守田です。(20111209 15:00)
すでにお伝えしてきたように、このところ東電と経産は、原発生き残りに論点を絞りきった「攻勢」を行っています。その一つの機軸をなすのが、1号機において、かなりの確率で事実と思われる地震による配管破断⇒メルトダウンという事実を隠蔽し、地震後の津波による全電源喪失をメルトダウンの原因とすることにあります。
なぜこのような手を取るのかというと、地震が原因であった場合、今、稼働中の原発を含め、日本のすべての原発の設計基準に問題があったことになり、どの原発も動かすことができなくなるからです。まさにそのために何としても、メルトダウンの原因を津波に限定し、防波堤の設置や、高台への予備電源の配置などで、対策が成り立ったことにして、今、停止中の原発の再稼動も可能にしようとしています。
その際にの一つの手が、吉田所長を英雄に持ち上げつつ入院辞任とし、被曝の可能性をちらつかせながら、一方で、想定を超える津波への対策を怠った罪や、事故発生時に、「非常用冷却装置の稼働を誤認」したという責任を吉田所長にかぶせ、双方への東電としての責任追求を回避することであることを暴露してきましたが、さらに、後続の発表を見ている中で、この「非常用冷却装置」の問題自身に、地震による破断の可能性の隠蔽の重要なポイントがあること、そのため、吉田所長の誤認が強調されている可能性が見えてきました。
この問題を把握するために、まず、この点を報道している東京新聞の記事をお読みください。
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冷却装置作動と誤認 原発事故 聞き取り調査公開
東京新聞 2011年12月6日
6日に公開された保安院の調査文書。1号機の冷却装置が作動していると「誤認」していたことを示す記述もある。
福島第一原発の事故当時、現場の東京電力緊急対策本部が、大津波の襲来後も1号機の非常用冷却装置(IC)は作動し続けていると誤認していたことが六日、経済産業省原子力安全・保安院が情報公開した保安調査の文書で分かった。現場の状況を正しく認識できていなかったことで、事故対応に遅れが出た可能性もある。
保安院は八月四、五の両日、福島第一原発で、吉田昌郎(まさお)所長(当時)らから聞き取り調査を実施。保安院はこれまで内容を明らかにしてこなかったが、今回、本紙が保安院に対して行った情報公開請求で分かった。
調査報告書によると、1号機中央制御室にいた東電の現場社員らは、三月十一日、地震発生後に自動起動したICを、原子炉の温度が急速に下がりすぎるとしていったん手動で停止。午後六時すぎ、一時的にバッテリーが復活したのを受け再起動させたが、「IC内の水が不足し、原子炉蒸気が通る配管が破断する恐れがある」と考え直し、その七分後に停止させた。
ICの設計書から水は十分あると判断し起動したのは、その後三時間たってから。中央制御室の「ICの表示ランプが弱々しくなりこのタイミングを逃すと二度と弁が開けられない」と追い詰められての判断だった。
しかし、所長らが詰めていた免震重要棟にある緊急対策本部と、1号機中央制御室との間は、地震後にPHSやトランシーバーなどが使えず、固定電話一回線しか通じないため、なかなか連絡がつかない状況だった。
原子炉の水位計の情報も間違っていたため、所長らは、実際には弁の開閉を繰り返し、多くの時間でICが停止していたのに、ずっと起動して冷却が続いていると認識していたという。
また、全電源喪失という事態を受け、緊急対策本部が電源車を集めることが必要と判断したのは、大津波襲来から二時間以上たった午後六時ごろだったことも判明した。早く判断し、手配できていれば、事故対応が違った可能性もある。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2011120602000190.html
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いかがでしょうか。要点をつかむことができたでしょうか。僕にはおそらくこれを書いている記者さん自身、内容を十分に把握できていないように思えるのですが。そもそも記者さんが「非常用冷却装置」の何たるかを理解しているように感じられない記事です。
さらに、この報道に続いて、9日の毎日新聞の報道で、この装置が働いていれば、メルトダウンは防げたのではないかとの指摘が出されたことが報道されています。これを出したのは、原子力安全基盤機構(JNES)。経産省管轄の独立行政法人で、要するに保安院などの天下り先です。ここが8日にこの声明を出している。東電の発表が2日にあり、その内容がいきわたったころあいを狙っての発表でしょう。情報を小出しにするために、わざわざ東電ではないところから発表させたのだと思われます。
さらに、これに続いて、今度は吉田所長の病気が食道がんであることが報道されています。はじめに記者会見で「それなりの被曝をした」と語り、続いて病気辞任を発表するものの、プライバシーを理由に、病気内容を伏せました。このため、当然にも被曝のためではないかとの憶測が産まれました。
これに対して、被曝ではないと否定しながら、その間に東電が想定外の津波の可能性を握りつぶしてしまったこという情報だしつつ、それを吉田所長が前職のときに行ったことだとさらりとだし、さらに「冷却装置の停止も知らなかった」と発表したときにはもう本人を入院させてしまい、さらに今になって食道ガンであることが明らかにされたわけです。
こうなると、「津波への想定がきちんとしていたら、事故にはならなかったのに」「冷却装置の停止に気づいてきちんと動かしていれば、事故にはならなかったのに」という思いが、情報の受け取り手の側に残ります。しかしその責任が、吉田所長に集中しているのをみると、「吉田さんは頑張ったのだし、ガンなのだから追求するのはかわいそうだ」となります。実際にも入院してしまっているのだからマスコミも取材ができない。
そうなると「食道ガンと言っているけれど、やはり本当は違うのでは」とか「吉田所長に全部を押し付けているのではないか」とか、そんな憶測が飛び交うことにもなる。それらも十分に考慮しつつ、東電としては「津波でこんなことになってしまいましたが、次からはしっかり備えるので大丈夫です」というストーリーを生き残らせようとしているのだと思います。
しかし吉田所長ももちろん東電の幹部であり、ベントなどで多くの人々を直接被曝させた張本人の一人で、本来、刑事犯として告訴の対象になる人物ですから、自ら他の幹部と、十分に打ち合わせをして、この一連の流れの中にのっているのだと思われます。何より吉田所長も、長年東電の中核を担ってきたのですから、危険や多くの下請け労働者の被曝を知りつつ、原発を動かしてきた人物だということを忘れてはなりません。
それではこの主張に孕まれた矛盾、隠蔽されているものは何かというと、そもそものICのもっている機能についてです。この機器はたびたび非常用冷却装置と書かれています。まったくの間違いとは言えませんが、非常用復水器と書いたほうが正しい。役目は温度を下げるよりも、圧力を抑制することの方が大きいからです。それで温度も下がるので冷却の一面もある。
もう少し詳しく言うと、この装置は、原子力圧力容器の中で温度が上昇し、中にある水が蒸発し始めて、蒸気を発生させ、容器の圧力が上がることに対し、その蒸気の圧力そのもので、復水器に蒸気を誘導し、そこにある水の中で蒸気を吹かせて、水に戻すことを目的としたものなのです。蒸気は水に戻ると体積が一気に小さくなり、圧力が下がることを利用しています。蒸気が水に戻ると温度も下がるので、冷却効果も持ちます。水蒸気の圧力を利用しているので、電源がなくても稼動できることに特徴があります。
これは「古い装置」だそうで1号機にしかついていません。それだけにここが一つの焦点になるのですが、問題はこの復水器が自動運転したことに対して、運転員がそれをすぐに止めてしまったことにあります。これがミステリーなのです。何せメルトダウンが迫っているというのに、なぜ運転員は装置をとめてしまったのでしょうか。
これに対する東電の発表が記事の中に書かれています。「地震発生後に自動起動したICを、原子炉の温度が急速に下がりすぎるとしていったん手動で停止」したと。・・・ここに大きな矛盾がある。メルトダウンに向かおうとする原子炉を、なぜ「急激に下がりすぎる」と恐れる必要があったのか。むしろ急激に冷やさなければいけないのではなかったのか。
実はこの点は5月から明らかになっていることで、そのときに東電は、マニュアルの存在を持ち出しているのです。圧力容器の激しい温度変化による劣化を避けるために、1時間に55度以上の温度変化をさせないように作動させるというのがそれで、運転員はそれに従ったと述べたのですが、今回の事故報告でもこの見解がそのまま採用されています。
これがおかしい。なぜならこのマニュアルは通常運転のときのものだからです。例えば自動車に乗るときに、暖機運転をしてから走り出したほうが、長い目でみたときにエンジンが良く持ちます。これと同じように、温度を急激に下げることを繰り返すと、長い目で見た場合に、圧力容器に劣化が生じやすくなるので、原発を止めるときに、徐々に温度を下げることが決まっているのです。なので緊急時は当然、無視される規定です。事実、スプリンクラーを軸とした非常炉心用冷却装置は、何百度にもなった炉心に、いきなり水を浴びせかける用に作られています。まったなしで冷やさなければならないときに、ゆっくり冷やさないと、素材の劣化が早まる・・・などと言っている余裕など、当然にもありえないのです。
