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カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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いろいろ難題が・・ローライ35SEの巻

2023年07月10日 20時00分00秒 | ブログ

ローライ35系の中でも35SE(TE)は露出表示をファインダー内のLED表示としたモデルですが、電子基板も入っており、作業の振動によっても不具合が出る可能性があるのであまり気が進まない機種です。いろいろ問題が出て来ますが、すでにこの画像中でもの部分に問題が出て来ます。

電池は電池アダプターにボタン電池を4個入れて使います。

 

 

ファインダー内のLED表示は一応点灯はしていますが、点灯しない場合もあったりで非常に不安定です。精度についても不明。

 

ファインダーブロック内にLED基板があって、配線が左(見えない)にある基板と繋がっているため分離出来ませんので接眼側から分解して清掃をします。

 

電池の液漏れもあったようです。余計に基板への影響が心配です。

 

 

シャッターの分離と沈胴の作動が気になるので沈胴チューブも分離しました。この後問題が起こりますがこの時点では気が付いていません。

 

巻き戻しダイヤルの回転も重く、樹脂も白化していますので研磨します。

 

 

シャッターは過去に分解されていました。その後の保管が悪かったと見えてレンズの各面にカビが盛大にあります。

 

シャッター羽根に突起があります。これは過去の分解組立時にピンの位置を正確に合わせずに後玉を締めたからです。この問題は未分解機でも経験していますので、あるいは工場でのしわざかも知れません。

 

完成したシャッターユニット。ユニット単体のこの時点ではヘリコイドの回転に問題はありませんでした。

 

沈胴チューブに取付けると回転が重く渋い。原因を探って行くと、あっこれだ。ヘリコイドのストッパー先端部がチューブのスリ割りと合っていない(ストッパー側が幅が広い)のを無理に締め込んだため、チューブの先端が内側に曲がってアウター側のヘリコイドねじと接触をしていたものです。

ストッパーの幅をヤスリで狭く修正して、チューブの変形を直したところ。しかし、すでにヘリコイド側にダメージがあって、通常使用するグリスの粘度では回転が重く、かなり軽いグリスを入れて妥協した。このように、35Sは35のような単純な前玉繰り出し式ではなく、アウターとインナーの2条のネジがある直進ヘリコイドのため、ヘリコイドの状態については非常のデリケートです。前回分解された方は沈胴チューブは分離していないのでストッパーを外す必要はなく、これは完全に工場での組立ミスだと思われます。シンガポールだからと言って組立品質が落ちるとは思っていませんが・・

で、この後期の時代になるとシボ革の品質も落ちて、表層が蝋のように粘って溶けて来ます。そこで、アキアサヒさんのシボ革と交換ご希望です。そこで問題は従来使用していた純正のシボに近い4040がストック切れになり、代替は本革になるとのことでした。私のところには,メーカーさんが在庫処分の時に購入した分の4040はあるのですが、抜型が無いので・・シボ革貼り替えの場合、問題になるのは、純正はシボ革を貼ってからストラップ金具をカシメているのですが、貼り替えの場合は金具は残しての交換になるので金具部分の処理が問題になります。

じつは、今週の水曜日に普通郵便で発送して頂いていたのですが、現在は郵便の配達サービスが低下していて到着に日数が掛かるのです。以前なら金曜日に届いていたのですが、金曜日に届かず、土曜日は配達休止とのことで翌週の月曜日到着となってしまいます。ちょっとリードタイムを読み違いました。

微妙に抜型の形状も簡略化していてカットが難しいです。特に抜け止めのバネ下にカッターの刃が入りません。(画像は練習用のシボ革)

 

次に問題は、下地のリンクル塗装が劣化していて、アルコール綿棒で塗料が落ちてしまいます。かといって弱い塗装の上にそのまま貼るわけにも行きません。これは、途中の保存も関係して来るとは思いますが、元の塗装もあまり良いとは言えないかと思います。

やっとシボ革が到着しました。ローライ35用のシボ革を35SEに流用する場合は2か所の加工をしなければなりません。まずは沈胴ボタン用の孔開け。

 

次はローライ35の「絞り目盛ロック爪」は35SEは無いのでカットされている部分のシボ革を同梱されている「練習用」から切り出して取り付けます。

 

裏蓋は吊環部を取付け位置決めしてからアンダーカバーに隙間が空かないように注意をして貼って行きます。

 

シボ革のパターンは4040より大き目でむしろ純正に近く、手のホールド感も非常に良いと思います。これは本革ならではの感触です。ただし、純正のシボ革は本体の側面部分は厚みが薄く加工されていて本体の段付きに合うようになっているので、従来の合皮製の場合には先端部を薄く削ってから貼っていましたが、すでに本革に貼られている両面テープはきれいに剥離することが困難(ほぼ出来ない)のため今回は厚みの加工は省略して接着剤併用で貼ってあります。いずれにしてもこれだけの品質のシボ革を送料込みで1,500円という価格で供給して下さるアキアサヒさんには感謝です。

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