新旧2台のPEN-Sが来ています。最近はコンパクトPENのご依頼が少なくなって来ましたね。コンパクトファンは確実にいらっしゃるのですけどね。では、到着順で新の方から・・PEN-S 3.5 #1520XXです。製造が新しい? ためか、一見きれいに見えますね。しかし、シャッターは不調です。
トップカバーのシュー下に腐食痕がありますね。どうも、雨の中で使われたようです。
シャッター内部も錆か入っていますね。シャッター羽根と作動リングも錆びています。その作動リングは最後期にのみ使われた黒い表面処理のタイプです。それ以前はクロームメッキタイプですが、コーティングによって、フリクションを低減し、組立の容易さを狙ったものと思いますが、コーティングは弱く、剥離をすると不調となってしまいます。このリングも、当たり面のコーティングは剥がれ気味です。
すべて洗浄をして組立てていきます。シャッター羽根にも錆が出ていますね。清掃により再使用とします。
この頃になると、シンクロ接点はバイクのポイントのような立派な接点が付きます。
カム板を留める薄ナットにも周り留めが追加されています。製造末期に今さらという気もしないでもありませんが・・
スプールナットは金属から樹脂製に変更されています。コストダウンが目的ですね。
全体に水気の入った形跡のある個体でしたが、レンズはきれいで、まずまずの仕上がりではないでしょうかね。
次は、初期型に相当するPEN-S 2.8 #1291XXですが、とにかくばっちい、と言うかメッキ面にも薄っすらとクロームの腐食が浮いているという状態。
トップカバーサイドもこのような状態です。このような個体の場合は、O/Hの前に、とにかく清掃研磨をすることに労力を掛けなくてはなりません。
まぁ、修理屋としては、そこまでする必要があるのかと自問する時もありますけど、性分なので仕方ありません。スプール軸ですが、まだ三光PENなどと同じ設計の部品ですね。右はそれ以後の変更部品。スプールの滑り(空転)をスプール内に仕込んだ板バネ一つで行うシンプルな設計ではありますけど、スプールにクラックが入るというトラブルが出るため変更されたものでしょう。
スローガバナーは完全に固着していてご覧のとおり止まります。
こちらも性分なので全ての部品を洗浄研磨をしておきます。シャッターのハウジングもアルミの酸化が激しいので研磨をしておきました。性能には関係ありませんが・・
しょっぱいシャッターだなぁ。いつも書いているように、このシャッターは非常に非力で、他のシャッターと比べて時計に近い感覚です。使い込まれて、幾つかのポイントが磨耗をすると、途端に調子が悪くなるのです。特にBで一度動きを止めてからの復帰時が一番きびしいのです。この個体の場合は、スローガバナーの作動不良で、洗浄をしても作動が非常に重い。シャッターを切ると、カムが画像の先端を叩くのですが、使い込むと接触部分に窪みが出来ます。するとカムがスムーズに滑らず固着するという現象が起きます。トルクがあれば動いちゃうんですけどね。
作動が重い原因は、2つの歯車の黒染めをされている歯車が錆び付いているのです。鉄の黒染めは防錆効果は薄いです。長期に放置されて湿気が入ったままですと、このようになります。当時のSSでしたら、即、ガバナーASSY交換でしょうけど、現在はそんな贅沢なことは出来ませんので、一つずつ錆を落として、抵抗が無くなるようにラップ作業をしていくしかありません。シャッターにトルクがあれば、多少の錆では動いちゃうのですけどね。とにかく非力なシャッターですから・・
シャッター復活に工数が掛かって他の画像は撮り忘れました。レリーズボタンのバネが弱い初期型のPEN-S で、コンディションの良いものは少なくなっていますから稀少な個体ですね。
http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/