ところがこの理屈が、運転員が非常用復水器を止めたことの理由として、今回も出されている。これは明らかなウソです。あまりに常識に反している。津波から逃げようとする車が、赤信号で停止するようなもので、緊急に炉心を冷やそうとするなら誰がどう考えたって、平常時のそんなマニュアルに従うはずがない。
つまり、他の理由があって運転員は、非常用復水器を止めたのです。そしてそこから類推されるものこそ、地震の影響なのです。この点で京都大学原子炉実験所の小出さんは、復水器そのものが地震で壊れていて、動かすことで冷却材がなくなってしまうために、動かせなかったのではないかという説を唱えています。一方で元原子炉設計士でサイエンスライターの田中三彦さんは、その可能性も踏まえつつ、いずれにせよ原子炉に通じる配管のどこか地震で破断して、どんどん炉心の冷却水が抜け始め、そもそも炉内の圧力が抜けていった。
そのため、この機器の積極的な意味が失われていたことも含め、この点を東電が明らかにしなければ、事故の真相が明らかにならないと指摘しています。
どちらも、共通するのは、地震による機器の故障で、この装置が動かせなかったか、動かす意味がなくなってしまったという点です。僕自身は、より田中さんの解析が妥当なように思えますが、今はその点よりも、事故解析の大きな焦点が、運転員によるこの装置の手動停止にあることを確認しておきたいと思います。
東電はこの論点をずらしたい。そのため、なぜ運転員が装置を止めたかではなく、装置が止まっていることを、吉田所長が把握できていなかったことの方をハイライトしているのです。もちろん、吉田所長を救う手立てもしっかり埋め込んでいます。当時、連絡のための回線がつぶれてしまい、なかなか現場と連絡がつかなかったのだという内容です。こうなれば、事態を把握できればなんとなかったけれど、できなかった。では次のために、しっかりとした連絡網を整備しようという話につなげることができます。
しかし確からしいことはそうではありません。地震で原発が壊れてしまったのです。そしてその事実こそ、日本の原発のすべてを廃炉にしなければならない一つの根拠なのです。何せ地震の想定が間違っているのですから。今後も大地震があれば、同じように壊れる可能性が大なのですから。
こうした視座を再度、しっかりと固めながら、東電の、原発生き残りのための事故解析へのウォッチを続けます。
なお今回の分析は、6月に行われた田中三彦さんの解析を参考にしています。
興味のある方は、以下の記事もご参照ください。
明日に向けて(171)(176)地震による配管破断の可能性と、東電シミュレーション批判(田中さん談)
・・・田中さんの発言の全体は(176)に載っています。
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/b3708b03147d12b3864f0c8fc3819642
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/f1914e7352792c89767a9c7585ee4a00
みなさま。今日は日本が真珠湾を急襲し、太平洋戦争に突入した日です。ちょ
うど70年前のことです。それから4年弱経って、アメリカは原爆を開発し、広島
長崎に投下しました。そしてそのときから人類は、膨大に生み出される放射能
の脅威と向き合わなくてはならなくなりました。
繰り返し述べてきたように、原子力発電もまた、原爆製造の過程で生み出されて
きたものです。同時に、放射線が人体に与える影響の評価も、広島・長崎で実際
に起こった被曝を基に行われてきました。しかしそこでは多くの事実が隠された。
内部被曝などはほとんどなかったことにされてしまい、放射線の人体に与える影
響は、非常に小さく評価されてきたのです。
その歴史の流れが、今、直接に私たちを苦しめるものとなっています。膨大な放
射線が飛び交っているのに、その危険性が信じがたいほどに小さく評価されてい
る。そのもとで、新たな、避けられる被曝がどんどん拡大して、今まさに私たち
の悲劇が生み出され続けているのです。
命が軽んじられている。人々の人権が踏みにじられている。放射線との関係で言
えば、それが原爆製造-投下の過程から続いている。もっと広く、考えるならば、
近代が生み出した帝国主義と植民地の時代以降、連綿と繰り返される戦争の中で、
命の軽視が続いているのです。
福島原発事故を考えるとき、そこで生まれた悲劇、いままさに拡大しつつある惨
禍と立ち向かうときに、私たちは時に視野を広げ、今この世界全体で何が起きて
いるのかに目を向ける必要がある。どのような暴力が行使されているのか。そこ
で人々はいかに生きているのか。その一つ一つは、一見、私たちに直接つながっ
ていないように見えるかもしれません。いやそう見るようにしむけられてさえい
るのですが、掘り返していけば、実は多くのことが太い線でつながっていること
が見えてきます。
だからこそ、私たちは、現代の悲劇、戦争と暴力の問題に、繰り返し目をむけ、平
和を愛する心、争いと暴力を戒めようとする心を育てながら、今、目の前にある危
機に向かい合っていかねばならないと思います。そうした問題に目を向けることは
辛い面もありますが、しかしその中でこそ、私たちの英知は研ぎ澄まされていく。
そして悲劇を越えた未来を展望する勇気と力がそこから沸いてくると僕は信じてい
ます。
そうした思いから、今宵、みなさまに紹介したいのは、パレスチナをめぐる朗読劇
です。5月にも行われたものが、メンバーを多少を入れ替えて再度、上映されます。
演じるのは、京都大学の岡真理さん率いる国境なき朗読者たちです。ぜひ一度、ご
覧になってください。
朗読劇の凄さ、素晴らしさは、観ている側のイマジネーション力がフルに動員され
ることです。演技の内容が、シンプルにセリフの朗読によってのみ成り立つために
聴いていると、だんだんと私たちの想像力がかきたてられます。そして実際に、
パレスチナで起こったこと、空襲の凄さ、人々の叫び、痛み、嘆きが、まるで映像
のように私たちの脳裏に広がってきます。そして私たちが向き合わねばならない何
か、尊く、かけがえのない何かが、私たちの胸の奥から熱く沸いてくるのです。
そこにあるのはけして嘆きだけではありません。そのような悲劇と惨劇の中からも
現実に人々は立ち上がり、明日を目指して歩みを続けてきています。そうしたこ
とも含めたパレスチナ・ガザで起こっていることが、観客の心の中に、くっきりと
映像のように浮かび上がってきます。その中から、ぜひみなさんに、明日に向けた
勇気をつかんで欲しいと思うのです。
上映は12月16日に1回、17日に2回、行われます。
お近くのみなさま、ぜひ会場に足をお運びください!
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イスラエルによる、あのガザ攻撃から間もなく3年を迎え
ようとしています。攻撃の記憶が風化しつつある今、「忘却
が次の虐殺を準備する」(韓国の詩人の言葉)のだとすれば、
私たちはすでに次の虐殺への道を整えているのかもしれま
せん。
忘却に抗し、昨日とは違う明日をともに創るための、ささ
やかな試みとして、ガザ攻撃3周年のこの12月、朗読劇
「The Message from Gaza ~ガザ、希望のメッセージ~」
(脚本・演出 岡真理、出演:国境なき朗読者たち)を
12月16日(金)、17日(土)の両日、京都市国際交流会館
にて上演いたします。同会館の東日本大震災チャリティ企画
の一環です(収益は被災地支援のNGOに寄付します)。
私たちの〈肉声〉を通して、ガザの人々の思いを伝える
とともに、震災に見舞われた東日本の方々への思いを込めて、
朗読します。ぜひ、お聴きください。
以下、詳細です。
*チラシの開演時刻・問合せ先に一部、間違いがありました。
正しくは以下のとおりです。ご確認ください。
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朗読劇「The Message from Gaza ガザ、希望のメッセージ」
出演:国境なき朗読者たち(京滋・大阪 市民・学生有志)
■日時
1)12月16日(金)19:00~20:30
2)12月17日(土)14:00~15:30
3)12月17日(土)18:30~20:00
*開場はいずれも開演の30分前。
*回によって開演時間が異なります。お間違いのなきよう、
ご確認ください。
■会場 京都市国際交流会館 特別会議室
http://www.kcif.or.jp/jp/access/
■料金
前売り 一般1500円、学生1200円
当日 一般1800円、学生1500円
■予約・お問い合わせ
事前予約制となっております。下記の連絡先に、
氏名・希望の公演日時・人数をご連絡ください。
電 話 080‐5314‐1539(つくい)
メール gaza.kibou@gmail.com
*当日、満員の際は、入場をお断りすることもあります。
*事前予約された方は、遅くとも開演の10分前までには
受け付け(代金精算)をお済ませください。
■HP http://message-from-gaza.com
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■「ガザ、希望のメッセージ」と「国境なき朗読者たち」について
2008年から翌09年にかけてのイスラエルによるガザ攻撃
を受けて書かれたこの朗読劇は、3つの異なるテクストから
構成されています。いずれも、ガザから外の世界に向けて
書かれた手紙という形で書かれたテクストです。
ひとつはガザのサイード・アブデルワーヘド教授が、爆撃の
さなか、世界に向けて発信した一連の電子メール(『ガザ通信』
青土社)、二つ目はパレスチナ人作家ガッサーン・カナファー
