少し前にPEN-FTをお返ししたオーナーさんから、今度はPEN-FV #12888XXが来ましたね。FVはFTで言うと10万台の初期と同じ仕様の部品が使われている頃の製品で、放置されていたけれどもFVだからと市場に出て来た。みたいな個体が多いのですね。この個体は、実用としては殆ど使用されなかったものと思われますが、やはり長期放置での劣化が認められます。リターンミラーですが、腐食が進んでいます。交換をご希望です。皆さんは気がつかれないかも知れませんが、巻き戻しダイヤルの出張りが大きいように思います。工場での組立では、逆にそのまま組むと、ダイヤルが低くなる個体があって、その場合は調整ワッシャを追加してツラを合わせていますが、高いというのは何か原因があるはずです。
どうも、ラッチが完全に下降していないのではないかという気がしますね。試しに、裏蓋を開けようとすると・・・ほらね。ラッチの掛が浅いので裏蓋をロック出来ずに開いてしまいます。その他は、この頃特有のガリガリの巻上げフィーリングですが、フィルムレールの腐食は少なく(ありますが)メンテナンスで良い状態のFVになると思います。
トップカバーを分離してみると・・・→のように軸受けに隙間が開いていますね。ラッチが完全に下降していないのです。
上のラッチが、この個体に付いていたもの。裏蓋のラッチと深く噛み合っていません。下が正規のラッチで、ワニ口が大きく開いていることが分かりますね。これはラッチの作動が不良でスムーズに上方へ逃げないために、本体側のラッチが変形してしまったのです。今回は修正をして再使用しますが、一度曲がった板材は癖がついていますので、再度曲がる可能性はあります。
平行して、リターンミラーの貼り替えをして行きます。左がオリジナルで付いていたミラーです。かなり腐食していますね。自然に剥離をする場合も多くありますが、今回のように、剥離をしていないミラーを剥がすのは意外に面倒なんですね。で、新しいミラーに交換されています。
シャッター関係はすでに本体に搭載されて、巻上げの感触も非常に良いと思います。リターンミラーは組み込んであります。残念なことに、プリズムに点々と腐食がありますね。Fには腐食が多いですが、FTになると少なくなるのですが、FTで言うと10万台の初期型には見受けられます。このままスムーズに組立が進むかと思われたのですが、そうは問屋が卸してくれませんよ。ミラーユニットね。これが調子悪いです。ロックが稀に外れる場合があります。この頃のユニットは不安定なものがありますね。さて、動的な動きの中で発生する症状で、ゆっくりと作動させると不具合は出ない。こういうのが一番厄介なのです。最悪はユニットの交換を考えます。
当時のSSであれば交換が当然の不良でしょうけど、新品の交換部品が無い状況ではそうは簡単に行きません。元々、分解修理を前提としない設計の部品で、カシメを多用されて組まれています。SSとしては修理品質を保証しなければならないことから交換修理は当然と思います。そのような思想のカメラなので、交換部品が無い現状では当時とは違った修理術が必要となって来ます。今回は修正としてありますが、原因は各部の作動(移動量、リフト量)が設計値どうりに出ていないということ。それほど使い込まれたユニットではありませんが、この頃のユニットに見受けられる症状です。全反射ミラーは意外に腐食は少なめでしたが、オーナーさんのご希望により交換して組んであります。
関東地方は梅雨明けからずっと暑さが続いています。エアコンを入れずに頑張って来ましたが、今日は頭痛がして来ましたのでとうとう入れてしまいました。と、大阪のご常連さんからクールビズセットが送られて来ましたね。オリンパスのデジカメイベントに行かれたのでしょうか? PENのうちわ涼しいですね。去年の今頃集めたPENストラップ。これはEP-3のようです。非売品とありますが、そろそろコンビニに登場するのではないのかな? と言うことでPEN-FVは非常に良い状態ですよ。外観良好、巻上げはビックリするほど軽くスムーズ(この頃の特徴)作動も軽快です。