守田です。(20140521 18:00)
凄いニュースが飛び込んできました!
福井地裁で、大飯原発3、4号機に対する運転差し止め命令が出されました!画期的です!
僕は直接にこの裁判に関わっていないので、さしあたって朝日新聞の記事を読む限りの分析ですが、最大の争点は「耐震設計など安全対策の基準となる基準地震動を超える大きさの地震が起きる可能性があるか」だったとのこと。
裁判所が当然にも「可能性がある」と判断したのでしょう。
もう一つ重要な点があります。
この裁判では樋口裁判長の訴訟指揮により「①外部電源が喪失した場合などでも過酷事故を防ぐために原子炉を冷却できるか②使用済み核燃料プールの損傷による放射能漏れの可能性③活断層や地滑りで地盤にずれが生じる可能性」の3点も争点となっていたということです。
これは非常に重要な点です。なぜなら何度も指摘してきたことですが、原子力規制庁が2012年10月31日に打ち出した「原子力災害対策指針」では、「原子炉の五重の防壁が破られた場合」を想定しています。つまり過酷事故後が起こりうることを認めて、そのときの対策を施すとなっているのです。
これに対してこの裁判では過酷事故を防げるかどうかをきちんと俎上にのせ、過酷事故が防げないので運転を認めないとなっているのだと思います。これまで絶対に過酷事故は起こらないと約束してきた国が、なし崩し的に「過酷事故対策」を再稼働の要件としだしたことに対して、きわめてまっとうな観点で対応していると思えます。
さらに「原子力災害対策指針」では、過酷事故を想定はしているものの、あくまでも「原子炉の五重の防壁が破られた場合」となっている。つまり防壁などない燃料プールのことが除外されているのです。
これは福島事故の経験から、原子炉が壊れるか否かということとは別に、その外にある燃料プールが常に危険を伴っていることが明らかになったことに対し、おそらくは意図的に無視し、論点化を避けようとしたものだと僕は思っていますが、裁判ではこの点もきちんと俎上にあがりました。
詳しい分析は、弁護団や、訴訟を担ってきた方たちの説明を待ちたいと思いますが、僕はこのように、国の「過酷事故はあり得ない」から「過酷事故対策をした」というなし崩し的な態度変更を認めず、きちんと実際の事故の危険性を判断の対象に挙げたがゆえに、まっとうな判決が出たのだと思います。
なお、原子力規制庁が打ち出した「原子力災害対策基本指針」のあやまりについては以下の記事をご参照ください。
明日に向けて(621)過酷事故を前提とした「原子力災害対策指針(原子力規制委員会)」を批判する!(1)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/1d2110ce6b55ad6624460c1ff2055b4b
この判決は何よりも、訴訟を担ってきた方たちが紡ぎ出してくださった素晴らしい成果ですが、僕はそれを後押ししたものこそ、全国の再稼働反対の声、たゆみない運動だと思います。
実際、東京の首相官邸前行動をはじめ、各地で金曜日の電力本社前行動が100回目を迎えつつあります。
例えばその一つ、関西電力姫路支店前で行われてきた「関金行動@姫路支店前」は7月11日で100回目だそうです。
この日の行動を呼びかけるチラシにはこう書いてあります。
「こんなこと続けたくはないけれど原発全基廃炉になるまで頑張らにゃ!とりあえず雨にもマケズ雪にもマケズ夏の暑さにもマケズ頑張ってきた。
記念にぱ~っといつもより派手にアピールしたい!そう考えています。みなさまのご参加お待ちしております。数は力だ!黙ってちゃあかん!」
(脱原発ニュースNo.39 脱原発はりまアクション 5.17発行 なお同行動は毎回金曜日の17:30から)
各地で同じような思いで、多くの方が奮闘してきたのではないでしょうか。
「今日は少ないな。あ、今日は少し増えたな」と一喜一憂もしながらも、淡々と、街頭に立ち続けてきた。
その連なりが弁護団を後押しし、裁判所のまっとうな訴訟指揮のもとでの正義の判決を出すことにつながったのだと思います。
私たちが確信すべきことは、私たちには力があるということです!