ニーが1956年に発表した短篇「ガザからの手紙」。3つ目は、
占領下のパレスチナ人の人権擁護活動のためガザに赴いた、
アメリカ人女子大生、レイチェル・コリーさんがアメリカに
いる家族に宛てたメールです。
本朗読劇は、2009年7月、京都AALA連帯委員会美術班
主催第35回頴展で、京都大学総合人間学部「思想としての
パレスチナ」ゼミ生有志によって初演されました。同年9月、
京滋市民有志による朗読集団「国境なき朗読者たち」が立ち
あげられ、これまで京都、広島などで上演を重ねてまいりました。
(2009年12月には、神戸の劇団「どろ」が合田幸平演出に
より神戸アートビレッジで上演してくださいました)。今年
5月には、日本中東学会年次大会の一般公開企画として上演
され、160名が鑑賞。肉声がはらみもつ力が、多くの方に
感動を与えました。
ガザ攻撃3周年のこの12月、肉声を通して語られるガザ
からのメッセージにぜひ、耳を澄ませてください。
■「ガザ、希望のメッセージ」を観て…
「約半世紀の時間を経て、一つのテクストの中で構成される
ことによってガザというひとつの地域、ローカルな地域が
発し続ける問題性が時間を超えて訴えかけられている。」
(太田昌国/編集者・民族問題)
「イスラエルは、「我々はこの隣人と暮らしたくないんだ」
ということを隠すこともなく宣言している。この挑戦を受けて
いるのは人類全体である。私たちもそのメッセージを向け
られているし、このことをどう跳ね返すかということには、
思想的そして集団的パワーが要る」
(鵜飼哲/フランス文学)
「本当の意味で「分かる」とか「理解する」ということ。体の
中で声にして振るわせる、あるいはそういうことをしている
人たちのところに居合わせているということが、「分かる」
ということに違う次元をつけ加える」
(細見和之/詩人)
「この朗読劇の圧倒的な凄み。本来「劇」とは激しいものだ。
言語としての記憶は「絶望」だったのに、再演を願うのは、
「感動」を得たからだ。もしかしたら、この感動こそ「希望」
なのかもしれない」
(井上由里子/文筆家・舞人)
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ドイツ放射線防護協会が、会長の名で日本政府に対しての勧告を発表
しました。冒頭に次のような文言が書かれています。
「放射線防護においては、特定の措置を取らないで済ませたいが為にあら
ゆる種類の汚染された食品やゴミを汚染されていないものと混ぜて「安全
である」として通用させることを禁止する国際的な合意があります。日本
の官庁は現時点において、食品の範囲、また地震と津波の被災地から出た
瓦礫の範囲で、この希釈禁止に抵触しています。ドイツ放射線防護協会は、
この「希釈政策」を停止するよう、緊急に勧告するものであります。」
こうした国際的な合意の存在を僕は知りませんでした。現在も正式名称な
ど分からないので、調べている途中ですが、考えてみれば当たり前のこと
で、そうした合意があって当然だと思います。食物汚染を考えるときに、
汚染物を混入させてさばかれてしまうことほど、恐ろしいことはないから
です。日本政府は当然にもこうした合意を遵守するべきです。
また同協会は、こうした勧告を行うのは、次のような点を背景にしている
ことを述べています。
「チェルノブイリ以降、ドイツでは数々の調査によって、胎児や幼児が放
射線に対し、これまで考えられていた以上に大変感受性が強いという事が
示されています。チェルノブイリ以降のヨーロッパでは、乳児死亡率、先
天的奇形、女児の死産の領域で大変重要な変化が起こっています。」
これもきわめて重要な指摘です。ここでいう「これまで考えられていた以
上に」というのは、国際的な基準であるICRPの基準のことをさしてい
ると思われます。ドイツもこのもとで、原子力発電所を運営してきている
からです。しかしそれではまったく説明がつかない被害が多発している。
そのことを受けて、こうした勧告をなしているのです。
全文を読んで非常に共感し、かつまたありがたい勧告だと思いました。ぜ
ひ多くのみなさんに知っていただきたいと思い、ここに引用し、掲載しま
す。なお、同声明は、幾つかのブログに掲載されていますが、ここでは
「Eisbergの日記」から、引用させていただきました。Eisbergさま、貴重
な情報を提供していただき、どうもありがとうございました!
******************
放射線防護協会
Dr. セバスティアン・プフルークバイル
2011年11月27日 ベルリンにて
報道発表
放射線防護協会:
放射線防護の原則は福島の原子炉災害の後も軽んじられてはならない。
放射線防護協会は問う:
住民は、核エネルギー利用の結果として出る死者や病人を何人容認する
つもりだろうか?
放射線防護においては、特定の措置を取らないで済ませたいが為に、あら
ゆる種類の汚染された食品やゴミを汚染されていないものと混ぜて「安全
である」として通用させることを禁止する国際的な合意があります。日本
の官庁は現時点において、食品の範囲、また地震と津波の被災地から出た
瓦礫の範囲で、この希釈禁止に抵触しています。ドイツ放射線防護協会は、
この「希釈政策」を停止するよう、緊急に勧告するものであります。さも
なければ、日本の全国民が、忍び足で迫ってくる汚染という形で、第二の
フクシマに晒されることになるでしょう。空間的に明確な境界を定め、き
ちんと作られ監視された廃棄物置き場を作らないと、防護は難しくなりま
す。「混ぜて薄めた」食品についてもそれは同じことが言えます。現在の
まま汚染された物や食品を取り扱っていくと、国民の健康に害を及ぼすこ
とになるでしょう。
焼却や灰の海岸の埋め立てなどへの利用により、汚染物は日本の全県へ流
通され始めていますが、放射線防護の観点からすれば、これは惨禍であり
ます。そうすることにより、ごみ焼却施設の煙突から、あるいは海に廃棄
された汚染灰から、材料に含まれている放射性核種は順当に環境へと運び
出されてしまいます。放射線防護協会は、この点に関する計画を中止する
ことを、早急に勧告します。
チェルノブイリ以降、ドイツでは数々の調査によって、胎児や幼児が放射
線に対し、これまで考えられていた以上に大変感受性が強い、という事が
示されています。チェルノブイリ以降のヨーロッパでは、乳児死亡率、先
天的奇形、女児の死産の領域で大変重要な変化が起こっています。つまり、
低~中程度の線量で何十万人もの幼児が影響を受けているのです。ドイツ
の原子力発電所周辺に住む幼児たちの癌・白血病の検査も、ほんの少しの
線量増加でさえ、子供たちの健康にダメージを与えることを強く示してい
ます。放射線防護協会は、少なくとも汚染地の妊婦や子供の居る家庭を、
これまでの場合よりももっと遠くへ移住できるよう支援することを、早急
に勧告します。協会としては、子供たちに20ミリシーベルト(年間)まで
の線量を認めることを、悲劇的で間違った決定だと見ています。
日本で現在通用している食物中の放射線核種の暫定規制値は、商業や農業
の損失を保護するものですが、しかし国民の放射線被害については保護し
てくれないのです。この閾値は、著しい数の死に至る癌疾患、あるいは死
には至らない癌疾患が増え、その他にも多種多様な健康被害が起こるのを
日本政府が受容していることを示している、と放射線防護協会は声を大に
して指摘したい。いかなる政府もこのようなやり方で、国民の健康を踏み
にじってはならないのです。
放射線防護協会は、核エネルギー使用の利点と引き換えに、社会がどれほ
どの数の死者や病人を許容するつもりがあるのかと言うことについて、全
国民の間で公の議論が不可欠と考えています。この論議は、日本だけに必
要なものではありません。それ以外の原子力ロビーと政治の世界でも、そ
の議論はこれまで阻止されてきたのです。
放射線防護協会は、日本の市民の皆さんに懇望します。できる限りの専門
知識を早急に身につけてください。皆さん、どうか食品の暫定規制値を大
幅に下げるよう、そして食品検査を徹底させるように要求してください。
既に日本の多くの都市に組織されている独立した検査機関を支援してくだ
さい。
放射線防護協会は、日本の科学者たちに懇望します。どうか日本の市民の
側に立ってください。そして、放射線とは何か、それがどんなダメージ引
き起こすかを、市民の皆さんに説明してください。
放射線防護協会
会長 Dr. セバスティアン・プフルークバイル
Eisbergの日記
http://d.hatena.ne.jp/eisberg/20111130/1322642242
守田です。(20111205 23:30)
汚染水情報です。東京新聞や読売新聞等々で、福島第一原発の高濃度汚染水の処理システムの中の、淡水化するため、つまり塩分を抜く蒸発濃縮装置の建屋内で、45トンもの汚染水が発見されたとあります。しかし記事をよく読むと、45トンは把握された量で、もっと多くのものが流出した可能性があり、すでに海に入ってしまったものもあると思われています。
重要なことは、この汚染水に、大量のストロンチウムが含まれていること。東京新聞では「海に放出できる量の100万倍の高濃度」と書かれていますがこういうとき、問題なのは濃度ではなく総量です。この点、読売新聞には
1立方センチあたり、10万ベクレルのストロンチウムが含まれるとみられると書かれています。
この言い方も、東電発表そのものの数値ですが、それでは45トンではどれだけになるのかを考えて見ます。1立方センチに1000をかけると1リットル、それに1000をかけると1トン、さらに45をかけると、今、確認されている量になる。計算するとなんと4兆5千億ベクレルになります!
