九州のご常連さんから珍しい時計が来ましたよ。BREITLING WAKMANNというブライトリング社との合併企業で、航空機の計器(時計)を作っていたメーカーだそうで、ヒコーキ好きとしては、実際に計器パネルに嵌め込まれていた計器には魅力を感じますね。昔、環八のスクラップ屋さんにB29の残骸が入っていて、計器もあったんですよね。二度ほど見に行ったのですが買わずに帰ったのを後悔しています。で、このクロックはかなりの重症で動きません。まずケースから分離して不具合個所を特定することから始めます。
クロック用の工具なんて持っていないのですね。流石に振動などでの脱落を防止するため、針はがっちりと嵌っています。
ケースの中から弓状金属片と小さな金属片が出て来ましたが、さてどこの部品かな? 弓状の金属片はコハゼバネのようですね。前面右上のノブを回してもゼンマイが少し巻くと滑って解放されてしまいます。ゼンマイ切れかも知れません。
受けを分解したところ。腕時計に慣れているので、クロックサイズは全然精密感は感じません。しかし、地板も厚くがっちりとした設計で、振動や衝撃に対応した設計がされているようです。
ゼンマイの入っている香箱を分解してみますが、その前に。ゼンマイを巻き上げる角穴車がすごいですね。合計9歯も折れていて修理の「入れ歯」をされています。よくよく点検すると・・・
あ~、小さな金属片は角穴車の歯だったんだぁ・・。入れ歯をしなくてはいけませんが材料が無い~。
ゼンマイ切れもありますが、ゼンマイの先端が開いていて香箱真と噛み合っていません。3つの不具合を総合的に判断すると、どうも巻上げノブを逆に回した(巻いた)のではないか? 正規の巻上げは反時計回りですが、巻上げノブの⤴彫刻の色入れが抜けていて見にくいため、パイロットか逆に回して破損させたのではないか? 逆転防止の機能は無いみたいです。
折れたコハゼバネを繋げて、元の形状とコハゼとの連動を見ます。
で、カーボンスチール板から切り出して複製を作ろうかと考えましたが、弓の部分が長いため、均一に焼入れ、焼きなましが出来ないと折れる可能性があると判断して、バネ線を曲げて熱処理をしてみました。
取付のネジ穴がないので、このような形状に曲げています。これで上手く機能しなければカーボーンスチール板から製作します。
迷走台風5号は最後はしっかり日本列島を縦断するコースを辿るようですが、私の印象では、偶然は分かっていますが、最近関東地方に接近した台風は、殆ど夜半に来襲しているような印象です。被害が出ないことを願うしかありません。
で、各穴車の「入れ歯」を作ります。若い頃技工士になりたかったんですね。関係ないか・・。歯車は素材の硬度も高いですし熱処理されていますからヤスリで簡単に削るというわけにはいきません。入れ歯をするところを正確に削っておいて、はめ込む方の入れ歯はなんとPEN-FTから調達しました。
12時位置が圧入したところ。これからポンス台でカシメてから歯を成形します。ここまでやって、じつはガンギ車に問題があることが分かりました。香箱(ゼンマイ)も良くありませんので、交換部品が見つかってから作業を継続することにします。