時計やります。以前にオーバーホールご希望とのことでセイコー新10Bが来ていましたが、現在オークションで流通している個体は丸穴車の軸が折れているものがかなりありますね。この個体(左)も同様でした。地板の設計や材質がよろしくないのでしょうかね。修復には地板を交換する以外になく、この頃の機械は同じモデルであっても個体差が大きいですからニコイチ的な組み合わせは出来ません。オーナーさんが2つ目の個体(右)を入手されて来ました。果たして丸穴車は無事でした。しかし、ルビー(石)が入らない廉価判の機械です。
心配していたホゾ穴の拡大はそれほどでもなく使用に問題はないようです。しっかり超音波洗浄をして部品の点検から組み立てていきます。
香箱真の拡大もありません。ケースはひどい状態でしたが機械はそれほど悪くはないようです。
輪列組みました。ここまでは何事もありませんでしたが、ガンギ車の受けを絞め込むとアガキが無くなって固着します。この頃の地板の工作精度もあると思いますが、途中で部品の入れ替えがあったかも知れません。
テンプ関係を観察するとひげ棒が折れて無くなっています。では別の個体から緩急針を調達して交換します。その他、ひげ持ちのネジが無かったりスリ割りが欠けたりとアクシデントがありました。
天真の注油とアンクルの注油で元気よく動きだしました。しばらくエージングで様子を見ます。
ケース類は別の個体の方を使います。文字盤と針を付けました。ケースは軽く磨いて洗浄してあります。
組んだままのデータ。思ったほど悪くはありませんが、裏表での歩度差が大きいです。天真の摩耗です。
残念ながら石が入らない機械でしたが、それほどひどい状態ではなかったのはラッキーでした。洗浄で機械も輝いています。しかし、輪列のフリクションは石が無いせいか軽くはありません。
一緒に来ていたCYMAですが、応急処置で動き出しました。しかし、ゼンマイの小鉄車が滑って巻けません。
原因を調べて行くと・・あ~ダメだ。「小鉄車と丸穴車が滑るので地板を削って低くすれば良いだろう」と考えた馬〇者がいるのです。カメラの世界にも見受けますが、不具合があると簡単にオリジナルを壊してでも直してしまう考え方です。こうなると後々救いようがないのです。
で、CYMAは中止です。最近のオークション物はこのような個体の処分場所となっている気がします。新10Bについては、幾つかの個体を入手して組み合わせることで1つの完品を作るという考え方になりますね。戦後の腕時計にパリス環式のベルトを付けたかどうか知りませんが、オーナーさんのご希望なので取付けてみました。左はデッドストックを使って製作した私の私物。この頃の標準15mmのベルトは選択肢が極端に少ないです。
戦時中の二重ケースと比べると戦後の新しい空気を感じます。ご自身と同年齢の時計を動かしてみたい。というご希望は叶いました。