これがどれほどの量なのか。これまで何度もとんでもない数値が出されてきたので、こちらの感覚も麻痺してしまいがちですが、参考までに、4月4日から10日に政府が意図的に海に放出して、国際的に大問題になった量をみると
1万トン、1500億ベクレルでした。今回は45トンとしても4兆5千億ベクレルですから、その30倍です。それが今、現に建屋の中に流れ出している。
ここに現れているのは、今なお、本当に大変な量の放射性物質が出続けていること、しかもセシウムよりも恐ろしいストロンチウムがこれほど大量に出てきているということです。それがどれだけ海に入ったのかも把握できて
いません。東電は再び三度「たとえ海に到達しても少量で、ほとんど影響ないレベルだ」と語っていますが、そもそもどれだけ流れ込んだのかも把握せずにどうして「影響がない」と言えるのか。本当に大嘘つきです。
しかもどのように対処しているのかといえば、「水は、海とつながる側溝まで届いた跡があり、東電は土のうでふさぐ措置を取った。五日以降、水漏れの範囲などを調べる」とある。土のうをつむことしかできていないのです。
ここから考えられるのは、側溝からの漏れだしや、ひび割れたコンクリートからの海への混入が、かなりの規模ですでに起こっていることです。
ともあれ私たちの目の前にある危機を、セシウムだけに限定するのはかなり危険です。ストロンチウム、あるいは他の核種がどう環境を汚染しているのか、どれだけ私たちの前にあるのか、把握することが大切です。こうした面のウォッチを強化したいと思います。
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福島第一 汚染水45トン漏れる
東京新聞 2011年12月5日
東京電力は四日、福島第一原発の高濃度汚染水の処理システムのうち、淡水化するための蒸発濃縮装置の建屋内で約四十五トンの水漏れが見つかったと発表した。建屋外にも漏れており、約五百メートル先の海に流れ出た恐れも
ある。このシステムではストロンチウムは除去できず、漏れた水は、海水に放出できる基準の約百万倍という高濃度のストロンチウムを含むとみられる。
今回の水漏れは、高濃度汚染水の処理システムが六月に稼働して以来、最大。
東電によると、四日午前十一時半ごろ、作業員が建屋の床一面に五センチほど水がたまっているのを確認し、装置を停止。放射性セシウムは除去後だったため、表面線量はガンマ線で毎時一・八ミリシーベルト程度。しかし、ストロンチウムが放出するベータ線は毎時一一○ミリシーベルトと高く、水に触れ続けると、やけどのような「ベータ線熱傷」を起こす恐れがある。
ストロンチウムは、骨にたまり長期間被ばくするため、危険性が高いとされる。
水が漏れた原因は不明だが、建屋外に漏れた形跡が四カ所で見つかった。一つは、水をせき止めるコンクリート(高さ約四十センチ)の土台のひび割れ部分だったが、土台と壁の隙間から漏れた箇所もあり、実際にはもっと大量の水が漏れた可能性もある。水漏れは前日には確認されなかった。
水は、海とつながる側溝まで届いた跡があり、東電は土のうでふさぐ措置を取った。五日以降、水漏れの範囲などを調べる。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「たとえ海に到達しても少量で、ほとんど影響ないレベルだ」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2011120502100004.html
*****
福島第一汚染水45トン漏れる、海に流出恐れも
読売新聞 2011年12月4日20時37分
東京電力は4日、福島第一原子力発電所の汚染水処理施設で約45トンの汚染水が漏れ、一部は施設の外に漏出したと発表した。
敷地内の側溝から海に流出した恐れもあるが、東電は「海への流出があるとしても少量と見られ、影響は小さい」と見ている。
水漏れがあったのは、セシウムなどの放射性物質を除去した後に、蒸発濃縮処理で塩分を取り除く装置。施設内には約5センチの深さで汚染水がたまっている。
汚染水の表面の放射線は、ガンマ線が毎時1・8ミリ・シーベルトだが、ベータ線は同110ミリ・シーベルトと高い。汚染水の回収などでは、ベータ線による被曝(ひばく)を抑えるため、水に触れないように作業する必要がある。ベータ線を出す放射性物質のストロンチウムが1立方センチ当たり10万ベクレル程度含まれている可能性があり、この濃度は海水の濃度基準の10万~100万倍にあたるという。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111204-OYT1T00565.htm
すでにお知らせしたように、10月18日~20日、福島市内で行われている放射
能除染・回復プロジェクトに参加し、そのときのことを何回かに分けて記事
にしましたが、そのときにお世話になった福島市御山地区に在宅の深田和秀
さんが、東京新聞の取材に応じて、除染の問題点を語りました。記者さんが
要点を実によくまとめてくださっているので、紹介することにします。
東京新聞には申し訳ありませんが、ここに掲載するのは、福島市内の方々、
とくに記事の中に出てくる渡利地区や、御山地区の方々に読んで欲しいから
です。僕も深田さんに案内されて、記事中に出てくる御山小学校の登校風景
を取材に行き、それを記事にしましたが、その後に何人か、この小学校に
子どもさんを通わせている方からの相談のメッセージをいただいています。
そのうちの一つ。ブログ上に投稿していただいたものとそれへの返答を紹介
します。
*****
悩んでいます (matu) 2011-11-14 13:09:28
御山小に子供を通わせています。
マスクもしないで、夏には半そで半ズボンで過ごしていました。
県や市の説明会では今現在は3月の爆発時とは違い放射性物質が大気中に舞っ
ていることは無いので、マスクの必要もない聞いていました。
それが、秋になった頃、学校で配られた小児科医を呼んでの説明会の案内の
片隅には、『外出から戻ったら衣服を脱ぎシャワーを浴びましょう』との文
字が・・・
こういった事の繰り返しで、あれから8ヶ月もすごしました・・
今更ですが、やっぱり変ですよね。
僕は次のようにご返答しました。
matu様
御山小学校にお子さんが通っておられるのですね。ぜひマスクを着用させて
あげてください。車で送り迎えされた方がよりベターですし、避難をされた
方がずっといいです。可能な限りの避難をお勧めします。
マスクの必要もないとはとんでもないことです。通学路上に、放射線値が高い
ところがたくさんあります。そこには放射性物質があります。マスクをする
しないだけでも、内部被曝量は変わってきます。
これから福島は乾燥する上に、吾妻降しが吹くと聞いています。空っ風は、
砂を舞い上げ、放射性物質も飛び散らせます。山からも飛んできます。きわ
めて危険です。
「外出から戻ったら衣服を脱ぎ、シャワーを浴びる」ことも大事ですが、その
場合の衣服の処理なども大変。その場から離れたほうがずっと生活しやすいです。
もちろん避難はハードルが高くて大変ですよね。どうかmatuさんとお子さんに
とっての良い条件が揃うようにお祈りしています。
*****
また昨夜、郡山在住と思われる方から以下のような投稿がありました。
*****
除染 (カナリア) 2011-12-03 19:22:05
福島県郡山市では、町会50万円が支給され”除染”が住民の手により、現在
進められています。
地域によっては、班長が一軒々まわり、参加できないとなると「なぜ?どうし
?」の追求の嵐!異常事態。赤紙!!!戦時下のマインドコントロール。集団心理。
7~10μSv/hの土嚢袋を集積場所に一般市民である私達が運ぶのです。
また、全国から除染活動に参加してくださっている方々に対して、「ここの住民
が恐がるから、マスクをなるべくしないように!」等と指導する人間。
日本の大人は狂っている!!!もう、誰も止めることができない!
