小笠原の父島ご在住のオーナーさんからPEN-FT(B) #3211XXが来ています。良い頃の個体ですが、トップカバーに「PASSED」のシールが貼ってありますので、里帰り機です。過去に分解歴はあります。ご覧のように、接眼プリズムなどの劣化したモルトは取り去られています。取ったら貼っておけよ。と言いたいです。残念なことに、トップカバーの巻き戻し側角に落下による打痕があります。修正をご希望ですが、いつも書いていますように、角は修正出来ないのです。修正費用も頂戴したことはありませんので、にきびと同じで、いじると益々状態が悪くなるリスクを取って作業をするわけですから、一か八かは出来ないのです。
底蓋を外してみます。かなりホコリの混入がありますね。2回巻上げの症状がありますが、右下のギヤ軸が磨耗しているのです。
コマ間も不揃いとのことで、スプールのスベリが早いですね。すると、スプロケットに負荷が掛かって、クラッチのスベリを起こしやすくなります。この個体のスプロケットは、まぁ、再使用出来る程度と判断して組み込んでいます。スプールバネは強化タイプと交換しておきます。
すみません、ちょっと都合で作業が遅れました。では進めます。シャッターユニットですが、ギヤの部分から、小さなワッシャーが潰れて出て来ましたね。工場での組立時に混入したものか、或いは、このサイズのワッシャーを使用する場所は、巻上げユニットの取り付け部分の調整用としてですけど、巻上げユニットを分離したのかなぁ??
洗浄を終えたダイカスト本体に組立をして行きます。心配されたギヤ軸の磨耗は軽微で一安心でした。
清掃をしたビューファインダーを組み込みます。モルトは全てやり直しております。里帰り機ですので、プリズムのコーティングは完全で、特に接眼部のコーティングが無傷なものは、国内に有ったものでは絶望的です。
メカの組立はほぼ終了。巻上げも軽く滑らかです。露出計の基板は前回の分解で抵抗の調整がされています。オーナーさんのご希望でそのままとします。
これ貼っている方を見かけますが、巻上げレバーの樹脂ストッパーがへたると、レバーがトップカバーに接触をするようになりますが、この個体は丸い軟質ゴムが貼られています。修理前のクラッチに大きな遊びがある時はこれで問題は無いのですが、遊びを調整するとレバーが完全に戻らないため、チャージが出来なくなります。正規の樹脂ストッパーの調整により、ボッチは剥がさせて頂きます。
と言うことでこれで完成です。PASEEDシールですが、なんでこんなところに貼るのでしょうね。私なら、速、剥がしますね。では、小笠原の美しい海を撮影してくださいね。