だとするならば、さらにこの力を発揮しましょう。
全国で互いに声をかけあい、エールを交換し合って、歩みを強めていきましょう。
まさに「原発全基廃炉になるまで頑張らにゃ!」です。
「数は力だ!黙ってちゃあかん!」・・・さあ、また何度でも再稼働反対を叫んで行動しましょう!!
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大飯原発の運転差し止め命じる 福井地裁が判決
2014年5月21日午後3時15分
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/50555.html
安全性が保証されないまま関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を再稼働させたとして、福井県などの住民189人が関電に運転差し止めを求めた訴訟の判決言い渡しが21日、福井地裁であり、樋口英明裁判長は関電側に運転差し止めを命じた。
全国の原発訴訟で住民側が勝訴したのは、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の設置許可を無効とした2003年1月の名古屋高裁金沢支部判決と、北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の運転差し止めを命じた06年3月の金沢地裁判決(いずれも上級審で住民側の敗訴が確定)に続き3例目。
大飯3、4号機は昨年9月に定期検査のため運転を停止。関電は再稼働に向け原子力規制委員会に審査を申請し、新規制基準に基づく審査が続いている。
審理では、関電が想定した「基準地震動」(耐震設計の目安となる地震の揺れ)より大きい地震が発生する可能性や、外部電源が喪失するなど過酷事故に至ったときに放射能漏れが生じないかなどが争点となった。
大飯原発3、4号機をめぐっては、近畿の住民らが再稼働させないよう求めた仮処分の申し立てで、大阪高裁が9日、「原子力規制委員会の結論より前に、裁判所が稼働を差し止める判断を出すのは相当ではない」などとして却下していた。
脱原発弁護団全国連絡会(事務局・東京)などによると2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、全国で住民側が提訴した原発の運転差し止め訴訟は少なくとも16件あり、福井訴訟が事故後初めての判決となった。
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大飯原発3・4号機の再稼働差し止め命じる 福井地裁
朝日新聞 2014年5月21日15時16分
http://digital.asahi.com/articles/ASG5P521XG5PPTIL014.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG5P521XG5PPTIL014
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)をめぐり、住民らが関西電力に運転の差し止めを求めた訴訟の判決が21日、福井地裁であった。樋口英明裁判長は250キロ圏内に住む住民らは差し止めを求めることができると判断し、運転差し止めを命じる判決を言い渡した。
2011年3月の東京電力福島第一原発の事故後、原発の運転差し止めを求めた訴訟の判決は初めて。大飯原発は13年9月に定期検査のため運転を停止し、新規制基準に基づく原子力規制委員会の再稼働審査を受けている。
差し止めを命じたこの判決が確定しない限り、再稼働審査に適合すれば大飯原発の運転は可能だが、司法判断を無視して再稼働させることには世論の大きな反発が予想される。このため、全国の原発で再稼働に向けた動きが進む中、福井地裁の判決が注目されていた。
差し止めを求めたのは福井県の住民や、原発事故に伴う福島県からの避難者ら計189人。
訴訟の最大の争点は、耐震設計など安全対策の基準となる基準地震動を超える大きさの地震が起きる可能性があるかだった。
住民側は05年以降、原発が基準地震動を超える揺れに襲われた例が、福島第一原発事故を含めて5例あることを指摘。「関電の想定は過小だ」と主張した。
一方、関電側は訴訟で大飯原発の基準地震動を700ガルと説明。さらに原発周辺の三つの活断層が連動して想定を上回る759ガルの地震が起きたとしても、「安全上重要な施設の機能は維持される」などと反論した。
訴訟では樋口裁判長の訴訟指揮により、①外部電源が喪失した場合などでも過酷事故を防ぐために原子炉を冷却できるか②使用済み核燃料プールの損傷による放射能漏れの可能性③活断層や地滑りで地盤にずれが生じる可能性、の3点も争点となり、住民側が危険性を指摘した一方、関電側は「福島第一原発事故後を踏まえた安全対策をしている」などと反論していた。
原発訴訟をめぐって過去に住民側が勝訴したのは、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の設置許可を無効とした名古屋高裁金沢支部判決(03年)と、志賀原発(石川県志賀町)の運転差し止めを命じた金沢地裁判決(06年)の2例。ただ、いずれも上級審で住民側の敗訴が確定している。(太田航)