*****
深田さん自身は、記事の最後に次のように述べられています。
「深田さんは除染の限界を痛感したという。「完全な除染は困難で不可能に近い」。
だが、住民はいる。どうすればよいのか。「子どもや妊産婦を県外に一時避難させ
て、無用な被ばくを避けるべきだ。まずはそこから始めるべきじゃないのか」」
まったく同感です。
寒くなってきた福島で、子どもたちの被ばくに日夜胸を痛めて走り回っている
深田さんに思いを馳せつつ、記事を閉じます。以下、深田さんを取材した東京
新聞の記事をお読みください。
*****************
除染に限界痛感
高線量落ち葉「きりない」 洗浄水流れ「火種」
数値下げる思惑? 観測地は福島市実施
東京新聞11月26日
仮置き場の確保の難しさに加え、間もなく雪という大敵も現れる。放射性物質
の除染を急ぎたい福島市の住民の焦りは募るばかりだ。作業に挑んだ住民の一
人は、除染の限界に打ちのめされたという。本来なら、汚した者が即座に除去
すべきだが、現実はその当たり前とはほど遠い。「年内の冷温停止」「2年後の
被ばく線量半減」。事故の幕引きを急ぐ政府のお題目ばかりがしらじらしく響く。
(出田阿生)
「あんなに住民が除染したのに、もうこんなに落ち葉が降り積もった。いくら
やっても、きりがない」。高い汚染で知られる福島市渡利地区。市立渡利中学
校わきの路上で、そこから車で15分ほどの同市御山地区に住む深田和秀さん
(63)はため息をついた。
25日の気温は昼間でも5度くらい。赤や黄に色づいた葉が氷雨で落ち、道ばたに
吹き寄せられていた。今年は山の紅葉を喜べない。汚染された落ち葉が放射線
量を上げるからだ。
深田さんは市民団体「放射能除染・回復プロジェクト」の一員。同団体は京都
精華大学の山田国広教授(環境学)を中心に、福島大や大阪大の教員らと福島
市民で構成している。今年五月から、住民の手でできる除染方法を探ってきた。
渡利地区の公共施設わきの側溝で、深田さんが線量計をかざす。表示された数
値がぐんぐん上がっていく。底に生えた雑草の近くでは、毎時68.51マイクロ
シーベルト(年に換算すると600ミリシーベルト)にもなった。地上約1メート
ルで毎時2マイクロシーベルトほど。同地区では避難者が相次いで子どもが減り、
すでに閉鎖された保育所もある。
ところが、福島市が空間線量の定点観測をしている渡利市所前の公園では、立ち
入り禁止のロープが。表土をはいで除染作業を実施中という。「9月2日に毎時
2.25~1.47マイクロシーベルトだったのが、今月2日には0.98に減った。計測地
点を除染するなんて、数値を下げたいからとしか思えない」(深田さん)
「除染プロジェクト」の実験では、洗い流す方法は最初から断念した。流れ出
した水は新たなホットスポットをつくり、いずれ川や海に流れて汚染を拡大さ
せるからだ。まずは庭の表土をはがす方法に挑戦した。
土ぼこりの飛散を防ぐため、市販の合成洗濯のりを薄く土にかけた。そのうえで、
固めてははぎ取った土を袋に詰め、穴を掘って埋めた。
しかし住宅地は1メートルほど掘ると、コンクリート片などが出てきて堀り進め
られない。環境省の汚染土埋め立て基準では「表土を30センチかぶせること」と
なっているが、せいぜい10センチほどしかかぶせられなかった。
住宅の外壁や屋根、雨どいなどの除染で室内の放射線量を下げる実験もした。
深田さんの宅でも実施。屋根瓦に合成洗濯のりを塗り、園芸用の布をかけてから
はがした。
ところが線量があまり落ちない。詳しく計測すると、屋根瓦の隙間に放射性物質
が入り、取れていないと分かった。
「よく水で高圧洗浄しているが、表面の放射性物質は雨で流れており、ほとんど
意味がない。セシウムはいったんコンクリートなどにこびりつくと結合してしま
い、容易にはがれない」
住民に自衛頼み
被ばく避け車で送迎 東電・国何もしない
深田さんは市街地に近い山々を見上げながら、「放射性物質の供給源がこんなに
近くにあったら、どんなに除染してもいたちごっこだ」と話す。
庭土の除染実験をした御山地区の住宅の空間線量は現在、毎時0.7~1マイクロシー
ベルト前後。自分の家だけ除染しても、隣家の木の葉が落ちてくれば、数値は上が
る。ローンの残った家を諦め、県外に避難した人もいた。
市立御山小学校を訪れてみた。通学路には雑草が生い茂り、その一角は5月に側溝
脇で毎時180マイクロシーベルトを計測している。校門には「今日の空間線量」と
書かれた札。下校時、学校の駐車場は車であふれかえっていた。
子どもを乗せた軽自動車が通り過ぎる。「歩いて数分の距離でも保護者が安全の
ために子どもを送迎している」と深田さん。そして校庭ではマスク姿の女性数人が、
落ち葉をほうきで集めてはごみ袋に入れていた。
「あれは学校の校務員じゃなく、母親たち。子どもが少しでも被ばくしないように
と、毎日落ち葉を清掃している。東京電力や政府はなすべきこともせず、住民の
善意にのっかっている」
福島市放射線総合対策課によると、市内でも大波地区は10月から除染作業を本格的
に始めた。汚染土砂などの仮置き場が確保できたためだが、これから積雪や凍結が
予想され、年内には終わらない見通しという。
渡利地区では7月にモデル事業を実施した。観測地点の公園では表土を削っていたが、
担当者は「仮置き場が確保できておらず、本格的にはしていない」と説明した。
深田さんは除染の限界を痛感したという。「完全な除染は困難で不可能に近い」。
だが、住民はいる。どうすればよいのか。「子どもや妊産婦を県外に一時避難させ
て、無用な被ばくを避けるべきだ。まずはそこから始めるべきじゃないのか」
以上
以下のブログから紙面がみれます。
http://heiheihei.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/112612-a782.html
http://heiheihei.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/112622-eaa7.html
***************
これまでの除染活動に関する記事もまとめておきます。
明日に向けて(301)福島の現状は厳しい・・・放射能除染・回復プロジェクトに参加して(1)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c0d94dc74a458f49aedd63cf05269777
明日に向けて(303)屋根の放射能は容易には落ちない!・・・放射能除染・回復プロジェクトに参加して(2)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/731ed06108179654ab6d88c4646aa634
明日に向けて(304)除染するほど、「住めない」と思う・・・放射能除染・回復プロジェクトに参加して(3)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/3ebae533afd6d0f6a86b9fd668af6153
明日に向けて(306)荒木田さんへの共感の声が続々と・・・放射能除染・回復プロジェクトに参加して(4)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/fb3d13f7a57e2316575db56007ff1124
明日に向けて(308)人の悪意とどう向き合うのか。(続荒木田さんへのコメント)・・・除染に参加して(5)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/d238f454b6401dbfc3a377fd632b7ab8
今後のスケジュールをお知らせします。
12月8日(木)に、花園大学の人権週間にお招きいただいてお話します。
花園大学は禅宗の大学ですので、冒頭に少しだけ、仏教と放射能に
ついて、僕の思うところをお話してみます。何せ、原子力行政が、
もんじゅ、ふげんという、大切な菩薩の名前を使ってきましたので・・・。
12月11日(日)に、北白川北大路近くのヴィレッジで、京都の歌姫
和製ヴィヨーク、まーりんの歌と僕の講演のセッションを行います。
みなさま。とにかく、まーりんの歌はものすごいです。本当に
感動します。僕の講演はさておき、まーりんの歌に酔いしれにきて
ください。
講演のあとに、みんなで未来について語り合います!
12月16日(金)に、仏教大学で仏教大学9条の会と、「チェルノブイリ
ハート」上映実行委員会共催の映画上映会に参加。前段で30分の講演を
行います。映画の後のディスカッションにも参加します。
12月24日(土)「クリスマスチャリティ福島を思うウォーク」で引率と
解説を行います。主催はサクセスランニングです。これだけ少し長く
説明しておきます。
なぜ東山なのかですが、その中の若王子山に同志社墓地があり、その
まわりにキリスト者の墓地が大きく広がっています。十字架の墓標が
たくさんあり、クリスチャンの方たちがここに寄り添って、眠っている
ことがわかります。
ここに明治の京都復興の立役者、山本覚馬が眠っています。彼は
元会津藩士。砲兵隊長として、御所に攻め寄せる長州軍を打ち破った
経歴を持つ人物です。
その後、明治維新で会津が蹂躙され、国を守るのは武力ではないと実感、
教育と法律に展望を託します。まず京都町衆と、日本で最初の小中学校を
創設。さらに近代日本で最も強固なフェミニストであった彼は、女子校を
作ると共に、売買春の禁止と祇園の芸子の解放をめざし、明治6年「娼妓
解放令」にこぎつけます。しかし「女性による自由な売買」という抜け道
ができたことに失望。法律ではなく、人の心を磨くことこそ第一と考えて、
キリスト教に接近。やがてアメリカから帰って、キリスト教精神の学校を
作ろうとしていた新島襄と知り合い、「新島君、君と僕は同志だ!僕らの
やしろ(社)を造ろう!」と同志社創設に向かうのです。
教徒の旦那衆は、そんな山本を尊重し、明治10年に始まった普通選挙で
立候補をしていない山本に多くの人が投票。彼は京都府会議員に当選して
しまいます。覚馬は驚きつつも迎えに応じて、議会に参加。今度は議員
の自由投票において、京都府府議会の初代議長に選ばれてしまいます。
近代の京都は、初代議長にキリスト者を選んだのです。
山本は同時に京都の諸産業を育てました。京都の名だたる会社の多くが
山本の手で育てられています。これらの点から僕は、山本覚馬は、坂本
龍馬と同じような開明的な観点を持ちつつ、しかし海軍という暴力装置
の創設で終わってしまった龍馬を大きく越え、暴力を越え、教育に、
さらには女性の尊重に未来をみようとした人物として尊敬しています。
彼のお墓の前では、「山本先生」と呼びかけさせていただいています。
そんな会津とゆかりの深い京都の成り立ちを知るために、クリスマスイブ
に若王子墓地=クリスチャン墓地にみなさんをお招きしたいと思います。
この他、大文字山から京都市内を一望します。そこから見える御所の周り
は実は教会関連の施設だらけ。なぜ、京都を象徴する御所をぐるりと
キリスト教会が囲んでいるのか、どんなガイドブックにも書いていません。
しかしそれでは近代京都の成り立ちを何も知ったことにはならない。
そんなことも現場で解説します。
大文字山から遠く、会津を、福島を、東北を思い、痛みを背負った
人々と苦しみをシェアしていく来年の展望を語り合いたいと思います。
1月21日(土)京都市弁護士会館。
来年になりますが、「京都から東北へ‐地震、津波、原発事故‐」
というタイトルでお話します。ここでも東北の痛みをいかにシェア
するのか、お話したいと思います。
この他、いくつかの保育園での講演がありますが、クローズドな会合
のため情報掲載は割愛します。同年代のお子さんがおられたり、保育園
に勤務している等々、興味がある方は、守田までご連絡ください。
***
◇12月8日 午後1時から 花園大学無聖館ホール◇
第25回花園大学人権週間「知ることから」
2011年12月5日~8日
講演 12月8日(木)午後1時から2時半)
講師 守田敏也
「放射線被曝の恐ろしさとは?防ぐために必要なことは?
