猛暑と思っていたら秋雨前線ができて雨がちにな日が続いていますね。もう少し残暑が続くかと思いましたが、まぁ、私にとっては気温が下がるのは有り難いことです。雨でバイクもいじれませんので、レンズの清掃などをしておりました。Zuiko100mmですね。持病のヘリコイドグリスの流化で、内部はベトベトになっています。
こちらは25mm。その他に38mmパンケーキも来ていますが、このオーナーさんは非常にコンディションの良い個体ばかり所有されていますね。小さなカビがありますので清掃をしておきます。
で、ここから本題です。こちらのオーナーさんも前のオーナーさん同様、大変熱心にPENを収集されています。カメラブームの頃でも、これらを収集することは大変でしたよね。逆に今だから集められるということなのかしら?
PEN-FT(B) PEN PEN-Wですよ。私も仕事柄、多くのPENを所有している方だとは思いますが、あくまでも作業のためですから、このようなマニアさん好みの箱入り個体などは持つ機会がありませんね。箱だけならいつくかあると思いますけどね。
では、年代順にPENから見ていきましょう。いわゆる三光の時代ではありませんが、三光の初期型に近い金型の部品を付けた個体というところ。あまり実使用はされなかった個体のようです。#1664XXと元箱とのシリアル№も合致しています。
「この中にハンドストラップが入っています」おぉ、ちゃんと入っていますね。発泡スチロールが使われる以前の紙箱のギミックみたいなのは大好きです。三光でなくとも、革編みのストラップが付属していたという証明。
プラスチック製ファインダーブロックの本体リブ塗装部の接合部辺りを注視してください。まだ、隙間が空いて、完成度の高い工業製品とは言えません。元箱保存なので状態は良好です。全体のオーバーホールをしておきます。
使用頻度の少ない程度の良い個体なので、簡単にUPと思いましたが、それはそれで問題はあるものです。巻き戻し軸に塗布されていたダンパー用グリスが固着して固まっています。これほど大量に塗布する必要は無いと思いますが、軸と軸穴のクリアランスが大きく(ガタガタ)それを修正する(悪く言えばごまかす)ためでしょう。
長期に保管された個体は、モルトの劣化で塗装面とダイカストも侵してしまいます。これは軽く研磨だなぁ。シボ革があるので塗装は出来ないのです。
すべて分解洗浄で組み立てています。
最初のチェックで分かっていたこと。巻上げの逆転防止機構が働いていない。(固着している) 初期のPENはこれが多いです。巻き上げた時、チッチッチッって言うでしょ。音がしないのは固着しています。そもそも、2つの爪にテンションを掛けるコイルスプリングが弱く(線径も細い)2つを同軸でセットするので、どうしてもスムーズに動かないのです。この設計は???ですね。エンジンのタペットスプリングなどではありますけどね。爪も板厚が薄く、組立時に2つの爪が干渉しないように曲げられているため、経時的に作動不良となるものが多いのです。
右がこの個体の(初期)もの。左は後期のもの。爪の1つは板厚を厚くして、コイルスプリングも線径と巻き系も太くして、なお、片方のスプリングの巻きピッチを荒くすることによって、2つのスプリングの干渉を少なくしようとする努力が見られます。組立時に曲げ調整などを必要とした部分です。今回は、後期のセットを使用します。
すでにファインダーの対物レンズはガラス製となっています。但し、四隅の墨塗りはありません。
また、シャッターを切っても、巻上げロックのリンケージが外れず、次の巻き上げが出来ない。(少し巻上げダイヤルを戻すと解除される)通常は、駒数カニ目ネジ部の調整ワッシャーの不適が原因ですが、この個体はそれでも直らない。点検すると、リンケージのロック部が故意に曲げられていました。何のため? 意味の分からない加工をする人はいるのです。
レンズは、PENの持病、後玉のコーティングが曇っています。清掃をしますが、コーティングの劣化ですので、完全には無理です。
モルトの劣化を放置すると、裏蓋の背の先端部が激しく腐食します。この個体も手遅れ状態でした。ヤスリで研磨をしたところ。
タッチアップ塗装をしておきます。使われなかった個体ほど、状態はひどい傾向です。使わずに保存していれば良いというものでもないのです。
過去にトップカバーを開けた意味不明の修理?をされていた個体。しかし、劣化し易いピントリングやシャッターダイヤルの表面処理は良好で、大変良いコンディションとなりました。おわり。