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カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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PEN-FT(B)の通常メンテナンスの巻

2024年07月10日 20時00分00秒 | ブログ

暑さもひと段落のようですので今のうちに作業を進めておきます。カメラ店様に並ぶPEN-FT #3121XXをやっておきます。良い頃の個体ですが、結構使い込まれているようで、外観の汚れ(彫刻文字が黄色)が目立ちます。点検では巻上げが1回で完了しない症状があります。また、ハーフミラーの劣化。

トップカバーを外してみます。過去に修理歴は無いようです。

 

 

やはり使い込まれた個体で、チャージギヤの軸(画像右側)が摩耗をしています。殆どの個体に摩耗はありますが、今回は中程度の摩耗なので調整としておきます。これ以上に摩耗が進んだ場合は軸のみのカシメ交換は出来ませんので、地板ごと交換することになります。この摩耗ですが、使い込まれた個体だけに発生するというわけではなく、それほど使い込まれていない個体にも発生することが有ります。潤滑の問題だけではなく他にも原因があるのか?

工数が限られていますのでサッサと進みます。完成した前板を取り付けて作動を見ます。

 

ここで問題。シャッターを切ると次の巻上げがロックが掛かって巻けない症状。この場合は一般的にはシャッターユニット側の「トメレバー」に関係する部分の作動不具合ですが、今回の原因はリターンミラーユニットのバネの掛かりが正規になっておらず、黒いレバーが左に走るとバネと接触するのが原因でした。(画像は正規に直したところ)私もPEN-FTは数百台は修理をして来ましたが、今回の原因は初めての経験でした。こんな原因もあるから分かったような気になってはいけないということ。

メカの組み立ては、ほゞ終了。ハーフミラーは新品と交換してあります。これから、ストロボ発光、露出計の感度調整とファインダーの無限調整をします。

 

洗浄したカバーを取り付けようと思いましたが、使い込まれ気味の個体は彫刻文字の白塗料が変色と劣化で完全に艶を無くしていますので色入れをやり直しました。オリジナルは半艶ですので、そのように調合してあります。この文字に艶が無いとカメラの色気が無くなってしまいます。

ついでなのでPEN-FT #2212XXと中前期型をやっておきます。ケースに入ってこの頃の個体としてはきれいですが・・

 

裏蓋や圧板はカビが発生していますね。

 

 

未分解と思いましたがシャッターダイヤルと露出メーターの連動が変です。

 

ハーフミラーが汎用の恐らく反射率5対5のミラーから切り出されたものが付いています。情報窓部もメッキがありますが、意外に問題なく見えるのですね。

 

これでも代用にはなると思いますが、私は設計者の米谷さんに直接お伺いをしてメッキの種類や反射率など、出来るだけ正確に復元しています。汎用ミラーですとファインダーが暗くなる傾向があると思います。

前作業者がプリズムやスクリーンを分解してありますが、マスクがヨレヨレになっています。また、遮光クロスが正規の位置に通っていません。

 

スクリーンなどすべてを分解して組み直しておきます。

 

 

今回はハーフミラーはそのまま再使用としました。これでメカの組み立て終了。

 

 

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