~核戦略のもとで隠されてきた内部被曝の脅威~」
詳しくは下記に
http://www.hanazono.ac.jp/jinken/jinkenweek2011
宮西優誌さんの講演に関する解説がこちらに
http://www.hanazono.ac.jp/jinken/jinkenweek2011/04_20111208
問い合わせ先
〒604-8456
京都市中京区西ノ京壺ノ内町8-1
花園大学人権教育研究センター(栽松館407)
TEL 075-811-5181(内線407)
E-mail jinken@hanazono.ac.jp
***
◇12月11日19時半から ヴィレッジ◇
VISION・・・明日に向けて(放射能の時代をどう越えるのか)
歌 マーリン
講演 守田敏也
その後に講師を交えて討論
・・・歌と講演による投げ銭ライブ
ヴィレッジの場所は以下の通り
http://r.tabelog.com/kyoto/A2603/A260302/26004328/dtlmap/
***
◇12月16日18時半から 仏教大学◇
9条映画会のお知らせ
佛大9条の会と、北区の「チェルノブイリハート」上映実行委員会が共催し
映画会を上映します。
本学の学生だけでなく、地域のお母さんグループや保育士の方々など、子ど
もに関わる人たちの御協力で取り組んでいます。
保育もありますので、お母さん方へもお知らせくださいますようお願いします。
転送お願いします。
日時 12月16日(金)18時開場、18時30分~19時ミニ講演 19時~20時 上映
場所 佛教大学 5号館-101教室
http://www.bukkyo-u.ac.jp/bu/guide/access/campus/
保育 13号館3階和室(正門横) *軽食を用意しています。
* ミニ講演は守田敏也さん.
* 上映費用がかかるので学生は300円一般500円以上のカンパをお願いして
います.
***
◇12月24日 大文字山◇
クリスマスチャリティー福島を想うウォーク@大文字山
~会津藩士 山本覚馬を想いながら~
実は京都と福島は深いつながりがあります。会津藩士 山本覚馬
明治維新のころ、京都の発展に尽力された方です。新島襄さんと
同志社大学を設立、新島襄さんが妹さんの八重さんとと結婚され
て、再来年?のNHK大河ドラマで取り上げられると聞いています。
そんな山本覚馬に想いを馳せながら、山本覚馬が眠る同志社墓地を
訪ねて、大文字山を歩いて、最後は火床からの素敵な夕焼けを眺め
ます。
収益の全ては、福島での除染活動、情報収集&提供など、OHANAの
活動で一緒に東北に行った守田敏也さんの震災支援の活動に寄付
させて頂きます。
日時 : 12月24日(土)
集合 : 13:30 平安神宮
参加費 : 3,000円
詳細: http://www.success-running.com/news/2011/12/20111224.pdf
***
◇1月21日 京都弁護士会館地階大ホール◇
当会の「人権救済基金制度」という法律援助事業を、もっと多くの市民に知っ
て頂くため、「第16回 法律援助を広げる市民のつどい」を開催します。
内容は以下のとおりです。制度説明や事例報告の他に、フリーライターの守田
敏也氏に「京都から東北へ‐地震、津波、原発事故‐」をテーマとした講演を
行って頂きます。また、中国琵琶親子演奏のミニコンサートも予定しています。
事前予約や参加費は不要ですので、皆さんどうぞお気軽にお越し下さい。
http://www.kyotoben.or.jp/event.cfm#605
● 日 時
2012年(平成24年)1月21日(土)
開場:午後1時 開演:午後1時30分
● 場 所
京都弁護士会
京都市中京区富小路通丸太町下ル
● 内 容
◆人権救済基金等についての説明
◆人権救済基金利用者からの報告
◆ミニコンサート(中国琵琶親子演奏)
◆講演 守田敏也氏 「京都から東北へ‐地震、津波、原発事故‐」
★☆★参加無料★☆★
問い合わせ
京都市弁護士会館
075-231-2378
表題と同じタイトルの記事が朝日新聞に昨日出ました。気象庁気象研究
所(茨城県つくば市)での観測です。この記事は、事故当初流布した、
「今回、福島原発から出た放射能よりも過去の核実験で出たものの方が
膨大」という「説」が間違っていたことを裏付けるものです。しかも
50倍超と圧倒的に今回の方が多いことが示されています。
50倍超も降ってしまったという事実は、なんとも悲しいものですが、それ
でも「核実験の方がいいんだ」⇒「気にする必要はないんだ」という誤っ
た考え方を修正するのには大変、重要な情報だと思います。
「核実験ででたものの方が多い」という俗説の流布は、一つは意図的に
事故を小さくみせたくて流されたものだと思われますが、他方では、事
故が小さいと思いたい、それで心理的に現実から逃げたいという願望が
広めたものでもあり、災害心理学にいう正常性バイアスのもたらしたも
のです。
こうした見解をきちんとおさえることで、一つ一つ、正常性バイアスの
ロックをはずしていき、今、私たちの目の前にある危機をきちんと見据え
ていくことこそ大切だと思います。
ところで3月につくば市に降った量は、1平方メートル当たり3万ベクレル
弱とあり、夏に数十ベクレルになったとされています。セシウムはどこに
いったのでしょうか。半減期はセシウム134が2年、137が30年。つまりそ
れほど急激に崩壊していくことはありえない。降ったセシウムはどこかに
必ずあるわけです。
それが減ったのだとしたら、風雨で長された可能性が一番、高いと思いま
す。梅雨や台風の影響だと思われます。あとは風で飛んだと考えられます。
土壌にはそれほど深くには浸透していないのではないか。ただし、地下に
のびた何らかの裂け目等々がある場合は別です。
しかし福島に除染で訪れた経験からすると、筑波山ろくなどに降ったセシ
ウムは、風雨では流されきりません。まだそこに存在しているはずです。
乾燥してそこから再び飛来するものもあるでしょうが、山の中の腐葉土な
どにたくさん集まっているのではないか。そのため山に入るのはかなり
危険だと思います。山の幸ももちろん危険です。
野生動物たちは、この秋に、たくさんの山の幸を食べているはず。たくさ
んの動植物も被曝しているはずです。それらが地域の生態系や植生に変化
をもたらしてくことが考えられます。その点で、数十ベクレルになったか
ら安心なのではなく、何がどうなっているのか。調査を行っていくことが
大切だと思います。
それにしても、この気象研の予算が3月末で切られてしまったというのは
なんとも腹立たしいことです。明らかに事故実態、放射能拡散の動きを国
民・住民に知らせないための観測所つぶしです。一番観測が必要なときに
こういうことをするのが私たちの国です。
それに対して気象研の科学者たちは、予算を打ち切られながら、計測を
続けてきた。大変立派です。日本にはまだまだこうした気骨ある科学者の
皆さんがいます。同時にそうした方たちこそ優秀です。科学を政治によっ
て曲げることを拒否する科学者に必須の強い信念もあるからです。こうい
う方たちがいることに私たちの未来の可能性があると思います。
気象研の今回のデータ公表に、感謝の意を捧げます。
***********************
3月に降ったセシウム、過去最高の50倍超 気象研観測
朝日新聞 2011年12月2日0時57分
気象庁気象研究所(茨城県つくば市)は1日、福島原発事故で放出され、
3月に観測したセシウム137は1平方メートル当たり3万ベクレル弱
(暫定値)で、核実験の影響で過去最高を記録した1963年6月の
50倍以上だったと発表した。船を使った調査で、北太平洋上に広く
降ったこともわかった。
つくば市に降ったセシウム137は4月には数十分の1に減り、夏には
1平方メートル当たり数十ベクレルとチェルノブイリ事故後のレベルに
なったという。環境・応用気象研究部の五十嵐康人室長は「福島原発事
故前の水準に下がるまで数十年かかるのでは」と話している。過去最高
値は同550ベクレル(移転前の東京都で観測)。
4~5月に海水を採った調査では、福島原発から大気中に出た放射性物
質は北太平洋上の広範囲に降り注いだことがわかった。米西海岸近くで
も降っていた。
大気中から降るものとは別に、福島原発から海に流れ出たセシウム137
とセシウム134は、それぞれ少なくとも3500テラベクレルと試算
した。
表層では北太平洋を東へ広がり、その後潜り込んで南西に流れ、中層の
流れにのったものの一部は20~30年後に日本沿岸に戻ると予測して
いる。地球化学研究部の青山道夫主任研究官は「北太平洋全域の継続調査
が必要」と話している。
核実験の影響を監視するため、気象研は1954年から放射能を観測して
きたが3月末、今年度予算が突然凍結され、観測中断を迫られた。今回の
結果は、それを無視して観測を続けた研究者の努力で得られたものだ。
(中山由美)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201112010588.html
守田です。(20111203 01:00)
