今年の梅雨はシトシト降るタイプではないようですね。今日も蒸し暑かったです。そろそろエアコンを入れないと限界です。
で、やっとPEN-FT #20432Xが来ましたね。しかし、ちょっと怪しい個体です。この画像を見て・・①トップカバー端のへこみ、②ターミナル接片の脱落、③シボ革が剥離したまま、④露出計基板の抵抗、⑤セルフタイマーが旧タイプ。これはギリギリ正解の可能性もあるのですけど、私の資料によると#204363は新型が付いています。まぁ、多少の前後は許容の範囲なんですが・・
下面のボトムキャップがありませんね。オーナーさんも最近気がつかれたそうです。接着剥離をしている個体は多数ありますけど、無いのはやはり問題でしょう。隣りに三脚ネジ孔がありますので、僅かな光線漏れはしているはずで、高感度フィルムを使用した場合は若干のかぶりはあるのではないかと思います。
問題は露出計の基板です。じつはこの眺めは初めてではありません。過去に何度か見ていますが、正規の配線を無視して抵抗を4個も付けてあります。回路を変更すると指針が大きく触らすことは出来ますが、これでは正確な指示は得られません。20万台ですと露出計の感度が低下しているものが多くなっている頃ですので、それではと、電気の知識のある方の改造でしょうけどね。
トップカバー端のへこみは修正をして見ました。まだ少し歪がありますが、大きな力で押されたため簡単には戻せません。例によって、費用は頂かないボランティアの作業です。
ターミナルは一度分離した形跡があって、真鍮のナットの挿入方向が逆ですよ。どうやって締め込むつもりだったのでしょう。ちょっと考えれば分かることです。この辺は機械組立のセンスの問題です。
シャッターユニットを洗浄して、各部を点検していきます。今までは特に不具合としては現れていなかったようですが、コントロールレバーのナットが緩んでいます。この部分の緩みはかなりの個体にありますが、寸法的な制約から緩み止めの構造を取れないからです。このまま緩み続けるとどうなると思いますか? ある日突然シャッタースピードが変わらなくなるでしょう。で、なぜ緩んだかですが、この個体の場合はナットの内側にある多重防止レバーが本来はナットを締め込んだ状態でフリーとならなければならないものが、ナットを締めることによって固着してしまいます。原因はクリアランス不足。レバーとナットの部品勘合が良くなかったのでしょう。それをそのまま組んだために、かなり早い時点でナットは緩んで、怪我の功名でレバー固着による不具合が出なかったもの。まぁ、文章で書いても分かりませんよね。分からなくて良いのです。この頃はまだ部品の組み合わせによっては不具合となる可能性がある図面公差を含めた部品品質の甘さなんですね。しかし、組立手順書には、ナットを締め込んだ時にレバーはフリーであること。とか書いてあったはずですけどね。
シャッターユニットと平行して、洗浄したダイカスト本体も組立てて行きます。すでにモルトは貼ってあります。これが欠落していたボトムキャップ。アンダーカバー内に無かったということは、欠品を承知で販売したわけだ。(この個体は中古屋さんの通販)後期生産機では、金属のキャップではなく、円形のビニールシート状のものに変わっています。コストダウンかなぁ? 僅かにコストは下がったと思いますけど、後期のシート状の個体は剥離しているものは皆無です。この変更に伴い、ダイカスト自体の形状も変更されています。
怪しい個体だと思いましたが、露出計の基板などを除けば、それほど悪い個体でもありませんでしたね。20万台付近のユニットですから、整備をすれば巻上げは軽快で調子は良いと思います。ただし、ちょっとギヤ鳴り音は大きめですけど・・ハーフミラーはこの頃相当の劣化具合でしたね。オーナーさんは「マガイ物でない状態の良いFTかFVが欲しいので在庫は有りませんか?」とのことでしたが、結局どの個体であっても、製造されてから長い時間が経過しているわけですので、致命的な欠点が無い個体であれば、どの素材から仕上げても一緒です。その意味では、この個体は性能は安定していますし、素性は悪くはありません。安心してお使い頂けると思いますね。