今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO スピードタイマーを仕上げるの巻

2018年09月23日 23時25分16秒 | ブログ

夏前に北海道のINOBOOさんからスピードタイマーが来ていたのでした。スピードタイマーは文字盤、針、ベゼルリングなどの劣化が進み、リプロ部品に交換されている個体が多いのですが、右の6139-6032はそれらを交換されています。機械としてはこちらの方が良いとのことで、こちらをメインにして左の6139-6000の部品を移植して仕上げることにします。

風防ガラスも交換されているようですが、ベゼルが完全に圧入されていませんね。

 

 

何かだるい研磨を受けていまして、稜線が消えて丸っこいケースになってしまっています。すでに相当研磨されていますので修正は非常に困難です。

 

夜から朝の温度変化で先月の風邪が良くなったと思いましたら、また風邪を引いてしまいました。関東地方は気温が上がって蒸し暑くて仕方ありません。まっ、エアコンを入れると変に寒いんだよね。で、調子の良い方の機械でしたが、結構分解をされていて汚れも多いです。油っけは殆どありません。では分解をして行きますが、曜車押エが表裏逆に入っていますよ。ケースをリプロ部品で仕上げる程度の知識はある方のようですが、基本的なことを勉強した方が良いです。

分解洗浄をしましたが、何度洗っても汚れが落ちてきました。洗ってないということでしょう。

 

クロノですから部品点数が多いのでパッパといきます。香箱真にはルビーが入っていないためホゾ穴は拡大傾向です。ガンギ車を載せて一番受を載せます。

 

三番車のホゾを入れるのがちょっと厄介。

 

 

動きだしたのでクロノグラフ車の動きを見ます。おっと持病の58秒止まりになりましたよ。ゼンマイ一杯では動きますが、この場合、香箱半回転の巻き量で作動しなければならないのです。しかし、ゼンマイのトルクも落ちていますので少し余裕を見ます。分送ツメ(中央クロノグラフ車下のツメ)のくい合いと分躍レバーの強さとのバランスで解決します。

日ノ裏側を組んでいきます。

 

 

現存の殆どの個体はリューズのパッキン不良による水の侵入でインナーリングを回転させる歯車が錆びています。この個体も錆でいますが、辛うじて歯車の嚙合いが出来る状態。ここだけ錆びやすい材質なんですね。ピンセット先はリプロ部品。リューズも含めて良く出来ていると思います。メーカーから部品が出ない以上、これらのリプロ部品が頼りです。

分解前は片振りもあり得ないセッティングになっていましたので、その時点で丁度ぐらいの調整をしておきましたが、組立後は+50秒ぐらいになりますね。油がカラカラだったのでしょう。

 

 もう1つの6139-6000からインナーリング、文字盤、針を調達します。機械は6139Aですので6139-6032の6139Bとは微妙に歯車の規格が異なっていて混用は出来ません。

 

文字盤と針を移植しました。長短針はオリジナルのメッキをサンドブラストで剥離してあるようです。みなさん色々考えますね。夜光は入れ直してあります。

 

レストアする時に一番必要となる部品。これらはすべてリプロ部品です。業者の方が海外へ出向いて仕入れてくださるもので、品切れが多いですから見つけたら入手をするようにしています。必要になってから探しても見つからないことが多いですからね。

ケースは回転式のインナーリング付きですから部品構成は多いです。インナーリングはオーナーさんのお好みにより交換して組みます。

 

ボタンが違うものがセットされています。バネのテンションが掛かっていません。機械留めも腐食していますので両方交換します。自動巻き機構を載せてローターを取付けて組立完成。

 

ベゼルプレートはゴム系接着剤で固定されていましたが、ベゼルを圧入した後で接着した方が位置合わせが正確ですので一度剥離をしておいたものを再接着します。

 

今回はオーナーさんのお好みによって、6139-6000の文字盤、インナーリング、針を交換しましたが、針はリプロ新品に交換した方が良かったかもしれません。ベゼルリングは本来は黒/赤がオリジナルだったと思いますね。

 

社外で流通しているステンレスベルト。取付け部の形状が特殊ですので汎用のベルトは似合わないので貴重なアイテムですが、値段もそこそこですので私はまだ買えていません。

 

え~と、オーナーさんから「やはり針を新品に変えて欲しい」とのご希望がありましたので交換をした画像を追加しておきます。ヤレた純正針よりリプロの新品。針は時計の顔だなぁと思いますね。

 

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SEIKO 61GSの巻

2018年09月23日 09時29分40秒 | ブログ

グランドセイコー 6145-8000です。カレンダーは日付けのみ(45)でケースは定番の8000です。かなりラフに使い込まれた個体でケースに傷が多く歩度も30秒以上遅れるようです。

 

テンションリング付の風防ガラスはプラ製ですので傷が多いです。交換します。

 

 

裏蓋のメダリオンは欠落していて、オーナーさんが仮のリプロ品を同梱してくれました。本来は「GS」となります。

 

裏蓋の刻印文字は非常に浅いので最低限の研磨に留めます。メダリオンを接着しました。サイズが少し小さいですね。

 

風防ガラスを外すために、まずベゼルを取り除きます。

 

 

機械の方を組み立てて行きます。61系ベースですから非常に組み易い機械です。機械には分解された形跡はなく、一度もO/Hを受けていないようです。それによって、香箱真に潤滑が無く強力なゼンマイによって摩耗しています。

 

最後にテンプを取り付けます。

 

 

カレンダーは日付けのみですのでシンプルで組み易いです。

 

 

テンションリング付風防を入れるためにはセイコー純正の押込コマを使いますが、私の所有するHOROTECとは孔径が異なり(HOROTEC 8mm SEIKO 5.9mm)そのままでは使えませんので、旋盤で変換コマを作ってみました。

 

出来るだけガタのないような精度で作りましたので、コマの倒れはありません。

 

 

テンションリング付風防を圧入する時はドキドキですが、バキッという音と共に無事圧入が成功しました。

 

 

ベゼルは風防の固定には何ら関係がありません。飾りです。

 

 

自動巻き機構を載せてケーシングしました。香箱の外周が接触して真鍮地が出ているのが分かります。ローターにGS GRAND SEIKO と彫刻されていますので初期型のようです。キャリバーは日付のみですから6145Aです。

 

 

ワニ革のベルトを取付けると高級感がありますねぇ。文字盤の6時位置に GS GRAND SEIKO (諏訪マーク)ですから、やはり初期型でしょう。香箱のダメージはありますが、テンプは工場で調整したままで日差+3秒程度で動いています。流石にGS。

 

尾錠は本来、右側のものがオリジナルだと思いますね。

 

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