このところ、東電・経産省・政府による、事故収束演出の攻勢がかけられて
います。ストーリーの構成としては一つに原発が「冷温停止」に向かってい
ることを呼号し続け、そのように思えるデータを出すこと、二つには事故原
因が地震ではなく津波であることを強調し、津波対策さえすれば停止中の原
発の再稼動は可能だと主張することです。
三つには、すでに完全に破産しているもんじゅの廃炉を、野田政権の能動的
な政策化のように押し出していくこと。ただし「検討」としか銘打たず、ど
のようにも転換できる余地は残しながら、国民・住民に、対策をしているか
のような雰囲気を演出しつつ、狙いを軽水炉の運転継続にしぼって当面の延
命をはかること。これを「脱原発依存政策」と銘打ち、「脱原発」であるか
のようなダマシを行いつつ進めることです。
四つには、吉田所長を英雄に持ち上げつつ入院辞任とし、被曝の可能性をち
らつかせながら、一方で、想定を超える津波への対策を怠った罪や、事故発
生時に、「非常用冷却装置の稼働を誤認」したという責任を吉田所長にかぶ
せ、双方への東電としての責任追求を回避することです。
ちなみに2日には、ネット上に吉田所長が吐血して倒れたと病院が発表したと
いう情報がかけめぐりました。しかしこのニュースはソースが明らかになっ
ておらず、現段階では意図的なリークの可能性もあります。前にも述べまし
たが、吉田所長が被曝し吐血していたとしたらそれ自身はお気の毒ですが、
吉田所長の事故への責任はそれとは別に厳然としてあります。だからといっ
てそれは吉田所長だけのものではなく、東電と政府全体のものでもあります。
さてこうした「攻勢」の一環として新たに出てきた情報が、東電が出した、
福島第1原発1号機のメルトダウンした燃料が、原子炉は突き破ったけれども、
格納容器は破らずにとどまっているという11月30日の発表です。これについ
ては、新聞記事を読んだだけで、その恣意性がすぐに見抜ける代物です。な
ぜなら、ここには「炉内は直接観察できないため、シミュレーションソフト
を使って解析した」とあるからです。
当たり前の話ですが、シミュレーションソフトは、入力があってはじめて結
果がでます。その入力データはどうやってとったのか。その点がなんら明ら
かになっていない。だとすれば恣意的な入力がなされた可能性が極めて高い。
要するに東電にとって都合のいい結果を出すための操作で、これは本当に
「子どもだまし」のようなやり方です。
もっとも滑稽なのは、反対にこうした原子炉の状況の解析もなしに、「冷温
停止がもうすぐ」と語ってきたことです。その点で、今回のシミュレーション
は語るに落ちているところがある。というのは「炉内は直接観察できない」
ためにそれを行ったというのなら、これまで、つまりシュミレーションを行う
前にどうして「冷温停止がもうすぐ」と分かっていたといえるのか。いえない
のです。どうなっているのか分かっていなかったのだから。
ところが東電は、シミュレーションしてみたら、格納容器は破れたなかったと
言い出した。これではそれ以前に冷温停止はもうすぐだと言っていたことに
あわせてシミュレーションを行ったことはあまりに明白です。事故の主因が地
震ではなかったというシミュレーションと同じで、自分たちの主張に合わせて
数字を入力しているだけなのです。そうやって繰り返し繰り返しウソをつく。
職業的倫理観の、著しい崩壊といわねばなりません。
こうしたウソでも繰り返されているうちに、社会に通ってしまうとこまるので
こうして逐一、反論を続けようと思いますが、困るのはこれだけではいつまで
たっても、私たちが直面している危機の真相に迫れないことです。・・・と頭
をひねらせているときに、科学者の友人が、重要な情報を伝えてきてくれまし
た。このシミュレーションの背後にある現在進行形の危機についてです。今宵
はさらにこの点の解析に進んでいきたいと思います。とりあえずここまでで
この記事を発信します。
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福島1号機の溶融燃料 底部コンクリ65センチ侵食
東京新聞 2011年12月1日
東京電力は三十日、最も早く炉心溶融が進んだ福島第一原発1号機では、溶け
た核燃料の大部分が原子炉圧力容器から格納容器に落ち、床面のコンクリート
を最大六十五センチ溶かしているとする解析結果を公表した。核燃料は格納
容器内にとどまっているが、外殻の鋼板まであと三十七センチに迫っていた。
2、3号機でも溶けた核燃料の一部が同様に格納容器内に落ち、コンクリート
床を侵食している可能性があるとの解析結果だった。廃炉で最重要なのが核燃
料の回収だが、困難さがあらためて浮き彫りになった。
炉内は直接観察できないため、シミュレーションソフトを使って解析した。
1号機は冷却できなかった時間が最も長いため、核燃料のすべてが溶融して圧力
容器を壊し、格納容器内に落下したと想定して解析した。
落ちた核燃料の高温で、球形をした格納容器の底に施されたコンクリートを熱
分解する「コア・コンクリート反応」が起きたとの結果になった。
ある程度の時間は炉心を冷却できた2、3号機では、それぞれ最大で57%と
63%の核燃料が溶けたと説明。この場合、底部のコンクリートの侵食は、
2号機で最大十二センチ、3号機で同二十センチになるとした。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理は同日の会見で「格納容器内は水位が
三十~四十センチあり、落ちた核燃料は水に漬かっているとみられる。仮に
コンクリートが侵食されていたとしても容器の強度面での問題はない」との
見解を示した。
解析結果は経済産業省原子力安全・保安院が開いた研究会で報告した。参加し
た岡本孝司・東京大教授(原子力工学)は「コンクリートの侵食の度合いに
ついてはなんとも言えないが、格納容器に落ちた燃料が冷やされていること
は確実だと思う。複数の機関の解析を持ち寄ることで炉の状態が少しずつ分
かってくる」と話した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2011120102100003.html
今宵は発信したいこと、せねばならないことが貯まってしまったので、連
続投稿します。流量を増やしてしまいます。お許しください。第1弾は、
9月にも紹介した『僕らの原始力展』のご案内です。「絵本作家たちの、
原発なくてもこんなにすごい力がたくさんある!というテーマのグループ
展」で、大阪市大正区で2日から開催されています。
3日には絵本作家さんで、この企画の立役者の一人、市居みかさんもお話
されるそうです。僕はいけないのですが・・・残念胸。どうかお近くの方、
ぜひご参加ください。絵の力に触れると心が踊ります。心が躍ると免疫力
があがり、放射線の害にも対抗できます。なので絵本は放射能に効く!と
僕は考えています。
市居さんのページから、『僕らの原子力展』の案内がみれますので、ご覧
ください。
http://ichiipk.exblog.jp/
なお市居さんのことをはじめ、絵本について紹介した過去の記事を紹介し
ておきます。
明日に向けて(271)ことばの力、絵の力、絵本の力
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/954c69322a4325aecc96c8f86eea952b
以下、市居さんが、あるMLに投稿した記事を転載します。
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市居みかです。
絵本作家たちの、「原発なんかいらないよ!」というテーマのグループ展、
巡回して、いよいよ今日から大阪で開催されました。
豪華メンバーですよー。
絵本、子ども、美術に関わる人たちの、熱い「原発いらない」メッセージ
が詰まってます!
スズキコージさんの巨大絵も飾られます!
そしてそして、先日惜しくも亡くなられたアキノイサムさんも参加されて
います!
ぜひイサムさんの作品に会いに来てください。
私は、明日3日にライブペインティングとトークイベントもやります。
よかったら遊びにきてくださいね。
家具工場を改装したすてきなギャラリーです。
大阪駅からバスも出ています。
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巡回『ぼくらの原始力展』大阪・ブリコラージュ
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期 間:2011年12月2日(金)~11日(日)
11:00 ~18:30/会期中無休
*イベント『ライブペインティングとお話』
1枚の紙の上に2人で描くものは…?
日 時:12月3日(土) 14:00~15:30
出 演:WAKKUN+市居みか
参加費:300円(未就学児無料)
*ワークショップ『帽子とチョッキ?のファッションショー』
紙と布で思い思いに作って・着て・お洒落しよう!
日 時:12月11日(日) 14:00~15:30
出 演:あおきひろえ+こしだミカ
参加費:500円(材料費込)
絵本もあたるかも?小さなお土産つき!
