要があります。まさに今必要なのは草の根の活動です。


最後に、こうした状態をある意味では象徴する記事を紹介してお
きます。「管首相の『脱原発依存』発言は無責任だ」と題した日
本経済新聞の記事です。この新聞には経済界の動向が反映されて
もいる。その大新聞の微妙な動揺が透けて見える記事です。

ポイントは次の点です。「無責任」の中身が、主要に充分な議論
を尽くしてないとか、代替策が鮮明でないとか、対応が場当たり
的だということに終始していて、脱原発の方向性そのものが誤り
だとは言えていない点です。そうは言えないことが表れている。

例えばこんなフレーズがあります。

「政策を決定するうえで国民の安心や安全を重視するのは当然だ。
ただ電力の約3割を担ってきた原子力への依存度を引き下げるの
であれば、代替エネルギーをどうするのかや、温暖化ガスをどう
減らすのかを含めた総合的な戦略が欠かせない。」

「政策を決定するうえで国民の安心や安全を重視するのは当然だ」
・・・つまり日経新聞も、脱原発の方向性が「国民の安心や安全
を重視する」方向性であることを認めているのです。しかし代替
策がないから問題だというのです。

要するに半分は「脱原発」を認めている。認めざるを得ないのです。
そうでないと「国民」に背を向けられてしまうことを日経新聞も
敏感に感じとっている。「原発は安全だ。だから動かそう」とはと
ても言えない。だから手続き論だけの首相批判になっている。

これもまたあとひと押し、ふた押しで容易に転換しうる位置にある
発言です。しかしご用心。反対の側からのひと押し、ふた押しでも
また原発推進の側にぐっと傾くかもしれない位置にもある。動揺し
て、態度を決めかねている様が、紙面に浮き出ている。

だから、もっと民衆の側に力を!まさに、Power to the People
です!もっとデモもやりましょう。あちこちで講演会を開きましょ
う。京都では昨日から脱原発団扇配りが始まりました!それやこれ
やいろんな知恵を重ねましょう!

そうすれば政治家とマスコミがついてきて、この国はだんだんに変
わっていきます。まさに未来の展望は、私たちの力=民主主義の成
長にかかっているのです。各地で互いにエールを送り合い、さらに
前に進みましょう!

******************************

菅首相の「脱原発依存」発言は無責任だ
日本経済新聞 2011/7/14 

菅直人首相が13日に記者会見し「原子力発電に依存しない社会を
目指す。将来は原発のない社会を実現する」と語った。政府・与
党で十分な議論をしないまま政策の大転換を口にし、代替エネル
ギーに関する十分な説明もなかった。国民生活などへの影響の大
きさを考えれば、首相の発言は無責任である。

首相は政策転換の理由として「原子力事故のリスクの大きさを考
えたときに、これまで考えていた安全確保だけでは律することが
できない技術であると痛感した」と強調した。

電力不足への対応に関しては「節電の協力などを得られれば十分
にこの夏、この冬についての電力供給は可能であると耳に入って
いる」と述べるにとどめた。定期検査中の原発の再稼働の時期は
明確にせず、電力の安定供給にどう責任を果たすのかという疑問
には答えなかった。

政策を決定するうえで国民の安心や安全を重視するのは当然だ。
ただ電力の約3割を担ってきた原子力への依存度を引き下げるの
であれば、代替エネルギーをどうするのかや、温暖化ガスをどう
減らすのかを含めた総合的な戦略が欠かせない。

太陽光や風力など再生可能エネルギーを増やしていく努力は重要
である。主要国の中で日本は自然エネルギーの投資で大きく遅れ、
水力を除くと電力供給の約1%をまかなっているにすぎない。政
策を総動員するのは当然だろう。

一方で気象状況に左右される自然エネルギーは不安定で、現状で
は発電コストも高い。火力発電を増やせば天然ガスや石油の輸入
経費がかさみ、国際的に割高とされる電気代の一層の値上げを招
きかねない。国際競争力が低下し、産業の空洞化に拍車をかける
恐れがある。

首相の原発事故をめぐる対応は一貫性を欠いてきた。5月には中
部電力の浜岡原発の停止を要請。他の原発は再稼働に向けて自治
体との調整を進めたが、突如として全原発のストレステスト(耐
性調査)の実施を決めた。

全国知事会は12日にまとめた緊急提言で「政府は場当たり的な対
応に終始し、国民の不信感はかつてなく高まっている」と指摘し
た。今回も議論の経過が全く見えないまま、重要な政策転換が発
表された。

首相は震災復興や原発事故などの対応に一定のメドがついた段階
で退陣すると6月に表明した。20~30年後をにらんだ国の重要政
策の方向付けを行う立場にない。中長期的な国家戦略は新政権の
下で、腰を落ち着けて議論するのが筋である。
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE1E0E3E4E2E5EBE2E3E6E2E5E0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D
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