私が、いつ頃の個体が良いと軽率に言うのは悪影響もあるかなとも思うのですが、PEN-FT #1804XXは微妙な頃の個体ですね。気になったのは、巻上げのゴリツキがかなり大きくて、5段階評価の4ぐらい悪いです。カバーを取ってみると、過去にリターンミラーユニットまで分解を受けています。実は、巻上げのゴリツキの半分ぐらいはリターンミラーユニットが影響を及ぼしているのです。
分解をしてみると、この個体はSSか同等の修理屋さんで修理されていますね。10万台ですから露出計はきびしくて、この個体もダウンしています。オーナーさんのご希望もあって、当方のストックと交換することにしましたので、電池室の配線も新製しておきます。
洗浄をした本体に巻上げ関係を組み立てて行きます。特に問題はありません。
ははぁ、シャッターユニットも分解を受けています。何が不良だったのでしょうね。
テンションハンマーのスリ割りネジが痛んでいます。
チャージギヤ軸に偏摩耗があります。右半分が摩耗していることが分かりますね。巻上げレバーを巻くと、チャージギヤはカメラの前面から後ろ側に強い力で抑え込まれます。潤滑がないと摩耗が進んでしまいます。この程度ですと、まだ二回巻き上げなどの不具合は出ませんが、巻上げのフィーリングには悪影響を与える場合があります。
オーバーホールを終えましたが、このユニットはチャージギヤ軸の摩耗だけでなく、テンションハンマーの回転にガタがあります。これは地板の孔が摩耗をして拡大しているためです。現状の程度では問題はありません。
リターンミラーユニットはあまり分解するユニットではありませんが、何が問題だったのでしょう? ネジのスリ割りも痛んでいます。この頃は改良前のユニットですから、使い込まれて摩耗をすると作動の信頼性が怪しくなります
左端のギヤは分解出来ませんが、使い込まれて摩耗が進んだユニットは、巻上げフィーリングに大きく影響を与えます。作動をミスするようなら交換ですが、今回は再使用としますが、本当は交換したい・・
セルフタイマーユニットの取付方法については、製造時期によって、かなり試行錯誤をした形跡があり、いろいろなタイプがありますが、こんなのは見たことないと思いました。ピンセット先の部分は、ユニットに取り付けられたネジを締め込むことで、ユニットの位置を調整するためですが、この個体は孔開けとタップが切ってあって、このネジでユニットを留めています。前板に付いているネジは本来は、このネジでユニットを留めるはずが、短いネジに変えられていて接着剤で留めているだけの意味のないダミーです。なんで??
分かった。この補修用パーツは最後期型のユニットで、取付け孔位置が微妙に異なるのです。推理はこうです。SSでセルフタイマーの作動不良を直すために交換用のユニットをセットしたら孔位置が違って取り付かない。それではと、ユニット位置決め用のネジを利用して、本体側にタップを切って取り付けた。なら、元のユニットを修理すれば良かったんじゃないの? ダミーのネジまで接着をしてご苦労さんなこと・・
18万台ですと、この個体に付いていたユニットは改良前の巻上げるとジッジッジッというやつのはず。今回は、その後の生産に使われていた孔位置は同じで改良型のユニットに交換します。適合しないユニットを無理に付けようとするから、色々ごまかしをしなければいけなくなる。正規に戻せばよいのです。
セルフユニットを交換しているので、タイマーレバーの水平を調整しておきます。組立は、ほぼ完成。露出計ユニット、ハーフミラー、セルフタイマーユニットを交換しています。
付属の40mmはF用ですね。過去に分解歴があって、後玉のコーティング一部剥離しているのと、かなりのオーバーインフになります。内部はヘリコイドグリスの流化と汚れが多くあります。前回の分解時に、きれいに清掃されていないようです。また、絞り羽根に若干の変形があって、作動が重い感じですね。
完全に清掃とヘリコイドグリスを入れて、レンズを磨いておしまい。FT本体のセルフタイマーは、ユニットが正規の位置に収まったため、トップカバーのレバー孔の内周に接触するという不具合は解消されています。しかし、手慣れた改造でしたので、標準作業になっていたのでしょうかね? 後継互換を取っていない部品は、最終仕様が補修用としてストックされるのでしょうから・・。あとは100mmがあります。
あまり使用されなかった個体で、レンズの状態も含めて非常にきれいです。問題は、ヘリコイドの回転が異常に重くなること。グリスを柔らかいタイプに交換しています。
40mm+100mmはコンパクトで使いやすいセットですね。色々と過去の歴史を持った個体でしたが、リカバリーは出来たと思います。