ワークショップは少しくらい汚れてもいい服装でご参加ください。
両日とも定員がございますので事前にお申し込みください。
空きがある場合のみ当日参加できます。
会 場:ブリコラージュ
551-0021 大阪市大正区南恩加島2-11-17/06-6551-4180
http://www.jimoto-navi.com/bricolage/access.html
問合せ:ぶんぶん文庫:駒崎 bunbunbunko550@gmail.com
*巡回展のため、売約済みの作品も展示いたします。
*売上は運営費を引いた全額を、エネルギー問題で動く全国の団体か
震災支援など、その時点で最も有効と思えるところに寄付します。
参加作家(敬称略50音)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あおきひろえ、青山友美、アキノイサム、荒井良二、飯野和好、
石井聖岳、市居みか、伊藤秀男、いまきみち、今森光彦、植田真、
大石芳野、大西暢夫、大畑いくの、おくはらゆめ、かとうまふみ、
加藤休ミ、くまあやこ、黒田征太郎、こしだミカ、小林敏也、
ささめやゆき、篠崎三朗、下田昌克、城芽ハヤト、スズキコージ、
竹内通雅、たなか鮎子、たむらしげる、たんじあきこ、寺門孝之、
どいかや、ナカバン、中野真典、中村征夫、西村繁男、野村辰寿、
長谷川集平、長谷川義史、はまぐちさくらこ、早川純子、原マスミ、
ハンダトシヒト、平澤一平、降矢奈々、堀越千秋、マスリラ、
松成真理子、丸山伊太朗、南椌椌、美濃瓢吾、みやこうせい、
ミロコマチコ、本橋成一、山口マオ、やまぐちめぐみ、山福朱実、
山本孝、WAKKUN
毎日新聞から読み応えのあるスクープがでました。なんと2002年に東電と経
産省首脳の間で、六ヶ所村再処理工場からの撤退が極秘に協議され、撤退の
密約までできていたという内容です。しかしその後に東電の六ヶ所以外での
トラブル隠しが表面化し、幹部が辞任するなどして実現しなかったのだとい
いいます。
毎日新聞は、このことを報じた記事の後にも次のような追加記事を出してい
ます。
「再処理事業推進の両輪である東京電力と経済産業省のトップらが、撤退に
向けて極秘に協議していた事実は、使用済み核燃料のすべてを国内で再処
理する「全量再処理路線」が当初から破綻していたことを物語る。「国策
民営」の両当事者が経済性、安全性に疑問を持つ事業が現在まで続いてい
る点に、原子力政策の病巣があると言える。」
非常に的確な指摘だと思います。使用済み核燃料の「全量再処理路線」は
初めから破綻していたのです。そのことを当事者が認識していながら、そ
の後、9年間もそれを隠していた。許しがたいことです。「原子力政策の
病巣」との指摘がありますが、僕は犯罪行為だと思います。こうしたこと
を放任していた当時の政府、関係者の処罰が必要です。
今回明らかになった事態は、原子力行政をめぐる政府・東電などの言説が
信用できないことをますます物語っています。自分たち自身で展望を失って
いながら大嘘を突き通して、ここまで六ヶ所村再処理工場の稼動への試みを
ひっぱってきたのですから。肝心なことは、こうした事実の隠蔽を繰り返し
てきた同じ東電と経産省が、現在の事故処理を担当し、情報を一切伏せて、
自らに都合のよい情報だけを流しているということです。そこに現にある
重大な危機の隠蔽の可能性が懸念されます。
それにしても、「もんじゅ廃炉」の検討方針が、いわば政府の「管理」のも
とに出されてきたことに対し、今回の六ヶ所村再処理工場の破産的事態は、
新聞社による暴露で明らかになりました。それまでもリークだとうがった見方
をすることもできますが、僕はそうではないと思います。政府の目論見の範疇
を越え出るものであると思われます。それだけにこの点の追求を行うこと。
今回の暴露を踏まえて、六ヶ所再処理工場からの即時全面撤退を、政府に
求めていくことが大事だと思います。
さらにウォッチを続けます。
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青森・六ケ所村の核燃再処理工場:「撤退」02年に一致 東電・経産首脳が協議
毎日新聞 2011年12月2日 東京朝刊
◇建設費膨らみ 会長辞任で白紙
核燃サイクルを巡り、東京電力と経済産業省の双方の首脳が02年、青森県
六ケ所村の使用済み核燃料再処理事業からの撤退について極秘で協議してい
たことが関係者の証言などで分かった。トラブルの続発や2兆円超に建設費
が膨らんだことを受け、東電の荒木浩会長、南直哉社長、勝俣恒久副社長と
経産省の広瀬勝貞事務次官(いずれも当時)らが撤退の方向で検討すること
で合意し、再協議することを決めた。しかし3カ月後、東京電力トラブル隠
しが発覚し、荒木、南両氏が引責辞任したことから実現しなかったという。
毎日新聞は出席者の氏名や協議の時期、目的などが書かれた経産省関係者の
メモを入手し、協議の関係者からの証言も得た。首脳による協議が判明した
のは初めて。核燃サイクルを巡っては高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉を
含め継続の可否が検討される見通しでサイクルのもうひとつの柱である再
処理事業でも東電、経産省のトップが9年も前から「撤退を検討すべきだ」
と認識していたことは、内閣府の原子力委員会が来年夏をめどに進める原子
力政策の見直し作業に影響しそうだ。
メモや関係者によると、協議は経産省側が「六ケ所村(再処理工場)はいろ
いろ問題があるようだから首脳で集まろう」と呼びかけて実現し、02年
5月ごろ、東京都内のホテルの個室で行われた。首脳らは「撤退の方向で
検討に入る」との意見で一致し、具体的な進め方を再協議することを決めた。
さらにその後、撤退する際に青森県側への説明役を務める東電担当役員も
決定したという。
六ケ所村再処理工場の建設費は事業申請時(89年)は7600億円。しか
し使用済み核燃料貯蔵用プールからの漏水が相次ぐなどトラブルが続発し、
2兆円を超えることが確実になっていた。本格操業すると将来の解体費用
などとしてさらに1兆円以上必要になる。東電など複数の電力会社幹部から
「こんなの(再処理事業を)やっても大丈夫なのか」と懸念の声が上がって
いたため、経産省側が協議の場を設けたという。しかし02年8月、部品の
ひび割れなどを隠蔽(いんぺい)した東電トラブル隠しが発覚し荒木、南
両氏が辞任、再協議は実現しなかった。
荒木氏(現東電社友)は「記憶が不確か」として取材を拒否。南氏(現顧問)
は協議について「記憶にない」とする一方「当時、経産省との間で再処理を
やめられないか相談が行われており、荒木氏や勝俣氏と議論した」と明かし
た。勝俣氏(現会長)も協議の有無には答えなかったが「再処理をやるかや
らないか5回ぐらい社内で経営会議を開いた」と述べた。広瀬氏は「まった
く記憶にない」と話した。【核燃サイクル取材班】
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■ことば
◇六ケ所村の再処理工場
使用済み核燃料から再利用可能なウランとプルトニウムを取り出す工場。
東京電力の連結対象会社「日本原燃」(青森県六ケ所村)が建設・運営して
いる。極秘協議があった02年当時、工場に放射性物質は流れていなかった
が、04年に劣化ウランを流すウラン試験、06年に使用済み核燃料を流す
アクティブ試験に移行。高レベル廃液をガラスで固める工程でトラブルが
発生し08年12月以降、試験は中断している。完成予定時期は18回延期
され現在は来年10月。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111202ddm001040002000c.html
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核燃再処理:経産と東電の「全量再処理」当初から破綻
毎日新聞 2011年12月2日 2時30分(最終更新 12月2日 6時10分)
再処理事業推進の両輪である東京電力と経済産業省のトップらが、撤退に
向けて極秘に協議していた事実は、使用済み核燃料のすべてを国内で再処
理する「全量再処理路線」が当初から破綻していたことを物語る。「国策
民営」の両当事者が経済性、安全性に疑問を持つ事業が現在まで続いてい
る点に、原子力政策の病巣があると言える。
関係者によると、04年2月ごろまでは東京電力の役員らがたびたび経産
省や経産省資源エネルギー庁を訪れ、撤退を模索していた。建設費の膨張、
トラブルの続出に加え、04年1月には六ケ所村再処理工場を稼働させれ
ば約19兆円もの費用がかかるとの試算も公表された。見通しは悪くなる
一方だが撤退を表明すれば責任問題に直結するため、経産省も東電も撤退
方針を打ち出さなかった。
「原子力ムラ」の抵抗も激しかった。その一つが、工場稼働の妨げになる
として内閣府の原子力委員会やエネ庁の一部幹部が、使用済み核燃料受け
入れを提案する02年10月のロシアの外交文書を隠した問題だ。当時の
経産省幹部は文書の存在を毎日新聞の報道(11月24日付朝刊)で初め
て知り「文書を把握していれば代替案としてロシアへの核燃料搬出を提示
でき、事業撤退への道が開けたかもしれない」と悔しがった。
結果として再処理事業は継続され、19兆円は産業用・家庭用の電気料金
に上乗せされている。企業が払う電気料金も最終的に商品価格などに上乗
せされていると考えると、国民1人当たり約15万円という計算だ。国民
負担まで強いた再処理工場は今も稼働しておらず、破綻ぶりは一層明らか
になっている。【清水憲司、太田誠一、松谷譲二】
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111202k0000m020118000c.html