カメラの方が暇なので、過去にジャンクで入手をしていたセイコー・スピードタイマー6139-6031(コーク)を仕上げたいと思います。機械は全く不動の状態。ケースは以前に軽く磨いた気はしますが文字盤と針の夜光がカビ ?のようなもので黒く変色しています。ベゼルは残念ながら傷だらけで、ベゼルプレートも赤の色が退色しています。風防ガラスも傷だらけですので、以前に純正部品を高価で入手していました。ベゼルプレートは純正はないのでリプロパーツを用意しました。
香港辺りで作っているリプロのベゼルプレート。良く出来てはいますので代用としては使えますが、よく観察すると目盛りが太目で長いですね。版下製作の問題だけなので、全く同じように製作することも可能ではないかと思いますが、敢えて少し変えて製作してあるのかも知れませんね。赤色はリプロの方が圧倒的に鮮やかですので、こちらを使いますか、外径は純正φ37.43mmでリプロはφ37.25mmと僅かに小さいため、ベゼルには軽圧入にはなりません。接着ですね。
意外に傷だらけのベゼルリングを研磨することは手間が掛かります。元々、寸法的に薄いところですから研磨しろはありませんので、どこで折り合いを付けるかです。また、外径は3面のカットをされているため、角度に合わせた研磨をしなくてはなりません。研磨の角度を保つ簡単な治具を作りました。本来は旋盤で削れば良いのですが、すでに使用されて変形がありますから、それも難しいのです。オリジナルは大切ですから再使用が出来るように慎重に外しました。
風防ガラスも傷だらけです。当時の若者(私の世代)が日常使用したものが多いですから珍しくはありません。今回は大枚叩いてハードレックスの純正を手に入れられましたが、現存数は少なくなっています。海外ではリプロパーツも作られています。
夜光の劣化が激しく見かけの状態を下げています。で、インデックスを文字盤から分離させて塗装する予定でしたが外れてくれません。以前に6139-6000(ペプシ)をレストアした時は容易に外れてくれましたが今回は分離は諦めるしかありません。
現在は夜光塗料ではなく蓄光塗料が使われています。昔の夜光塗料は緑掛かった色調ですが、スピードタイマーの場合は白系なので白パウダーを入手して見ましたが・・
仕方がありませんので、インデックスは取り付いたままでタッチアップしました。新品当時の色調は不明ですから、カタログを参考に・・夜目遠目。風防ガラス越しには何とか見られるかな?
長短針の夜光がカビで黒く汚れています。秒針は退色し易い黄色ですが、このまま使うか?
では、超音波洗浄をして点検します。過去に一度分解を受けているようですが、機械としては消耗は少ない個体です。ではなぜ動かないのか?
何度か取り上げていますので簡単にUPします。香箱と輪列を組んで行きます。ここで三番車のダイヤフィックス(保油装置)のバネがセットしても外れてしまい難儀をしました。中央が縦型クラッチの秒クロノグラフ車。この機械の胆です。分送りツメを変形させないように注意をします。
発停レバーの作動レバーバネをセットします。
カレンダー機構を組立て日車と日車押エのネジを締めます。あとは曜車を取り付ければ完了。
じつはテンプを取り付けても動き出しませんでした。ガンギ車までのザラ回しは良好なのに、アンクルを取付けると動きが渋い。これ、稀に経験します。アンクルの爪に注油をすると何事も無かったように動きだしました。
補修した文字盤と針を付けました。が、何度やり直しても秒針が0時にセット出来ません。⇧上の方の分解前の画像を見てください。秒針が58秒辺りで止まっています(別に58秒止まりという持病はあり)が、これは秒針の作動が途中で止まっているものと思ったのですが、帰零ボタンを押してもハートカムによりこの位置になってしまいます。これは前回の分解の時の針付けが正確でなかったためです。秒針の軸は帰零による慣性によって針ズレが起きないように先端が角に成形されています。一度間違った位置にセットしてしまうと微調整は出来なくなるのです。これはリプロ針と交換する必要がありますね。
問題はボタンです。片方はメッキの腐食があります。仮にケースに取り付けて作動を見ると、戻りが悪い状態。これはボタンパッキンの硬化によるものです。このパッキンは小さいため寸法的にシビアで汎用のOリングでは代替出来ません。海外ではリプロ品が流通しているのですが、国内のオークションには出品されませんね。業者さんお願いします。
マジックレバーと伝エ車にグリスを塗布して伝エ受をセットしました。
回転錘のベアリングの摩耗は少な目で地板との接触も腐食もありません。防水性能は維持されていて使用頻度は少なめだったようですね。ラッキー。
ケース関係の構成部品。
これで完成しました。このモデルは6031ですが、カタログのモデルは6032で、秒針の色などが微妙に異なります。
タキメーター付です。タキメーターは自動車のスピードを測定することが出来ます。1kmを走るのに何秒要したかを計り、秒針の示すタキメーター目盛りを読めば時速何キロかを知ることが出来ます。当時はモータースポーツのラリーがブームだったりしていましたからね。
このモデルは竜頭を回すと動く回転リングも付いています。
左のモデルは6139-6002で、ベゼルリングの色から通称「ペプシ」と言われています。6031が後継モデルなんでしょうね。
風防ガラスとベゼルリングがおニューですからかなりきれいに見えますね。ケースのヘアラインは同心円状に入れるのも難しいです。このぐらいのコンディションですと、国内よりもイーベイなどの方が高額で出品されていますね。オリジナルのSSベルトは中古でも非常に高価ですから、革ベルトで我慢しておきます。